雑誌詳細

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2024年11月号

2024年9月20日発売号   1,800 円(税込)

特集1

すぐに使えるコンプライアンス研修チェックリスト

特集2

他部署のホンネに迫る!
法務部員の社内コミュニケーション術


特集1
すぐに使えるコンプライアンス研修チェックリスト
コンプライアンスへの目線が全世界的に厳しくなっている今日,不祥事発生による企業へのダメージはさらに大きくなっているといえます。そして,不祥事発生を効果的に予防するためには,社内で「より効果的なコンプライアンス教育」を実現することの重要性が増しています。
そこで,今回はコンプライアンス研修を実施するにあたって必ず押さえておきたいポイントを,その解説とともに「すぐに使える」チェックリスト形式でまとめています。まずはここから,確認を!
コンプライアンス

効果的なコンプライアンス研修と企業風土
木目田 裕

本稿は,企業不祥事を防止・早期発見するための効果的なコンプライアンス研修のあり方について,「正しいことをしよう」の企業風土化や「声が上がる,風通しのよい」企業風土の構築等の観点から論じるとともに,法令知識等に関するコンプライアンス研修上の留意点やコンプライアンス研修における社長出席の重要性,研修を企画するにあたり着目すべき社内のred flags(よからぬ徴候)について論じるものである。

労働法 コンプライアンス

ハラスメント研修で押さえるべきポイント
鳥居江美

問題が顕在化しているか否かの違いはあっても,ハラスメント問題と無縁の企業はない。特に近年,ハラスメントに関する社会の意識が急速に変化し,企業のコンプライアンス強化におけるハラスメント教育の重要性は増している。実効性の高いハラスメント研修を実現するため,どんなポイントを押さえるべきか。企画面・内容面から解説する。

競争法・独禁法 コンプライアンス

秘密情報の取扱いにかかる研修実施の要点
工藤良平

企業における営業秘密および個人情報その他の漏えいが発生した場合に企業価値が毀損されうる情報(以下「秘密情報」という)の漏えい発生ルートとして,「現職従業員の故意または過失による情報漏えい」と「中途退職者による漏えい」の2ルートが,近時の漏えい事案全体の約85%を占めている。
本稿では,従業員等に対する秘密情報の取扱いに関するコンプライアンス研修の実施に際して,まずこれだけは研修で絶対に押さえるべきポイント(Step 1)と,次に押さえるべきポイント(Step 2)を紹介する。

競争法・独禁法 コンプライアンス

外注・業務委託におけるコンプライアンス
――下請法を中心に
柿元將希

ビジネスを遂行するうえで,外注・業務委託は日常的に行われる取引類型である。特に,一定規模以上の事業者が中小事業者および個人に業務委託を行うケースでは下請法の遵守が重要となるところ,同法の規制内容は複雑であるのみならず,近時の価格転嫁を推進する政策を背景にその実務運用も大きな転換点を迎えている。
本稿では,こうした近時の動向をふまえ,下請法を中心とした外部委託における研修において特に押さえるべきポイントを解説しつつ,可能な範囲でフリーランス新法や独禁法上の優越的地位の濫用についても触れる。

税務 コンプライアンス

「接待交際と経費使用」に関するコンプライアンス遵守
――下請法を中心に
平木太生

本稿では,法務部員のみならず,経理部門や管理部門,さらには経営者など,企業全体で押さえておくべき接待交際費に関する税務上の知識,実際の事例に基づいたリスク管理のポイント,そして近年注目される「ギフトコンプライアンス」に関連する具体的な事件や判例についても紹介する。これにより,企業が適正な経費使用を通じて健全な経営を続けるための指針を作成し,従業員への研修の一助となれば幸いである。

競争法・独禁法 コンプライアンス

広告・宣伝に関する景品表示上の主な留意点
川﨑由理

広告・宣伝は,商品やサービスを販売する事業者にとって,商品等の認知度を高めるとともに,他社商品等と比較した場合の優位性を知ってもらうための最たる手段であり,販売行為に際して必要不可欠なものである。本稿では,一般消費者向けに提供されるあらゆる商品・サービスに関する広告・宣伝を規制対象とする不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律134号。以下「景品表示法」という)に関して,最低限理解しておくべき表示上のルールについて説明したい。

