EU一般データ保護規則と日本
堀部政男
データ保護指令からGDPRまでに至る過程は、EUの個人情報保護に関する歴史であり、GDPRに結実した、個々の制度を見るならば、その歴史的背景を理解することができる。
規則の特徴と対応
宮下 紘
EU一般データ保護規則の全体像を示したうえ、日本企業に求められる対応等を概説している。
EU域内における義務強化
─データ管理者・処理者の新たな責任
杉本武重
EU一般データ保護規則(以下「GDPR」という)においては、EUデータ保護指令において定められていた個人データの処理に関する管理者の義務が強化されている。また、EUデータ保護指令の下では直接法律上の義務を負わなかった処理者がGDPRにおいては義務を負う主体となった。GDPRではこれらの義務の違反行為は高額な制裁の対象となる。
情報流通時代の個人データに関する「新たな権利」
加藤隆之
1995年のデータ保護指令が、インターネット社会に十分対応したものではないなどの批判を受けて、2018年5月25日から施行されるGDPRでは、データ主体の消去の権利・忘れられる権利(17条)、データ・ポータビリティの権利(20条)、プロファイリングなどの自動化された判断に服しない権利(22条)、個人データの侵害について通知を受ける権利(34条)が明文化・明確化された。以下、本稿でこの4つの権利について概観する。
域外適用の対象と違反時の制裁
石井夏生利
GDPRは前文173項、全11章、99条で構成されるが、そのうち、本稿では、域外適用を中心に企業への影響を検討する。
越境データ移転─事業者が選択可能な方法と実務対応
板倉陽一郎
本稿では、GDPRにおけるTransfers of personal data to third countries or internationalorganisations(規則5章、「第三国または国際機関に対する個人データの移転1」、以下単に「越境移転」という)の規定を概説し、わが国事業者への影響を論ずる。
適用対象の拡大とCookie規制の緩和
eプライバシー規則案
佐藤真紀
現行のeプライバシー指令が、EU一般データ保護規則の施行に伴い改正されることとなり、「eプライバシー規則」として提案された。規則案は、新たにOTT(Over the Top)サービス事業者も対象とすることで、電子通信データの保護を強化する一方、Cookieの利用にともなうオプトイン手続の簡易化や本人同意があれば、電子通信データを新たなサービスに利用可能とする等、電子通信データのビジネスにおける有用性にも配慮している。
個人データ保護規律と競争政策
─日本でも議論進む・今後の展開は
市川芳治
2016年3月、ドイツの競争当局は、個人データ保護規律の違反が競争法違反に繋がりうるとの判断を示した。EU内で初とされる事案である。 個人データを保護することと、公正な競争を確保することとは、別個の事象のようにも見える。しかし、現実には連関した事例が現れてきている。とくに洋(残念ながら大西「洋」だが)の東西では、当局も含め、数多くの見解・論考が表明され、白熱した議論を呼び、実務面でも注視されている。本章ではその最新の動きについて、EUの状況を中心にまとめる。
楽天の取組み
プライバシーコンプライアンスの「世界標準」
柳池 剛
EU一般データ保護規則(GDPR)の施行日である2018年5月25日まで1年を切った。ベリタステクノロジーズ合同会社が公表したところによると、調査対象とした世界中の企業のうち47%(日本は63%)は施行までの対応が難しいと考え、一方で、31%(日本は19%)の企業はGDPRへの準備は出来ていると考えているとのことだ。楽天も、施行日までの対応完了を目指している。当社の取組みもふまえ、GDPR施行に向けて日本企業が講ずべき対策について、以下に述べたいと思う。また、なるべく、実用的と思われる民間企業・団体の資料を引用して説明を進めたい。
村上由美子
保護主義の台頭が世界のメガトレンドになってきた。英国のEU離脱、米国のトランプ政権の誕生の背景には、グローバル化の波に上手く乗ることができず、経済繁栄から取り残されたと感じる労働者たちの存在が大きい。慢性化した高い失業率は、世界金融危機から10年近く経った今日、欧米諸国にとって深刻な経済構造問題になっている。
吉羽真一郎
特許庁は本年3月1日、「色彩のみからなる商標」について、初めて登録を認める旨の判断をしたことを発表した。発表されたのは、トンボ鉛筆の消しゴムで用いられている。 「青、白、黒」の色彩と、セブン-イレブン・ジャパンの看板などに用いられている「白地にオレンジ、緑、赤」の色彩である。
淵邊善彦×菅野健一×津村陽介×斎藤祐馬
今回は、内部管理の体制づくり、グローバル化への対応、倒産・第2の企業へ、をテーマにお送りする。
メイン・サブ双方の強化が鍵
「見直し」に当たり持つべき"発見統制"の視点
竹内 朗
2002年に公益通報者保護法が制定された前後に、多くの会社が内部通報制度を導入した。 昨年12月の消費者庁「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」の公表を受け、自社の内部通報制度を見直そうという動きが拡がっている。
自社制度のセルフチェックと改善ポイント
中村克己
消費者庁によると、内部通報制度の導入率は、従業員数300人以上の企業で7割以上、従業員数1、000人以上の企業で9割以上にも及んでいる。しかしながら、自社の内部通報制度について、「当社では十分に浸透・機能している」と自信をもって言い切れる企業は少数ではないか。
事例に見る 内部通報への対処の成功例と失敗例
田島正広
本稿では、内部通報への対処の成功例と失敗例を事例・裁判例を通して概観し、内部通報への真摯な対処がコンプライアンス上の問題の最小化を可能にする一方、その対処の誤りが問題の拡大を招来しかねないものであることに論及したい。そして、そこから見える企業のスタンスが不祥事後の成長と発展にどのように影響しているかをご確認いただきたい。
