雑誌詳細

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2021年1月号

2021年11月20日発売号   1,700 円(税込)

特集1

変わるリスクマネジメント,契約実務,労務管理
非ネット・非IT企業のための
「デジタル・トランスフォーメーション」の法務

特集2

コスト増,トラブルを回避する
各国別 海外事業「縮小・撤退」の実務ポイント

特集3

2021年4月1日以降から適用開始
新収益認識基準に対応した契約法務の見直し

特集1
変わるリスクマネジメント,契約実務,労務管理
非ネット・非IT企業のための
「デジタル・トランスフォーメーション」の法務

コロナ下で進展するDX(デジタル・トランスフォーメーション)。企業が事業変革に取り組むにあたり,現れる法的リスクへの対処において法務部門の協力は必須となります。しかし,急速に進むDXに対しどのように向き合うべきか,不安を抱える法務部員も多いのではないでしょうか。本特集では,非ネット・非IT企業の法務部員を読者対象とし,DXを自社で進める場合,社外リソースを取り入れる場合のそれぞれにつき,法務部員が持っておくべき心構え・実践例,具体的知識を解説します。
企業法務総合

DX法務の心構え
――見逃される不安と心理的安全性の提言

渡部友一郎

法務部門は,リスクを管理する仕事の性質上,広範な守備範囲と慢性的な業務過多に伴い,不安に晒されている。非ネット・非IT企業のDX法務の対処すべき本質は「チーム・法務部員が直面する不安」ではなかろうか。本稿は,①管理職と②法務部員個人に関するDX法務の心構えを共有するものである。

企業法務総合

Q&Aで解説!「DX」法務相談トップ10
岡﨑誠一/蔦 大輔/北山 昇/中野玲也/松本亮孝

企業がデジタル技術を用いて新規事業の立上げや業務の改善・効率化を行うなどデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進する場合,これまでに経験がない法律問題に直面することが多くある。本稿では,このような場面で,法務部門がその役割を果たし,事業の変革をリード・サポートできるよう,頻出の相談事例と回答例について解説する。

企業法務総合

株式会社ZOZOでの実践を参考に
DX推進のために法務が実行すべき事項

采木俊憲

当社は過去数年だけでも,身体計測アプリ,SNS,在庫管理,インフルエンサー事業等,テクノロジーと実際の商品をつなぐ形で多くの事業モデルの変革に取り組んでいる。当社法務部は,これらの事業を推進する一翼として機能してきた。本稿では,筆者と当社法務部の取組みと,DX推進からみえてきた法務部に求められる心構えを参考までに紹介したい。

企業法務総合

アウトソーシングの契約条項およびデータマネジメント等
DX関連契約書における審査・交渉の着眼点

松永昌之/官澤康平

DX化を進めるにあたって,事業者はベンダー,コンサルティング会社,サービスプロバイダーなどとの間で契約を締結する必要があるため,契約交渉の対応が必要となる。本稿では,DX化を進める事業者の目線で契約実務上の着眼点について解説し,あわせてDX化を進めるにあたり多くの場合で発生する情報の取扱いの委託に関する留意点について解説する。

企業法務総合

モニタリング,コミュニケーション,新しい労働のあり方
労働環境・労務管理のDXに伴う諸問題

矢嶋雅子/森田多恵子

官民あげたDXの推進が進められるなか,労務管理の世界もDXが普及しつつある。リアルタイムで業務の推進状況等を確認することができる労務管理ツールの利用も拡大している。本稿では,PCを始めとするデジタル技術を通じた労務管理・労務提供のDXに伴う諸問題について述べる。

企業法務総合

DX推進に向けた人材採用における留意点
小山博章/髙木美咲穂

新型コロナウイルスの感染拡大もあり,多くの会社においてDXへの取組みが進んでいる。DXを進めるにあたっては,人材の確保が不可欠であるが,本稿では,DX推進のための人材を採用する場合に想定される,高度専門職に該当する人材を中途で採用する場合において,留意すべき点について解説する。

企業法務総合

"SERVE"を活用したミニマムガバナンスの設計を
DX推進を目的としたM&Aにおける留意点

田中大貴

DXを検討している企業の大半がIT利用にとどまっており,DXというビッグワードに踊らされている企業も少なくない。DX推進の留意点としては,まずは,DXを1つの手段として捉え,目的が4つのレイヤーのうち,どれに属するのかを明確にすることである。また,スタートアップ買収では,買えない失敗より,買った後の失敗を回避すべきであり,そのためには,ミニマムガバナンスを設計しておくのが重要である。この課題については,フレームワーク"SERVE"を使えば漏れなく検討できる。

