「働き方改革」の議論から法務部門の生産性向上を考える
榊原美紀
「働き方改革」のなかで、日本企業の課題が議論されている。そこで指摘されている課題の多くは、間接部門の生産性に関するもので、法務部門の課題と共通している。そこで、本稿では、「働き方改革」での議論から、法務部門の生産性と共通すると思われる課題をピックアップし、検討してみたい。
仕事のやり直しを防ぐ
スムーズな業務の進め方
飯田浩隆
本稿は、若手・中堅の法務担当者を念頭において、スケジュール作成、仕事の引き受け、仕事の依頼、他部門との調整、上司の承認などの各場面において仕事をスムーズに進めるために、筆者が日ごろ留意している事項を説明する。文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解である。
標準契約書式、チェックシートの作成で省力を!
契約書作成・審査業務の合理化Q&A
髙﨑玄太朗
契約書作成・審査業務は、それぞれの会社により事業内容が異なるため、締結する契約書の種類・数・内容も大きく異なる。また、作成・審査業務自体についても、法務部が存在し法務部において行う社内態勢が整備されている会社から、事業部の担当者が経験をベースに行っている会社まで、各社各様である。 本稿では、法務部門へのアンケートを基に、実務的な課題と解決策をQ&A形式で提案する。
法務の「見える化」で変わる!
ソフトウェア開発の手法を応用した総会準備改革
野上真穂
法務部門の担当する業務は拡大し、最近では、総務、経営企画、広報・IR、経理財務、内部監査部門等をはじめとする他部門との連携がより一層重視されている。そうした中で、法務部門が中心となってプロジェクトを推進する場面も少なくない。本稿では、複数の部門がかかわる株主総会の関連業務を題材に、ソフトウェア開発の手法を活かし、法務部門のチームワークで生産性を上げる試みを紹介する。
業務効率化に繋がる
「失敗事例集」の作成と活用法
緒方公宣
当社では、グループ内で発生したビジネス上の失敗を研究し、事例集としてまとめる取組みを行った。過去の失敗に学び、再発を防ぐことが目的である。この事例集には、典型的な失敗や、注意すれば防げた失敗を多く取り上げており、事例集を題材にした勉強会は、実務を進めるうえで大きなヒントになると、事業部や関係会社から好評を得ている。本稿では、業務効率化につながる失敗事例集の作成方法と、その活用方法をご紹介する。
会社のステージ別
アウトソーシング活用のポイント
伊達裕成
会社の設立時や、法務部門を設ける余裕がない場合等、法務業務の大半をアウトソーシングすることが多いであろう。会社が成長するにつれて、法務業務は増えるが、その業務の大半をアウトソーシングに頼り続けてよいであろうか?会社の持続的成長のためには、法務部門が短期的な生産性だけでなく、長期的な生産性向上にも目を向け、なるべく法務担当者がそれらの業務を担うことが望ましい。本稿では、アウトソーシングに対する考え方について提言したい。
信頼性や導入メリットは?