会社法 コンプライアンス

役員向け研修の実施に向けた留意点
山田和彦・中島正裕

コンプライアンス体制が充実しているはずの大企業ですら不祥事は絶えない。この事実が意味することは,完璧な組織など存在しないという現実である。
役員は,研修を通じ,コンプライアンスの本質と自らの責任を理解し,自社のコンプライアンス体制を(形式だけでなく)実効性あるものにすることが期待されている。ポイントは,役員自身が自らの言動をもってコンプライアンスの重要性を社員に伝える必要があるということである。

地平線
信用第一
企業法務総合

楠木 建

「なりすまし広告」問題の一義的な責任はその手の広告を出す業者にある。かなりずさんななりすまし広告でも引っかかる人がいるから,SNSの利用者に対する教育や啓蒙活動も必要だ。なりすまされた著名人がプラットフォーマーの責任を追及するのも当然。ここまでは言うまでもない話だ。

Trend Eye
「週休3日制」検討時の留意点
――3つのパターンの導入可能性
労働法

川地 忍

「経済財政運営と改革の基本方針2021」いわゆる「骨太の方針」のなかで,「選択的週休3日制」の導入促進が盛り込まれた。令和5年就労条件総合調査によれば,何らかの週休2日制の導入企業割合が85.4%であるのに対し,完全週休2日制より休日日数が実質的に多い制度の導入企業割合は7.5%にとどまっている。たしかに,週休3日制という選択肢が増え,働き方の自由度が高まることは,従業員にとって望ましいことだろう。
本稿では,週休2日制をとっている企業において,週休3日制の導入を検討する際に,留意すべき点について述べていく。ここでは,従業員が主体的に選択できる制度を想定する。

特集2
他部署のホンネに迫る!
法務部員の社内コミュニケーション術
「事業部から契約書業務を丸投げされて困る」という悩みを聞くことがあります。法務の専門性の高さゆえ,他部署からの多くの頼まれごとに悩む方は少なくないでしょう。
社内コミュニケーションを円滑にするコツは,他部署の考え方や働き方をよく理解すること。そんな思いから,本特集では,他部署の経験者からみた法務への期待や要望をまとめました。 読めばきっと,活躍の場が大きく広がるでしょう。
企業法務総合

法務に対する経営の期待と社内コミュニケーションの意義
前田絵理

企業を取り巻く環境は著しく変化しており,さまざまなリスクに対応することが求められている。法務は経営の期待に応えられているのだろうか。法務機能のミッションである最適なリーガル・リスク・マネジメントを実現し,企業価値の向上にコミットしていくには,常に経営と目線を同一にし,全社・グループリスク情報を常時把握する必要がある。そのためには,社内連携および経営や他部署とのコミュニケーションが求められる。

企業法務総合

事業部編①
ビジネスと法務の交差点
大串嘉誉

筆者は,外資系法律事務所から2014年に総合商社の法務部に入社後,米国LawSchool留学を経て2020年に事業部に異動し,現在は米国事業会社に出向中である。
本稿は,法務部時代の経験もふまえつつ,事業部の立場から法務部員のコミュニケーション術について考察するものである。はじめにいっておくと,筆者はあまりコミュニケーションが得意ではない。しかし,だからこそ自らの学びを言語化できていると思うので,読者の参考になれば幸いである。

企業法務総合

事業部編②
両利きの法務 専門家とビジネスパーソンのベストミックス
梅原 功

法務は,今やリスク低減だけでなく,ビジネスを推進するうえで欠かせない存在である。ただ,事業部門からみると,依然として敷居が高い存在でもある。本稿では,私が両方の部門を経験して感じた法務への期待や要望について詳述する。

企業法務総合

知財部編
「攻めの知財」実装・強化のカギ
荒木 充

知財を可視化するIPランドスケープ手法などにより知財をより戦略的に創出し,事業に合わせて効果的に組み合わせて価値への変換を確からしくする「攻めの知財」において,特にオープンイノベーション領域での法務・知財間の連携は今後の競争力を左右する鍵となる。

