第1章 英文契約書レビューの基本
─ルーティーンと現地弁護士の選び方
石原 坦
自分なりの英文契約書レビューのルーティーンを確立することにより、効率的に英文契約書がレビューできるようになるのではないだろうか。 また、英文契約書は、日本の法律のみならず、外国の法律の影響を受けることになるため、英文契約書における外国法の影響・リスクを分析するために、当該外国法に通じた現地弁護士をどのように探し、活用するかという点も、重要なポイントとなる。そこで、英文契約書を扱う法務担当者が、現地弁護士の力も借りながら、英文契約書を戦略的にレビューするためのヒントについて記載したい。
第2章 一般条項にみる英米法の基礎概念
石田雅彦・武田竜太郎
英文契約書の一般条項は、定型的であり、かつ契約の最後に出てくるので、軽視されている場面を見かけることがある。しかし契約の最終部に出てくることは重要性が低いことを意味するものではなく、また一般条項での交渉、確認を怠ったことによって、契約の他の箇所での交渉において勝ち取った条件が水泡に帰すこともある。さらに、英米法上、疑わしきは作成者に不利に解釈すべき(contra proferentem)という考え方もあり、思考停止的にひな型の一般条項をそのまま使用した場合には思わぬ不利益を被ることもある。 そこで本稿では、一般条項をレビューする際のポイントを俯瞰するとともに、そもそもその条項がなぜ必要なのかという点を英米法の基礎概念と絡めて概説するものである。
第3章 解釈・交渉における鬼門! 補償・損害賠償条項
松田 暖・増田好剛
補償(indemnity)に関する契約条項と損害賠償(compensation for damages)に関する契約条項は、各契約当事者が負担するリスクの範囲を画するものであることから、契約交渉時には主要な交渉ポイントの1つとなり、また、契約締結後に契約を巡る紛争が発生した場合には、その解釈が争点の1つとなることが多い。 本稿では、契約実務において用いられている補償条項等について、基本的な理解を確認するとともに、そのドラフト・レビュー作業において注意すべき主要なポイントを解説する。
第4章 ひな型流用では済まされない! 秘密保持契約
伊達裕成
外国の企業と取引をする場合、取引の前提でという程度で、内容が不明確なNDAを締結すると、思いがけないトラブルが発生し、損害を蒙ることがある。 したがって、外国の企業と取引をするに際してNDAを締結する場合、NDA上の文言はもちろん重要ではあるが、実務的にもどのような点に注意を払っていけばよいのか、本稿を是非とも参考にしてほしい。
第5章 売買契約─価格・品質・損失補償条項のリスク
飯田浩隆
契約書には取引から生じるリスクを想定し、紛争を予防するための規定をおく必要がある。本稿では、継続的売買取引における売主の立場で、英文契約書において見落とされがちなリスクを指摘し、それに対応するための条項を検討する。
第6章 ライセンス契約・共同開発契約─地域の法制、ライセンス料の設定に注意!
