雑誌詳細

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2024年5月号

2024年3月21日発売号   1,800 円(税込)

特集1

秘密保持契約のベストプラクティス

特集2

2023重要判例まとめ・後編
(知的財産権法ほか)

特集1
秘密保持契約のベストプラクティス
秘密保持契約(NDA)は,法務が最も多く接する契約類型のひとつ。定型的にこなせばいいし,トラブルになることも少ない......。そんなふうに捉えられることもあるようです。 でも,"たかがNDA,されどNDA"。必要な規定を,適切かつスピーディに盛り込むにはどうすればよいか? 
本特集では,とりわけ効率化の観点から,NDAの最適解をさぐります。事業部と密なコミュニケーションをとり,契約交渉を円滑に進め,さらにはその先のリスク管理までを見据えたベストプラクティスをご紹介!
企業法務総合

秘密保持契約の心得
鮫島正洋

秘密保持契約(NDA)はあらゆるビジネス取引の出発点となる契約である。NDAを適時に締結し,しっかりとした情報管理を行うことが,ビジネスを成功に導くうえでの要諦であるといっても過言ではない。
本特集ではさまざまな角度からNDAやそれにまつわる関連法制,情報管理のあり方について論じるが,まず本稿においては,後の先生方によって解説される契約条項ノウハウに深く立ち入らない範囲で,NDAを締結するうえでの基本となる考え方について述べることとする。

企業法務総合

NDA交渉における悩みどころと具体的対応
酒井智也

本稿では,秘密保持契約(NDA)における契約交渉の基本的な考え方を整理し,交渉の前提として事業部門といかなるコミュニケーションをとるか,実際の交渉の落としどころをどこに見つけていくか等,実務上の悩ましいポイントについてまとめる。なお,秘密保持契約書上,よく論点となりうる秘密情報の範囲等については,さまざまな文献で解説されているところ,これらの解説は本稿では割愛する。

企業法務総合

秘密保持契約の規定例と締結後管理のポイント
松永章吾

秘密情報授受のリスクについての考えや,締結した秘密保持契約(NDA)の管理を実際に行っているかどうかは,法務部や知財部を擁する企業であってもまちまちである。NDA締結後の管理を実践している企業は,契約管理に多大な人的物的コストがかかることを熟知しており1,自社・他社秘密情報の管理の対象を絞ろうとするし,無用なNDAを締結しないことも意識する。特に契約前の評価期間においては,自社が売り込む側であっても,調達する側であっても,秘密情報の授受やNDAの締結を禁止している日本企業も最近では珍しくなくなった。これは,NDAを取引前の挨拶状のように捉えて締結を求め,締結後の契約管理を行っていない企業とは対照的である。
本稿では,前者の視点で,自社秘密情報の漏えいや目的外利用,他社秘密情報の自社秘密情報への混入(コンタミネーション)を防止するための条項のポイントと規定例を検討する。

企業法務総合 国際

英米法の理解をベースとした英文NDAの考え方・作り方
飯島 歩

「英文契約書」の語は,単に「英文で書かれた契約書」との意味を超えて,「英語圏の法制度や文化を背景に作成された契約書」といった意味をもつことが多い。また,英文契約書は,多くの場合海外企業との国際契約に用いられる。そのため,英文NDAのドラフティングにおいては,英文契約書の背景にある英米法の文化を理解し,国際契約に特有の留意点を理解しておくことが重要である。

企業法務総合

営業秘密防衛の観点からみたNDA作成のポイント
田中勇気

ふだん,NDAについては,かなり前に作成された自社のひな形や前例を使い回していたりすることなどが少なくないだろう。そのため,NDA作成については,「お決まりのルーティーン」でしかないものと捉えられているかもしれない。しかしながら,そのような自社のひな形なり前例なりが,特に営業秘密防衛の観点から本当に実効性のあるものになっているのか,本稿を通じてあらためて確認されたい。

企業法務総合

営業秘密漏えいの典型的類型と初動対応
森本大介

近時,営業秘密の漏えい事案は増加の一途をたどっているところ,企業にとって営業秘密の漏えいは一大事であり,その対応は場合によっては企業の命運を分けるといっても過言ではない。そして,営業秘密漏えい事案においては,初動対応がきわめて重要であるが,漏えいが発覚した後に対応を検討するのでは遅く,万が一営業秘密が漏えいした場合における初動対応のフローをあらかじめ整理しておくことが重要である。そこで,本稿では,営業秘密漏えいの典型的類型と初動対応につき,概観する。

