デジタル化の進展とともに変容する株主総会実務
井上 卓
政府主導による近年のガバナンス改革は目覚ましく進展し,株主の議決権行使の環境も大きく変容した。アクティビスト株主の活動も活発化し,株主提案が積極的に活用される事例がみられるようになった。本稿では,コーポレート・ガバナンスをめぐる議論の進展を中心とする環境変化を概説するとともに,2022年6月総会に現れた特徴的な事例を紹介する。
ガバナンス改革を先導する株主提案の動向
三谷革司
政府主導による近年のガバナンス改革は目覚ましく進展し,株主の議決権行使の環境も大きく変容した。アクティビスト株主の活動も活発化し,株主提案が積極的に活用される事例がみられるようになった。本稿では,コーポレート・ガバナンスをめぐる議論の進展を中心とする環境変化を概説するとともに,2022年6月総会に現れた特徴的な事例を紹介する。
株主総会資料の電子提供制度に係る準備対応
斎藤 誠・牧村卓哉
上場会社においては,令和元年法律70号による改正後の会社法等により,株主総会資料の電子提供制度を採用することが義務づけられた。本制度については,2022年9月1日に施行され,同日時点の上場会社においては2023年3月以降に開催される株主総会より開始される。本稿は,本制度の開始に伴い,上場会社各社において検討を要する事項とその準備対応について紹介するものである。
総会事務の指針となる重要判例
西岡祐介
令和に入ってからも株主総会関連の重要裁判例は多く出されている。その中でも本稿では,株主総会の当日事務等に関連する重要裁判例をいくつか紹介し,その実務対応について触れたい。
サステナビリティをめぐる課題,コーポレート・ガバナンス,地政学リスクほか
2023年株主総会の想定問答
黒田 裕・石本晃一・鬼頭あゆみ
世界的なインフレ,エネルギー価格の高騰,急速な金利上昇,地政学リスクの増大等,事業環境は厳しくなっている。また,温室効果ガス削減に関して日本政府が表明した目標達成に向けて待ったなしの状況となっているほか,サステナビリティ情報の制度開示化も始まり,ESGに対する関心も高まる一方である。本稿では,それらの関心事項を中心に想定問答例とその背景となる動向を解説する。
各社の開示例にみる
スキル・マトリックス作成のキーポイント
太子堂厚子
取締役会に求められる知識・経験・能力等を一覧化し,取締役等の有するスキル等の組み合わせを示すスキル・マトリックスの作成は,わが国の上場会社において急速に一般化した。本稿では,開示事例にも言及しつつ,スキル・マトリックス作成の取組みを深化させる観点で,考えられる検討課題について述べる。
新しい貸借対照表の提唱
「人的資本」の概念整理と問題提起
中野 誠
本稿では人的資本に関して,「人的資産」「従業員持分」という概念を明示的に整理したうえで,マルチ・ステークホルダー型の貸借対照表という考え方を通じて,未来の会社の姿についての問題提起をしたい。
人的資本経営における株主総会運営のポイント
徳山佳祐
2023年,人的資本開示が本格化され,それに伴って株主総会の運営にも変化が見込まれる。人的資本経営の推進において,株主総会は投資家である株主との「対話」の場面として位置づけられるが,そこでの対話は,実態に沿ったものでなければならない。実態としての人事制度・運用の検証・整備にあたっては,法的論点が浮かび上がることも想定される。本稿では,人的資本経営における株主総会のあり方とともに,法務部門に期待される役割を考えたい。
上野達弘
2022年10月に東京地裁・東京高裁の中目黒庁舎(いわゆる「ビジネス・コート」)がオープンし,知財高裁および東京地裁の知的財産権部・商事部・倒産部が業務を開始している。
山本晃久
岸田政権の経済政策の目玉である「新しい資本主義」は,2021年10月の同政権発足当初より,具体化へ向けた議論が積み重ねられてきた。2022年6月には,「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が公表され,各施策の実現に向けた準備が進んでいる。公表された施策の中には,法的観点からの検討を要する事項が多数存在するが,特に「民間で公的役割を担う新たな法人形態・既存の法人形態の改革の検討」は興味深い。
