契約書の作成プロセスと各者の役割
辛川力太(阿部・井窪・片山法律事務所)
本特集は,さまざまな企業の法務部門において,契約書業務において悩み,考え,試行錯誤されたプロセスを集積して紹介するものである。筆者も短い期間ではあるが,ある企業の法務部に出向し,多くのことを学んだ。その頃を思い出しつつ,改めて,契約書を作成する意義や作成プロセス,契約書の作成にあたっての各者の関係性・役割分担,特に企業の法務担当者が果たすべき(法務担当者でないと果たせない)役割などについて整理を試みる。
取引基本契約書と「責任ある企業行動」
──制裁条項とCSR/ESG条項
大場英樹(サンスター株式会社)
企業間の取引基本契約にて,これまで目にしなかった新たな条項が散見されている。そのなかでも,特に重要と考えられる経済安全保障に関する条項およびCSR╱ESG条項について,筆者の検討と結論を各社の参考としていただくべく紹介する。
「取引基本契約書」に修正要望があった場合の検討と対応
江口辰彬(キヤノン株式会社)
部品の調達取引に使用する取引基本契約を取引先と締結するにあたり,取引先からひな型書式の文言修正を要望されることも多い。それに対してどのような視点・視座からどのように回答し,合意形成を図るかについて,筆者の経験に基づき事例を紹介する。
クロスボーダー売買契約における品質保証条項の交渉と工夫
吉田泰崇(ユニ・チャーム株式会社)
クロスボーダーの売買契約,とりわけ交渉において論点となることが多い品質保証条項に焦点をあてて,B to Cビジネスを展開するメーカーにおける契約交渉過程や解決策を取り上げる。
業務委託契約における委託内容の明確化
河野大輔(日本精工株式会社)
業務委託契約における委託内容は,後日の紛争発生時に解決基準とすることができるよう,明確に定めるべきである。さもないと,相手方に対する契約違反の追求に支障が出るおそれがある。どの程度具体的に記載すべきかは,案件ごとの個別具体的な事情やリスクを考慮して判断すべきである。
業務委託契約における帰属の明示
──成果物の知財保護,検査基準
石原遥平(株式会社スペースマーケット)
契約書レビューにおいて,直面する機会が秘密保持契約書とならんで最も多いと思われる業務委託契約書について,共通して問題になり得る①成果物の知的財産権の帰属,②成果物の検査に関する各条項,③その他の論点について解説する。
ライセンスを受ける立場での契約審査時の着眼点と
契約交渉に際しての心構え
宮川統一(花王株式会社)
ライセンス契約においては,ライセンスを付与する側なのか,受ける側なのか,どちらの立場にあるかによって,往々にして契約交渉上の優劣が決まってくる。本稿ではライセンスを受ける立場での契約審査時の着眼点と契約交渉に際しての心構えを紹介する。
M&A契約における損害賠償条項のネゴシエーション
山本英龍(丸紅株式会社)
M&A契約において損害賠償条項は売主・買主ともに金銭的に大きな影響を事後的に受け得る重要な条項である。一筋縄ではいかない交渉で,何を重視してどのように解決するのか,さまざまな観点から検討することが重要である。
ベンチャー企業を対象とする
M&A契約の交渉妥結プロセス
今仲 翔(株式会社メドレー)
ベンチャー企業を対象とするM&Aでは,大企業等の事業会社を買収する場合とは異なる悩みが生じ,交渉が難航することも多い。本稿では,ベンチャー企業を対象とするM&Aにおける悩みポイントおよびその解決プロセスについて,具体的事例も交えて紹介する。
「秘密保持契約書」の交渉──秘密情報の範囲を中心に
橋本孝史(江崎グリコ株式会社)
秘密保持契約書は,企業法務の現場で最も頻繁にレビューされる契約書の1つである。本稿では,複数ある秘密保持契約の論点のなかから,特に重要と思われる問題に焦点を当て,企業の法務部門の立場から,注意すべき事項について検討を加えたい。
秘密情報開示のリスクコントロール
酒井智也(株式会社Hubble)
契約書業務において,日常的に検討することになる秘密保持契約書は,内容としては基本的なものが多いものの,提供情報の形式や種類,情報伝達の流れが複雑であり,またビジネスの開始段階で締結することが多いことから,ビジネス全体における位置づけをどう考えるかなど,頭を悩ませることも多い。今回は,交渉力が弱く,契約書内での交渉が難しい状況下において,いかに情報提供リスクをコントロールしていくかについて考えたい。
