改正の全体像と施行日までの対応スケジュール
田中浩之・北山 昇
本稿は本特集の冒頭記事として、個人情報保護法の改正の全体像を概略し、これから改正法全面施行日である2022年4月1日までのTO DOと想定される対応スケジュールについてまとめたものである。
プライバシーポリシーの改訂ポイント
岡田 淳・嶋村直登
個情法の改正により、多くの企業は、プライバシーポリシーを改訂することになる。また、同じタイミングでの施行令とガイドラインの改正により、外国で個人データを取り扱う場合には、当該外国を特定し、その国の法制度を把握したうえで安全管理措置を実施すべきこと(外的環境の把握)、そして、その措置の実施状況について情報提供の義務が課されることとなった。本稿では、こうした改正をふまえて、プライバシーポリシーの改訂ポイントについて解説する。
個人データの外国移転規制への対応
岡田 淳・嶋村直登
個人データを外国にある第三者に提供(委託または共同利用を含む)する場合、現行法では、①本人からの同意取得、②相当措置の実施による体制整備、または③同等水準国指定の条件を満たす必要があった。改正法では、①について事前の情報提供が、②について相当措置の実施確保および確保状況の情報提供が義務として追加されることになり、規制が強化された。本稿では、現行法の重要ポイントもふまえつつ、こうした規制の強化の内容について解説する。
個人データの漏えい等に係る義務への対応
林 浩美・蔦 大輔
現行法上、個人データが漏えい、滅失、毀損した場合の対応は努力義務とされていたが、今般の改正により、一定の条件を満たす個人データの漏えい等については、個人情報保護委員会への報告および本人通知が義務となった。本稿では、この改正に関する事前準備等の対応のポイントについて解説する。
個人関連情報規制のポイント
田中浩之・北山 昇・城戸賢仁
本稿では、令和2年改正法により導入された、個人関連情報に関する規制のポイントを解説する。同規制は、適用に関する要件が複雑であり、まず規制の適用を受ける場面があるかを判断し、規制を受ける場合は、本人同意の取得に関する対応等が必要になる。
個人データ取扱いにおける「委託」の限界
田中浩之・北山 昇
個人情報保護法上、事業者が個人データを第三者に提供する場合、本人の同意を得る必要があるが、例外的に、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取扱いを委託することに伴い提供する場合には、当該委託先は「第三者」に該当せず、本人の同意なく提供が可能となる。ただし、個人データの取扱いの委託に伴う提供さえあれば、委託先におけるどのような取扱いも許容されるというわけではない。本稿は令和2年改正によるQAの改訂をふまえた検討を行うものである。
総論 活性化・効率化・円滑化を目指して
バーチャルオンリー株主総会の概要と実施
中川雅博
2021年6月16日に公布・一部施行された改正産業競争力強化法により、わが国でもバーチャルオンリー株主総会の開催が解禁された。新型コロナウイルス感染症拡大の影響をふまえ、施行後2年間は、両大臣の確認を得れば、当該定款の定めがあるものとみなすことができ、バーチャルオンリー株主総会の開催が可能である。今後開催を検討する会社にとって大いに参考になる。
株主との対話の深化につながる
グリー株式会社の取組み
松村真弓・徳田千紗
グリー株式会社は第17回定時株主総会において「場所の定めのない株主総会」を実施した。本稿では、グリーの目指す株主総会の方向性に基づき、バーチャルオンリー株主総会の運営について概観したい。また、オンデマンド配信および関連動画の掲載ページへのアクセス方法を末尾に記載した。本文とあわせてご視聴いただきたい。
これまでと異なる視点でゼロから総会を考える
freee株式会社の取組み
林 慶彦・廣瀨史昂