会社法/提案株主を含む株主の株主総会への出席制限の可否
鍵崎亮一
Y1株式会社(スルガ銀行株式会社)の代表取締役であるY2(債務者)は,2022年6月29日を会日とする定時株主総会の招集に際し,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から,株主総会の出席について,希望者数が座席数を超える場合には抽選とする事前登録制とすることを通知した。
会社法/三ッ星事件(買収防衛策発動に対する差止めが認められた事例)
大草康平
X(アダージキャピタル有限責任事業組合)は,Y(株式会社三ッ星)の株式を,2021年7月~10月にかけて市場内で,持株比率(自己株式を除いて計算した比率。以下同じ)にして7.01%取得した。また,Xの関係者ら2は,同年10月〜2022年3月にかけてYの株式を取得し,2022年3月末の時点において,XおよびXの関係者ら(以下これらを総称して「Xら」という)が保有するYの株式の持株比率は,合計21.63%となっていた。
商事紛争/東京電力株主代表訴訟
松澤 香
東北地方太平洋沖地震に伴う津波により,福島第一原発事故(本件事故)2が発生した。本件は,東京電力の株主が,当時の取締役において,福島県沖で大規模地震が発生し,福島第一原発に津波が遡上して過酷事故3が発生することを予見し得たから,その防止に必要な対策を速やかに講ずべきであったのに,これを怠った取締役としての善管注意義務違反等の任務懈怠があり,これにより本件事故が発生し,東京電力に損害を被らせた等として提訴した株主代表訴訟である。
商事紛争/訴訟代理人(取締役責任調査委員会の委員であった弁護士)の訴訟行為排除申立事件
坂尾佑平
本事案は,関西電力株式会社(以下「本件会社」という)による,本件会社の元取締役ら(以下「元取締役ら」という)に対する会社法423条1項に基づく損害賠償請求訴訟(以下「本件訴訟」という)において,元取締役らが,本件会社の設置した取締役責任調査委員会(以下「本件責任調査委員会」という)の委員であった弁護士(以下「本件弁護士」という)が本件会社の訴訟代理人として訴訟行為をすることは弁護士法25条2号および4号2の趣旨に反するなどと主張して,本件弁護士の訴訟行為の排除を求める申立て(以下「本件申立て」という)を行った事案である。
消費者法/空間除菌広告に対する措置
命令の仮の差止め事件
松田知丈・渡辺 駿
本事案は,大幸薬品株式会社(以下「本件会社」という)の商品Aおよび商品B(以下「本件各商品」という)を含む合計6商品の広告について,消費者庁が景品表示法2に基づき措置命令(以下「本件命令」という)を行おうとしたのに対し,本件会社が差止訴訟を提起するとともに,仮の差止め(以下「本件申立て」という)を申し立てた事案である。
特許法/椅子式施療装置,椅子式マッサージ機事件
松田誠司
本件は,椅子式マッサージ機に関する各発明に係る特許権AないしC(以下「本件特許権A」等といい,総称して「本件各特許権」という)を有する原告(控訴人)が,被告(被控訴人)による各マッサージ機(以下「被告各製品」という)の製造,販売等が本件特許権AないしCの侵害にあたる旨主張して,被告に対し,被告各製品の製造,販売等の差止めおよび廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求の一部として,15億円および遅延損害金の支払いを求めた事案である。
著作権法/音楽教室事業者対JASRAC事件
池村 聡・大出 萌
本件は,教室または生徒の居宅において,音楽の基本や楽器の演奏技術・歌唱技術を教授する音楽教室を運営するXら(法人または個人の事業者)が,著作権等管理事業法2条3項に規定する著作権等管理事業者であるY(一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC))に対し,Xらがそれぞれの生徒との間で締結した受講契約(以下「本件受講契約」という)に基づき行われるレッスンにおける,Xらの教室または生徒の居宅内においてしたYが管理する楽曲(以下「Y管理楽曲」という)の演奏について,YがXらに対して著作権(演奏権)侵害に基づく損害賠償請求権等を有していないことの確認を求める訴訟の上告審である。
