元法制局部長に学ぶ
規程立案の原理・原則
外山秀行
社内規程には、遵守されるべき規範として、内容の妥当性、表記の的確性、適正な手続履行という三つの要件が備わっていなければならない。内容の妥当性を確保するために重要な点は、立案の目的の正当性を確認すること、社内規程の体系を乱すことのないよう留意することなどである。表記の的確性を確保するためには、条文の配列や用語に関するルールに従うことなどが、適正な手続の履行に関しては、審査や協議の過程を経ることや周知期間を確保することなどが、それぞれ必要となる。
事前ヒアリングとリスク・ベースアプローチが鍵
「テーラーメイド」の規程を作るには
甲斐淑浩
企業のニーズに応じた「テーラーメイド」の社内規程を作成するためには、リスクベース・アプローチの視点から、担当部署のヒアリング等を実施して現場の実態を把握し、その企業がどのようなリスクに直面しているか的確なリスク評価を行い、そのリスクに対応するために必要十分な規定振りを検討し、社員が遵守しやすい実効性のある社内規程を作成する必要がある。
構造・用字・用語
策定編 社内規程の立法技術
吉田利宏
社内規則・規程(以下、単に「社内規程」という。)は法令ではない。しかし、ルールという性格を持つことは同じである。そのため、法令の書き方のルール(立法技術)は、社内規程に準用されるものも多い。こうした書き方のルールをふまえることで、社内規程は理解しやすく、合理的なものにブラッシュアップされる。
実務変更・法改正・組織再編
改定編 社内規程の修正技術
井上真一郎・楠部幸路
規程に関する作業は策定によって完了するものではなく、策定した後も、状況の変化等に応じて見直し、改定していく必要がある。状況の変化等の大きさによって、規程の見直しの範囲や程度は当然変わってくるものの、絶えず状況の変化等に注視しなければならない。また、規程の種類もさまざまであり、種類によって改定の際の視点も異なると考えられる。以下では、このような観点もふまえつつ、規程の改定作業について整理してみたい。
規程チェックの着眼点と外部依頼時の準備事項
井上真一郎・楠部幸路
本章では、法務部・法律事務所等へ規程の確認・チェックを実際に依頼する際に留意すべき点、および、依頼を受けた企業法務部員等が確認・チェックの際に持つべき視点等を考えてみたい。加えて、確認・チェックの際に、より良い規程にする工夫ができないかについても考えてみたい。
整備しておきたい社内規程一覧
〜専門コンサルの8つの視点〜
笹本雄司郎
専門コンサルタントより、整備しておきたい社内規程例・社内規程にまつわる業務に関する8つのアドバイスをお届けする。
「相談役・顧問制度」の功罪
─ガバナンス改革の視点に基づく見直し
山口利昭
2017年6月9日に公表された政府の未来投資会議のレポート「稼ぐ力の強化─コーポレートガバナンス改革を形式から実質へ」で示された課題も踏まえ、「相談役・顧問制度」の改革が政府主導で行われようとしている。本稿では、現在の本制度を取り巻く状況について整理いただいた。
CG報告書開示制度への企業対応
柴田堅太郎
経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(以下「CGSガイドライン」という)および政府「未来投資戦略2017」での提言を受け、東京証券取引所は、本年8月2日、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に、相談役・顧問に関する記載項目を追加する旨の改訂(以下「本改訂」という)を公表した。本稿では、CGSガイドラインおよびそのベースとなった「CGS研究会報告書」参考資料「コーポレートガバナンスに関する企業アンケート調査結果」をふまえて本改訂について解説するとともに、企業が相談役・顧問に関する開示を検討するにあたっての対応策を示す。
座談会「相談役・顧問制度」の是非を問う
石田猛行×大杉謙一×吉村典久×辰巳 郁×匿名企業3社
本座談会では、「相談役・顧問制度」の概要と相談役・顧問に求められる役割、存廃の是非や開示対応に加え、今後日本企業はどう変わっていくべきかについてご意見をお寄せいただいている。
これだけは押さえておきたい
個人情報の加工・「取扱い委託」の基本
日置巴美
2017年5月30日に改正された個人情報の保護に関する法律では、情報活用環境の整備を1つの柱として、匿名加工情報制度が創設された。本稿では、①個人情報取扱事業者が個人情報を加工して取り扱う場合のポイントと、②個人データの提供が生じる典型例である業務委託について対応のポイントをまとめる。
法令・ガイドライン・Q&Aに準拠した
匿名加工基準と作成実務
高橋克巳
本稿は匿名加工情報作成の実務者向けに、現在までに公表されている法令・規則・ガイドライン・Q&A・事務局レポートをあたり、加工基準として具体的に確定した事項をまとめる。また、未確定事項で重要なものについては、その論点と方向性について解説する。
個人情報の第三者提供・委託に関するQ&A
伊藤雅浩
本稿では、本特集のテーマである第三者提供・委託など、個人データが企業をまたいで移転する場面において、実務上、よく生じがちな疑問を取り上げ、その解説を試みる。
大田弘子
ビジネスの素人には社外取締役は務まるまい、と思っていた。しかし、実際にやってみると、何がしかの役割は果たせるのかもしれない、と考えるようになった。それは、企業経営において「外の目」が必要だと思うからである。
安倍嘉一
平成29年9月8日の厚生労働省労働政策審議会において、厚生労働省より、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(以下「要綱」という)が示された。本稿では、現時点における要綱の主要な内容および今後の動向について、概説することとする。
柳川範之×藤田友敬×佐藤典仁×杉浦孝明×戸嶋浩二×白石和泰
急速に技術が進歩している自動運転技術について、どのような法的課題があるのか、何がポイントなのかについて、この分野にお詳しい先生方にお集りいただいた。今回は、自動運転の現在の状況を整理いただいたうえ、 製造物責任の法的論点を挙げていただいた。
新株発行等の実務に与える影響は?
