さらなる感染対策の実施とバーチャル総会の促進
2020年株主総会の振返りと本年の展望
中島 茂
2020年総会では各社ともコロナ感染症対策に大きな労力を注ぎ込んだ。2021年も引き続き同様の努力が求められる。「バーチャル総会」実現への試みも行われよう。他方,ESG経営,SDGs経営への株主の関心は高く,事業報告や質疑で会社の姿勢を示すことが求められる。
コロナ危機下での柔軟な議決権行使の動向ほか
議決権行使基準の比較・分析
塚本英巨
本稿では,2019年および2020年に引き続き,機関投資家の議決権行使基準の比較・分析を行う。2021年は,①新型コロナウイルス感染症の拡大をふまえた柔軟な議決権行使,②社外取締役の割合に関する議決権行使基準および③スチュワードシップ・コードの改訂と環境問題についての株主提案に関する議決権行使基準を取り上げる。
株主総会をめぐる近時の重要裁判例6選と実務への影響
冨田雄介/鈴木実里
近年,アクティビスト株主による株主提案の適否や,株主が議決権行使書提出後に来場した場合の議決権集計が問題になった事案等,株主総会をめぐる重要裁判例が示されている。本稿においては,その裁判例の一部を紹介したうえで,実務的な影響について解説したい。
DX,ESG投資,資本コストほか
2021年株主総会の想定問答
高田 剛/我妻崇明
昨年の株主総会は,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,多くの会社が従来と異なる運用・形態によって株主総会を実施し,株主からも感染拡大による事業への影響に関連した質問が相次いだ。本稿では,DXやESG投資等,近時頻繁に目にするトピックを重点的に取り上げ,2021年の株主総会における質問への回答に際して意識しておくべき背景および着眼点を解説する。
ベンダー選定の視点から本番の流れまでを詳解!
「出席型」オンライン株主総会実施の手引き
尾崎 太
コロナ禍により,株主総会の実務もこれまでの運営方法が通用しなくなっている状況と認識している。世の中のDX化がますます進展していくなか,株主総会実務におけるインターネットの活用が停滞することがあってはならないという社会的な使命を感じ,当社だけではなく社会全体の未来創造のために,本稿では当社にて実施した出席型オンライン株主総会の経験を余すことなく述べる。
書式例付 バーチャル開催における役員登記・議事録作成の実務
――電子署名の利用をまじえて
鈴木龍介/佐久原綾子
いまだに続くコロナ禍の状況をふまえ,株主総会や取締役会についてもニューノーマルといえるオンラインシステムでのバーチャル開催や,いわゆる書面決議が注目を集めている。そこで,本稿では書面決議を含むバーチャルでの開催における役員改選の登記実務と議事録作成のポイントについて解説することとする。あわせて,いわゆる「脱ハンコ」に向けての電子署名・電子証明書についても言及してみたいと思う。
総論 日本におけるオープンイノベーションの現状
――大企業担当者が理解すべき,現場の"ジレンマ"
鮫島正洋
オープンイノベーションという言葉は,一見すると「技術交流」のようにも思える。しかし,その本質は単にそれぞれの技術を持ち寄って1つのテーブルの上に載せるホームパーティではなく,大企業人材とスタートアップ人材が1つのビジネスに同船したときに実現する人的な交流において,それら人材に生じる「化学反応」のプロセスなのだ。
オープンイノベーションを加速させる
「技術法務」の考え方と実践例
高橋正憲
一企業の枠を超えて,革新的な製品やサービスを提供するオープンイノベーションの気運が高まっている。企業に変化が求められる時代,従前の特許戦略・契約書戦略は,そのままでよいのか?オープンイノベーション時代に適合する技術法務という考え方を解説する。
ケーススタディで学ぶ
技術検証(PoC)契約締結の実務
──検証,知財の帰属,秘密情報の取扱い,共同開発フェーズへの合意
後藤直之
PoCは,共同研究開発の前段階の技術検証段階を意味し,それゆえ,技術やビジネスに応じてさまざまな方法での検証が考えられる。本稿では,技術検証の方法の例をあげるとともに,契約に当たって比較的共通する考え方を解説する。その後,想定例に基づきケーススタディを2つあげ,特殊な問題についての考え方の例を紹介する。
オープンイノベーション時代の
弁護士・法務部員に求められる視点
──「法務機能の在り方研究会」報告書から考える
和田祐造
知財法務はどうあるべきか,また,知財法務を担当する弁護士,知財部・法務部の部員はどうあるべきか。ビジネスの置かれている環境の変化を念頭に,法務機能の本質に照らして知財法務を考えれば答えが出る。
米国司法省等によるシャーマン法2条違反を理由とした
Google提訴の最新動向と訴状の分析
原 悦子
2020年10月20日,米国司法省および11州がGoogleをシャーマン法2条違反で提訴した。司法省等は,Googleが締結していた排他的契約等により一般検索サービス市場,検索広告市場,および一般検索テキスト広告市場における独占力を維持しシャーマン法2条に違反したと主張する。本稿では,司法省等の主張内容を中心に解説する。
2020年12 月6日実施
第48回 ビジネス実務法務検定試験1級本試験問題・解説
「有用性」と「信頼」を両立させる制度整備を
従属上場会社における少数株主保護のあり方
加藤貴仁
親会社または支配株主から少数株主の利益を保護する仕組みを整備することは,証券市場の運営者の責務である。2020年9月1日に公表された「支配株主及び実質的な支配力を持つ株主を有する上場会社における少数株主保護の在り方等に関する中間整理」は,そのような責務を果たそうとする東京証券取引所の試みの1つといえる。
放送番組のインターネット同時配信をめぐる日本・世界の動向
三尾美枝子
