雑誌詳細

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2024年7月号

2024年5月21日発売号   1,800 円(税込)

特集1

各法令における個人情報保護法のエッセンス

特集2

契約書レビュー トレーニング

企業法務総合 労働法

マンガで事例紹介! フリーランスにまつわる法律トラブル
第1話 発注者も受注者も無関係ではいられない!?
フリーランスを取り巻く法環境
宇根駿人・田島佑規・ CS合同会社

そもそもフリーランスとは,おおむね業務委託などにより案件を受注し,業務を行う個人事業主のことをいいます。そして,こうしたフリーランスのなかには,ある企業のなかで何十年と勤務をし,ビジネススキルを多く身につけたうえで独立した方もいれば,社会人になると同時に個人事業主になったような方もいます。また,法務や税務といった事業運営に必要なバックオフィス業務に関し,十分に知見がある,あるいは,各種専門家に日常的に依頼が可能であるという方もいれば,正直なところまったく自信がなく,おざなりになってしまっているという方もいるかと思います。

特集1
各法令における個人情報保護法のエッセンス
「個人情報」に着目した法律は,個人情報保護法しか存在しません。同法はあくまで行政法規であって,守っていたとしても行政から指導を受けない,という点にとどまります。しかし,そのほかには特段,意識すべき点がないのでしょうか。
データ利活用の場面においては,民法をはじめとする私法を遵守する必要があり,この視点を欠かせば,正確なリーガルチェックはできません。本特集では,主に私法からみた個人情報保護法の周辺領域を明らかにし,知られざる実務に迫ります。
民法・PL法等 情報法

民法と個人情報
木村一輝

事業者は,本人(個人)から個人情報を取得して利用するため,個人と事業者との間のルールを定めている民法とのかかわりを意識しなければならない。本稿では,個人情報を取得してから,利用・漏えい等が発生した場合に考えるべき民法のルールについて解説する。

情報法 消費者関連法

消費者関連法と個人情報
久保田夏未

事業者は消費者から個人情報を取得することが多いため,消費者関連法とのかかわりを意識する必要がある。そこで,Ⅰでは,事業者が消費者の個人情報を取り扱うことに関連して念頭に置くべき消費者関連法,Ⅱでは,事業者の内部通報窓口の運用上問題となりやすい個人情報の取扱い,Ⅲでは,個人情報漏えい時に多数の被害者により提起されうる訴訟につき,消費者裁判手続特例法の被害回復制度が用いられる可能性について概説する。

会社法 情報法

会社法と個人情報
高橋香菜

会社が日々事業を遂行するにあたっては,個人情報を取得し,利用等する場面が多く想定される。また,会社においては,会社法等の関係法令に基づくさまざまな要請に従う必要があるところ,これらの対応に伴い個人情報を取り扱う場合,個情法上の諸規制との関係性が問題となりうる。そこで,本稿では,会社法と関連する個情法の論点を,実務的な観点から説明する。

労働法 情報法

労働法と個人情報
佐々木賢治

使用者は労働者の採用から退職に至るまで,さまざまな場面で労働者の個人情報を取得し,利用および管理することになる。その情報の範囲についても,採用前においては履歴書や採用面接,入社後においては健康診断や勤怠管理の情報など多岐にわたる。そのため,使用者は労働者の個人情報管理について幅広く留意しなければならない。本稿では,大きく採用時,在職中,退職時に分けて労働者の個人情報の管理について解説する。

競争法・独禁法 情報法

競争法と個人情報
山下誉文

個人情報と競争法との関係では,デジタル・プラットフォーム事業者への規制が関心を集めているが,同事業者でなかったとしても,委託先等との取引において,注意しなければならないルールもある。本稿では,個情法と競争法が交錯する場面における実務上の留意点について説明する。

争訟・紛争解決 情報法

刑事法と個人情報
眞木純平

事業者は,その保有・管理する情報が漏えいする危険に常にさらされている。特に,従業者や第三者が意図的に情報を漏えいさせた場合には,捜査機関への告訴・告発などを含め適切な対応をとる必要がある。本稿では,情報漏えいが発生した場合の刑事的な対抗手段について,個人情報データベース等不正提供罪を中心に概観する。