不正競争防止法/営業秘密漏えい事件
西川喜裕
本件は,B社の元役員である被告人Aと元従業員(部長)である被告人Cが,B社から,同社が保有する営業秘密であるワイヤ整列装置の機能および構造,同装置等を用いてアモルファスワイヤを基板上に整列させる工程に関する技術上の情報を示されていたところ,同社のQ工場会議室において,株式会社Dの従業員Eに対し,前記情報を口頭および同会議室に設置されたホワイトボードに図示する方法で説明し(以下「本件打合せ」という),もってB社の営業秘密を開示したとして,営業秘密侵害罪(不正競争防止法21条1項5号,平成27年法律54号による改正前のもの)の成否が争われた刑事事件である。
独禁法/マイナミ空港サービス事件
渥美雅之
本件は,全国の空港において航空燃料を販売しているマイナミ空港サービス株式会社(以下「原告」という)が,八尾空港における燃料販売に参入しようとした訴外エス・ジー・シー佐賀空港株式会社(以下「SGC」という)と需要者との取引を妨げるために行った行為が排除型私的独占(独占禁止法2条5項,3条前段)に該当するとして,公正取引委員会(以下「公取委」という)が出した排除措置命令および課徴金納付命令の取消しを求めた訴訟である。
IT/コインハイブ事件
日置巴美
本件は,インターネット上のウェブサイト「X」の運営者である被告人が,X閲覧者が使用する電子計算機によってコインハイブによるマイニング2を導入しようと考え,これを行わせるプログラムの呼び出しコード(以下「本件プログラムコード」という)をXに係るサーバコンピュータに保管した行為について,不正指令電磁的記録保管罪(刑法168条の3)に問われた事案である。
国際税務/銀行に対するタックス・ヘイブン対策税制の適用が否定された事案
山口亮子・迫野馨恵
A銀行は,優先出資証券による資金調達のためのSPC(特別目的会社)2社(いずれもケイマン諸島に所在し,A銀行の特定外国子会社等に該当する。以下「本件子会社」という)を設立し,本件子会社の普通株式の全部を保有していた。
債権管理,契約書保存において理解が必須
令和2年民法改正における消滅時効制度の変更点
湯川昌紀
2020年4月1日より施行された改正民法では,債権の消滅時効についても改正がされている。債権の消滅時効は,債権管理の場面のほか,契約書等の文書の保存期間,偶発債務の引当要否の検討等の場面でも問題となることがある。改正法の施行前に発生した債権については改正前の規定が適用される場合もあり,本稿では債権の消滅時効に関する改正内容を再確認する。
新しい起算点の導入に要注意
消滅時効に関する実務のチェックポイント
山本一生・村上智哉
消滅時効は,特に債権管理の場面においては正確に理解する必要がある重要事項である。本稿では,消滅時効に関し実務上理解が必須と思われる,改正法の適用関係,起算点,消滅時効の障害事由および援用の点につき,ポイントを解説したい。
北野知広・佐藤 俊
2021年10月,内閣に新しい資本主義実現本部が設置され,本稿執筆時点までに合計13回にわたる新しい資本主義実現会議が開催されている。新しい資本主義の実現に向けた政策の内容は多岐にわたるが,本稿ではその概要を整理するとともに,主に,すべての対象債権者の同意を不要とする新しい私的整理手続と,フリーランス保護新法に関して,現在の議論の方向性を紹介する。
チケットをめぐる法規制とNFTの活用可能性
加藤志郎
新たなテクノロジーの発展は,従来,法規制等により対処されてきた課題を解決し,規制緩和をもたらす可能性がある。その一例として,スポーツ等のチケットビジネスにおけるNFTの活用は,積年の課題であるチケット転売問題の解決の糸口となり得るか。
他法令・契約との比較
こんなに使える! 不競法(上)
渡邉遼太郎