企業法務総合

人事労務編
ヒトと組織の成長を支えるための心構え
徳山佳祐

会社によって異なるものの,人事部も法務部も,他の部署から,近寄りがたいイメージを持たれていることが少なくない。実際に,人事部とのコミュニケーションに悩んでいる法務部員もいるのではないか。しかし,人事部と協調することで,もっと職員や組織のために活躍できる法務部員になることができる。そのためには,何をすべきであろうか。

企業法務総合

財務経理編
財務経理からみた重要業務と法的イシュー
堀切一成

法務が業務を行ううえで連携が必須となる部署は会社にとってさまざまではあるが,どの会社にも存在し,かつ連携が必須な部署が財務経理である。本稿では,財務経理からみた,財務経理が担当する業務ごとの法務に連携してほしい業務について解説する。

企業法務総合

経営企画部編
経営戦略策定に関与しさらなる価値提供を
三瀬 崇

経営戦略や事業計画の策定・実行,M&A推進といった会社のかじ取り役を担うことが多い経営企画部門との関係において,法務部門がより高い付加価値を提供するために効果的なコミュニケーションについて,自身の経験をふまえて検討する。

企業法務総合

IR・SR編
経営に資する法務に求められるIR・SRの視点
井上 卓

株式会社の経営のあり方を決定する最もファンダメンタルな要素が株主構成と株主の行動様式である。上場会社において,機関投資家である株主のプレゼンスが高まりつつある現在,経営に資する法務を目指すためにはIR・SRの視点をもつことが必須となる。

企業法務総合

リスクマネジメント編
法務部のProfessionalityへの期待
三輪 剛

保険リスクマネジメントと法務部は,企業が直面する諸リスクに対し,ともに立ち向かうべき存在である。さらに法務部のProfessionalityの高さは,われわれ保険リスクマネジメントの目指すべき姿でもある。

企業法務総合

情報システム部編
生成AI時代の法務の進化と可能性
照山浩由

2022年の生成AI「ChatGPT」の登場以来,企業では業務にさまざまなAIを取り入れ始めた。この生成AIをはじめとする急速な技術発展により,企業のみならず社会全体のあり方・価値観は大きく揺らぎ,先行きが不透明な時代(いわゆる「VUCA時代」)に突入しつつある。そのなかで,法務人材および法務部門が今後も存在感を発揮するためにはどのような課題と解決方法があるか? その先も見据えて「生成AI・DX」の観点から考察する。

企業法務総合

監査役編
ガバナンス強化における組織横断的な役割として
横野能将

コーポレート・ガバナンスにおいて主に「守りの機能」の要である監査役(会)として,内部統制部門との機能別・横断的な協力が必須であり,リーガルリスクが複雑化するなかにおいては,法務部門との情報共有による有機的な連携がさらに期待される。

企業法務総合

役員編
法務にも「マーケティング&セールス」の発想を
廣瀬 修

「経営に貢献できる法務人材」が求められる一方で「法務が経営から信頼されていない」「社内でのプレゼンスが低い」との悩みも聞こえてくる。なぜそうなるのか。法務部門はどう考えいかに行動すべきか。筆者が自身の経験に即して考える。

実務解説
ジョブ型雇用時代を見据えたルール作り
――滋賀県社会福祉協議会事件最高裁判決
労働法

向井 蘭

滋賀県社会福祉協議会事件最高裁判決は,職種限定合意がある場合に使用者が同意なく従業員を異動させることを認めず,異動命令を無効と判断した。今後,この最高裁判決をもとにジョブ型雇用時代を見据えたルール作りが進むと思われる。

知財 テクノロジー・AI

AI生成発明の発明者
――東京地裁令和6年5月16日判決
深井俊至

人間(法律用語として「自然人」)が行ったとするならその者を「発明者」とする「発明」と認められる技術がAIによって生成された場合,この技術は,特許法が規定する「発明」となるか,「発明」となる場合に「発明者」をどうすべきかについて検討する。東京地裁令和6年5月16日判決は,「発明者」は自然人に限られると判示した。