当社は、2021年9月、定時株主総会をバーチャルオンリー株主総会として開催した。昨年は上場後初となる定時株主総会についてYouTubeを使ったハイブリッド参加型バーチャル株主総会で開催しており、いずれも新型コロナウイルス感染症への対策として、株主や役職員の接触を減らすことを念頭に置いた取組みであった。前例が少ないなかであったが、何とか無事に開催できた。今回は「バーチャルオンリー株主総会の開催をどのように意思決定したのか」「どんな苦労があったのか」という点を中心に当社の経験を紹介したい。
座談会 バーチャルオンリー株主総会の実践
〜VSMプラットフォーム活用事例〜
森田多恵子・安井桂大・西原彰美・薗田玲子・芦田和佳・坂東照雄・小島克明・砂金 宏 ・鈴木聖人
2021年の法改正でバーチャルオンリー株主総会が解禁されたことを受け、同年8月に日本初のバーチャルオンリー株主総会が株式会社ユーグレナにおいて開催された。本座談会では、VSM(Virtual Shareholders Meeting)プラットフォームを提供して開催をシステム面でサポートした株式会社ICJとともに、バーチャルオンリー総会開催にあたっての実務上の留意点等について議論を行った。
石井夏生利
ネット上の誹謗中傷対策を強化するための法改正が進められている。2021年4月、プロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)の改正法が成立し、被害者救済のための新たな裁判手続が創設され、開示請求範囲にログイン時情報が追加された。
青木節子
2021年は、ビジネスとしての宇宙旅行元年といえるだろう。7月11日、20日には、米国のヴァージン・ギャラクティック社、ブルー・オリジン社が相次いで高度約85㎞、107kmの「宇宙空間」(法的な定義は存在しない)に数分間滞在した後地球に帰還する、弾道軌道での宇宙旅行を成功させた。
神保寛子
米中の貿易摩擦に端を発し、世界各国における外資規制の強化が進んでいる。2020年には外国為替及び外国貿易法が改正され、2021年に入ってからは、メディアの外資規制違反事例を契機に外資規制の見直しが行われるなど、日本における外資規制も変化しており、日本企業が海外の企業や外資系の国内会社から出資を受ける資本提携等の実務において、検討が必要となる場面が増加している。そこで、本稿では外資規制に関する各種法令の基礎知識として外為法および各種業法における主な外資規制の概要を説明する。
法務部のための消費税インボイス対応
岩品信明
2023年10月1日から消費税のインボイス方式の施行が予定され、2021年10月1日から適格請求書発行事業者の登録が開始されている。企業が法律事務所に支払う報酬について仕入税額控除が認められるために、法務部は、法律事務所から適格請求書発行事業者の登録番号を入手し、また、法律事務所が組合としての届出書を提出しているか否かを確認しておく必要がある。
平成30年~令和3年最新改正までフォロー
著作権法改正キャッチアップ
小林利明・寺内康介
社会のデジタル化の進展に伴い、ビジネスにおける著作権についての理解はより重要性を増している。著作権法は変化する社会に対応して毎年のように法改正されており、頻繁に著作権法に触れる機会のある方を除けば、改正内容のフォローも一苦労だろう。そこで本稿では、比較的最近の改正として2018年から2021年までの4年間における実に5度にわたる著作権法の改正を取り上げ、ポイントを絞って総ざらいを試みるものである。
スポーツスポンサーシップの類型と
コロナ禍における最新実務
稲垣弘則・小幡真之
近年、スポーツビジネスおけるスポンサーシップのあり方が見直され、企業にとって投資価値のある戦略的パートナーシップへと変容しつつある。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、スポンサー料の減額・返還が問題となることで、スポンサー契約の課題が浮き彫りになっている。そこで本稿では、近年の動向をふまえてスポンサーシップの類型を改めて整理するとともに、スポンサー契約における実務上の課題について概説する。
新しい働き方と入管法
――シェアリングエコノミーのプラットフォーマーを中心に
杉田昌平
