雑誌詳細

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2022年10月号

2022年8月20日発売号   1,700 円(税込)

特集

2022年通常国会で成立した主なビジネス法案

特別企画

「会社のルール・指示に従わない従業員」への労務対応

特集
2022年通常国会で成立した主なビジネス法案
2022年の通常国会は,6月15日に閉会しました。今国会では,経済安全保障推進法案の成立をはじめ,時流に沿ったさまざまな法律が成立しています。そこで,今国会で成立した主なビジネス法案について,その概要と企業への影響,留意点等をまとめました。
企業法務総合

〔総論〕第208回通常国会で成立した重要な法律
星 正彦

2022年7月には3年に1度の参院選が予定されていたことから,国会の延長がないように当初から審議する案件が絞られ,第208回通常国会では,令和4年度予算,原油価格・物価高騰等総合緊急対策補正予算のほか,新規の内閣提出法案61件が審議され,すべて成立した。内閣提出法案がすべて成立したのは26年ぶりのことである。

争訟・紛争解決

民事裁判手続におけるIT化を促進
改正民事訴訟法
大室幸子

2022年5月18日,民事訴訟法等の一部を改正する法律案が成立し,民事裁判手続のIT化等に関連する民事訴訟法の一部の規定が改正された(同法による改正を以下「改正法」といい,現行の民事訴訟法を「現行法」という)。改正法は,4年後の完全施行を目指して段階的に施行される予定である。

企業法務総合

「クッキー規制」導入で対応が急務
改正電気通信事業法
山郷琢也・溝端俊介・石田晃大

2022年6月13日に電気通信事業法の一部を改正する法律が成立した。本改正は,利用者情報の適正な取扱いに関する規律や,いわゆる「クッキー規制」と指摘されている利用者情報の外部送信規律など複数の改正項目が含まれており,多様な事業者に対して影響を及ぼし得るものとなっている。

ファイナンス

金融のデジタル化に向けた体制整備
改正資金決済法
右崎大輔・藤田侑也・松澤 瞭

資金決済に関する法律に係る今回の改正は,①金融サービスのデジタル化をふまえたステーブルコインに対する規制の導入,②マネー・ローンダリング防止等に対する国際的な取締強化をふまえた規制強化(具体的には,為替取引分析業に係る制度の創設,高額プリペイドカードに対する規制強化)が主な内容である。いずれも昨今の金融業界が抱える課題をふまえた改正内容といえる。なお,施行日は,公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日である。

企業法務総合

免責の範囲が不明確な条項が無効に
消費者契約法令和4年改正
松田知丈・大滝晴香

消費者契約法については,2016年,2018年と法改正が相次いだが,2022年6月1日に新たに法改正(以下「令和4年改正」という)がされ,2023年6月1日から施行される。令和4年改正は,2019年9月に公表された「消費者契約に関する検討会の報告書」(以下「検討会報告書」という)を受けての改正となる。検討会報告書から取捨選択等されながらも,事業者にとって一定の影響がある改正がなされたことから,令和4年改正の概要を解説するとともに,実務上の留意点を紹介する。

企業法務総合

自動運転実現や新しいモビリティ普及へ前進
改正道路交通法
戸嶋浩二・佐藤典仁・福澤寛人・秋田顕精・古橋 悠

政府は2022年度頃に,レベル4相当の限定地域での遠隔監視のみの無人自動運転移動サービスを実現することを目標として掲げてきた。また,昨今,普及が著しい電動キックボードや,物流におけるラストワンマイルを担うことが期待される自動配送ロボットのルールを整備することも必要とされてきた。これらを実現するため,2022年4月19日に道路交通法の一部を改正する法律(以下「改正道交法」という。以下に引用する条文は改正道交法のものを指す)が第208回通常国会で成立し,同年4月27日に公布された。改正道交法は,自動運転の実現や新しいモビリティの普及にとって,重要なマイルストーンとなるものである。

企業法務総合

侮辱罪の法定刑を引上げ
改正刑法
中澤佑一

近年社会問題化しているインターネット上での誹謗中傷対策の一環として,刑法が改正され,侮辱罪の法定刑が引き上げられた。従来きわめて軽微な法定刑が規定されていた侮辱罪だが,今回の改正で懲役や罰金を科すことも可能となった。本稿では,法定刑引上げに伴う実務上の影響や懸念点などについて解説する。