地平線
「想定外」を「想定内」に
企業法務総合

明司雅宏

2024年は,元日の能登半島沖地震,羽田空港での飛行機事故と立て続けに大きな災害が発生した。ある調査会社の調べでは,2023年には世界で398件の大規模自然災害が発生し,3,800億米ドルの経済損失をもたらしたといわれている。

Trend Eye
訴訟ファンドの海外動向と日本における可能性
国際 争訟・紛争解決

小原淳見・杉本花織

日本企業の海外取引が増える昨今,日本企業が海外企業とトラブルになる事例も増加している。その際の紛争解決手段として,海外訴訟および国際仲裁がある。円安の影響も相まって手続費用が大幅に高騰するなかで,手続費用を第三者に負担してもらい,認容額または和解による支払額の一定割合(通常1割~4割程度)を報酬として支払うという方法(第三者資金提供:Third Party Funding。訴訟ファンドともいい,以下「TPF」という)の活用が広がりをみせている。

特集2
契約書レビュー トレーニング
日々の契約書レビューにおいて,一見問題なさそうでも,よく見ると細かいミスが残っていたり,自社にとって不利になる文言が紛れ込んでいたりすることはないでしょうか。本特集で,契約書中の修正すべき点や修正が望ましい点について,契約書例を示しつつトレーニングしてみましょう。
本特集はすべて見開き1頁で構成されており,左頁に修正ポイントのある契約書例,右頁にその解説となっています。まずは,左側の契約書例のどこが修正ポイントなのか,検討してみてください。
企業法務総合

業務委託契約書
齋藤祐介

本稿は,一定の成果物を納品する義務を負う「請負型」業務委託契約書について,気がつかないうちに自社に不利な契約内容で締結してしまった,契約内容が曖昧だったために後々トラブルが発生してしまったということが起きないように,特に注意してレビューすべきポイントについて解説するものである。
まず,委託側・受託側いずれの立場においても特に注意すべきポイントを解説する。

企業法務総合

秘密保持契約書
幅野直人

秘密保持契約書(NDA,CA)は,企業が締結する最も典型的な契約類型の1つであり,企業の法務担当者にとっても弁護士にとってもレビューの機会は多いだろう。本稿では,このような秘密保持契約書を題材とし,明らかに誤っている箇所,または,誤りとまではいかないまでも不適切な箇所が含まれた契約書の例を紹介し,どの点が誤りまたは不適切なのか,また,それをどのように修正すべきなのかについて解説する。

企業法務総合

取引基本契約書
官澤康平

取引基本契約は,業務委託,システム開発,OEMに関するものなどさまざまな類型が存在する。ここでは,継続的な商品の売買の取引基本契約を取り上げる。取引基本契約書①~③を通じて同一の契約書であり,買主で製造している3Dプリンタの部品の一部を継続的に購入するための売買基本契約で,売主である株式会社ABCから提示されたものになる。以下の契約書について,形式面で指摘したほうがよいと考えられるポイントはどこか。

企業法務総合

販売店契約書
豊島 真

本稿のテーマは販売代理店契約である。以下はある契約書(以下「本契約書」という)の一部だが,いくつか誤りないし不適切な箇所がある。おわかりになるだろうか。以下では,特に注意してレビューするべきポイントを解説する。

企業法務総合

人材紹介契約書
小山博章・柏戸夏子

人材紹介会社を利用するにあたっては,同社との間で締結する人材紹介契約書を事前に締結するが,規定ぶりによっては,トラブルの元になったり,思わぬ不利益が生じたりする場合もありえる。本稿では,それらを回避するための契約書の定め方を紹介する。

実務解説
調達取引の価格交渉における独禁法・下請法の留意点
――労務費ガイドラインをふまえて
競争法・独禁法

雨宮 慶

2023年11月に公正取引委員会が公表した労務費ガイドラインは企業に大きなインパクトを与えた。そこで同ガイドラインを含む価格転嫁に関する近時の動向をふまえ,主に発注者の視点から価格交渉に関する独禁法・下請法上の留意点を検討する。

