雑誌詳細

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2023年7月号

2023年5月19日発売号   1,800 円(税込)

特集1

企業法務に関わる
「民法」重要論点ベスト30

創刊25周年記念特別座談会

変化の時代の企業法務
――総括とグランドデザイン【上】

特集2

スタートアップ法務の作法

特別企画

有事に備える!経済制裁条項の書き方と留意点

特集1
企業法務に関わる
「民法」重要論点ベスト30
私法の基本法である民法は,企業法務においても極めて重要な法律であり,その運用にあたっては,民法の各条文のほか重要な論点をあらかじめ把握しておくことが有益です。本特集は,弁護士法人梅ヶ枝中央法律事務所の弁護士が実務上重要と考える民法上の論点を30に絞り, 令和2年改正後の実務にも触れながら,Q&A形式による論点整理を試みるものです。4月から新入法務部員として奮闘されている方には「はじめの一歩」として,すでに実務で活躍されている方には「総復習」として,本特集をご活用いただけますと幸いです。
民法・PL法等

公序良俗違反の効力
犬飼一博

【設問】契約の内容は社会的に妥当である必要があるか。

民法・PL法等

権利能力なき社団
三好吉安

【設問】ある学校のPTAから学校設備設置の工事の依頼があった。PTAを契約当事者にして工事請負契約を締結してもよいか。

民法・PL法等

未成年者取消し
松久僚成

【設問】バイクの購⼊を申し込んできたAに対し,年齢を尋ねたところ,Aは19歳であると回答したため,Aにバイクを販売した。ところが,後⽇,Aの⺟親から,Aは実は未成年(17歳)であるとの理由で,バイクの売買契約の取消しと代⾦の返還を求められた。応じなければならないか。

民法・PL法等

民法94条2項類推適用の要件
犬飼一博

【設問】Aは,不動産を購入し登記移転を行ったが,実は,真の所有者は登記名義人兼売主のBではなくCであった。CはAに対して抹消登記を求めることができるか。

民法・PL法等

動機の錯誤
戀田 剛

【設問】A社の販売した製品甲について,顧客から,備えていると思っていた最新機能を備えていなかったとして甲の引取りと返金を求められた。甲は価格の安さがウリで,A社は,商品説明でも当該機能の存在は言及していないが,顧客の要求は法的に正当なのか。

民法・PL法等

表見代理における基本代理権の範囲
松久僚成

【設問】当社は,取引先と契約を締結したが,取引先は,「営業マンが勝⼿に契約書に押印した。営業マンには勧誘権限しか与えておらず,契約締結権限はない」と主張している。契約は無効になるのか。

民法・PL法等

消滅時効
犬飼一博

【設問】A社がB社に対して有する売掛債権について,いつまで請求ができるのか。

民法・PL法等

対抗要件
戀田 剛

【設問】A社は土地甲を地主Bから購入したが,Bが書類の準備に時間がかっていたため登記申請が遅れていた。後日,甲を訪れると不動産業者Cの売地である旨の看板が立っており,登記を確認すると,売買を原因としてCが権利者となった旨の登記がされていた。A社は,Cから甲を取り戻すことはできるのか。

民法・PL法等

民法415条安全配慮義務違反を理由とした損害賠償
松久僚成

【設問】⼯場で使⽤している機械に安全装置を付けていなかったため,従業員が作業中にその機械により負傷した場合,使⽤者は責任を負うのか。

民法・PL法等

契約交渉の不当破棄
二宮誠行

【設問】契約締結に向けて出張,打ち合わせを繰り返し,事前調査に費用もかけていたが,相手方から契約の締結を一方的に拒まれた。損害賠償を請求できるか。

民法・PL法等

履行補助者
戀田 剛

【設問】A社はBから工作機械甲を購入したが,Bが甲の配送を委託していた外注先Cが,A社に納品する途中で交通事故を起こして甲が壊れてしまった。CはBと資本関係もなく独立の事業者であるが,A社はBに対して責任を問えるか。

民法・PL法等

損害軽減義務
甲斐一真

【設問】賃貸している不動産について5年前から雨漏りが発生していたとして,賃借人から,この間の雨漏りによる室内の損傷や家電についても責任をとれと言われている。応じなければならないのか。