村上 寛・十河遼介
海外企業とのライセンス契約や共同開発契約は、その締結により、相互のリソースを活用し、ビジネスチャンスを拡大することが期待される反面、締結に至る過程では、法制度や文化の違いのほか、英文ライセンス契約・共同開発契約特有の問題点についても考慮する必要がある。本稿では、英文ライセンス契約・共同開発契約に焦点を当て、日本で企業法務に携わる方々へ留意すべき点を示したい。
第7章 M&A契約─案件全体を通じたレビューの視点
神山達彦・伊東久雄
多くの日本企業が、M&Aにおける買主、売主、はたまたターゲットとして関与した経験を有するようになっているが、M&A契約に実際に触れた機会のある人はそう多くはないのではないか。M&A契約は、当事者の関係から英文であることが多く、また、英米の契約実務から発達した条項・文言が用いられるのが通常であって、必ずしも日本法に完全に合致する概念が存在しない考え方も多く導入されている。 本稿は、そのようなM&A契約をレビューするために知っておくべき基本的事項について英文の条項例も示しつつ述べる。
まわりに1歩差をつける
法令解釈リサーチ術
川上善行
法令解釈のリサーチとして最初に思い浮かぶであろう裁判例、基本書・コンメンタールなどは、常に見つけられるとは限らない。そのような場合に考えられる手段について、時間の制約が厳しい場合と比較的余裕がある場合に分けて、具体的な手順、留意点等とともに紹介する。
先輩弁護士座談会
新人弁護士に求める最低限のクオリティー
弁護士業界では私もまだまだ若手の部類ではありますが、新人弁護士のリーガル・リサーチの様子を見ていて、先輩弁護士として思うところを話してみようと思います。
若手弁護士座談会
新人の失敗談と先輩へのホンネ
若手弁護士5名が集結し、新人時代に戸惑ったことや実際にあった失敗談、先輩に対して思っていることなどを本音で語っていただきました。
池尾和人
コーポレートガバナンスは、静的なものではなく、動的なものと理解されるべきだと考えている。すなわち、一定の仕組みを作れば完了ということはなく、そうした仕組みを適切に機能させるための継続的な取り組みが不可欠となる。
河野英仁
近年新聞等で頻繁に取り上げられているキーワードとしてFintech(フィンテック)がある。Fintechは、Financial Technologyの文字を組み合わせた造語である。米国および英国では、Fintech関連スタートアップ企業が中心となって新たなFintechビジネスを次々に始めている
木川和広
今年(平成29年)1月24日、サン・クロレラ販売株式会社(以下「サン・クロレラ」という)が配布していた新聞の折込チラシに対する適格消費者団体からの差止請求訴訟において、最高裁は、それまでの行政解釈や下級審の判断を覆して、「『広告』も、場合によっては、消費者契約法上の『勧誘』に当たり、消費者契約法に基づく差止請求の対象となり得る」という判断を下した。この判決は、企業の商品広告の内容に大きな影響を与える可能性があるので、本稿で判決のポイントを解説することとしたい。
コーポレート・ガバナンス・システム研究会報告書公表!
ガバナンス強化今後の方向性
翁 百合
2017年3月10日、経済産業省コーポレート・ガバナンス・システム研究会の報告書が公表された。 本稿では、本報告書のポイントを整理したうえで、報告書が企業に与える影響について私見を述べることとしたい。
Google検索結果削除請求をめぐる最高裁決定
─判断枠組みと「忘れられる権利」の動向
宮下 紘
平成29年1月31日、最高裁判所第三小法廷は、検索事業者が提供する検索結果の削除に関する事案において削除の許否について判断を行った。各地で検索結果の削除をめぐる訴訟が提起され、下級審では判断が分かれる中ではじめての最高裁の判断となり注目を集めた。
店舗デザインへの不競法初適用
コメダ珈琲そっくり店舗事件
青木博通
コメダ珈琲店の店舗外観(外装、店内構造および内装)に、和歌山県にあるマサキ珈琲店の店舗外観が類似するとして、不正競争防止法(以下「不競法」という)2条1項1号(周知表示混同惹起行為)を適用して、マサキ珈琲店の店舗外観の使用の差止めを認容する仮処分決定が東京地裁民事第29部(嶋末和秀裁判長)であった(東京地決平28.12.16平成27年(ヨ)第22042号)。店舗の外観(外装と内装)について、不競法2条1項1号を適用したわが国初の決定となる。
ピコ太郎がPPAPを歌えない?