プラットフォーム利用規約における検討事項
石原一樹(渥美坂井法律事務所)・ 森田大夢(株式会社ココナラ)
本稿では,ユーザー同士による取引が行われるサービス(以下「ユーザー間取引プラットフォーム」という)を想定し,その利用規約の条項作成について解説する。特に,プラットフォームの運営において規約の作成はサービス運営方法の一手段であり,サービス運営上抱える問題をどのように解決するのかという点を意識して記載する。以下,売主または受託者を「出品者」,買主または委託者を「購入者」という。
「クラウドサービス販売店契約書」の新規作成
西田智行(株式会社日立製作所)
本稿では,販売店経由でクラウドサービスを提供する取引において,販売店と取り交わす契約書の作成について悩んだポイント,法的スキームの検討および「利用権売買型」の契約条項例について紹介する。
D&O保険にサイドBの補償は必要か
山越誠司(オリックス株式会社)
D&O保険にはサイドAとサイドBという補償条項がある。サイドAは役員の資産を守る補償で,サイドBは会社の資産を守る補償である。この2つの補償を1つの保険契約でまとめたのがD&O保険になる。サイドBの補償の要否は,各会社の方針次第で結論が異なるであろう。
マイノリティ出資における出資方法の検討
橋本 大・中山一道(freee株式会社)
適切な出資方法の選定は,出資の成否に大きな影響を与える。本稿では,利用されるケースが増えてきているコンバーティブル投資手段も選択肢の1つとしたうえで,マイノリティ出資時の出資方法選定の考え方について概説を試みるとともに,ポイントとなる条項として残余財産分配・みなし清算条項を取り上げ紹介する。
クロスボーダー取引をめぐる契約書の英文化
佐藤弘太郎(アクセンチュア株式会社)
英文契約書が必要となる場合,自社の日本語契約書を機械翻訳にかけ,あるいは,ビジネス担当者の英訳に任せて問題ないのだろうか。本稿では,日本語の契約書等を英文化するにあたり,法務担当者がチェックすべき基本ポイントについて,特に実務上議論になりがちな具体的な条項をあげて解説する。
契約業務のアウトソーシング
──ツールを用いた外部連携,タスク管理の実現
小嶋陽太・上原 慧(株式会社SmartHR)
契約業務のボリュームが急増している,または法務部門のリソースが不足している等の状況下においては,契約業務の一部をアウトソーシングすることも検討に値しよう。本稿では,改めてアウトソーシングの利点や懸念点を整理しつつ,当社が直面した課題やその解決のためにとっている取組みを紹介する。
電子契約システム導入のプロセスと課題
三村俊介(キリンホールディングス株式会社)
コロナ禍を契機として一気に広まるかと思われた電子契約だが,その普及速度はやや落ち着きをみせているようである。当社では2021年9月に電子契約を導入した。その際の経験が,導入を検討している企業の方々の参考になれば幸いである。
契約業務の電子化オペレーション
浅原弘明(株式会社MICIN)
当社では,契約に関連する2つのシステムを用いて,締結および管理の電子化が一定程度進んでいる。本格的に契約業務の電子化に着手してから間もなく,まだまだ道半ばであるが,一事例として読者の方の参考になれば幸いと思い,その過程で悩んだ点や対応を共有する。
「AI契約審査サービス」導入・活用のポイント
照山浩由(株式会社SHIFT)
AIを利用した契約審査サービスが増えているが,実際に活用されているケースはまだまだ少ないように感じる。当社においても活用に向けた試行錯誤の途中であるが,導入時の課題感や活用に向けたポイントについて,簡単に紹介したいと思う。
"法務の先"を見る リモートワークの課題解決
千葉大吾(株式会社マクアケ)
リモートワークの課題は,①セキュリティ,②規程,③押印,④生産性,⑤コミュニケーション等があるが,企業法務においてはビジネスの手段として法律を活用する立場にあるため,特に⑤について重点的に事例を交えて紹介する。
ナレッジマネジメントの仕組みを用いた
契約法務人材の育成
田中 愛(株式会社ニトリホールディングス)
当社法務室は,この3年で組織体制が大きく変わった。その間,法務業務未経験者の受入れに耐え得る組織になるため,そしてさらにより多くの法務人材育成のため,ITを活用したナレッジマネジメントの仕組みを構築してきた。本稿では,そのうち契約法務に関するものについて,いくつか実例を紹介する。