民法・PL法等

契約解除に伴う損害賠償請求の範囲
二宮誠行

【設問】A(買主)はB(売主)より商品を代金100万円で購入した。しかし,Bは納期までに商品を納品できなかったため,売買契約は解除された。現在その商品の時価は150万円となっているが,AはBに対して現在の時価を基準に損害の賠償を請求できるか。

民法・PL法等

履行不能の評価
森 瑛史

【設問】複数年単位で製造販売契約を締結している子供服の製造業者から,1年先まで自社での製造はできないが,他からまったく同一の子供服を調達して販売すると言われた。当社は契約を即時に解除できるか。

民法・PL法等

詐害行為取消権
氏家真紀子

【設問】個人事業主に対して売掛金があるが,お金がないと言って支払ってくれない。調べてみると,個人事業主に目ぼしい資産はなく,半年前に,自宅や別荘の不動産が財産分与の名目で妻の名義に変更されていたことが判明したが,詐害行為取消権を行使できないか。

民法・PL法等

譲渡制限特約が付された債権の譲渡
二宮誠行

【設問】譲渡制限特約が付された債権が譲渡された場合,債務者はどう対応すべきか。

民法・PL法等

将来債権譲渡と相殺
森 瑛史

【設問】当社が購入したA社の商品に粗悪品が含まれていたが,A社が交換に応じない。以前,A社から当社に対し今後発生する代金債権6カ月分をB社に譲渡した旨の通知を受領したが,損害賠償債権と代金債務とを相殺することによってB社に対抗できないか。

民法・PL法等

附随的義務・複数契約と解除
甲斐一真

【設問】ゴルフ場の利用権とセットで分譲マンションを販売していたが,ゴルフ場の開発を断念したところ,分譲マンションを購入した者から契約解除の申し入れがあった。①分譲マンションの販売契約中にゴルフ場の利用権の販売が組み込まれていた場合,②両者の販売が別契約であった場合のそれぞれにおいて,解除に応じなければならないのか。

民法・PL法等

主債務者の倒産と連帯保証人に対する履行請求
二宮誠行

【設問】主債務者が事実上倒産したため連帯保証人に対して訴訟を提起した場合,連帯保証人に対する債権の時効完成を阻止できるか。主債務者が破産している場合はどうか。

民法・PL法等

継続的契約の解消
森 瑛史

【設問】特段理由はなかったが,長年供給を続けてきた部品の販売先との基本契約の契約期間が満了するタイミングで更新しない旨の通知を送ったところ,販売先から更新拒絶は認められないとして新規発注があった。供給を拒んでもよいか。

民法・PL法等

定型約款該当性・適用要件
松久僚成

【設問】商品の配送を委託したA社の従業員が,配送中に故意に商品を廃棄してしまった。A社の「配送規約」には「A社は自らの帰責性に関係なくいかなる損害も賠償しない」との規定があるが,A社に損害賠償を請求できないか。

民法・PL法等

自殺物件の「契約不適合」該当性
日下部太一

【設問】Aはマンションの一室をBより賃借した。賃借するにあたってはBから特になにも告げられなかったが,後に賃貸借契約を締結する半年前に同室で居住者の自殺があったことが判明した。AはBに対して賃貸借契約の解除や損害賠償請求ができるか。

民法・PL法等

不動産賃貸借契約における信頼関係破壊の法理
三好吉安

【設問】建物を賃貸しているが,賃借人が先月の賃料を滞納した。すぐに賃貸借契約を解除して,賃借人に出て行ってもらえるか。

民法・PL法等

賃貸借契約終了時の原状回復義務
三好吉安

【設問】建物賃貸借契約上,賃借人は明渡しの際に壁紙の貼替工事費用を負担すると定めているため,敷金につき,工事費用を控除して返還してもよいか。

民法・PL法等

仕事の完成
氏家真紀子

【設問】戸建住居の建築を請け負ったが,注文者が完成していないと言って代金を支払ってくれない。どのような状況になれば「仕事の完成」といえるのか。

民法・PL法等

委任契約の解除と損害賠償
日下部太一

【設問】A社は,不動産事業を営んでおり,法人税の申告期限は3月末であったところ,法人税の申告業務を依頼していた顧問税理士Bより,突如として3月中旬に契約を解除するとの連絡があり,結果,法人税の申告が間に合わず延滞税を支払うこととなった。A社はBに対して損害賠償請求をすることができるか。