特集2
コスト増,トラブルを回避する
各国別 海外事業「縮小・撤退」の実務ポイント
国際

総論 縮小・撤退の選択肢と法的・実務的障壁
玉井裕子/田子弘史

新型コロナウイルス感染症の世界的流行や,米中貿易摩擦等の急激な外部環境の変化を受け,海外子会社の事業について再編・撤退の検討に着手しようとしている企業もあろう。本稿では,主として,事業存続の危機に至る前の段階における海外事業の縮小・撤退に関する手法や,障壁・留意点等を概観し,その状況分析と撤退判断の際の指針を提示する。

国際

中国――当局,従業員対応,合弁パートナー等との交渉
川合正倫

中国では,人件費の高騰,環境規制の強化,事業構造の転換等を主な理由として製造業を中心にすでに事業の再編・撤退の動きが存在したところに新型コロナウイルス感染症の拡大や米中摩擦といった追加要因が加わり,業種を問わず再編の圧力が高まっている。中国事業の縮小・撤退に関連して検討すべき事項は多岐にわたるが,本稿では基本的な手法および主要な障壁を概観し,筆者の経験に基づく実務上の留意点を紹介する。

国際

米国――解雇に伴う訴訟リスク・金銭補償,環境規制への対応

西谷 敦/藤田将貴

新型コロナウイルスによる業績悪化を受け,米国からの撤退を本格的に検討する日本企業は今後増加していくと思われる。そこで本稿では,米国子会社を有する日本企業が米国事業から撤退しようとする場合に一般的に用いられる撤退手法を紹介したうえで,特に問題となる障壁および実務的な留意点について説明する。

企業法務総合 国際

英国――財産・契約関係処理,整理解雇手当支払の検討

絹川健一/工藤明弘

英国事業から撤退する手法として,大きく分けて,株主による任意清算手続を経る場合と,そのような手続を採らずに単に会社登記を抹消請求する場合がある。任意清算手続を経る場合,着実に事業を清算できるが,清算人を任命して,細かな手続を踏む必要があるため,期間が長引いたり,費用が高くなったりする場合もある。これに対して,単に登記の抹消請求をする場合,スムーズに進めば手続が早期に完了し,費用も抑えられるが,関係者から異議がなされた場合など,事業撤退手続の確実性に欠けるというデメリットもある。

国際

アジア各国――タイ,インドネシア,フィリピン,インドを中心に
石田 渉

近年,アジア市場の拡大等を背景に,日本企業によるアジアでの買収・投資案件は増加傾向が続いているが,新型コロナウイルス感染症による業績悪化によりアジア事業からの撤退を検討せざるを得ないケースも増加している。アジア事業では複数国に事業展開されているケースも多く,アジア各国で法制度や法慣習等が大きく異なる。そこで,本稿では,アジア事業からの撤退・法人清算における各国の制度・実務上の差異を中心に解説する。

特集3
2021年4月1日以降から適用開始
新収益認識基準に対応した契約法務の見直し
企業法務総合

契約内容に応じた財務部との連携を
新収益認識基準の概要と法務部の関わり方

横張清威

2021年4月1日から強制適用となる収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)は,多分に契約書の内容を参考にするという特徴を有している。そのため,法務部としても,新収益認識基準に配慮して契約書を作成・修正する必要がある。一般的に法務部と財務部との間のアクセスは,頻繁には行われていないところ,新収益認識基準をめぐっては,積極的に両部署間のアクセスを行う必要が生じる。そのため,法務部としても,その概要と関わり方について把握しておく必要がある。

企業法務総合

売買契約,役務提供契約,ライセンス契約
契約類型別 契約書審査・修正の実務ポイント

片山智裕

新収益認識基準は,契約に基づく収益認識の原則を採用しており,契約条項の定め方が会計処理に影響を及ぼすこととなる。本稿では,契約類型や論点ごとにその影響を解説し,法務部門がどのような点に着眼し,契約条項を審査すべきかを解説する。