他部署と作り上げる 「信頼される法務」への意識
飯田裕子(LAPRAS株式会社)
本稿では,営業担当者と法務担当者が信頼関係を構築し連携することで,契約書審査の負担軽減や審査期間を短縮した事例を紹介する。なお,当社は法務担当者1名,営業担当者複数名のITベンチャー企業であり,主に自社サービスを導入してもらう法人顧客との契約書締結について述べるため,自社ゆえに可能となる連携事案も含まれていることをご容赦いただきたい。
契約書業務における財務経理との連携
堀切一成(株式会社DouYu Japan)
法務が契約書業務を行ううえで連携が必要となる部署は会社によってさまざまであるが,どの会社にも存在し,かつ連携が必要不可欠な部署が財務経理である。本稿では,事例を基に財務経理との連携が必要となる際の勘どころについて解説する。
契約書管理システム導入のポイント
鶴瀬弘太朗・前原幸佳(大塚製薬株式会社)
当社では,従来の契約書管理の課題を解決するため,新しい契約書管理システムを導入した。当社の導入事例が各企業の参考となるよう,社内提案から各部署への展開に至るまでの過程において,実務上悩んだことと,それらの解決策を紹介する。
一元管理で効率化 スタートアップにおける契約書管理
草原敦夫(READYFOR株式会社)
契約書管理においては,まずは契約書の保管場所を特定し,その内容を参照できる状態にすることが重要となる。当社では,電子契約サービスを利用して契約データを電子的に一元管理することを目指しており,本稿では,その悩みと実務対応について論じる。
「男性育休」が与える影響
──数字でみる労働経済学的アプローチ
山口慎太郎
現代の若手・中堅男性社員にとって,育休を取得できることは大きな意味を持つ。優秀な社員の採用を可能にし,彼らの離職を防ぐうえで,育児休業制度は有効な手段である。業績への悪影響を懸念する声もあるが,育休取得は数カ月前から予期することができるため,十分対処が可能である。たとえ1カ月であっても育休取得は男性社員の人生を変える。社員が充実した人生を送るうえで,育休制度は大きな助けとなるのだ。
総論 改正育児・介護休業法をめぐる企業対応
岸田鑑彦
2022年4月1日,10月1日施行の改正育児・介護休業法(以下「法」という)は,あらゆる事業者が対応をしなければならない問題ではあるものの,現場からは「わが社では男性が育児休業を取得した例がないため今後もおそらくないだろう」という声も聞こえてくる。しかし,今回の改正は,男性の育児休業取得を推進する内容となっており,今まであまり例がなかった男性の育児休業の申出に事業主が直面する機会も増えてくる。事業主としては,今回の改正点を押さえ,育児休業を取得する従業員への理解と配慮を通じた社内環境の見直し,整備が必要不可欠である。
改正法対応 マタハラ・パタハラQ&A
東 志穂・宮島朝子
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについて,近時の裁判例や令和3年の育児・介護休業法改正をふまえた実務対応が必要である。この点を中心とした解説をQ&A方式にて行うこととする。
全社的なフォローで支える
「ファミリーサポート」の取組み
奥村泉希
出産・育児による労働者の離職を防ぎ,仕事と育児を両立することを目的に,改正育児・介護休業法が2022年4月より段階的に施行されている。改正に伴い,女性に限らず,男性が育児休業を取得しやすい環境づくりが求められている。株式会社エイチーム(以下「当社」という)では,社員が安心して長期的なキャリアを形成するための働き方支援「ファミリーサポート制度」を2017年より導入。本稿では,育児休業取得の推進を目指すための社内環境づくりや社内制度について紹介する。
「Co育てプロジェクト」で男性育休を後押し
宮崎友恵
江崎グリコ株式会社(以下「当社」という)にとって男性育休の推進は,社内の働き方改革という点のみならず,「事業を通じて子どもの心身の健康に寄与したい」という創業以来の志を実現するために,まずは社員から取り組むという視点を持って取り組んでいる。本稿では,その具体的取組みについて述べていく。
平野 晋
制御不可能性,不透明性,および差別的な判断を下すおそれ等々の欠点も多いAIは,人々に不安を抱かせている。そのAIを社会実装するために必要な知見として今,「ELSI」(Ethical, Legal, and Social Implications)の重要性が増している。AIの倫理的・法的・社会的問題を予測し,発見し,かつ解決していく必要性が,重視されているのである。