民法・PL法等

肖像権侵害
甲斐一真

【設問】会社の仕事風景を撮影して宣伝の趣旨でSNSに投稿したところ,映り込んだ隣地の住人から苦情が来た。なにか問題があるのか。

民法・PL法等

法人の名誉棄損が成立するか
日下部太一

【設問】Aは株式会社Bを設立し,代表取締役としてBという名称の飲食店を営んでいた。Cは,飲食店の口コミサイトにおいて「①Aは過去に暴力事件で警察に厄介になったゴミのような人物である。②しかも,Bにおいては産地を偽装した食材が提供されている」との投稿を行なった。AおよびBはCに対して名誉毀損を理由とする損害賠償請求をすることができるか。

民法・PL法等

使用者責任の事業執行性
戀田 剛

【設問】A社の従業員Bが,社内規則に違反して私用で当社の社用車を運転していた際,Cをはねる事故を起こした。業務外のBの行為により,A社がCに対して責任を負うことはあるのか。

民法・PL法等

使用者責任における使用者の範囲
氏家真紀子

【設問】A社は解体工事を受注し,B社(下請人)に依頼して工事をしていたが,工事中にB社の従業員が誤って隣地の塀を壊してしまった。A社が使用者責任を負うことはあるか。

創刊25周年記念特別座談会
変化の時代の企業法務
――総括とグランドデザイン【上】
「ビジネス法務」は、本号で創刊25周年をむかえました(旧誌名「ビジネス実務法務」より通算)。この25年間、企業法務を取り巻く状況変化には目覚ましいものがありました。その年々・月々でさまざまな事件が起き、法改正がなされ、判例が出され、そうした歴史・積み重ねの延長線上に、現在の企業法務が位置づけられています。本座談会では、企業法務のレジェンド達が、ちょうど当誌の創刊と同時に生まれた25歳の新人・若手の法務パーソンに向けて、当誌が共に歩んできた企業法務の歴史を総括するとともに、今後のグランドデザインを考えます。

【登壇者】久保利英明(日比谷パーク法律事務所 弁護士)/野村修也(中央大学法科大学院 教授・弁護士)/芦原一郎(弁護士法人キャストグローバル 弁護士)
地平線
企業不祥事と第三者委員会
――そのあり方と関係性
コンプライアンス

青木英孝

企業不祥事が起きると,第三者委員会を設置し,原因究明や再発防止策を策定する手続が定着している。内輪の調査委員会が身内に甘い調査結果を公表すると,会見等で炎上するリスクが高く,事後対応の誤りが致命傷になるからである。第三者委員会は,弁護士,公認会計士,学者,ジャーナリスト等のプロフェッショナルで構成される。ただ,弁護士が法令違反と判断し,公認会計士が粉飾決算と判断するとしても,法的判断だけなら顧問弁護士や法務部で,会計処理だけなら経理部や会計士資格をもつ社員で十分である。では,外部の専門家を招集し組織する第三者委員会の価値は何か。文字どおり第三者であることである。利害関係のない独立した第三者だからこそ,調査結果を信じてもらえる。

Trend Eye
「ChatGPT」の法務領域への実用可能性
テクノロジー・AI 情報法

山本 俊

2023年4月の執筆当時,数カ月で一気にChatGPT等の大規模言語モデルの発展や実用化が急速に進んでおり,さまざまな領域で利用方法が紹介されている。大規模言語モデルは従来の技術より自然言語処理の性能が優れていることから,言語の取扱いが主役となる法務領域への実用可能性は非常に高いことが予想されるため,本稿で現時点で予想される実用方法について解説を行う。

Lawの論点
中国「市場主体登記管理条例」公布に伴う
商業登記制度改正の大要
国際

金 錫華

2021年8月24日,中国において,「市場主体登記管理条例」(以下「本条例」という)が国務院により公布され,2022年3月1日から施行されることになった。本条例は,従来の会社に関連する商業登記制度の改正,および,新たに採用された重要な変更を含むものである。本稿では,これら改正および変更の内容のうち主な内容を紹介する。