地平線

企業法務総合

コロナで変わる「書面・押印・対面」慣行と
企業法務から発信すべきこと

榊原美紀

コロナ禍で出社を自粛する状況下,多くの企業はテレワークを採用するようになった。2020年4月に実施した日本組織内弁護士協会(JILA)によるテレワークに関するアンケート調査結果では,「押印のための出社」が課題として多く指摘された。

Trend Eye

争訟・紛争解決

暫定保全措置に係る規律整備,仲裁関連事件に関する裁判所手続の改革
「仲裁法改正」議論の最新動向

手塚裕之/小枝未優

近時,日本仲裁人協会や日弁連などから仲裁法の改正を求める意見が出されていることなどをふまえ,2019年12月に仲裁法制の見直しを中心とした研究会が設置された。本稿では,2020年7月に発表された同研究会による報告書を基に,仲裁法の改正に向けた議論の現時点における動向を,特に重要な点に絞って紹介する。

実務解説

企業法務総合

規程例付 電子契約における方式選択のポイントと
運用規程策定の実務

宮内 宏

電子契約の導入にあたっては,電子証明書や電子署名方式の選択が必要となる。選択においては,信頼性と手間・費用のトレードオフがあることを意識して,対象文書の重要性に相応するものを選ぶべきである。本稿では,電子署名の方式や選択のポイントを説明したうえで,電子契約の導入に必要な運用規程例を示す。

企業法務総合

企業における「渡す」・「貰う」の法的問題
「ギフトコンプライアンス」のルール整備と実務ポイント

木山二郎

近時,IRに関連する国会議員の贈収賄事件や関西電力の金品受領問題をはじめとする贈答・接待饗応に世間の関心が集まっている。贈答・接待饗応については,一歩その取扱いを誤れば,重大なコンプライアンス上の問題にも発展するリスクを孕んでいる。そこで,今回は贈答・接待饗応に関する,いわゆる「ギフトコンプラアンス」について改めて検討する。

労働法

独禁法・労働法の視点から検討する
社外人材活用における企業コンプライアンス 

吉村幸祐/菰口高志

多様な働き方を選択できる社会の実現が模索されるなか,企業に属さない社外人材(フリーランス)を志向する働き手が増加し,企業には社外人材を活用すべき要請が高まっている。また,働き方改革やコロナ禍を受けた副業・兼業への関心の高まりを背景に,好きなときを選んで仕事を引き受けたい働き手(ギグワーカー)を活用するギグエコノミーの拡大も予想される。本稿では,社外人材の活用にあたって留意すべき法的リスクを概観する。

会社法

コロナ禍の株主総会における各社施策と来場自粛効果
有山浩一/磯野真宇

本年3月から6月にかけての株主総会シーズンには,コロナ禍が直撃した。各社では,新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために,来場者数減少,時間短縮,いわゆる3密回避など,さまざまな施策が実践された。本稿では,現在の状況が一定程度継続することを見越して,今後の株主総会の準備に向けて参考となるよう,本年3月から6月の株主総会における各社の来場者数減少の施策に焦点を当てて,各社の対応と実際上の効果を探ることにしたい。

Lawの論点

会社法

親子上場制度廃止の是非 
松元暢子

親子上場には構造的な利益相反の問題があることは否定できない一方で,子会社が上場していることで子会社の採用活動において有利になる可能性があるといったメリットもある。親子上場の仕組みを廃止すべきだという結論に至るためには,少なくとも①こうしたメリットの大きさ,②子会社少数株主搾取の問題の実際の深刻さ,③子会社少数株主搾取の問題は法や制度の改正によって緩和できないのかといった点についての検討をふまえる必要がある。

労働法 国際

ドイツ「在宅勤務権」をめぐる議論の動向と法的検討
緒方桂子

新型コロナウイルスの発生・拡大により,世界中で「在宅勤務」が広がっている。ドイツも例外ではない。ドイツは,もともと,情報や技術のデジタル化の発展に合わせて,オフィスにしばられない働き方(モバイルワーク)を進めることを政策目標に掲げていたが,今般,突発的に発生した「在宅勤務」の普及とそれに伴う法的課題に対処するために「モバイルワーク法」の制定に向けて動き始めている。

連載

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

企業法務総合

敵対的買収への企業対応の最新動向
第1回 近時の敵対的買収の動向

松原大祐/石﨑泰哲

本連載では,わが国における敵対的買収を取り巻く環境や実例を紹介したうえで,敵対的買収事案に関与することの多い法律実務家の視点から敵対的買収への平時・有事の対応について解説を行うことを予定している。本稿はその第1回として,敵対的買収の定義と,事業会社による敵対買収の具体的事例を概観することとする。