出光興産の公募増資差し止め請求事件
倉橋雄作
出光興産が公募増資の方法で新株発行をしようとしたところ、創業家株主らが「著しく不公正な方法」(会社法210条2号)による新株発行であるとして、その差止めを求めるという仮処分事件が起きた。この仮処分事件は、経営陣と大株主が対立する局面で結果的に株主構成を大きく変える公募増資が実施されたという初めての事案であり、会社の支配権をめぐる紛争があるときの争われ方に大きな影響を及ぼす可能性がある。 本稿では速報的な実務解説として、報道機関向けに配付された両決定の要旨(編集部を通じて取得した)をもとにして、本件が今後の実務にどのような影響を及ぼしうるか検討したい。
困惑類型、「平均的損害」推定規定の新設
消費者契約法改正案のポイントと対応
松田知丈
消費者契約法は2017年6月に改正されているが、同改正で対応されたのは、平成27年の消費者契約法専門調査会報告書で「速やかに改正を行うべき」とされた論点のみであった。 それ以外の論点については、昨年9月に再開した消費者契約法専門調査会において審議が続けられ、2017年8月に消費者契約法専門調査会報告書が公表された。その後、消費者庁が、「報告書における消費者契約法の改正に関する規定書」をパブリックコメントにかけ、法案化作業を現在進めている。 本稿では、第二次改正の方向性と影響について解説する。
分析プロセスが明確に
平成29年度「流通取引ガイドライン」改正
村田恭介
平成3年7月11日に制定された「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」が、平成29年6月16日、意見公募手続を経て公表された。今回の改正は、制定後、約25年経過によって、流通・取引慣行の実態が大きく変化したことから、有識者からなる「流通・取引慣行と競争政策の在り方に関する研究会」の報告書での見直しに関する提言に沿って行われたものである。
クロスボーダーM&Aのリスクに備える
「表明保証保険」の戦略的活用法
宍倉浩司
最近では空前の低金利や国内マーケット縮小に対する懸念も後押しして、日本企業によるクロスボーダーM&Aの件数が増えている。M&Aは、新規事業の立ち上げや事業の多角化・国際化などの経営戦略を実践するうえで有効な手段だが、その反面、ターゲット企業に内在するさまざまなリスクへの対処を誤ると、買収後に大きなトラブルを抱え込むことにもなりかねない。そのようなリスクをヘッジする手段として、表明保証保険の活用が脚光を浴びている。
英文M&A契約書の交渉ポイント
最終回 雑則等
西 理広・ニック・ツァイ
最終回となる本稿では、英文M&A契約書における雑則・一般規定とこれまでの記事でカバーできなかった条項のうち、交渉上重要なものに焦点を絞って解説する。
入門 税務コーポレートガバナンス
第3回
トップマネジメントが変える税務コーポレートガバナンス
佐藤修二・武藤雄木・山下 貴
税務CGの充実は、国税庁の施策への対応という観点のみならず、会社法・金商法の要請に沿うものとして、優先的に検討すべき課題の1つである。
読み方・書き方徹底マスター
法律中国語・基礎講座
第2回 義務、禁止などの表現
森川伸吾
今回は契約法5~7条について取り上げている。
基礎から学ぶ 広告マーケティング法
第2回 薬機法の広告規制の基礎
木川和広
今回は、広告に携わる方なら第一に知っておくべき薬機法の広告規制について解説したい。
法務部員のための税務知識
第6回 知的財産取引において生じる税務問題
岩品信明
知的財産部門では、知的財産権の管理や有効活用を主として検討することが多いが、知的財産取引にはさまざまな税務問題が生じるため、税務にも配慮して検討することが有益であると思われる。
サイバーセキュリティと企業法務
第3回
情報漏えい事案に関する裁判例にみる企業の責任(2)
山岡裕明
情報漏えい事案に関する裁判例を紛争当事者類型別に紹介する。今回取り上げるのは、 個人情報取得者─システム開発受託者間、 システム開発受託者─システム開発再受託者間である。
外国人弁護士 世界一周 №5
ナマドバスケス ラケル
グローバル時代のクライシスマネジメント
最終回 世界の国・地域におけるクライシスの特徴
茂木 寿
昨今の日本企業の海外進出の拡大、さらに世界の政治・経済・社会情勢の流動化に伴い、日本企業を取り巻くリスクは急速に多様化している状況である。当然ながら、日本企業がクライシスに遭遇する頻度は非常に高まっていると言える。 海外で活躍する企業を取り巻くリスクとしては、大きくコマーシャルリスク(契約書等でヘッジが可能なリスク)とカントリーリスク(コマーシャルリスク以外1)に大別することができるが、今号では、主にカントリーリスクを中心に世界の国・地域のリスク・クライシスの特徴について見てみたい。
Next Issueはどこにある? 海外の今を読む
変容し続けるESG投資の現在地
尾関幸美
本稿では、いまや世界的に広がるESG投資について、その起源からの変遷をたどり、現在の評価や議論が継続している問題について概観する。
ビジネス実務法務検定®を活用
突撃!となりの法務部 法務部員の育成方法(5)
髙塚裕之
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所 編