企業法務総合

営業秘密漏えい確認後の実務対応
森本大介

「営業秘密漏えいの典型的類型と初動対応」では,営業秘密漏えい時の初動対応および社内調査の進め方について検討したが,営業秘密漏えい事案では,漏えい者や営業秘密の取得者に対するアクションを含めさまざまな対外対応を行う必要がある。もっとも,営業秘密漏えい事案においては,証拠収集が必ずしも容易ではなく,訴訟提起をする場合にもさまざまな論点があるため,転ばぬ先の杖として,営業秘密の漏えいがあった場合の対応方法について理解しておくことが重要である。そこで,本稿では,営業秘密の漏えいが確認された後の実務対応につき,概観する。

企業法務総合

事業部と進めるNDA関連業務の効率化
古澤弘二

秘密保持契約(NDA)は,多くの企業において,各種取引の初期検討段階から締結される契約であるため,法務部員の契約審査業務の対象としても多くを占める傾向にある。一方で,法務部員の人手不足や高付加価値業務への工数シフトのために,NDAの審査業務の効率化を課題としている企業も少なくないと聞き及んでおり,当社も同様の課題を抱えている。本稿では,その解決のために当社が進めている取組みを紹介する。

地平線
企業と性暴力のゆくえ
コンプライアンス

上野千鶴子

1999年の改正均等法で,セクシュアルハラスメントの予防と対応が使用者義務になって以来,セクハラをめぐる企業の対応は180度転換した。それまではセクハラ研修は被害者になる蓋然性の高い女性社員が対象だったが,それ以降は加害者になる蓋然性の高い管理職以上の男性社員が研修の対象となり,セクハラ研修業界はにわかに隆盛した。さらにそれまでは企業のリスク管理は,被害者を孤立させ退職に追い込むことだったが,それ以降はできるだけ早く加害者を切ることがリスク管理となった。2018年の元財務次官福田淳一氏のセクハラ疑惑への対応はセオリーどおりだった。財務省は本人認否もとらないまま,依願退職を認めたのだ。それだと退職金は満額支払われるとあって世論の怒りを買い,後から調査委員会を立ち上げて事実確認のうえ,退職金減額の懲戒処分にしたものだ。

Trend Eye
ホストクラブ等における不当な勧誘の法的問題
消費者関連法

森中 剛

消費者庁は,悪質なホストクラブ等における不当な勧誘により,利用客が高額の飲食代金を請求されるトラブルについて,2023年11月30日,上記のタイトルの周知文書を発出し,このような契約は,いわゆる「デート商法」に該当し,要件を満たせば,消費者契約法により取り消すことができることを明確にした。

特集2
2023重要判例まとめ・後編
(知的財産権法ほか)
前号に引き続き,2023年に出された特に重要な判例の総まとめを行います。後編となる今回も,知的財産権法や労働法,個人情報保護法関連の事案等,重要な判例が目白押しです。今回の9判例も確認することで,2023年中の重要判例マスターを目指しましょう!
知財

特許法/コメント配信システム事件
(知財高判令5.5.26裁判所ウェブサイト)
上野潤一

本件は,「コメント配信システム」の発明にかかる特許に関し,特許権者であるX(原告・控訴人)が,インターネット上のコメント付動画配信サービスを運営するY(被告・被控訴人)らに対し,米国内にあるサーバから日本国内のユーザ端末にファイルを送信する行為がYのシステムの「生産」に該当し,特許権を侵害すると主張して,Yのファイルの日本国内のユーザ端末への配信の差止めや損害賠償を求めた事案である。

知財

商標法/ルブタンレッドソール事件
(知財高判令5.1.31裁判所ウェブサイト)
田村祐一

Xは,色彩を付する位置を女性用ハイヒール靴の靴底部分として指定した赤色の色彩のみからなる商標(以下「本願商標」という)を,25類「女性用ハイヒール靴」において商標出願した。特許庁は,本件商標は,①商標法3条1項3号に該当するものであり,また,②商標法3条2項に規定する要件を具備しないとの理由で,拒絶査定を行い,登録を認めなかった。そのため,Xは,当該拒絶査定に対し拒絶査定不服審判を申し立てたが,特許庁は,請求不成立の審決を下したため,当該審決の取消しを求め本訴が提起された。