電子契約の基本
牧野二郎・牧野 剛
電子契約(電磁的記録を介して締結された契約)には少額のクレジット決済による取引も含めてさまざまな形態があるが、高額決済を基本とするBtoB取引において電子契約を導入する動きが注目されている。認定認証局の発行する電子証明書を利用して電子署名を行う契約方式があるが、プライベート証明書を利用したクローズド型の電子契約が特定の企業間で注目されはじめている。
導入プロセスと確認事項
森 悟史・牧野 剛
電子契約導入に際して、契約当事者(統括企業と関係企業)は、どのような手続で電子契約を行うのか、どのような電子証明書を利用するのか、秘密鍵はどのように管理し、万が一秘密鍵が無権限者に使用された場合はどうするのかなどについて、あらかじめ明確にしたうえで、これらの事項を盛り込んだ電子契約利用基本契約を締結する必要がある。また、電子証明書の利用や電子契約書の保管が必要となるため、外部事業者との間で、電子契約サービスや契約書保管サービスについての契約も必要である。
「真正な成立」を証明するための電子署名の法律と技術
宮内 宏
適切な電子署名が付されていれば電子文書の真正な成立が推定される。電子署名の正当性確認および署名者の特定のために電子証明書が用いられる。電子証明書は、公的認証局や民間認証局で発行される。マイナンバーカードにも署名機能が搭載されており、これを利用したBtoCの電子契約の普及が期待されている。訴訟時には、電子契約書等のプリントアウトを証拠として提出し、必要に応じて電子文書を格納した媒体を提出する方法が考えられる。
企業の導入実例
三井住友銀行の融資契約電子化の取組み
永田宏輝
三井住友銀行では、邦銀として初めて融資取引において電子署名を用いた電子契約を行う「電子契約サービス」を導入した。サービス導入にあたって直面した課題とその解決方法、電子契約により銀行業務がどのように変化し、どのような効果が得られたのか、実例を交え紹介する。
「電子契約」サービスの紹介
株式会社システムコンサルタント・新日鉄住金ソリューションズ株式会社・セコムトラストシステムズ株式会社・株式会社ワコム
佐藤信祐
平成29年度税制改正により組織再編税制が大きく改正された。改正内容は、スピンオフ税制のみならず、金銭等不交付要件、支配関係継続要件、営業権の時価評価など多岐にわたり、組織再編税制の考え方を大きく変えるものであると思われる。その一方で、組織再編税制、連結納税制度およびグループ法人税制との整合性、現金交付型組織再編成と無対価組織再編成との整合性に問題があり、今後、さらなる改正が必要となる。本稿では、これらの制度における残された課題について解説を行う。
棚瀬孝雄・浦上俊一
昨今、 M&A等による社外(他企業等)への事業承継を検討する中小企業が増えている。一方、多くの国内企業にあっては、潜在的な国内市場縮小を背景に、新規ビジネス・市場開拓の足掛かり等を目的として、このような中小企業を買収する動機付けが存在する。 当該買収のスキームとして株式譲受けを採用する場合、対象会社がオーナー経営の未上場中小企業であるがゆえに株主の管理等が杜撰になっていて、実務上、取引の支障となるケースも少なくない。 本稿では、譲受人の立場から、中小企業の株主から株式を有効に譲り受けるためのポイントを、具体的な設例を基に解説したい。
浸透するCGコード対応
2017年6月総会振り返り
丹羽翔一
本年6月の株主総会は、ほとんどの3月決算上場会社にとってコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)対応後2回目の定時株主総会であり、CGコード対応の浸透が随所に見られた。 以下では、三井住友トラスト・グループにおける証券代行業務の受託会社を対象とする調査結果を中心に、本年6月株主総会の状況を総括することで、今後の株主総会に向けた課題を把握・検討する際の材料を示唆したい。
「不正調査」と「不祥事対応」の正しい理解(上)
─基本事項の再確認
小林英明
本稿は、不祥事対応、不正調査に関連する用語、基本的事項の意義等についての混乱を整理するために、それらについての筆者の考えの一端を述べるものである。
日本企業の役員報酬
─問われる経営者の見識と良識
仮屋広郷
本稿では、現在進行中の改革によって、役員報酬が法外なものとなり、日本の格差が拡大する可能性があることを述べるとともに、日本型経営が破壊され、日本企業の強さも失われていく可能性があることを述べる。
森下哲朗
国際商事仲裁は、国際的なビジネス紛争の解決手段として世界的に活用されている。最近では、東芝の半導体メモリー事業売却に関して米国のウエスタンデジタルがICC(国際商業会議所)における仲裁を申立てたことが報道され、注目されている。