企業法務総合

ESG/SDGsに関連する新法・改正法
坂尾佑平

全世界的にESGやSDGsへの関心が高まるなかで,これらの分野に関連する立法や法改正が相次いでいる。本稿では,今国会で成立した法律のうち,ESG・SDGsとの関係で押さえておくべきものとして,「地球温暖化対策の推進に関する法律」「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の改正」「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」を解説する。

地平線
働き方のパラダイムシフトを考える
企業法務総合

伊藤真人

「働く」ということは,人々の生活の根幹をなし,その意義は単に生活のためだけにとどまらず,「自己実現」「自己表現」の達成や,より豊かな生活をおくるうえで欠かせないエッセンスでもある。「働き方」として,コロナ禍以前は,本社機能は都市部にあり,社員は「出社が原則」「1日8時間,週に40時間の労働」という固定概念があったように思える。それが,2020年春に発出された第1回目の緊急事態宣言を契機に,原則として「出社」から「在宅勤務」に舵を切った企業も多く,時代に合わせた柔軟な働き方が求められている。

Trend Eye
投資家ニーズに応える人的資本経営
企業法務総合

佐藤 文

人的資本は,岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の重点投資分野とされており,学び直しや,多様な働き方の推進,賃上げなど,働く人への投資の重要性に注目が集まっている。同じ人的資本への投資でも,幼児教育・保育の無償化等を大きく取り上げた,安倍内閣の「人づくり革命」と比べても働く人への投資が重視されていることがわかる。従前より,デジタル化や少子高齢化などの環境変化のなかで,人的資本などの無形資産が企業価値の源泉となっている,との議論がなされてきた。実際に,教育訓練への投資が企業の生産性を高めることを示唆する研究もある。

特別企画
「会社のルール・指示に従わない従業員」への労務対応
いつの時代も「問題社員」をめぐるトラブルが後を絶ちません。近年はテレワークの普及により営業秘密を持ち出すケースがみられたり,多様なワークスタイルが認められる一方で「ルール違反」の副業・兼業に従事する人も出てきています。これらに対し,人事上の措置としては減給や降格,配置転換などさまざまな選択肢がありますが,まずは労働契約上の根拠に基づいて検討することが求められます。本企画では,問題社員への対応策を包括的に整理し,かつ適切に実施するためのポイントを解説しました。労働法を見つめなおす契機としても有用です。
労働法

実効的な人事権の行使とその限界
平井 彩

働き方改革実行計画の公表,働き方改革関連法の施行,新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの実施等による柔軟な働き方の急拡大により,これまで以上に,労働者には雇用契約上の義務に関する理解と自律が求められ,使用者には従前以上に適切な労務管理が求められている。そこで,本稿では,改めて労働契約上の権利義務の内容を確認したうえで,パワーハラスメント(以下「パワハラ」という)事例を題材に,労務問題発生時に,使用者が行使し得る人事措置を紹介することとしたい。

労働法

「昇進・配置転換・転勤拒否」に対する考え方
向井 蘭

配置転換・転勤命令を断る事例が若手従業員を中心に徐々に増えてきている。特に転勤についてはその傾向が顕著で,転勤の打診をしただけで退職してしまう事例もある。昇進についても同様で,本来拒否されるはずがない昇進を拒否する従業員も少しずつ増えてきている。このような現代型「昇進・配置転換・転勤拒否」に対してどう対応したらよいのか,人事措置の判断ポイントを解説することとする。

労働法

「降格」の実務対応
樋口陽亮

ルールに従わない社員に対する実務上の対応として,降格をすることが考えられる。降格の当否については,その内容・性質・目的等に応じた検討が肝要である。特に降格に伴う賃金減額をする場合は,降格やそれに伴う賃金減額について労働契約上の根拠があるのか,権限の濫用とならないかという観点から慎重に検討をする必要がある。