知財

著作権法/新聞記事の社内イントラでの共有について損害賠償が認められた例
(知財高判令5.6.8裁判所ウェブサイト)
日野英一郎

本件は,新聞社であるXが著作権を有する新聞記事について,Yがこれらの画像データを作成して社内のイントラネット上にアップロードしてY従業員等が閲覧できる状態としたことが,Xの著作権を侵害すると主張して,Xが,Yに対し,不法行為にもとづく損害賠償請求を求めた事案に関するものである。

情報法

個人情報関連/市情報教育ネットワーク不正アクセス事案
(前橋地判令5.2.17〔D1-Law.com 28311064〕)
井口加奈子・松尾宗太郎

本件は,X市がY(東日本電信電話株式会社)との間で,X市情報教育ネットワーク(以下「X・ENET」という)のデータセンターの移管設計および構築業務に係る委託契約(以下「本件委託契約」という)を締結したところ,その後,何者かが,X・ENETの教育資料公開サーバにバックドア(ソフトウェアやシステムの一部として利用者に気づかれないよう秘密裏に仕込まれた正規の利用者認証やセキュリティ対策などを回避してこっそり遠隔操作するための窓口)を設置し,さらに,何者かが,上記のバックドアを利用して,上記のサーバ経由で内部ネットワークに侵入するようになり,不正ツールを保存し,さらに,何者かが,多数の個人情報が保存されたファイル共有サーバから,各種ファイルを圧縮して教育資料公開サーバに収集,保存するなどしたこと(以下「本件不正アクセス」という)により,多数の個人情報が流出した可能性が高いことが判明したことを受けて,X市がYに対し,債務不履行または不法行為にもとづき損害賠償金等の支払いを求めた事案である。

競争法・独禁法

独禁法/インクカートリッジの仕様変更と抱き合わせ販売等
(大阪地判令5.6.2裁判所ウェブサイト)
石井輝久

事案の概要は,プリンターメーカーが,インクカートリッジのインク残量データを初期化できない仕様としたこと(ただし,プリンター側で一定の操作をすれば使用することはできる)について,インクカートリッジの再生品を販売している事業者が,独占禁止法違反を理由に差止請求(独禁法24条)と損害賠償請求(不法行為)を行ったものである。

消費者関連法

消費者契約法/購入チケットのキャンセル・転売の禁止
(大阪地判令5.7.21裁判所ウェブサイト)
坂野吉弘

本件は,適格消費者団体である原告が,テーマパークを運営する被告に対し,インターネットを経由したチケット購入に適用される利用規約(以下「利用規約」という)中の,⑴一定の場合を除き購入後のチケットのキャンセルができない旨の条項(以下「本件条項①」という)が,消費者の利益を一方的に害する条項に該当するなど消費者契約法(以下「法」という)10条および法9条1号に当たるとともに,⑵チケットの転売を禁止する旨の条項(以下「本件条項②」という)が,同じく法10条に当たると主張し,法12条3項にもとづく差止めを求めた事案である。

労働法

労働法/正社員と定年後再雇用社員との基本給格差の不合理性
(最判令5.7.20裁判所ウェブサイト)
酒井夕夏

X1,X2は,自動車学校の経営会社Yに教習指導員として長年勤務したのちに定年退職し,Yとの間で定年後再雇用有期雇用契約を締結し,嘱託職員として勤務を開始した。Xらは,嘱託職員となって以降も,従前と同様に教習指導員として勤務し,再雇用にあたり主任の役職を退任したことを除き,定年退職の前後で,その業務内容および当該業務に伴う責任の程度ならびに配置変更の範囲に相違はなかった。Xらは,Yに対し,正職員との労働条件(基本給,賞与等)の相違が旧労働契約法20条に違反するとして,差額賃金または不法行為にもとづく損害賠償を求めて提訴した。

労働法

労働法/運送会社における時間外労働賃金の抑制手法としての割増賃金の計算方法の否定
(最判令5.3.10判時2571号95 頁)
松永博彬

一般貨物自動車運送事業者であるYは,日々の業務内容に応じて(たとえば出発日1日8,000円など)ドライバーの月ごとの賃金総額を決定し,賃金総額から基本給と基本歩合給を差し引いた額を時間外手当としていた(以下「旧給与体系」という)。