特集2
スタートアップ法務の作法
スタートアップ企業では,限られたリソースで,幅広い法務課題に対しスピーディーに対応する必要があります。そのためには,特に重要な法務課題に集中して取り組まなければなりません。そこで,本特集では,スタートアップ企業にとって重要と思われる法務課題をピックアップして,米国シリコンバレーVCの法務部への出向経験のある弁護士やスタートアップ企業の顧問を務める弁護士が,それぞれのポイントを解説します。これらのポイントは,法務担当者がごく少人数しかいない上場企業・外資系企業の子会社や中小企業にとっても有用といえます。
企業法務総合

スタートアップ法務の要点
西口健太

スタートアップ企業では法務専任の担当者がおらず創業者やCFOが兼ねていたり,法務専任の担当者がいても1人であったりすることが多い。そのうえで,大企業以上に法務担当にスピード感と広い守備範囲が求められるのが通常である。本稿では,そのようなスタートアップ法務において,スタートアップ企業のステージごとに重要な対応事項は何か,およびどのようなマインドセットで乗り切るべきかについて解説する。

企業法務総合

契約締結・交渉の作法
今田晋一・佐藤 樹

企業法務担当者の日常的な業務として「契約」対応がある。契約対応は,契約書ドラフトの作成,レビュー,捺印,保管というプロセスで行われるものであるが,本特集では契約書のレビューの作法に焦点を当てて,契約・契約書の意義,契約レビューや契約交渉を行う際の一般的な流れや不利な条項を提示されたときの交渉材料の一例をご紹介したい。

企業法務総合

契約稟議・管理の作法
今田晋一・佐藤 樹

企業における契約稟議と契約書の法務審査は,企業法務担当者の日常業務の1つであるが,それゆえに十分な稟議・管理体制が構築されていないと,契約書の法務審査に時間を取られて本来時間をかけるべき重要案件に時間を割けなくなってしまう。契約稟議においても効率化のためのポイントがあると思われるため,その一例を紹介する。

企業法務総合

情報管理の作法
沢田篤志・浅川敬太

今日の社会において情報の重要性はますます高まっているが,情報は形のないものであり,管理が容易ではない。加えて,個人情報保護法,不正競争防止法をはじめとする法令・ガイドライン等の留意点や取り組むべき課題は多岐にわたる。そのため,スタートアップ法務/1人法務の法務担当者が,情報管理分野の課題に網羅的に取り組むことは負担が重い。しかし,基本的なポイントをひととおり理解しておくことによって,問題に気づき,必要に応じて調査や専門家への相談等の対応をとることは十分に可能である。本稿では,情報管理について,スタートアップ法務/1人法務の担当者が把握しておくことが望ましいポイントを紹介する。

企業法務総合

顧問弁護士とのやり取りの作法
石田真由美・松山 領・西口健太

人的リソースの限られたスタートアップ企業の法務担当者にとって,顧問弁護士等の外部専門家を適切に活用し使いこなすことは,効率的な業務処理のために欠かせない。そこで,本稿では,契約書レビューの依頼といった平時とトラブル・法的紛争などの有事の2つの局面において,法務担当者が顧問弁護士とスムーズにやりとりするためのコツについて,Q&A形式で,顧問弁護士側の視点を交えつつ解説する。

特別企画
有事に備える!経済制裁条項の書き方と留意点
緊張する国際情勢や地政学リスクによるサプライチェーンの不安定化の懸念は,日本企業にも契約条項の見直しを迫っている。経済制裁がもたらす取引上のリスクに備えるうえで鍵となる契約条項について,具体的な文案を紹介し,各条項の意義・留意点を解説する。
企業法務総合 国際