労働法

ルール違反の副業・兼業への人事上の対処
徳山佳祐

近年,2018年のモデル就業規則に続き,2020年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されるなど,副業・兼業の促進に向けた政府の前向きな取組みが続いている。これらに加え,新型コロナウイルスの感染拡大による働き方の変容も相まって,実際に副業・兼業を解禁する傾向が表れている。他方で,会社として望ましくない副業・兼業の事象も生じており,それへの適切な対処が課題となっている会社も少なくない。本稿では,そのような課 題への実務的なアプローチを考える。

実務解説
再改訂版CGSガイドラインの概要と企業対応
企業法務総合

玉井裕子・ 水越恭平

2022年7月19日,経済産業省は,CGS研究会(第3期)における議論・検討を経て,「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」を再改訂した。今回の改訂では,中長期的な企業価値の向上と執行側の機能の強化の観点から,さまざまな重要な提言を行っており,本稿では今後の実務対応に参考となる点を中心にその概要を解説する。

知財

「ゆっくり茶番劇」騒動を解説
知財を活かす商標登録へのアプローチ
河野冬樹

2022年5月に,柚葉氏が「ゆっくり茶番劇」の商標を取得した事実および,今後使用料を請求すると表明した事実については,インターネット上を中心に,大きな騒ぎとなった。本稿では,かかる騒動から読み取ることのできる特許庁における商標審査の限界,および,それをふまえて企業の知財戦略がいかにあるべきであるかについて考察する。

企業法務総合

社外取締役に何を期待するのか
――東芝の株主総会で見つめなおすガバナンスのあり方
弥永真生

本年6月の株式会社東芝の株主総会で主要株主であるファンドの幹部が社外取締役として選任されたが,そのような者を社外取締役候補者とすることの是非については議論があり得,社外取締役である指名委員会委員の1人はこれに反対した。

企業法務総合

新市場創出サービスとは何か
――ルール形成支援事業の産業化を目指す経済産業省の取組み
岩間郁乃

ルール形成に積極的に取り組む企業は,平均的な日本企業と比較して,年平均売上高成長率が約5倍となることが,経済産業省の調査で明らかになった。経済産業省では,日本企業によるルール形成を通じた新市場創出を後押しすべく,企業の外部環境の適切な構築を支援するサービスを「新市場創出サービス」と名付け,実態調査を行った。本稿では,「新市場創出サービス」が求められる背景とその内容,今後の展望等を紹介する。

企業法務総合

「『刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会』取りまとめ報告書」の解説
刑事手続におけるIT活用と企業対応
山田 徹

刑事手続の分野においても,IT化の流れが急速に進んでいる。2022年3月,法務省に設置された検討会は,IT活用に向けた具体的な方策についての議論の結果を報告書としてとりまとめ,公表した。そこで示された一部の方策は,早ければ2023年中にも実現する可能性がある。本稿では,検討会の報告書で示された刑事手続におけるIT活用の方策について概観するとともに,企業として留意すべき事項について若干の考察を加えることとする。

国際 テクノロジー・AI

EU新SCC/IDTAをめぐるデータ移転の実務対応
岩村浩幸

世界の国々の多くの個人情報保護法のもとで,国外・域外への個人情報の移転に関して特定の条件を満たすことが求められることがスタンダードとなりつつある。特にこの趨勢を作り上げたEUと英国においては,具体的にとるべき施策が示されているが,どの程度踏み込んだ対策を取るべきかは日本企業にはわかりにくい。本稿では,個人情報を域外移転する際に必要となる施策と日系企業がとるべきアプローチを解説する。

税務

「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義
ユニバーサルミュージック事件最高裁判決
山口亮子

本判決(最判令4.4.21裁判所ウェブサイト参照)は,ユニバーサルミュージック合同会社(以下,「被上告人」という)をめぐる国際的な組織再編について,課税当局が法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)を適用し,被上告人の支払利息の損金算入について法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるとして否認した事件の最高裁判決である。本稿では,法人税法132条における「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」(以下,「不当減少要件」という)の意義について,同法132条の2における不当減少要件との違いを含め,解説する。

企業法務総合

PICK UP 法律実務書
取引先リスク管理Q&A〔第2版〕
権田修一

本書は,与信管理の実務担当者のための手引書である。著者に寄せられた「与信管理実務に関する相談」について,相談の頻度が高い順に82のQが設定され,見開き2頁で簡にして要を得た回答がなされている。