日本で働く外国人は増加し、統計上は過去最高値を記録している。そして、これと同時に新しい働き方としてこれまでにない多様な働き方が出現している。本稿では、増加する外国人雇用についての新しい働き方における課題を、飲食品の宅配事業におけるプラットフォーマーを中心に現状の整理と検討を行う。
燃費偽装は"重要事項"に当たるか
消費者契約法「不実告知」をめぐる裁判例の解説
増田朋記
三菱自動車工業株式会社による燃費偽装事件をめぐり、該当車両を販売店から購入した消費者が、三菱自動車の不法行為責任や、販売店に対する支払済代金相当額の不当利得の返還を求めて提訴した事案に対する判決である。本稿では、カタログの表示や従業員の説明によって車両の燃費値についての不実告知があったとして消費者契約法4条1項による取消しが認められ、請求の一部が認容された本判決について分析してみたい。
ここだけは押さえておきたい
令和3年民法・不動産登記法改正4つのポイント
小田智典
2021年4月に「民法等の一部を改正する法律」が成立・公布された。改正法により、民法・不動産登記法を中心とした、不動産をめぐる民事基本法制が総合的に見直された。本稿は、企業法務担当者にとって有益と思われる本改正のポイントをコンパクトに示そうとするものである。なお、改正法は、原則として、2023年4月までの施行が見込まれる。ただし、新不動産登記法については、改正事項に応じて、2026年4月までにかけて順次施行されることが見込まれる。
橋本陽子
デジタル化の進展により、プラットフォームを介した新しい就労が登場し、各国で、その法的保護が問題となっている。ヨーロッパでは、かかる就労者の労働者性を認め、労働法を適用するという方向性が明らかになっている。しかし、日本では、「フリーランスの適正な拡大」が目指されるなど、労働者と同じように働いている者に必要な保護が認められないことが危惧される。本稿は、日本の議論状況を整理し、労働者概念の見直しを主張するものである。
三笘 裕・秋山 円
X(原告・被控訴人)は、過去に運行管理者の資格を取得し、複数の会社で運行管理業務や配車業務の経験を有していたことを見込まれ、貨物運送事業等を営むY社(被告・控訴人)との間で無期雇用契約を締結し、Y社に中途採用された(Xは当時51歳)。
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編
相談事例をもとにアドバイス コロナ禍におけるメンタル不調への対処術
第6回 コロナ禍のストレスでうつ病が悪化し自傷行為
ティーペック株式会社 こころのサポート部
相談事例「生きているのが、もう、めんどくさくて、つらい」(20代女性) うつ病の治療をしながら働いています。コロナ禍で働き方が在宅勤務になりました。出勤しなくてよいのは楽だけれど、誰とも会話せずに1日が終わることもあります。出勤している人もいるなかで、在宅勤務をさせてもらっているので、絶対に感染したらいけないと思い、極力外出は控えており、孤独を感じます。
新連載 類型別 不正・不祥事への初動対応
第1回 個人データの漏えい
山内洋嗣・山田 徹・蔦 大輔・木本昌士
本連載は,企業の法務・コンプライアンス部門の中核を担うプロフェッショナルと外部弁護士が互いのノウハウを持ち寄り,不正・不祥事の疑いが発覚した企業のあるべき初動対応を類型別にできるだけわかりやすく平易な内容で紹介するものである。連載第1回では,個人データの漏えいをテーマとし,データ漏えいの典型例である電子メールの誤送信を題材に,あるべき初動対応および押さえておくべき法制度を紹介する。
新連載 企業法務のための経済安全保障
第1回 経済安全保障とは何か
大川信太郎
本連載では,先日まで行政官として経済安全保障分野の第一線で政策立案・審査に従事していた弁護士が経済安全保障分野の法令について体系的に解説する。連載の第1回目では,経済安全保障の定義および外為法の全体像について解説する。
解説動画でらくらくマスター!新入法務部員が覚えたい契約英単語・表現
第6回 売買・請負契約で頻出する英単語その②