企業法務総合 サステナビリティ・人権

株主総会準備・運営におけるダイバーシティ
――障がい者,外国人,LGBTQをめぐる視点
水田 進・磯野真宇

近年,企業経営においてDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)が注目されているが,ダイバーシティの観点は企業内だけではなく企業の対外的な活動においても重要なものである。そこで本稿では,株主総会において,ダイバーシティの文脈で話題となることが多い障がい者,外国人,LGBTQ等に関し実務上論点となりうる点について解説する。

企業法務総合

経済安全保障推進法
基幹インフラ事前審査制度の運用開始と実務上のポイント
宮岡邦生・工藤恭平・森 琢真

5月17日,経済安全保障推進法が定める「基幹インフラ役務の安定的な提供に関する制度」の本格運用が開始された。同制度は,基幹インフラサービスの提供に用いられる設備等のサプライチェーンを国が審査する制度であり,インフラ事業者はもちろん,インフラ設備の導入・維持管理にかかわる事業者に大きな影響を及ぼす。本稿では,本制度の概要と実務上の対応のポイントを解説する。

民法・PL法等

令和6年民法改正要綱案の解説
――離婚後に父母双方を親権者と定める場合の規律等
大和田 準

2024年1月,法制審議会家族法制部会は,未成年者の父母が離婚をするときはその一方を親権者と定めなければならないとする民法の規律を改め,離婚後も双方を親権者と定めることができるようにする民法改正要綱案を取りまとめた。本稿では,この要綱案を解説する。

サステナビリティ・人権

環境関連法令・条例の最新動向と実務への影響
猿倉健司

ESG分野における環境関連規制は,法令・規則・通知・ガイドラインのほか,自 治体ごとの条例・規則などが存在するが,近時頻繁に改正を繰り返している。実務的な運用等もふまえて対応することが求められ,必要に応じて行政・自治体との協議が必要となる。

企業法務総合

「重要な契約」として開示が必要となる合意・特約
峯岸健太郎・山口亮子

企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という)の改正により,①企業・株主間のガバナンスに関する合意,②企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意および③ローン契約と社債に付される財務上の特約について開示が義務づけられることとなり,これらの締結・変更等が臨時報告書の提出事由とされることとなった。本稿ではかかる改正をふまえ,開示対象となる「重要な契約」とは何かを解説することとする。なお,改正の全体像は【図表】のとおりである。

企業法務総合

刑事手続のデジタル化と調査・情報提供対応への影響
角田龍哉

2024年2月15日,令状手続の電子化や新たな電磁的記録の提供命令の創設等を含んだ刑事手続のデジタル化に向けた要綱骨子が採択された。本稿では,要綱骨子の概要とともに,国内外のデータを目的とした捜査・調査や,データを管理等する事業者の対応に与えると見込まれる影響を解説する。

連載
【新連載】
労務コンプライアンス最前線
――働き方改革2.0に向けて
第1回 近時の法改正状況と2024年問題
労働法

松本貴志

2023年5月12日に,いわゆるフリーランス保護法が公布されたことは,いまだ記憶に新しい。その後も,2024年4月1日より,これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた運送業や建設業等にも同規制の適用が開始され,また労働基準法施行規則等の改正に伴う労働条件明示事項の追加や裁量労働制の制度変更など,昨今の法改正は目まぐるしい。
また,「脳・心臓疾患の労災認定基準」の改正(2021年9月14日)や「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」の改正(2023年9月1日)も実務上影響を与える。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