不正競争防止法は,広範な法目的を持つところ,他の知的財産法や競争法の補完的な役割を担うことも多く,他法令等が適用できない場合でも,一定の要件を満たせば不正競争防止法を活用できるという場面も多い。(上)では,ブランド保護にあたっての商標法と比較しての不正競争防止法の活用可能性や,デザイン保護にあたっての意匠法・著作権法と比較しての不正競争防止法の活用可能性を紹介する。
弁護士法72条とリーガルテックの規制デザイン(下)
渡部友一郎・角田龍哉・玉虫香里
弁護士法72条とAIを利用した契約業務支援サービスとの関係がひときわ関心を集めている。本稿は,弁護士法72条の先行研究を整理し,リーガルテックの規制デザイン案を解説する。議論が刻一刻と進化するなか,本稿は,ステークホルダーによる議論の最新のスタート地点となり得る。本稿の新規性は規制デザイン案の提示にあり,弁護士法72条の議論について,AI「提供者」に加え「利用者」のリーガルリテラシーから両眼的に考察するアプローチを提唱する。
無期転換ルールの見直しと実務対応
山畑茂之
労働契約法18条が定める無期転換ルールの施行から8年以上が経過し,同ルールの見直しが検討されているところであり,そのなかで,使用者に対し,無期転換申込権の発生や無期転換した場合の具体的な労働条件を個々の労働者に対して通知することの義務づけや,無期転換ルールに対する対応として導入されることがある更新上限設定について使用者に説明義務を課すという動きがあり,それに対する実務対応について検討する。
取引デジタルプラットフォーム消費者保護法関連法令の解説(上)
石橋勇輝・藤本元気
オンラインモールなどの「取引デジタルプラットフォーム」における消費者の利益を保護するため,「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(以下「法」という)が2021年4月28日に成立し,2022年5月1日から施行されている。そこで本稿では,法の概要を解説する。
坂尾佑平・岩崎啓太
昨今「ビジネスと人権」が大きな注目を集めている。ESG(環境・社会・ガバナンス)への国際的な関心の高まり,激動の国際情勢下での人権問題の顕在化,欧州での人権デューデリジェンス(以下「人権DD」という)の法制化等を背景に,企業が人権に本気で向き合わなければならない時代が到来している。 2022年9月13日,「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(以下「本ガイドライン」という)が日本政府のガイドラインとして決定された。本ガイドラインは,日本のすべての企業を対象として,人権尊重の取組みに関する重要事項が定められている。とはいえ,企業として具体的に何から始めたらよいか,どう取り組めばよいのか,担当者の悩みは尽きないと思われる。そこで本連載では,仮想事例を用いて,「ビジネスと人権」に関する実践的な視点を提示していきたい。
最新判例アンテナ
第56回 株主総会会場に入場できる株主を事前登録に基づく抽選により選定したことに関して,株主による株主総会開催の差止め等を求める仮処分命令の申立てが却下された事案
三笘 裕・河野ひとみ
Y1社の代表取締役であるY2は,2022年6月,定款上株主総会の開催地とされる静岡県沼津市に所在する施設の一室(以下「本件会場」という)にて,同月29日に定時株主総会(以下「本件総会」という)を開催する旨の招集通知を発するに際し,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から,事前登録に基づく抽選制による株主総会会場への入場制限(上限206名)を行う旨通知した。抽選に外れた株主は,書面またはインターネットによる議決権の行使が可能であるが,本件総会へのウェブ参加等の措置は設けられていない。
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編
事例でわかる ヘルスケア業界への異業種参入ポイント
最終回 医療機器部品の供給
堀尾貴将・川井悠暉
近年,異業種からヘルスケア業界へ参入する企業が増加しており,製薬会社等においても,従来の医薬品・医療機器以外のヘルスケア商品にビジネスチャンスを見出す動きが活発化している。 本連載では,具体的な事例をもとに,ヘルスケア業界の基本的な規制や参入時の留意点等を平易に解説する。連載最終回では,医療機器部品の供給について事例をもとに解説する。