本郷貴裕
本連載では、入社後1年以内にぜひとも習得していただきたい英文契約で頻出する英単語・表現を紹介していきます。初学者の方にも気軽に取り組んでいただけるように、できるだけシンプルな例文を掲載しています。第6回は、売買・請負契約の支払関係、そのなかでも特に商業信用状に関するものや、売主の責任に関するものを中心に紹介します。問題編もぜひチャレンジし、解答・解説はビジネス法務公式YouTubeチャンネル(89頁のQRコード参照)をご覧ください。
続・業種別 M&Aにおける法務デュー・ディリジェンスの手引き
第2回 薬局・ドラッグストア(下)
宮下 央・田中健太郎・金澤久太
今回は、前回に引き続き、薬局・ドラッグストア事業の法務デュー・ディリジェンスにおける留意点を取り扱うこととする。薬局・ドラッグストア事業を営む場合には、通常、薬機法、健康保険法等に基づく規制が適用されることになるところ、昨今の両事業における取扱製品の多様化に伴い、適用される規制も複雑化する傾向にある。法務DDにおいては、これらの法規制の遵守状況の確認、取得許認可の承継の可否の検討が中心作業の1つになる。
法務部員が知っておくべき 米中貿易摩擦に関する法令・規制の最新状況
第6回 米国の法令・規制⑥――最新動向/人権に着目した制裁等⑵/対米投資規制
井口直樹・松本 渉・大塚理央
2021年11月16日(日本時間)に米中首脳オンライン会談が行われるなどの大きな動きがあった。同年10月21日、商務省産業安全保障局(BIS)は、「情報安全性コントロール:サイバーセキュリティ項目(Information Security Controls: Cybersecurity Items)」の標題で、輸出管理規則(EAR)の改正のための暫定最終規則(interim final rule)を公表した。2022年1月19日に発効する予定である。
ケース別で実務に切り込む! クロスボーダーDX法務の勘所
第3回 チェックリスト作成時の典型論点②
久保光太郎・渡邉満久・田中陽介
第3回では、第2回に引き続き、社内推進フェーズにおけるデータ利活用プロジェクトを自発的に推進するために必要なチェックリストを作成する際に盛り込むことが考えられる典型論点について考え方を示す。チェックリストの典型論点になる項目は、これまで筆者らに寄せられた多くの相談のなかで共通する項目や、現場レベルの方からヒアリングを行うとよく聞かれる項目であり、第1回のⅣで述べた、個別論から一般論への落とし込み作業と重なる。
◆Level up !法務部門――組織・人材の活性化に向けて
第3回 法務契約審査業務の効率化とデータの活用化をいかに行うか?
企業ビジネスをタイムリーにスタートさせるために契約締結支援をすることは、法務部にとって重要なミッションの1つである。秘密保持契約を含め、ライセンス契約、販売契約、委託・受託契約など多種な契約書審査依頼が日々法務部に送られる。そのようななか、契約書審査依頼システムの使用を開始することで、業務効率化とデータの蓄積が可能になる。
変革のアジア諸国労務最新――最新事情と対応策
第3回 シンガポール
木本真理子・土門駿介・テイ・ハンナ
本連載は、これまで、労働者保護の傾向が比較的強いタイとベトナムについて検討してきた。連載第3回となる本稿は、英国の影響を受けコモンローを基礎とするシンガポールを取り上げる。シンガポールの労働法制は、外資誘致の政策に基づき、基本的に使用者側に有利な設計がなされていることで知られている。しかし、近年、労働者保護を図る改正が行われており、注意が必要である。
はじめてIBT・CBT試験として開催された、2021年度のビジネス実務法務検定。試験範囲や難易度に変化はないとしても、受験方法が変わったことで、どのような出題がされるのだろう? と関心が高い方も多いと思います。今号、次号では、IBT・CBTを意識した練習問題を一挙掲載。今後の受験対策にご活用ください!なお、この模擬試験問題はIBT・CBT出題のイメージをお伝えするもので、出題数は実際の試験とは異なります。