2024年3月・4月の法務ニュースを掲載。

■公取委,「コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書」を公表(独禁)
■環境省,「第六次環境基本計画(案)」を公表(環境)
■「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」の国会提出(金商法)
■文化庁,「AIと著作権に関する考え方について」を公表(知財)
■中国,米国インフレ抑制法をWTO提訴(通商)
■消費者庁,内部通報制度の実効性に関する報告書を公表(コンプライアンス)
■金融庁,四半期報告書制度廃止に関する関係政令等改正案のパブリック・コメント結果を公表(金商法)
■令和6年度税制改正が成立(税務)
■国税庁,買戻条件の付された種類株式について買戻しが行われた場合における譲渡法人の税務上の取扱いについての文書回答事例を公表(税務)
■国交省,「建設用3Dプリンターを利用した建築物に関する規制の在り方について(案)」に関する意見募集を開始(建築)
■SSBJ,サステナビリティ開示基準の公開草案を公表(ファイナンス)
■文化庁,「AIと著作権に関する諸外国調査報告書」を公表(知財)

ほか

民法・PL法等

最新判例アンテナ
第72回 債務者の第三債務者に対する預金債権と差押命令に表示された差押債権の同一性が識別できない事案において,当該差押命令の効力は第三債務者への送達時の預金債権に及ばないと判断された事例
(名古屋高金沢支判令5.8.23金判1685号16頁)

三笘 裕・杉本直之

裁判所は,債権者Xと債務者Aとの間で作成した執行受諾文言付公正証書に基づき,Aの第三債務者Yに対する預金債権等を差し押さえる旨の差押命令(以下「本件差押命令」という)を発し,同命令正本はYおよびAに送達された。Xの代理人はこれに先立ち,Aの生年月日,前住所および前々住所も申出書に記載して弁護士法23条の2第1項に基づく照会の申出をし,Yから,Yの支店にA名義の預金がある旨の回答を受けていたが,差押命令の申立書および同命令正本の当事者目録には,Aの現住所と債務名義上の住所が記載されるのみで,Aの前住所,前々住所および生年月日は記載されていなかった。

競争法・独禁法 テクノロジー・AI

不正調査実務とフォレンジック
第4回 実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラム
戸田謙太郎・中津川 望

独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用の重要性に鑑み,公正取引委員会が2023年12月21日に公表した「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド」の概要を紹介するとともに,本ガイドにおいて言及されている独占禁止法に関する監査について,デジタルフォレンジック技術の活用を念頭に紹介する。

争訟・紛争解決

責任追及を見据えた従業員不正の対処法
最終回 業務外での犯罪行為
木山二郎・秋月良子・桒原宏季

従業員が業務外で犯罪行為を行った場合,企業が社会的責任を追及されたり,被害者から損害賠償請求を受けたりすることがありうる。そのため,企業としては,迅速かつ的確な対応を講じることが重要となる。他方,業務外での行為であることから,企業は当該行為の有無や内容を把握する手段が限られ,また,場合によっては,企業として,従業員に対する責任追及を検討しなければならない。そこで,本稿では,従業員の業務外での犯罪行為に関し,企業がとるべき対応について取り上げる。

テクノロジー・AI

AIガバナンス相談室
第5回 開発事業者編②
岡田 淳・羽深宏樹・飯野悠介・ 佐久間弘明

連載後半では,AI開発事業者の目線でのガバナンスについて議論してきた。前回は開発事業者編①として,開発事業者にとってのAIリスクのポイントと課題,そしてルール作りのポイントについて検討した。今回はそれに続いて,開発事業者がどのような組織体制を整備すべきか,また技術的にどのような措置をとってリスク対策を行うべきかについて論じていく。AIの開発・運用において常に責任を問われうる立場となる開発事業者は,イノベーションとガバナンスの両立のため,環境変化に対応できる柔軟なガバナンス体制を作り上げることが望ましい。

企業法務総合

Introduction 宇宙ビジネス
最終回 宇宙ビジネスと宇宙法の未来
北村尚弘

これまで9回にわたり,宇宙ビジネスとそれに関連するルールについて紹介してきた。最終回となる本稿では,これまでの連載を振り返るとともに,本連載では紹介しきれなかったトピックについて簡単に紹介する。