経済制裁に対応する契約条項の検討
――商社のトレードビジネスから
石山綾理

ロシアによるウクライナ侵攻以降,物理的・経済的な影響に加え,欧米諸国の経済制裁措置・ロシア側からの対抗措置等,あらゆる「制裁リスク」が同時に顕在化してきた。米中の覇権争い,台湾有事のおそれ,反外国制裁法の制定・執行等,同様の事態の再来も懸念される。日本企業としては,日本その他の国の適用制裁法を遵守しつつ,他方で被制裁国がとり得る対抗措置の影響を最小化しながら事業活動を行いたい。本稿では,制裁リスクの高い相手方への輸出取引に着目し,経済制裁の発動に伴って生じる取引上のリスクを回避・軽減するための契約条項(「制裁条項」)を概観する。各条項の規定は,各取引の規模・性質および地政学リスクに応じて個別に検討する必要がある。

実務解説
仲裁法改正の最新動向と実務上の要点
国際 争訟・紛争解決

辰野嘉則

2023年4月21日,仲裁法の一部を改正する法律案等が国会で可決され,成立した。これらの改正法は,仲裁廷による暫定保全措置への執行力の付与や,国際調停や認証紛争解決手続を経た当事者間の和解への執行力の付与といった,実務上重要な項目を含んでいる。本稿では,これらの改正法のうち,実務上特に影響が大きいと思われる項目について,その概要およびポイントを解説する。

テクノロジー・AI 情報法

ChatGPTの社内利用に伴う法的リスク・対応
角田進二

近年人工知能の大規模言語モデル(LLM)が活発化し,急速に社会に浸透してきている。企業内での利用頻度やニーズについても高まってきているが,明確なルールが決まっていないなかでは個人名義での使用等による情報漏えいその他知的財産問題が引き起こされるリスクが高まり,企業にとって重大な危険性がある。本稿では,特に社内利用についての留意点および対策を記載する。

労働法

改正障害者差別解消法の施行に向けた企業対応ポイント
水田 進・関根ゆりの

2024年4月1日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」または単に「法」という)の改正法が施行されることが公表された。今回の改正の主な内容は,これまで努力義務とされていた民間の事業者の合理的配慮の提供が,国や地方公共団体などと同様に法的義務とされることである(改正法8条2項)。また,改正法の円滑な施行に向け,同法に基づいて政府が策定した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(以下「基本方針」という)も改定されており,これも改正法と同じく2024年4月1日に施行される予定である。さらに,各省庁は所管する事業分野について民間の事業者が適切に対応するために必要な対応指針(以下「対応指針」という)を定めているが,これらも改正法の施行日までに改定される予定である。そこで,本稿では,障害者差別解消法の改正内容の解説と,同法をめぐる最新動向をふまえた実務対応についての検討を行うこととする。

競争法・独禁法

「食べログ判決」を分析する
――優越的地位の濫用とアルゴリズム変更
渥美雅之・渡邊隆之

2022年6月16日,東京地裁は,「食べログ」を運営する株式会社カカクコムが行ったチェーン店の評点を調整するアルゴリズム変更が,優越的地位の濫用に該当し,独占禁止法(以下「独禁法」という)上違法であるとする判決を下した。飲食ポータルサイトによる優越的地位の濫用の可能性については,公正取引委員会も実態調査を行う等市場を監視してきたが,この点について初の司法判断が出されたことで注目されている。しかし,当該地裁判決は,優越的地位の濫用に係る分析や認定において不十分と思われる内容を含んでおり,控訴審でのさらなる検討・判断が期待される。本稿では,同判決の独禁法上の解釈・認定部分についての分析を行う。

競争法・独禁法 サステナビリティ・人権

「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」の速報解説
小川聖史・嘉悦レオナルド裕悟

公正取引委員会は,2023年3月31日に「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」を公表した。グリーン社会の実現に向けて,今後,事業者間の協業等の取組みが盛んに実施されることが想定され,本ガイドラインがその独占禁止法上の検討に資する場面もあると見込まれる。本稿は,本ガイドラインの概要と実務上のポイントを概説するものである。

企業法務総合

法律事務所における「弁護士確認状」対応の実務
緒方文彦

監査法人は,主に訴訟に関連する引当金計上や,偶発債務の注記の要否の把握の趣旨で,クライアントの名義で,クライアントの顧問弁護士に対し,弁護士確認状を発送する。本稿においては,監査法人がこのような弁護士確認状を送付することで,どのようなことを確認しようとしているのか,監査法人側の監査手続のロジックを概説するとともに,時として訴訟の進行状況についての見込みを安易に外部に情報提供することが難しい顧問弁護士の立場から,弁護士確認状について,どのような対応が望ましいのかを検討する。