情報法 M&A

コーポレート領域における個人情報の保護
――M&A,株主情報の取扱いを中心に(中)
田浦 一

本稿は,M&A領域における個人情報に関する問題についての解説の中編であり,買収の実行段階における個人情報の承継等に関する問題や,PMI(Post Merger Integration)のプロセスにおける個人情報の取扱いの統合等における留意事項について,概観する。

企業法務総合

2024年6月総会振り返りと個人株主との対話
大前佑記・松原嵩晃

2024年6月総会では,株主総会のデジタル化の進展がみられたこと,株主提案を受けた会社が過去最多となったことが特徴的であった。本稿では,本年6月総会の概況を説明するとともに,特に個人株主との向き合い方という観点から今後の株主総会の方向性,運営等について検討したい。

知財

知財×法務×金融コラボレーション
――「攻めの知財」における法務人材の貢献
荒木昭子

「攻めの知財」と呼ばれる新たな時代が到来している。そこでは,企業は,変化の激しい市場環境において知財・無形資産をいかにして企業価値に結びつけるのかという新たな課題に直面している。本稿では,この課題に対応するために,企業の法務部門や外部弁護士がどのような役割を担うことができるか,筆者の見解を述べる。

企業法務総合

法律家が知っておきたい
衆議院法制局からみた立法府・国会の現場
濱中麻実子

近年,ルールメイキングに対する関心が高まり,さまざまな書籍やサービス等が提供されているが,「行政府」へのアプローチに関するものが多い。
そこで,本稿では,立法の現場である「立法府」からみた,法律(ルール)が出来上がる過程について,その概要を解説する。

企業法務総合

企業によるスポーツ選手との契約の法的ポイント
加藤志郎・嶋岡千尋

近年,企業における課題解決のために,企業とスポーツ選手との多様な関係性が生まれている。そのためのスポーツ選手との契約につき,企業として,雇用,請負・業務委託,スポンサーシップその他の契約形態を適切に選択するうえでの法的ポイントを解説する。

競争法・独禁法 M&A

令和5年度主要結合事例にみる企業結合審査
――経済分析およびモニタリングの活用動向
石垣浩晶・金子直也・矢野智彦・益田 拓

令和5年度の主要な企業結合事例をみると,規制されなかった事例の市場シェアを確認すると既存の規制の相場観と一致していることから全体的には公正取引委員会(以下「公取委」という)の規制態度には変化がないことがわかる。他方,大韓航空・アシアナ航空の事例は,アンケート調査や詳細かつ頑健性にこだわった経済分析が実施されたうえで競争の問題が指摘され,トラスティを使ったモニタリングが構造的措置と併用されるなどの新しい審査や規制の動きもみられ,市場シェアが高い企業結合計画を予定している企業にとっては教訓が多いものとなっている。

会社法 国際

2024年7月1日施行
中国会社法「従業員代表董事・監事の設置」
劉 新宇・韓 暉

「新興国」とされる国々では,当局の運用が未確立である等の事情もあり,個人情報保護規制に関して,基本的情報が整理されていないことも多い。本稿では,近年の経済成長が著しいフィリピンについて,同国の個人情報保護法制の枠組みを紹介するとともに,同国に関連する事業を行う場合に留意すべき個人情報の取扱いに関する規制をいくつか取り上げる。

国際 情報法

フィリピン個人情報保護法に関する動向と日本企業への影響
井上 淳

「新興国」とされる国々では,当局の運用が未確立である等の事情もあり,個人情報保護規制に関して,基本的情報が整理されていないことも多い。本稿では,近年の経済成長が著しいフィリピンについて,同国の個人情報保護法制の枠組みを紹介するとともに,同国に関連する事業を行う場合に留意すべき個人情報の取扱いに関する規制をいくつか取り上げる。

テクノロジー・AI

解説 「ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー」
鈴木謙輔・宮下優一

2024年6月に厚生労働省より「ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー」が公表された。同報告書ではヘルスケア分野のスタートアップ実務にかかわる25の政策提言が掲げられている。本稿では法務面で重要となる提言を紹介する。