森下幸典
近年,経営アジェンダとしての地政学リスクの重要性が高まっている。米中デカップリング(経済の分断)や経済安全保障推進法などを背景に,供給網の見直しやリスク管理体制強化など,さまざまな企業対応が求められている。本稿では,地政学リスクが高まる背景,同リスク対応のあり方,有事における環境対応方法を論じ,今求められる地政学的経営を概観したい。
渡邉純子
近年,企業に人権尊重を義務付ける国内法の制定を含む各種政策が,世界各国で急速に進められている。そのなかで,2022年2月に欧州委員会から提出された,「コーポレート・サステナビリティ・デューデリジェンスに関する指令案」(以下「本法案」という)は,多くの日本企業にも影響を及ぼすものとして注目を集めている。本稿では,本法案の重要性,概要および日本企業に求められる取組みについて解説する。
新規ビジネス開始時の行政機関対応の基礎
木村健太郎
企業が新規ビジネスを開始するには,それは法令で規制されている行為か,規制されているときにはどのような対処をすればビジネスとして実践可能かが問題になることが多い。そして,規制法のほとんどは行政法である。本稿では,新規ビジネスを始めるにあたり不可避であることも多い行政機関との折衝について,初動,リサーチ,弁護士への相談,アプローチの選定,行政機関とのコミュニケーション,制度化されたルールメイキングの手法の利用,という時系列に分けて解説する。
事業連携・出資の適正化へ
「スタートアップ指針」のポイント
矢上浄子
ウィズコロナ・ポストコロナのダイナミズムのなかで,われわれの社会制度や生活習慣は急速に変化しつつある。そのような変化の過程で生じる社会的な課題を迅速に解決するためには,企業によるオープンイノベーションの実践が不可欠である。イノベーションの重要な担い手となるのがスタートアップであるが,日本においては成長するスタートアップが欧米・中国に比べ格段に少ないことが指摘されている。そのため,政府の成長戦略会議でも言及されているとおり,スタートアップの創出を促進するエコシステムの整備が急務となっている。
中国会社法改正法案の概要と日本企業に与える影響
裘 索
現行の「中華人民共和国会社法」(以下「会社法」という)では,中小投資者と債権者に対する保護の不足や不完全な会社責任追及制度等,既存の法令によっては,解決できない問題が存在している。本稿は,2021年12月24日に公開され,意見募集を求められた「中華人民共和国会社法(改正案)」(以下「改正案」という)について,修正点と現行「会社法」の比較をしつつ,日系企業への影響と実務対応について解説する。
三苫 裕・五十嵐紀史
X社(相手方・原告)は,同社で発生した不祥事(以下「本件不祥事」という)に関し,同社元取締役のYら(抗告人・被告)の任務懈怠により損害を被ったとして,Yらに対し,損害賠償請求訴訟(以下「基本事件」という)を提起した。X社は,基本事件の提起に先立ち,本件不祥事に関する「取締役責任調査委員会」(以下「本件委員会」という)を設置して調査を行っていたところ,本件委員会の外部委員であった弁護士A1およびA2(以下「Aら」という)が,基本事件においてX社の訴訟代理人に就任したことから,Yらは,弁護士法25条2号・4号および5号に反するとして,Aらの基本事件における訴訟行為の排除を求める旨の申立てを行った。基本事件の受訴裁判所が当該申立てには理由がないとして却下したため,Yらが抗告した。
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編
ワンポイントで解説!技術と法の新世界
第2回 NFT
井深 大
NFTとはNon-Fungible Tokenの略語であり,直訳すると「代替不可能なトークン」となる。暗号資産やNFTなど,ブロックチェーン上の財産となるようなデータをトークンというが,ビットコインなどの暗号資産がFungible Token(代替可能なトークン)であるのに対し,NFTは固有の価値を有する点に特徴がある。この特徴はブロックチェーンの耐改ざん性により担保されており,データと保有者の紐づけが唯一無二であるとの証明がなされる結果,固有の価値を有するデータとして流通させることが可能となり,デジタルアートのような一点ものや数量限定の作品などに活用されている。