通報者を守る 窓口担当者の教育と具体的対応
寺田 寛
本稿では、内部通報窓口の担当者として、通報の受付や、関係者からのヒアリング調査にあたり、実務的に注意すべき点を解説する。特に、内部通報制度を有効に機能させるためには通報者の保護が極めて重要であるため、この点に絞っている。また、内部通報窓口の担当者にはさまざまな能力が求められることから、担当者のスキルアップのために効果的な教育・研修の方法について、若干の意見を述べさせていただく。
日本版司法取引が内部通報制度に及ぼす影響
─既存の制度強化と社内リニエンシーの活用
早川真崇
日本版司法取引の導入後には、対象犯罪である法令違反等に関する情報が捜査機関に直接もたらされる機会が増えることに伴い、内部通報制度の機能低下につながることが懸念される。そこで、本稿では、日本版司法取引導入が内部通報制度の運用に及ぼしうる影響とこれに対する企業の備えについて解説することとしたい。
青木博通
商標および意匠の審査基準が改訂され、2017年4月1日から施行された。 今回の改訂の目玉は、商標については、商標の類否判断の基準が明確になったこと、子会社が親会社の商標と類似する商標を登録できるようになったこと、同一人が同一の商標を重複して登録できる場合の判断基準が明確になったことである。 また、意匠については、新規性喪失の例外を主張する際の手続が明確になり、出願人本人の作成した証明書で例外規定を受けることができるようになったことである。
東京五輪へ向け人権DDの強化を
2017年3月公表「持続可能性に配慮した調達コード」への対応
高橋大祐
本稿は、2017年3月に公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が採択した「持続可能性に配慮した調達コード」の日本のコンプライアンス・調達実務への影響、および企業の対応策を議論するものである。
協力会社の再建・承継・廃業清算とどう向き合う?
特定調停制度活用の実務ポイント
堂野達之
過剰負債処理のための金融機関との交渉の手段として、近時新たな運用が開始された特定調停制度が注目されており、本稿では、同制度の実務上のポイントを詳しく解説する。
外国人弁護士 世界一周
Eric Marcks
業種別 M&Aにおける法務デュー・ディリジェンスの手引き
最終回
旅行事業に対するM&A
宮下 央・田中健太郎・木宮瑞雄
今回のテーマである旅行事業は、約50兆円とも言われるシルバー市場の一角を占める将来性のある分野であることから、異業種も積極的に投資を進めることも考えられるため、旅行事業は今後のM&Aが注目される業界のひとつであるといえる。
法務部員のための税務知識
第3回
契約書の作成・取引関係の検討において生じる税務問題(2)
岩品信明
今回は、取引関係の適正と税務の問題として、租税回避を目的として、真実の法律関係または事実関係に沿わない取引をした場合に、税務リスクが生じうることを取り上げたい。
BRUSH-UP
法務英語
第3回
Plain Englishで読みやすい英文を作るコツ③
橘川真澄
東南アジア諸国の最新労務事情
第5回 ベトナム
野原俊介/ニェム・タン・トゥン/スー・ツーロン
連載第5回目では、ベトナムの最新労務事情を紹介する。安価な労働力から日系企業の進出先としても高い注目を集めている同国であるが、東南アジア有数の転職社会であり、労務管理は必ずしも容易ではない。労働法は、労働者保護の傾向が強く、また2012年には、同法の条文の整理と内容の具体化を行う大規模改正が実施された。以下、改正労働法の内容を中心に、ベトナムの最新労務事情を概観する。
先輩に学ぶ! 法務ママの活躍録 №2
村田佳與子
情報・テクノロジー法最前線
第4回
IoT、ビッグデータ①─IoT、ビックデータを取り巻く法制度
上村哲史・桑原秀明
今回は、IoTの概念やそれを活用したサービス例などを紹介したうえ、IoTを取り巻く法制度を概観する。
グローバル時代のクライシスマネジメント
第4回
クライシスをばねにより強い企業を創る
五十鈴川 憲司
連載第4回目となる本稿では、企業にとってのクライシスの経済的側面である「経営破たん(倒産)の危機」とそこからの脱出プロセスである事業再生という設定を借りて、クライシスマネジメントの3番目の段階である「Recovery(回復プロセス)」の要点を紹介する。
英文M&A契約書の交渉ポイント
第9回
クロージングの前提条件(1)総論〜交渉ポイント、個別の前提条件のサンプル規定
西 理広・ニック・ツァイ
前号までで表明保証やコベナンツについて解説した。本稿ではクロージングの前提条件について解説する。
会社のステージ別で見る
株式・インセンティブ報酬の選択のポイント
第6回
≪会社のステージ別解説≫②上場後年数が長く株価の安定している会社
川村一博・村松頼信・寺田芳彦・藤原優子・吉永 誠
第6回では上場後年数が長く株価の安定している会社を想定し、採用すべきプランの考え方や具体的な留意点を解説する。他のステージの会社でも当てはまる部分も想定されるため、上場後年数が長く株価の安定している会社以外でも参考にして頂きたい。
Next Issueはどこにある? 海外の今を読む
第5回
欧州単一特許制度 Brexitが握る命運
愛知靖之
本稿では、欧州単一特許制度の概略を整理したうえで、イギリスを中心に先行文献が公表された後の最新の動向をフォローするとともに、Brexit後にイギリスに残される選択肢を簡単に検討してみたい。
ビジネス実務法務検定を活用!
Vol.3突撃!となりの法務部 法務部員の育成方法
小久保卓一
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所 編