連載
【新連載】 
スタートアップのための社内規程整備マニュアル
第1回 社内規程整備に関する総論
企業法務総合

緒方文彦・鈴木直也

本連載では,全6回にわたり,スタートアップのための社内規程整備について,具体的な条項例を交えつつ解説を行う。スタートアップが社内規程整備を行うのは,多くの場合,IPO(新規上場申請)に備えた社内体制の構築のためである。社内規程にはひな形が存在するため,場合によっては各社の個別事情を反映せず,紋切り型の社内規程が策定される。本連載では全6回にわたり,一貫して,会社実態に即した社内規程の整備のための施策に言及していく。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

2024年7月・8月の法務ニュースを掲載。

■金融庁,サステナブルファイナンス有識者会議第四次報告書を公表
■日証協,「社債市場の活性化に向けたインフラ整備に関するワーキング・グループ」報告書を公表
■最高裁,外国子会社合算税制に関する事件で納税者敗訴判決
■公取委・中小企業庁,下請法改正に向けた検討開始
■法務省民事局長,代表取締役等住所非表示措置に関する通達を発出
■盛土規制法が東京都全域をはじめとした一部地域で運用開始
■中小企業庁,「知的財産取引に関するガイドライン」および「契約書ひな形」の改正案の意見公募を開始
■環境省,「気候変動適応法施行後5年の施行状況に関する検討 中間取りまとめ」を公表
■日本取締役協会,「上場企業のコーポレートガバナンス調査」(2024年版)を公表
■証取委,「令和6事務年度 証券モニタリング基本方針」を公表
■中国,EUによる中国製EVに対する追加関税をWTO提訴

ほか

知財

事業展開×知財×法務
第4回 特許の事業への活用における盲点
笹本 摂・佐藤武史・今 智司

社員によって発明が創出され,その発明について特許を取得したとしても,それだけで事業に役立つわけではない。一般的に,自社単独もしくは他社と共同で特許を活用すること,または他社に特許を利用させること等により特許は事業で活用される。しかし,特許があれば事業が100%うまくいくとは限らない。第4回では,特許を事業で活用する場合に法務担当者が念頭に置くべき点について解説する。

民法・PL法等

最新判例アンテナ
第76回 抵当不動産の賃借人は,抵当権者による物上代位権に基づく賃料債権の差押え前に賃貸人との間で行った,抵当権設定登記後に取得した賃貸人に対する債権と,将来発生する賃料債権を直ちに対当額で相殺する旨の合意の効力を,抵当権者に対抗できないとした事例(最二小判令5.11.27民集77巻8号2188頁)
三笘 裕・片瀬麻紗子

Xは,2017年10月,訴外賃貸人Aから,その所有建物について,根抵当権の設定登記を受けた。同建物の賃借人Yは,同年11月,Aに対する甲債権を取得し,さらに2019年1月,Aとの間で,同建物に係る賃貸借契約に基づき同年4月以降に発生する賃料債務の一部について,期限の利益を放棄したうえで,同債務に係る債権を,甲債権を含むAに対する債権と対当額で相殺する旨の合意(以下「本件相殺合意」という)をした。Xは,2019年12月に,同建物に係る賃料債権について差押命令の発令を受けたことから,Yに対して,当該賃料債権のうち未払分の支払いを求めたところ,Yは,本件相殺合意の効力をXに対抗することができると主張してこれを争った。

企業法務総合 労働法

マンガで事例紹介!
フリーランスにまつわる法律トラブル
第2話 フリーランス新法の概要
宇根駿人・田島佑規・ CS合同会社

マンガの事例において,フリーランスの方から相談された場合,これまでであれば,「合意した条件をメールなどに記載して先方に送付し,記録化しておきましょう」といったアドバイスをすることが多かったでしょう。しかし,フリーランス新法の施行により,このアドバイスだけでは不十分となります。