企業法務のための経済安全保障
第7回 経済安全保障を読み解く主要11分野
――ICTS/サイバーセキュリティ編
大川信太郎
本連載では,行政官として経済安全保障分野で政策立案・審査に従事していた弁護士が経済安全保障分野の法令について体系的に解説する。連載の第7回目では,経済安全保障を読み解く主要11分野のうちICTS/サイバーセキュリティについて解説する。
事例でわかる ヘルスケア業界への異業種参入ポイント
第2回 ヘルスケアアプリの開発
堀尾貴将・中野進一郎
近年,異業種からヘルスケア業界へ参入する企業が増加しており,製薬会社等においても,従来の医薬品・医療機器以外のヘルスケア商品にビジネスチャンスを見出す動きが活発化している。本連載では,具体的な事例をもとに,ヘルスケア業界の基本的な規制や参入時の留意点等を平易に解説する。連載第2回では,企業がヘルスケアアプリを開発するという事例をもとに解説する。
解説動画でらくらくマスター! 新入法務部員が覚えたい契約英単語・表現
最終回 合弁契約で頻出する英単語と表現その②
本郷貴裕
今回も合弁契約に関する表現を取り上げます。特に,合弁契約の交渉において最も議論となる傾向がある,解消方法に関する表現を扱います。似たようなものやイメージしにくいものが多いですが,単語の中に含まれているヒントをとっかかりに,比較しながら学ぶと頭に入りやすいです。しっかり身につけましょう!なお,今回でこの連載は終了です。1年間お疲れさまでした。そしてありがとうございました。ぜひ,この1年でご紹介した英単語を復習し,英語→日本語だけでなく,日本語→英語も瞬間的にイメージできるように練習してみてください。そうすれば,ライティングや交渉の時にスムーズに単語が出てくるようになります。
Level up!法学部教育――企業で活躍する人材の育成
第2回 法学部のゴールを目指した講義例
石川文夫
筆者はこれまで5つの異なる大学や大学院で講義を行ってきたが,今回は具体的な講義例を紹介したい。まず,講義は挨拶からはじまる。挨拶は学生である前に人として欠かすことのできない礼儀である。そして,毎回の講義時間の冒頭の10分~15分は「TOPICの時間」にあてている。TOPICでは筆者が抽出した海外,国内のビジネス・政治等あらゆる分野において注目,認識すべき報道事案資料を配布し,適宜解説を行う。配布する報道事案は最低でも10件以上,多い場合は20件を超えるが,特に重要な事案は個別に取り上げて筆者より詳細な解説を行う。
新連載 ビジネスパーソンのための SDGs相談室
第1回 そもそもSDGsとは?
坂 昌樹
SDGsへの関心が高まっている昨今,本連載では話題のトピックについて,SDGs×法律・会計・労務等の各専門家が,ビジネスパーソンの疑問に答える形式で可能な限り分かりやすくお伝えしていきます。なお右頁のイラストは,SDGs17項目を擬人化したキャラクターで,連載第2回目以降も登場予定です。
マンガで学ぼう!! 法務のきほん
第6話 消費者保護と法務部門
淵邊善彦・木村容子
消費者を顧客とする取引(BtoC)を行う企業の法務部門は,消費者保護に関連する法律の理解が不可欠です。メーカーの法務部門であっても,EC取引による消費者との直接取引(DtoC)に関わる機会が増えています。消費者保護に関連する法律は,生命・身体に関するもの(製造物責任法,消費生活用製品安全法,食品衛生法等),取引に関するもの(消費者契約法,特定商取引法,割賦販売法等),表示に関するもの(景品表示法,食品表示法等)など多岐にわたります。
新連載 リスクマッピングでみる サプライチェーンの法務対応
第1回 バリューチェーンリスクマッピング
吉澤 尚・宮川 拓・鈴木修平
本連載は,企業のバリューチェーン上に潜むリスクをマッピングする方法を紹介し,リスクへの対処および事業機会の創出のツールを提供するものである。バリューチェーンの強靭化にはそこに潜むリスクへの対処が不可欠である。バリューチェーンリスクマッピングは,バリューチェーンを図示しその上にリスクをマッピングすることによって,事業のどの段階にどのようなリスクが潜んでいるのかを明らかにすることでリスクへ対処することを可能にするとともに,かかる検討を通じて新しい事業機会の発見にもつなげることを目的とするものである。
社会人資格のつまみ食い!