商標の先取り行為の可否と防衛策
平野泰弘
「ペン・パイナッポー・アッポー・ペン」のフレーズで歌って踊る動画配信により世界中で一気に有名になったピコ太郎だが、PPAPの商標が大阪の業者に無断で特許庁に商標登録出願されたことが問題となっている。仮に大阪の業者が商標権を取得した場合、ピコ太郎はPPAPの唄を歌えなくなるのか。そもそもピコ太郎とはまったく関係がない大阪の業者が商標権を取得することは可能なのか。問題となっている他人の商標の先取り登録出願行為について解説する。
トランプ政権下の対イラン制裁
─企業に求められる調査の範囲と方法
森下真生・大場英樹・山崎理紗
イランに対する各国の経済制裁は、2016年1月16日の包括的共同行動計画(JCPOA:Joint Comprehensive Plan of Action)(以下「JCPOA」という)で定める履行日(Implementation Day)の到来以後、おおむね停止されたが、引き続く米国制裁の影響等で、イランビジネスは期待通りに進んでいない。イランビジネスについては、2016年11月の米国大統領選挙の動向が注目されていたが、JCPOAに批判的なトランプ氏が勝利し、不透明感が高まることとなった。本稿では、対イラン米国制裁の現状と、トランプ政権下での対イラン米国制裁の見通しおよび実務上の対応について説明する。
非公開会社における株主総会実務の留意点
─「正規の手続」を欠く「決議」についての主要判例
久我祐司
株主数の少ない非公開会社においては、会社法の予定する「正規の手続」を経ずに、株主総会決議、取締役会決議があったものとして、議事録が作成され、さまざまな登記や税務申告等が行われていると言われている。 本稿は、このような「正規の手続」を欠く「決議」について、会社法に規定のある「正規の手続」の概要を確認した後、判例等の状況を紹介することによって、実務の指針とすることを目的とする。なお、紙幅の関係から、もっぱら株主総会の決議について取り上げることとする。
野原俊介・ケルビン・チア
連載3回目の今回は、シンガポールの労務事情を取り扱う。労働基準を規律する雇用法の適用対象が労働者の一部に限定されている他、最低賃金の定めがなく、労働者の解雇も原則理由を問わない等、日本とは異なり使用者側に有利なルールが多いといった特徴がある。
情報・テクノロジー法最前線
第2回 AI① ─AIの開発を支援・促進する法制度
齋藤浩貴・呂 佳叡
AI開発のインセンティブ付与、円滑な開発の支援に関する法制度について解説する。
民法改正で変わる業務委託契約
第5回 成果物に関する権利の帰属、不可抗力条項、相殺特約
遠藤元一
グローバル時代のクライシスマネジメント
第2回
クライシスマネジメントにおける"備え"の重要性
尾嶋博之
本連載の第2回では、クライシスマネジメントにおいて、その事前の"備え"に該当する「Readiness(計画・準備プロセス)」について、どのように考えればよいのか、具体的に何を実施すればよいのか、について考察していきたい。
英文M&A契約書の交渉ポイント
第7回
コベナンツ(1)総論~意義・種類・交渉ポイント
西 理広・ニック・ツァイ
業種別 M&Aにおける法務デュー・ディリジェンスの手引き
第8回
製薬業・医療機器製造業に対するM&A
宮下 央・田中健太郎・木宮瑞雄
今回のテーマは、製薬業・医療機器製造業である。製造業一般については第1回と第2回にて解説したとおりであるが、製薬業・医療機器製造業はともに「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」による厳格な規制に服する業種であり、通常の製造業にはない特殊性を持つことから本稿で取り上げることとした。
会社のステージ別で見る
株式・インセンティブ報酬の選択のポイント
第4回
インセンティブ報酬の類型と特色③税務
川村一博・村松頼信・寺田芳彦・藤原優子・吉永 誠
前回はⅢ会計として、インセンティブ報酬の類型ごとに、会計上の取扱いについて具体的な説明を行った。今回は税務に焦点を当てて解説を行う。法務および会計の取扱いと同様に、一見すると複雑に見える各制度も類型別に俯瞰すれば、理解が容易になる。
Next Issueはどこにある? 海外の今を読む
第3回
行動経済学が契約法に受容されるまで
西内康人
突撃!となりの法務部 法務部員の育成方法
第2回 三菱重工業株式会社
小椋和朗
PICK UP 法律実務書
『起業ナビゲーター』
杉山 央
法務部員のための税務知識
第1回 税務の基本的な考え方
岩品信明
法務部員として契約書の検討などをする際には、税への配慮によりスキームが調整された可能性があることを理解しておかなければ、単に契約書の表面的な検討にとどまり、問題点を見過ごしてしまうおそれがある。そのため、本連載では法務部員の業務において生じる税務問題を取り上げてみたい。
BRUSH-UP 法務英語
第1回 Plain Englishで読みやすい英文を作るコツ①
橘川真澄
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所 編