税務

税務/租税回避の目的・実態がない場合の外国子会社合算課税制度の適用に係る委任規程の解釈
(最判令5.11.6裁判所ウェブサイト)
武田涼子

内国法人であるX銀行(納税者・被上告人)が,英領ケイマン諸島の2つのSPC(特別目的会社)を通じて資金調達した劣後ローンにつき当該SPC(以下「本件子会社」という)に支払った利息約84億円が,いわゆるタックス・ヘイブン対策税制(以下「CFC税制」という)の適用対象になるかが争われた。

Lawの論点
外国人の技能育成に関する新しい視点
――国際労働基準をふまえた問題点と今後の課題
労働法 国際

熊谷謙一

わが国の技能実習制度をめぐり,本年2月9日に,政府が新たな「育成就労」制度の創設を決定したことで,今後の展開が注目されている。また,ILO(国際労働機関)が,移民労働に関する条約・勧告をふまえた諸対策を進めるとともに,「質の高いアプレンティス制度」に関する勧告を採択したことも,新しい視点を与えている。それらをふまえ,外国人労働者の技能育成に関するわが国での問題点と今後の課題を示す。

実務解説
海外法務ニュース2024
国際

石田雅彦

2023年は,人権や環境問題,AI等の新技術をめぐる規制に関する議論の高まり,アクティビズムと同意なき買収の活性化など,国際企業法務と国内法務の垣根がどんどん低くなっていく方向にあることを示唆する1年であった。今後もこの流れが続くことが予想されるなか,本稿が,今後の国際企業法務,ひいては国内企業法務の動向を理解するうえでお役に立てれば幸いである。

情報法

漏えい等事案に関する個人情報保護委員会の動向と実務上の要点
小川智史

個人情報の保護に関する法律(以下「個情法」という)の令和2年改正により,漏えい等事案発生時における個人情報保護委員会(以下「個情委」という)への報告および本人への通知が義務づけられた(個情法26条)。令和2年改正法の施行以降,漏えい等事案の報告件数は増加しており1,事案の集積を通じて,漏えい等事案に係る新たな論点や課題が顕在化している。個情委も,個人情報の保護に関する法律施行規則(以下「規則」という),個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(以下「ガイドライン通則編」という),「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(以下「Q&A」という)の改正等によりこれらの論点・課題への対応を行っている。本稿では,昨今の漏えい等事案に関する個情委の動向の振り返りつつ,これをふまえた実務上の対応を解説する。

労働法 M&A

M&A取引後に生じる余剰人員の雇用維持策
野中健次

2023年8月31日,そごう・西武の親会社であるセブン&アイ・ホールディングスは,そごう・西武労働組合のストライキにもかかわらず,取締役会でそごう・西武の全発行株式を投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」に譲渡することを決議した。今後,同ファンドは,ビジネスパートナーのヨドバシホールディングスと,そごう・西武の企業価値の最大化に努めることになる。池袋本店については,一部のフロアにヨドバシの家電量販店を出店することで,デパートの売り場が縮小するため,そごう・西武には余剰人員が生じることが予想される。
本稿では,まずは,労働組合について概観し,M&Aに伴う余剰人員の問題を,買収企業が労働組合からの理解・協力を得て行うワークシェアや雇用維持のための受け皿となる新たなM&A取引の実施例を紹介する。迅速にM&Aの果実を得るために労働組合と協同し,成果として雇用維持につながることへの参考となれば幸いである。

会社法

電子提供制度適用後の実務課題と株主からの書類閲覧等請求対応
森田多恵子・江口大介

株主総会資料の電子提供制度は,昨年3月1日以後に開催される株主総会から適用が開始され,各社それぞれの対応が行われたところ,近時の株式市場においていっそう活発化されているアクティビストによる株主提案が行われた場面をふまえ委任状勧誘との関係性の整理が必要になる場面があると考えられる。また,そのような場面では,株主・投資家から書類閲覧等請求がなされ,対象会社の実務担当者において,対応を迫られる場面が多くあるものと考えられる。以下では,このような観点から,2023年11月17日に公表された「株主・投資家への対応を巡る実務課題」をふまえた実務上の留意点等の説明を行う。