連載
【新連載】
アメリカ民事訴訟実務の基礎と留意点
第1回 訴訟社会アメリカの連邦司法制度
国際 争訟・紛争解決

奈良房永・笠継正勲

本連載では日米の民事訴訟制度の違いを意識し,紛争解決に向けた実務的な視点を織り交ぜながら,アメリカ連邦裁判所の民事訴訟手続の全体像を把握できるよう,訴訟の開始から終わりまで全10回のシリーズで解説していく。アメリカ民事訴訟の全体像を把握することで,全体を構成する各「部分」において,バランスのとれた戦略策定が可能になるであろう。初回となる本稿では,アメリカの司法制度の枠組みを解説する。

知財

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

知財

最新判例アンテナ
第60回 特許法102条2項に基づく損害額の推定覆滅部分に対する同条3項の重畳適用を認めて実施料相当額の損害賠償を請求できるとした事案
三笘 裕・河野ひとみ

椅子式マッサージ機の特許権(以下「本件特許権」という)を有するX社が,本件特許権の侵害を理由として,Y社によるY社製品の製造販売等の差止め等および特許法(以下「法」という)102条2項または同条3項に基づく損害額の賠償を求めた事案である。本控訴審は,Y社製品の製造販売等が本件特許権の侵害に当たると判断して差止等請求を認容し,損害額の算定につき判断を示した。

テクノロジー・AI 情報法

経営戦略としてのプライバシー・ガバナンス
最終回 改正電気通信事業法をふまえたCookieデータ等の利用者情報の利用と管理
岡辺公志

2023年6月16日に施行される改正電気通信事業法では,利用者情報の取扱いについて①外部送信規律と②特定利用者情報に関する規律という2つの新たな規制が導入された。これらのうち,外部送信規律については,「電気通信事業」という言葉から一般にイメージされる事業者のみならず,かなり広範な事業者が規律対象となっており,規制対象となる事業者がその認識を持っていない例もみられる。また,外部送信規律は,これまでの日本法上限定的な規制しか存在しなかったCookie等による情報送信を正面から規制するものであり,企業におけるプライバシーガバナンスのあり方に大きな影響を及ぼすものとなっている。そこで,本稿では,改正電気通信事業法をふまえたプライバシーガバナンス構築について概観する。

企業法務総合

弁護士のとあるワンシーン with 4コマ
Scene4 弁護士とソーシャルネットワーク
中村 真

多くの法律家がそうであるように,私も少なからずSNSに触れながら社会生活を送っています。

企業法務総合 国際

Study Abroad Journal(留学体験記)
最終回 ニューヨーク大学
山口みどり

私は,2021年8月から22年5月まで,ニューヨーク大学(以下「NYU」といいます)のロースクールでLL.M.留学をしていました。

会社法

IPO準備における会社法の基礎
第2回 監査等委員会設置会社という選択の検討
青野雅朗

本連載は,上場準備において比較的論点になりやすいトピックという切り口から,全6回の予定で,会社法の基礎を振り返るものである。第2回は,上場準備にあたってもしばしば検討の対象となる,監査等委員会設置会社という機関設計について取り上げる。

国際

マンガで学ぼう!! 法務のきほん
第17話 海外子会社の管理
淵邊善彦・木村容子

グループ会社管理については,2019年6月に経済産業省が公表した「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)」が参考になります。

税務

要件事実・事実認定論の根本的課題── その原点から将来まで
第43回(最終回) 実額課税と推計課税(推計課税と実額反証の問題を中心として)②
──要件事実論の視点からみた所得税法
伊藤滋夫