企業法務総合

悔しさを糧に――学べば開ける☆
第8話 ロースクールでの授業デビューは,1年お預けに......?
木山泰嗣

弁護士としての実働から通算して20年を超えた税法学者が,税務の仕事に限らず,学生・受験生のころに経験したエピソードを挙げ,自分の思うようにいかない現状(=悔しさ)を糧に,どのように学び,どんな活路を開いてきたのかを語ります。

国際 争訟・紛争解決

ストーリーでわかる 国際仲裁の基本
第5回 国際仲裁におけるヒアリング対応
伊藤 遼・魚住 遼

【前回までのあらすじ】
日本の化学品メーカーである甲社は,米国の化学品メーカーである乙社から,乙社の日本子会社であった丙社の発行済株式すべてを譲り受けた。しかし,株式譲渡実行後,丙社の工場敷地内に特定有害物質が含まれていること(以下「本環境汚染」という)が判明したため,2024年4月,甲社は,日本商事仲裁協会(JCAA)に対して,乙社を相手方とし,表明保証違反を理由とする補償請求を申し立てた。
主張書面のやりとりの結果,本仲裁の主な争点としては,①本環境汚染が株式譲渡の実行前から存在していたか,②甲社が法務・環境デューデリジェンスの際に本環境汚染の存在を認識することが合理的に可能であったかという点になることが見込まれている。

企業法務総合

失敗事例から学ぶ「ナレッジ・マネジメント」
第3回 契約審査基準
松丸夏希

本連載では,架空の「ナレマネリーガル株式会社の法務部門」の事例をもとに,ナレッジ・マネジメントの失敗の背景に迫っていく。連載第3回目の本稿では,以下の2つの【Case】を,契約書審査の審査基準の作成・運用を通じたナレッジ・マネジメントの失敗と解決策として取り上げる。

企業法務総合

ライアン・ゴールドスティンの"勝てる"交渉術
第8回 強者と対等に交渉するには「覚悟」が必要である
ライアン・ゴールドスティン

業務のために渡米し,滞在先のホテルでこのコラムを執筆しようとしたとき,驚くべきニュースが飛び込んできた。日本時間7月14日,米東部ペンシルベニア州で,大統領選に向けた集会で演説していたドナルド・トランプ前大統領が男に銃撃された。トランプ氏は右耳を負傷したが命に別条はないと報じられた。シークレットサービスに抱えられつつも,拳を突き上げたトランプ氏は,この事件で屈強な印象をいっそう強くした。今回は,トランプ氏の交渉術をもとに,強者と対等に交渉する際におさえておきたいことを考える。

企業法務総合

いまでも覚えています あの人の「法務格言」
第13回 「だから君にお金を払っているんだよ」
山根睦弘

本稿のタイトルは,30年前に言われた言葉でした。私が日産自動車の法規部(現法務室)に1994年春に入社して数カ月ほどたったときの上司の言葉です。現在のようにPCは法務の職場にはなかったので,古いワープロ(感熱紙に印字するタイプ)で契約書を作っていました。契約書の作成はフロッピーディスクに格納しているひな形契約書をベースに,取引に応じてカスタマイズしてFirst Draftを作成しますが,そのFirst draftに対して契約相手方からやってきたCounter draftをレビューする際には,こちら側から最初に先方に提示したFirst Draftと,そのCounter Draftを交互に見比べながら,こちらのビジネス部門の依頼部署とSecond draft(相手方Counter draftに対するこちらのCounter draftのこと)をどうしましょうか,と相談します。

会社法

「株式法務」最新Q&A――株主総会,コーポレート・ガバナンスの現場対応
第6回 経営戦略をふまえたスキル・マトリックスの作成
飯塚 元・西口阿里沙

X社は,上場会社であり,招集通知やコーポレートガバナンス報告書に,役員の「スキル・マトリックス」を記載している。X社では,複数名の取締役が任期満了したのち退任することが予定されており,新任取締役を選定する予定である。また,今後,中期経営計画を改定する予定であり,役員の指名戦略の見直しに伴い,役員の交代も検討している。
X社は,スキル・マトリックスを作成・改定するにあたり,どのような点に留意すべきか。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験® 3級演習問題
企業法務総合