企業法務総合

2023年サーベイ結果から解き明かす
「指名ガバナンスと取締役会の現在と未来」
久保克行・内ヶ﨑茂・見城大輔・早坂勇祐

サステナビリティ経営に貢献する,指名ガバナンスと取締役会の構築に向けた取組みが始まる。本稿では,2023年指名・報酬ガバナンスサーベイから日本企業の指名ガバナンスと取締役会の実態とあるべき姿を分析する。

連載
LEGAL HEADLINES
企業法務総合

森・濱田松本法律事務所編

1月16日,金融庁は,「金融・資産運用特区」における具体的な施策を検討する観点から,地方公共団体から国に対する提案・要望の募集を開始した。

企業法務総合

考える法務――基本と初心とささやかな試み
最終回 法務は伝え方が9割
大島忠尚

第1回は「株式会社を代表する者」(2023年6月号)
第2回が「次は勝つ」(同年8月号)
第3回「委任状」(同年10月号)
第4回「公務員」(同年12月号)
第5回「しない約束」(2024年2月号)
いずれもビジネス法務では,あまりみたことがないタイトルと題材だったと思いますが,みなさんに「考える場」を提供できたものと自負しています。ここまでお付き合いいただいたみなさんに感謝しつつ,最終回を始めさせていただきます。今回はレクチャー風です。

会社法

最新判例アンテナ
第70回 吸収合併消滅株式会社の株主が,吸収合併契約を承認する株主総会に先立ち,会社に議決権行使に係る委任状を送付した行為が,会社法785条2項1号イの反対通知に該当すると判断された事例
(最決令5.10.26裁判所ウェブサイト等)
三笘 裕・金田裕己

非上場会社であるA社は,株主であるXに対し,自社を消滅会社とする吸収合併(以下「本件吸収合併」という)に係る吸収合併契約の承認を決議事項(以下「本件議案」という)とする株主総会(以下「本件総会」という)の招集通知を発するとともに,本件総会に出席しない場合には,招集通知に同封された委任状用紙を用いて委任状を作成し,返送するように議決権の代理行使を勧誘した。

国際 争訟・紛争解決

アメリカ民事訴訟実務の基礎と留意点
最終回 訴訟を回避するための英文契約書
――ボイラープレート条項を中心に
奈良房永・笠継正勲

日米の企業間の契約では,ビジネスの取引条件を定めた実質的な条項に傾注することが多いため,英文契約書に共通してみられるボイラープレート条項(一般条項)はあまり議論されることなく合意に至るケースが多い。しかし,訴訟リスクを最小化し紛争が生じた場合のセーフガードを担保するためには,ボイラープレート条項の基本的な目的や機能を十分に理解する必要がある。最終回では英文契約書のボイラープレート条項を中心に解説する。

国際 テクノロジー・AI

海外契約条項の「知らない世界」
最終回 AIと契約条項
コリン・トレハーン・辰野嘉則

急速に発展・拡大するAI市場のもと,企業にとってAIに関連する契約を締結する機会は増加しており,今後さらにその傾向が強まると予想される。本稿では,AI特有の論点を紹介するとともに,特にポリシー遵守義務条項や法令遵守義務条項といった,しばしば軽視されがちな条項が,AIとの関係で重要となりうる点について解説する。

企業法務総合

ライアン・ゴールドスティンの"勝てる"交渉術
第2回 徳を積みながら得をしよう
ライアン・ゴールドスティン

令和6年大相撲初場所。琴ノ若,横綱照ノ富士はともに13勝2敗を挙げ,賜杯のゆくえは優勝決定戦へと持ち込まれた。残念ながら優勝は逃したものの,大健闘して多くのファンを魅了した琴ノ若関。父である元関脇琴ノ若を超え,大関に昇進し,祖父である横綱琴櫻に迫る大活躍をみせたにもかかわらず,彼は数百人にも及ぶファンが集う佐渡ヶ嶽部屋の千秋楽パーティで,開口一番「大変申し訳ありません」と謝罪した。
初めて日本に留学した時から私は相撲が大好きだ。自らの肉体を鍛え上げ,気と技と力で勝負に挑む姿勢や勝利のインタビューには決まって「自分の相撲をとれた」ことが勝因であると答えるのが好きなのだ。実は,この姿勢は訴訟や交渉において非常に重要なのである。
今回は日常に潜む「勝負」にまつわる「あるある」を共有しながら,交渉時における心構えについて考える。