企業法務総合

いまでも覚えています あの人の「法務格言」
第10回 "Use Your Brains"
宮崎裕子

2007年,私は,法律事務所の弁護士から社内弁護士に転身しました。法律事務所では複数の企業からの相談に応じアドバイスを提供していました。「社内弁護士になったら,所属企業1社だけがクライアントで,そのクライアントにアドバイスをすればよいのだろう」私は,社内弁護士の役割について,入社前にこのように漠然としたイメージを持ち,具体的なことは入社後に学ぼうと考えました。

企業法務総合

ライアン・ゴールドスティンの"勝てる"交渉術
第4回 「事実」を交渉のベースにしよう
ライアン・ゴールドスティン

ある会員制バーに行ったときのこと。窓際のテーブルに座ろうとすると,店員が近寄ってきて「お客様,困ります」と言う。理由は,私の着ていた襟なしのシャツがドレスコードに反するからだとか。ジャケットを着用していたから問題ないと思ったが,「今後は気をつけるから,今日は認めてもらえないだろうか?」と丁寧に伝えた。ところが,「ルールはルール。あなたは店には入れません」と取り付く島もない。
やや不愉快な思いで店内に目をやると,襟のないシャツを着た女性を見つけた。それを指摘すると,「次からはドレスコードを守ってください。どうぞ」と私を席に通した。
今回は,交渉の「武器」となる「事実」について考える。

M&A

「周辺学」で差がつくM&A
第8回 スタートアップ─バリュエーション編─
山本晃久・松本祐輝・磯田将太

本連載の第2回~第4回ではM&Aにおけるバリュエーションの一般論を取り扱ったが,スタートアップを対象とするM&Aにおいては,スタートアップという企業の特性上,多くの点で特別の考慮をする必要がある。そこで本稿ではスタートアップを対象とするM&Aにおけるバリュエーションの考え方を整理し,次回,スタートアップを対象とするM&Aにおける法務の観点からの留意事項を整理することとする。

企業法務総合

悔しさを糧に――学べば開ける☆
第4話 和菓子(豆大福+さくら餅+おはぎ)×3=???
木山泰嗣

弁護士としての実働から通算して20年を超えた税法学者が,税務の仕事に限らず,学生・受験生のころに経験したエピソードを挙げ,自分の思うようにいかない現状(=悔しさ)を糧に,どのように学び,どんな活路を開いてきたのかを語ります。

会社法

「株式法務」最新Q&A――株主総会,コーポレート・ガバナンスの現場対応
第2回 基準日と剰余金の配当時期
飯塚 元・西口阿里沙

【設例】X社は,剰余金配当の権限を株主総会とする上場会社であり,毎年3月31日を基準日として6月25日ごろに定時株主総会を開催し,6月26日ごろを効力発生日および配当金の支払開始日と設定して配当している。本年も定時株主総会に剰余金処分議案を上程するため,準備を進めていた。ところが,5月末日に,監査法人より連絡があり,配当原資がないためこのまま配当すると分配可能額規制違反となることが発覚した。X社としては,減配や無配とする選択もあるが,すでに公表済みの配当金を支払いたいと考えている。
なお,X社の状況では,配当原資を確保するためには,資本準備金を取り崩す必要があった。

Q1 X社は,6月26日までに配当原資を確保するための手続を完了させたうえで,6月26日を効力発生日として配当したいと考えている。法的問題はあるか。
Q2X社としては,6月26日の配当が難しい場合,8月1日に配当したいと考えている。法的問題はあるか。

国際 争訟・紛争解決

ストーリーでわかる 国際仲裁の基本
第2回 仲裁人の選任等
伊藤 遼・魚住 遼

日本の化学品メーカーである甲社は,米国の化学品メーカーである乙社から,乙社の日本子会社であった丙社の発行済株式すべてを譲り受けた。しかし,株式譲渡実行後,丙社の工場敷地内に特定有害物質が含まれていることが判明したため,2024年4月,甲社は,株式譲渡契約書に定められた仲裁条項に基づき,日本商事仲裁協会(JCAA)に対して,乙社を相手方とし,表明保証違反を理由とする補償を求める仲裁を申し立てた。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験® 3級模擬試験問題
企業法務総合