国際

日系現地法人の経営立て直し策としても期待
中国初の「会社休眠制度」の内容と活用可能性
原 洁

中国には,長い間,会社休眠制度が存在しなかったが,2022年3月1日に施行された「中華人民共和国市場主体登記管理条例」(以下「管理条例」という)が,この局面を一変させた。管理条例は,条文形式により事業主体の休眠登記制度を創設したのである。これは,会社の休眠行為を規律するうえで重要な意義を有するものであり,日系企業も,制度の内容について非常に大きな関心を寄せている。

連載
最新判例アンテナ
第50回 社員が2名の合同会社において,1名の社員の意思に基づき,訴えをもって他の1名の社員の除名を認めた事例
会社法

三笘 裕・萩原宏紀

X社は,羽田空港内の格納庫等を取得,賃貸および転売することを目的として設立された2名の社員(A社および一般社団法人であるY法人)からなる合同会社である。A社は事業資金の調達等を,Y法人は国土交通省からの営業許可の取得や資産等の買取り等を,それぞれ担当する旨合意していた。甲は,X社の業務執行社員かつ代表社員であるY法人の職務執行者の地位にあった(以下,かかる甲の地位を「本件職務執行者」という)。

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所 編

企業法務総合

ワンポイントで解説!技術と法の新世界
第4回 空飛ぶクルマ
井深 大

空飛ぶクルマに明確な定義はなく,空陸両用車やeVTOL(electric Vertical Take-Off andLanding,電動垂直離着陸機)を含む概念として用いられる。日本では主にeVTOLを指して語られることが多く,国土交通省航空局次世代航空モビリティ企画室が公表した「『空飛ぶクルマ』の試験飛行等に係る航空法の適用関係のガイドライン」においても,電動で自動操縦や垂直離着陸が可能な航空機が想定されている。

企業法務総合

Level up!法学部教育――企業で活躍する人材の育成
第4回 演習(ゼミ)講義の重要性
石川文夫

今回は,2021年度に年間で約30回実施したゼミについて,具体的に紹介したい。この連載のなかで,法学部教育において最も大事なゴールを「企業のビジネス遂行に活用可能な応用力の醸成」とした。私は世の中で実施されているビジネスを5つのスキーム(ライセンス・共同開発・外部委託・合弁会社・M&A)に分類し,これらを総称してコラボレーションと呼んでいる。

企業法務総合 国際

企業法務のための経済安全保障
最終回 経済安全保障を読み解く主要11分野
――国家秘密保全(セキュリティ・クリアランス),研究インテグリティ,入国管理編
大川信太郎

本連載では,行政官として経済安全保障分野で政策立案・審査に従事していた弁護士が経済安全保障分野の法令について体系的に解説する。連載の第8回目(最終回)では,経済安全保障を読み解く主要11分野のうち国家秘密保全(セキュリティ・クリアランス),研究インテグリティおよび入国管理について解説する。

企業法務総合

ビジネスパーソンのためのSDGs相談室
第3回 SDGsと非財務情報
矢本浩教

第2回においては,「SDGsコンパス」を用いてSDGsへの取組みの方法について解説しました。近年は財務的な価値(有形資産)だけでなく,非財務の価値(無形資産)が株価形成など企業価値の向上において重要な要素と言われています。SDGsへの取組みは自社の非財務価値を高めることに役立つといえるでしょう。

企業法務総合

社会人資格のつまみ食い!
第5回 不動産鑑定士・宅建士
平木太生

第5回目は不動産関連の資格として,不動産鑑定士と宅建士を紹介します。最近は不動産価格の高騰にあわせて不動産投資をする方が増えており,不動産に関する資格も注目を浴びています。

企業法務総合

マンガで学ぼう!! 法務のきほん
第8話 ハラスメントと企業の対応
淵邊善彦・木村容子

ハラスメントとは,相手の意に反する行為によって不快な感情を抱かせることです。近時は,セクハラ・パワハラ以外にも,モラハラ,マタハラ,アルハラなど多種多様なものがあります。職場のハラスメントは,企業のイメージダウンや,従業員のモチベーション低下,被害者に対する損害賠償義務の発生等の悪影響を生じさせることから,その対策は重要な課題の1つです。