第3回 司法書士・行政書士・ビジネス実務法務検定
平木太生
第3回目は法律系資格です。連載第1回では司法試験・予備試験を紹介しましたが,やはり司法試験は日本を代表する最難関試験でもあり,難易度としても勉強時間としても,なかなかチャレンジすることが難しい場合があります。そこで今回は,司法試験以外の法律系資格として司法書士・行政書士・ビジネス実務法務検定を紹介します。
LGBTQと企業~訴訟トラブル予防,企業価値の向上
第2回 LGBTQ当事者をめぐる企業法務関連裁判例
鈴木朋絵
長らくLGBTに対する差別や違法行為は存在してきたが,諸外国に比べれば全体の裁判例の数は決して多くない。たとえば,刑事事件では性別適合手術をした医師が当時の優生保護法違反等に問われた事件(東京高裁昭44.11.11判時639号107頁)や同性の交際相手がいることを暴露すると捜査機関が脅して虚偽の自白を迫った富士高校放火事件(東京高裁昭53.3.29判時892号29頁。無罪確定)があった。
新連載 税務の有事,その時どうする?
第1回 税務調査の基礎知識
山口亮子・今村
潤・迫野馨恵
本連載は,法務部において対応が求められ得る税務上の問題について,押さえておきたい基礎知識・ポイントを解説することを目的とし,税務調査の対応,取引先の破綻に伴う税務問題について複数回に分けて解説します。第1回である本稿では,税務調査の基礎知識,税務調査対応においてよくある質問について取り上げます。
新連載 日本の法務担当者が知っておくべき アメリカの労働法制
第1回 雇用関係の終了と正当事由の要否
西出智幸・貞 嘉徳・高田翔行・Jose M. Jara・Phillip H. Wang
本連載では,6回に分けて,労働契約書等の具体的な条項案を示しながら,日本の法務担当者が知っておくべきアメリカの労働法制の重要なポイントを解説する。第1回は,雇用関係の終了と正当事由の要否に関するルールを取り上げる。
対話で学ぶ 人事労務の周辺学
第2回 人事労務と経済法・競争法
嘉納英樹
「伝統的な労働法」の保護の範疇は「労働者」ですが,これは,自社が専属的に直接雇用し指揮監督下に置く対象者を指しています。しかし,昨今では,この範疇から外れても保護を与えようという方向性が顕著になっています。すなわち,経済法・競争法により個人事業主やサプライヤーの保護が,労働法により他社の労働者の保護が,徐々に認められてきています。連載第2回では経済法・競争法との交錯を,弁護士Aと弁護士Bの対話によって解説します。
類型別 不正・不祥事への初動対応
最終回 企業幹部の私生活上の犯罪
瀧脇將雄・山内洋嗣・山田 徹・山内裕雅
今回は,企業幹部の私生活上の犯罪をテーマとする。上場企業の取締役が酒に酔って逮捕されたという事例を題材に,あるべき初動対応と押さえておくべき法令を紹介する。
法務部がおさえておきたい 気候変動対応と脱炭素経営
第2回 電力の脱炭素化
藤本祐太郎
前号(2022年7月号)では,人為起源の温室効果ガス(GHG)の主要な排出者である企業において,気候変動および脱炭素経営は,リスクと機会,そして財務的インパクトを与える重要な経営課題となっており,さまざまな法制度やイニシアティブ等の枠組みが創設されていることを説明した。