企業法務総合

企業法務史のターニングポイント
第1回 連載開始にあたって/企業法務の原型・草創期

島岡聖也

本連載では,このような状況のなかで,わが国の企業法務の歴史を振り返り,各業界法務の指導的なOB,現役のエキスパートの方々に,節目となる時代の経済・社会状況の中で,各法務部門がどのような問題を克服し,発展し,その役割と存在感を確立してきたのかを,できる限り事例を通じて述べていただく予定である。第1回は企業法務のターニングポイントとなるべき時代区分を簡単に示す。

争訟・紛争解決

知って,活用! 国際仲裁・国際調停
最終回 国際調停の実務,主要な調停条項

岡田春夫

第6回は,最近世界的に脚光を浴びるようになってきた国際調停の特長および最新動向について解説した。とりわけ日本は,調停に非常に親和性の高い文化を持ち,京都国際調停センターが開設されるなど,国際調停は大変使い勝手のよいものとなってきており,今後の普及が大いに期待されている。最終回は,国際調停の実務および主要な調停条項について解説する。

争訟・紛争解決

最新判例アンテナ
第31回 強制執行に要した費用のうち,民事訴訟費用等に関する
法律2条各号に掲げられた費目のものを不法行為に基づく損害として
主張することは許されないとされた事例 

三笘 裕/武原宇宙

企業法務総合

法とことばの近代史
第5回 〈裁判〉と〈裁判所〉

山口亮介

本連載では、法に関するさまざまな言葉の来歴について、江戸期をはじめとする前近代から明治初期にかけてのさまざまな情報や史料などを手がかりにしながら解説する。第5回は近世から近代にかけての〈裁判〉ということばの用いられ方の変化を,明治期以降の〈裁判所〉の設置をめぐる状況とも関連させつつ概観していく。

知財

画像比較ですっきり理解!「知財侵害」回避のための着眼力
第4回 商標の類否判断における取引の実情とパロディ商標

増田昂治

企業活動には,さまざまな知財侵害のリスクが潜んでいる。製品開発における特許権,工業デザインにおける意匠権,ブランディングにおける商標権,販促資料の作成やソフトウェア開発における著作権など,企業が事業活動を一歩進めるたび,各種知財の見えないハードルを越える必要がある。第4回は,商標の出願手続の概要を説明した後,商標の類否判断における取引の実情の位置づけを整理し,パロディ商標に関する事例をふまえた実務上の留意点を説明する。

国際

東南アジアの贈収賄規制・執行の最新事情
第5回 タイの贈収賄――適切な内部通報制度の構築を

大塚周平/ 芳滝亮太 / イティチャイ・プラソンプラシット

本連載では、東南アジア各国の贈収賄法制度・執行実務・近時の傾向および留意点とともに、贈収賄対応におけるポイントを、現地の経験・知見をもとに解説する。第5回は,タイの贈収賄について解説し,内部通報制度設計における個人情報保護規制の検討ポイントについても述べる。

会社法

株主・株式からみた中小企業M&A の実務
第8回 中小企業の株式評価と価格決定の問題

門野公造/横井 伸

中小企業M&Aの大半は後継者問題に起因する「事業承継型M&A」である。背景にあるのは日本社会の現代的課題である少子高齢化問題であり、国策と合致することから大変な盛り上がりをみせている分野である。第8回は,中小企業の株式評価と価格決定の問題について解説する。

競争法・独禁法

証拠からみる 独禁法違反認定の鍵
第11回 NTT東日本事件 

向 宣明

本連載は、独占禁止法違反を疑われる行為の当時の文書が、証拠としてどのように評価されることになるのか、実例をふまえた検討を行うことで、同種事案への対処についての示唆本連載は、独占禁止法違反を疑われる行為の当時の文書が、証拠としてどのように評価されることになるのか、実例をふまえた検討を行うことで、同種事案への対処についての示唆を得ようとするものである。第11回は,私的独占に関する事例であるNTT東⽇本事件を取り上げる。得ようとするものである。第11回は,私的独占に関する事例であるNTT東⽇本事件を取り上げる。

民法・PL法等

要件事実・事実認定論の根本的課題──その原点から将来まで
第30回 最近の事実認定論における若干の課題

伊藤滋夫