ビジネスパーソンのためのSDGs相談室
第7回 消費者への価値提供とSDGsのゴール
坂 昌樹
Q:当社は個人向け消費財の生産を行っているメーカーですが,SDGsへの取組みとして,どのようなことが可能でしょうか。「消費者に価値を提供していく」ということに焦点を当てたSDGsのゴールについて教えてください。
マンガで学ぼう!! 法務のきほん
第13話 整理解雇と解雇規制
淵邊善彦・木村容子
整理解雇とは,企業が経営悪化や事業縮小等を理由として人員削減のために行う解雇をいいます。 使用者が行うリストラ策としては,他に退職勧奨や希望退職の募集があります。どちらも社員からの自主退職を目指すものですが,希望退職の募集は社員の応募を待つという受け身であり,積極的に退職を促す退職勧奨とは異なります。 これらに対し,整理解雇は,使用者による一方的な意思表示によって行われ,労働者の同意は不要という点で大きく異なります。
Study Abroad Journal(留学体験記)
第2回 スタンフォード大学
立入寛之
私は,エネルギーファイナンス・証券化・金融規制の分野を中心に業務を行っていました。2019年7月から2年間,日本政策投資銀行に出向し,エネルギー案件に取り組むなかで,日本のエネルギー法制の複雑さや変化のダイナミクス,その影響の大きさを痛感し,エネルギー法制,およびエネルギー法制の基礎となる環境政策について理解を深めるために,特に検討する機会の多かった米国への留学を考えるようになりました。
リスクマッピングでみる サプライチェーンの法務対応
第7回 ESGとサイバーセキュリティ
吉澤 尚・宮川 拓・鈴木修平
今回は,ESGの文脈におけるサプライチェーン上のサイバーセキュリティとの関係性について言及しつつ,米国のサイバーセキュリティの枠組みを概説する。
ITサービスにおける「利用規約」作成のポイント
第4回 サービス提供者の免責条項,利用者の退会・解約を制限する条項等
中山 茂・丸山 駿・飯田真弥
サービス提供者の免責条項は,サービス設計や料金設定にも影響する部分であり,実務上問題となることも多い。また,サービス停止・終了・変更に関する条項も,サービス提供者の免責と関わることが多いため,あわせて解説する。さらに,利用者の退会・解約を制限する条項は,近時増えているサブスク型の契約との関係でも重要性が高いため,本稿で取り上げる。
双日法務部のリーガルオペレーション
第2回 業務効率化の取組み
佐藤 崇
双日法務部にとって業務効率化は永遠の課題といえるほどに,昔から検討,実行,失敗の繰り返しがなされてきた。それが近年,一定の形,あるいは枠組みのようなものとして整理できるようになった。この形ないし枠組みとは体制と個別施策の2つに分けることができ,前者は,第1回で触れた専属スタッフ,チームの組成であり,後者は組織目標に組み込まれた個別施策の実行である。以下,それぞれ説明をしていく。
営業秘密を守る
第2回 有事対応
――民事訴訟を提起された場合
髙木楓子
本稿では,第1回に引き続き,営業秘密の侵害をめぐる典型事例をもとに,実際に民事紛争になった場合に生じる差止請求や損害賠償請求,執行,損害額の算定などの問題について解説する。実務にあたる法務部などにおいて,有事の対応の参考にしていただければ幸いである。
要件事実・事実認定論の根本的課題
第41回 一時所得と雑所得【補論】
──要件事実論の視点からみた所得税法
伊藤滋夫
筆者は,本誌2023年1月号(連載第40回)146頁左欄と右欄において,次のように述べている。 「課税庁は,他の8種類の所得に該当するとはいえず雑所得にも該当するとはいえないことになる,納税者の具体的行為,つまり一時所得の評価根拠事実を抗弁として主張立証しなければならない。」〔略〕この場合に,抗弁の内容として「さらに進んだレベルの問題を考えるとすれば,②・③における『......かもしれない』ということをどのように主張立証するかという問題がある。この問題は,非常に困難な問題であるので,次回において改めて述べることにする。」