甲斐淑浩
今国会で「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」が改正されて、いわゆる「テロ等準備罪」が導入され、7月11日に施行された。しかし、そもそもテロ等準備罪がどのような犯罪なのか法律的に具体的な説明がなされないまま議論されている面もあるので、本稿では、まずテロ等準備罪の内容を概説する。
下條正浩
山岡裕明
本年5月中旬発生した世界同時サイバー攻撃は記憶に久しい。英国の病院では手術の中止が相次いだとされ、国内でも被害が確認されている。 とかく技術的な側面が強いサイバーセキュリティの分野であるが、法務の役割も極めて重要である。そこで、本稿では、企業法務の視点から、サイバーセキュリティを取り巻く法制度および法的問題点を紹介するとともに、サイバーセキュリティに関する企業の法的責任を紹介していく予定である。
入門 税務コーポレートガバナンス
第1回 国税庁による税務コーポレートガバナンスの充実に向けた取組み
佐藤修二・武藤雄木・山下 貴
国税庁では現在、企業の税務に関するコーポレートガバナンスの充実を推進させる取組みを進めている。こうした中、今後、税務コンプライアンスを担保する内部統制システムに不備がある場合、調査必要度の高い企業として税務調査が重点化されていくことが想定される。すなわち今は、経営資源の適正配分という観点からも、税務コンプライアンスに係る内部統制システムを見直すべき時期にあるといえる。そこで法務部員としては、国税庁の関心事と税務CGの基本的な知識を押さえておく必要がある。
東南アジア諸国の最新労務事情
最終回 ミャンマー
野原俊介・キット・コンセプション
連載最終回は、ミャンマーの最新労務事情を紹介する。2011年の民主化以降、製造業を中心とした外国投資の急増に加え、軍事政権時代の欧米諸国による経済制裁の解除等も後押しして同国は急激な経済発展の最中にある。一方、労働法制は十分整備されておらず全面的な見直しが行われている他、実務の運用も行政庁の裁量的判断に依存する部分が多いという特徴がある。以下、同国の労務事情を概観する。
外国人弁護士 世界一周 №3
カライスコス アントニオス
会社のステージ別で見る
株式・インセンティブ報酬の選択のポイント
最終回
≪会社のステージ別解説≫④非上場会社
川村一博・村松頼信・寺田芳彦・藤原優子・吉永 誠
連載最後の第8回は非上場会社を想定して、インセンティブ・プランを検討する。これまでのステージと違い、株式を用いたインセンティブ・プランが効果的でない場面もあるため、慎重な検討が必要となる。
法務部員のための税務知識
第4回
契約書の作成・取引関係の検討において生じる税務問題(3)
岩品信明
企業活動がグローバル化し、外国企業や海外のグループ企業との取引が増加するに伴い、これらの企業との間で国境を越えた契約を締結することが日常的になっている。 法務の観点からは、国内企業との契約締結の際に検討する事項に加えて、外国法への配慮(外国の商法、各種業法、代理店保護法、独占禁止法など)や準拠法、裁判管轄、言語などにも注意して契約書を検討しなければならない。
BRUSH-UP
法務英語
第5回
英語ネイティブらしい表現をするためのコツ
橘川真澄
情報・テクノロジー法最前線
第6回
3Dプリンタを巡る法的問題
池村 聡
3Dプリンタは、従来の2Dプリンタが抱える法的問題が同様に妥当するだけでなく、3Dプリンタ固有の新たな法的問題を多く抱えており、3Dプリンタを活用したビジネスを展開するに際しては、こうした問題に十分留意する必要がある。
先輩に学ぶ! 法務ママの活躍録 №4
今子さゆり
グローバル時代のクライシスマネジメント
第6回
製品事故への備えとSNS炎上への備え
三木 要・亀井将博
クライシスマネジメントの観点からは、メーカーには事故が起きた場合の初動対応、そのための平時の備えをいかにしているかということが、他のクライシス(データ改ざんなどの不祥事)と異なり如実に成果として現れることに注意が必要である。
英文M&A契約書の交渉ポイント
第11回
補償(1)総論
西 理広・ニック・ツァイ
本号では、補償(Indemnification)の総論を解説する。
Next Issueはどこにある? 海外の今を読む
第7回
企業年金の活路となるか?
ソーシャルパートナー・モデルによる確定拠出年金
坂井岳夫
ビジネス実務法務検定を活用!
突撃!となりの法務部 法務部員の育成方法(4)
岸田吉史
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所 編