企業法務総合

悔しさを糧に――学べば開ける☆
第2話 ギプスの右腕と二刀流
木山泰嗣

ゼミ生に「先生って左利きだったんですね」といわれることがあります。話は,1985年に遡ります。掃除をさぼったことがバレて,原稿用紙に書いた反省文みたいなものを,クラスのみんなのまえで読んだことがあります。

サステナビリティ・人権

サプライチェーンの危機管理対応
第5回 危機管理のための対話,グリーバンス・メカニズムの構築
福原あゆみ

本連載では,サプライチェーンで生じた不正事案等に関する危機管理対応の要点について解説を行っている。第5回ではサプライチェーンを含むグリーバンス・メカニズムとステークホルダーとの対話について解説する。

テクノロジー・AI コンプライアンス

不正調査実務とフォレンジック
第2回 長時間労働・ハラスメント対応における証拠収集のポイント
那須勇太・篠原一生

近時の法改正等をふまえつつ,長時間労働やハラスメント事案に対応するうえで事実認定を行う際の実情を紹介する。また,これらの事案におけるデジタルフォレンジックを活用した効果的な証拠収集のポイントや企業として留意すべき事項についても解説する。

企業法務総合

いまでも覚えています あの人の「法務格言」
第8回 「人に負けない,コアになる分野を持て」
原口 亮

この言葉を初めて聞いたのは,今の会社に転職して1年強が経過したころに着任された部長からでした。当時は私もまだ社会人5,6年目で若手時代がそろそろ終わり,中堅に差しかかろうかという時分でした(余談ですが,私は風貌からか当時からベテランと勘違いされることが多かったです)。

国際 テクノロジー・AI

Web3とコンテンツ産業の最新法務
第7回 Web3に係る海外関連法規制
――NFTおよびDAOを中心に
稲垣弘則・神谷圭佑・堤 直久・ 田中大二朗

近時,日本の映画・アニメ・漫画業界を中心に,さまざまなコンテンツをNFTとして海外に展開するビジネスが検討されている。
このような現況をふまえて, 自民党web3PTは,2023年4 月1 日に公表した「web3ホワイトペーパー~誰もがデジタル資産を利活用する時代へ~」において,「web3を活用したわが国のコンテンツ産業の海外展開支援」を項目に掲げ,当該項目においてアート,スポーツ,ゲーム,映画,放送,アニメ,漫画,音楽等の幅広いコンテンツ産業を,国際的競争力を有する豊富かつ上質な知的財産を保有する日本にとって大きな強みとなる産業であると評価している。また,Web3にかかわるビジネスのなかでも,特にDAOに関する関心は近時著しい高まりをみせており, 同PTは, 同年11月以降,DAOをめぐる現状認識と事業者間の連携の促進を目的としたDAOルールメイクハッカソンを開催し,2024年1月に「DAOルールメイクに関する提言~我が国における新しい組織のあり方について~」を公表して,DAOをめぐる各論点と次のアクションを提示した。

知財 争訟・紛争解決

責任追及を見据えた従業員不正の対処法
第5回 ソフトウェアの不正利用等
木山二郎・渡邉 峻・馬場嵩士

従業員によるソフトウェアの不正利用等は,多くの企業において発生しており,権利者から多額の損害賠償を受けることもめずらしくはなく,企業の刑事責任も問題となりうる。そこで,本稿では,従業員によるソフトウェアの不正利用等について取り上げる。

企業法務総合

Introduction 宇宙ビジネス
第8回 宇宙旅行ビジネスに関する法規制
――日本における現状とその法的整理(前編)
松宮 慎・稲垣 航

2021年7月に,米国のヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)社およびブルーオリジン(Blue Origin)社による有人宇宙旅行が成功したことは,読者の記憶に新しいことだろう。同年には日本人実業家がわが国の民間人としては初めて,国際宇宙ステーションに滞在した。人々がこれまで飛行機に乗って海外旅行を楽しんでいたように,誰もがお金を支払いさえすれば宇宙旅行を体験できる時代が,民間企業による宇宙旅行サービスの提供により,すぐそこまでやって来ている。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験
第54回1級本試験問題
企業法務総合