この要件に関係して,課税処分取消訴訟における推計課税の取扱いについては,主なものとして,大きくいって,次の2つの考え方がある。まず,課税庁は,推計課税の必要性の要件を満たすことが証明されなければ実額を証明する必要があるが,同要件が証明されたときは,納税者において実額の証明は一切許さないとする考え方(①の考え方)がある。このように厳密に2分して考えた場合には,同一の課税処分の適法性の評価根拠事実の立証であるにもかかわらず,なぜこのように,性質の異なる2つの立証方法が相互にまったく無関係に存在するのか,その両者の関係をどのよう考えるのかなどについて,どのように合理的に説明するかということが問題となる。次に,推計課税の方法を適法として認めておきながら,後になって,実額反証という名のもとに,納税者による実額による立証を認める考え方(②の考え方)もある。おそらく,これが現在の裁判例(この点に関する最高裁の考え方は明らかではないが),学説の多数の採る考え方であると思われる。

企業法務総合

ITサービスにおける「利用規約」作成のポイント
第8回 クラウド型のサービスにおける利用規約
中山 茂・近藤僚子・飯田真弥

今回は,クラウド型のサービスにおける利用規約に関して検討すべきポイントを解説する。クラウド型のサービスはすでにさまざまな場面で活用されているが,ネットワーク利用の利便性,データの大容量化の要請に加えて,たとえばAI等を活用したサービスにおいては膨大な計算能力が必要となることもあり,今後,このようなニーズに対応するサービス展開のため,クラウド型サービスはさらに重要度が高まると思われる。

企業法務総合

裁判例から学ぶ 経営意思決定バイアス
第4回 取締役会の審議と「カスケード効果」
(横浜地判平成25年10月22日金融・商事判例1432号44頁)
青谷賢一郎・飯田 高

本連載では,経営意思決定バイアスを学ぶうえで格好の教材となる裁判例を紹介し,当該事例で問題となりそうな意思決定バイアスを中心に解説する。連載第4回では,取締役会の審議における「カスケード効果(cascade effect)」を取り上げる。

企業法務総合

怒れる弁護士「アンガーマネジメント」を学ぶ。
第3回 私たちは何に怒っているのか
宮山春城

アンガーマネジメントを実践するようになってからというもの,顧問先の経営者や法務部員の方から「先生はいつも機嫌がいいから安心して相談できます」という嬉しい声をいただくことが多くなりました。しかし,私の短気な性格それ自体は昔と比べて大きく変わってはいないと自覚しています。

労働法 争訟・紛争解決

ストーリーでわかる 労働審判の基本
第2回 相手方の初動対応(答弁書の作成準備)
福谷賢典・山下 諒

乙社の福岡事業所に3年間勤務し(1年の有期労働契約を2回更新),2022年12月末をもって雇止めとなった甲が,雇止めの無効を主張し,乙社を相手方として福岡地方裁判所に労働審判の申立てを行った。乙社の東京本社の人事部担当者は,労働審判手続申立書を受領し,対応の検討を開始した。

企業法務総合

ビジネスパーソンのためのSDGs相談室
第11回 2025年日本国際博覧会とSDGs
矢本浩教

Q:SDGsに関連する世界規模の事業として,2025年の大阪・関西万博が開催されます。SDGsに貢献するうえで,一個人・一企業としてどのように対応すればよいでしょうか?

国際

米国法上の不動産所有権および賃借権の基礎――日本法との比較
第2回 米国不動産の所有権の譲渡・対抗要件
ティモシー・ハマースミス・加藤奈緒・ 白井潤一・髙橋梨紗

本連載では,米国における不動産の所有権・賃借権に関する概念・制度等について日本法と比較しながら解説している。第2回では,米国不動産の所有権の譲渡と対抗要件について取り上げる。

コンプライアンス

ケースで学ぶ ビジネスと人権
第4回 人権DD③――武力紛争等の危機的状況への対応策
坂尾佑平・岩崎啓太

連載第2回より,「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(以下「本ガイドライン」という)における人権尊重の取組みの各論として,人権DDに関するケーススタディを行っており,連載第2回では人権DDの4つのプロセスの1つめに当たる「負の影響の特定・評価」,連載第3回では2つめのプロセスである「負の影響の防止・軽減」の基礎的なポイントについて解説した。今回は,連載第3回に引き続き「負の影響の防止・軽減」のプロセスを取り扱う。具体的には,海外における人権DDを念頭に,武力紛争が生じたケースや,国家が人権侵害に関与している疑いが生じたケースなど,判断の難しい危機的状況への対応策について解説する。

企業法務総合

ビジネス実務法務検定試験
3級 演習問題