企業法務総合

LGBTQと企業~訴訟トラブル予防,企業価値の向上
第4回 性的指向・性自認に関するハラスメントと対応
神谷悠一

改正労働施策総合推進法は,2022年4月から,いわゆる「パワーハラスメント」の防止措置義務を中小企業も含めたすべての職場に対して課している。2020年6月に適用されていた大企業・地方自治体も含め,全面適用となった形である。

国際

グローバル・インベスティゲーションの実務
第1回 グローバル・インベスティゲーションと調査協力
深水大輔・Lanny A. Breuer・Noam Kulter・John Lane

ビジネスのグローバル化やボーダーレス化が進むにつれ,競争法分野以外でも,いわゆるFCPA違反の疑いなどにより,日本企業が海外当局による調査対象となるリスクが現実的なものとなっている。本連載においては,この種の事案に携わる日米の弁護士が,米国調査当局による調査を中心に,日本の実務との違いを意識しつつ,グローバル・インベスティゲーションにおける実務上のポイント,留意点を紹介していく。

企業法務総合

リスクマッピングでみる サプライチェーンの法務対応
第3回 ESGと法的リスク
吉澤 尚・鈴木修平・ 宮川 拓

連載第2回ではバリューチェーンマッピングの要素のほか,ユニクロ製品の米国での陸揚げ差止め,小島プレス工業へのサイバー攻撃のケースについて解説した。そこで,今回および次回はバリューチェーンマッピングの要素の1つであるESG/人権について概説したうえで,法的リスクと離れているものとみられがちなESGについて,その関連性を解説する。

労働法

対話で学ぶ 人事労務の周辺学
第4回 人事労務と知的財産法
嘉納英樹

労働者の職務上の発明や著作について企業が権利を得ることができるかは,極めて立法政策的な問題です。これについて,現在の特許法および著作権法は,一定の回答を出しています。連載第4回では職務発明および職務著作,ならびに最近の法改正に焦点をあて,知的財産法との交錯を,弁護士Aと弁護士兼弁理士Bの対話によって解説します。なお,企業の営業秘密の保護については,「刑事法との交錯」で取り扱う予定です。

労働法 国際

日本の法務担当者が知っておくべき アメリカの労働法制
第3回 営業秘密と秘密保持
西出智幸・貞 嘉徳・高田翔行・Jose M. Jara・Phillip H. Wang

連載第3回となる本稿では,企業が保有する最も重要な情報の1つである営業秘密について,まず,アメリカ法のもとで保護されるための要件を解説したうえで,従業員による不正な開示や使用を防止するために,使用者が雇用の各段階で取り得る方策を示す。

企業法務総合

続・業種別 M&Aにおける法務デュー・ディリジェンスの手引き
第7回 Fintech企業②
宮下 央・田中健太郎・白澤光音

連載第7回では,前号に続きFintech企業を取り上げる。前号においては,Fintech企業の概要および事業に関する法務DDに関連して検討すべきチェックポイントを解説したが,本稿では,Fintech企業に関する許認可,コンプライアンスおよび紛争の観点から検討すべきものを解説することとしたい。

企業法務総合 ファイナンス

法務部がおさえておきたい 気候変動対応と脱炭素経営
第4回 脱炭素実現のためのファイナンス
三上二郎

脱炭素化をファイナンスを用いて支援する方向性としては,①脱炭素化に資するプロジェクトを推進するための資金を供与する形で脱炭素化を支援する方向,②企業がGHGの削減などの目標を掲げ,それを達成した場合には金利を下げるなどのインセンティブを与える,または,達成できなかった場合にはペナルティを課すことによりディスインセンティブを与える形で,企業による脱炭素化を後押しする方向,③業種の性質上,脱炭素化が容易ではない業種を取り残さず,そのような業種における低炭素化の取組みを支援することにより脱炭素化への移行(トランジション)を図る方向がある。

特別収録
ビジネス実務法務検定試験
3級 演習問題
企業法務総合