放送の同時配信等に関する諸外国の制度放送番組のインターネットでの同時配信等の実現は,視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興・国際競争力の確保等の観点,また若者のテレビ離れを阻止する等の理由から,喫緊の課題ではあったが,放送と通信を峻別する現行法制度や著作権等の権利処理の煩雑さおよび放送事業者等の事業モデルなどさまざまな理由でその実現が進んでいなかった。一方,諸外国では,わが国と比較して,放送番組のインターネットでの同時配信等が進んでいる。
消費者契約法上の「不当条項」該当性と修正例
東京高判令2.11.5をふまえた利用規約の留意点
吉川翔子
昨年11月,東京高裁は株式会社ディー・エヌ・エーが運営するポータルサイト「モバゲー」の利用規約について,その一部が消費者契約法に反する不当条項であると判断した。当該判決はどのような内容であり,実務にどのような影響を与えるのかを検討するとともに,利用規約の修正例を紹介する。
中国著作権法改正,EU公益通報者保護指令ほか
海外法務ニュース 2021
石田雅彦
2020年は,コロナに始まりコロナに終わる,非常に特殊な1年であった。また,我々がここ数十年にわたり,所与のものととらえていたグローバル化を背景としたビジネス環境が一変した1年でもある。本稿において紹介しているニュースも,コロナによる環境変化を直接の原因としたものと,より大きな流れのなかでの動きによるものの2種類が存在するが,これらをタイムリーに把握しつつ,その文脈を読み解く力が非常に重要となってくる。その意味では,迅速かつ機動的な経営判断のため,日本を含む各国規制の動向の理解等,企業法務の役割,重要性がますます大きくなっていると思われる。
2020年12月1日より施行
中国「輸出管理規制法」の適用範囲・主要規制と企業対応
原 洁/張 国棟
中国の「輸出管理規制法」は2020年10月17日に制定され,2020年12月1日に正式に施行された。現在の国際貿易情勢において,中国の「輸出管理規制法」は多くの関心を集め,日系企業を含め,企業のコンプライアンス経営に対する新たな挑戦を仕掛ける形にもなっている。本稿では,「輸出管理規制法」の主な内容について整理し,企業への影響を分析し,その対応策を提案したい。
導入検討企業へ向けた
フレックスタイム制度運用における留意点
三谷和歌子
新型コロナ感染症の流行を受けて,フレックスタイム制の導入を検討している企業も現れてきた。フレックスタイム制については,以前から働き方改革の一環として促進されており,厚生労働省から「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」が発出されている。基本的には手引きをみれば十分であるが,本稿では,初めてフレックスタイム制の導入を検討する企業に対し,実務的に注意すべき点を中心に,整理して解説する。
LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編
PICK UP 法律実務書
『図解 不祥事の社内調査がわかる本』
平泉真理
「こういう本が欲しかった!」。これが,率直な感想だ。不祥事の社内調査のあらゆる場面を網羅的にカバーし,「かゆいところに手が届く」,実用的な内容が満載の書籍。以下,組織内の実務担当者の観点から,どこが凄いかをご紹介したい。
「個人情報保護法」世界の最新動向
最終回 フィリピン
石川智也/津田麻紀子
近時、各国の個人情報保護法制の厳格化・執行強化の動きが指摘され、グローバルでのデータプライバシー・コンプライアンス体制の構築を重要課題として掲げる日本企業が増えてきている。本連載では、その構築のための基礎知識と、日本企業が特に関心を有している法域における個人情報保護法制の概要について紹介する。最終回は,フィリピンの個人情報保護法について解説する。
フィンテック実務の最前線――法務と政策渉外の現場から
第2回 フィンテック実務の作法(下)
木村健太郎/髙尾知達
本連載は,フィンテックの法務と政策渉外に携わる弁護士が,フィンテック実務を読者に体感してもらうべく,実務上の作法と最新トピックを解説するものである。第1回および第2回は,総論として,法務と政策渉外の実務上の作法を説明する。
法とことばの近代史
第7回 〈司法〉
山口亮介
本連載では、法に関するさまざまな言葉の来歴について、江戸期をはじめとする前近代から明治初期にかけてのさまざまな情報や史料などを手がかりにしながら解説する。第7回は〈司法〉ということばについて,漢語としての来歴をふまえつつ概観していく。
証拠からみる 独禁法違反認定の鍵
第13回 クアルコム事件
向 宣明
本連載は,独占禁止法違反を疑われる行為の当時の文書が,証拠としてどのように評価されることになるのか,実例をふまえた検討を行うことで,同種事案への対処についての示唆を得ようとするものである。今回は,拘束条件付き取引に関する事例であるクアルコム事件を取り上げる。
企業法務史のターニングポイント
第3回 メーカーにおける法務機能の再定義
――臨床法務から臨床+予防,戦略法務の時代へ
野田繁直
本連載では,このような状況のなかで,わが国の企業法務の歴史を振り返り,各業界法務の指導的なOB,現役のエキスパートの方々に,節目となる時代の経済・社会状況の中で,各法務部門がどのような問題を克服し,発展し,その役割と存在感を確立してきたのかを,できる限り事例を通じて述べる。第3回は,メーカーにおける法務機能の変化,拡充強化について述べていく。
画像比較ですっきり理解!「知財侵害」回避のための着眼力
第6回 店舗等の外観の模倣
神田 雄
企業が事業活動を進めるうえでは各種知財の見えないハードルが立ちはだかる。本連載では,普段知財に馴染みのない方にもこのハードルが見えるよう,画像比較を用いて説明する。 第6回は,店舗等の外観や内装が法律上保護される場合の考え方について,近時の裁判例や法改正を紹介し,実務上の留意点について説明する。
要件事実・事実認定論の根本的課題──その原点から将来まで
第31回 最近の事実認定論における若干の課題②
伊藤滋夫