With/After コロナにおける法務部長の心得
――危機時の対応振り返りとともに
守田達也
ここ数カ月間を振り返りながら,どのような考え方をもって新型コロナウイルスから生じた問題に対応したか,さらに今後の「With/After コロナ」の世界にてどう立ち向かっていくかについて,思うところを書いてみたいと思う。
納期変更,報告義務にまつわる条項の新設等
未履行契約の後処理と条項見直しの視点
柴山吉報
今後,新型コロナウイルスにより問題が生じた契約の後処理や,同種の災害が生じた場合を見据えた契約内容の見直し等が必要になる。本稿では,このようないわゆる「アフターコロナ」における契約に関連する問題を解説する。
BCP・BCMの視点から考える
日・英契約書における「不可抗力条項」の改定ポイント
遠藤元一
本稿は,今回の感染拡大に関して認知されている知見をふまえ,取引基本契約書の不可抗力条項等をどのように見直すべきかについての基本的な考え方を示すことを目的とする。サプライチェーンの中間に位置する企業の立場で,日本法を準拠法とした国内企業向け契約書の不可抗力条項を論じたうえで,海外企業との英米法を準拠法とする契約書の不可抗力条項も検討したい。
応じる・応じないの判断ポイントは?
条項例付 取引先からの支払猶予等の要請への対応実務
上田裕康
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて資金繰りが苦しくなった取引先から支払猶予・緊急融資を要請された場合に,これに応じるべきかどうかは,どのような基準に基づいて判断したらいいのだろうか。本稿では,支払猶予等の要請に対応するにあたっての実務上の論点,判断基準,合意するうえでの注意点について検討する。
破綻企業をめぐる状況変化を捉える
取引先の倒産に関する法務対応の検討
島田敏雄・森 直樹
コロナウイルス・ショック後は,従前の事例と比較して,破綻企業の財産状況が大幅に悪化した事例が増大すると見込まれる。取引先の状況を正確に把握し,手続に応じた回収手段,支援策などを見極め,柔軟に対応することが求められる。
外商投資企業の破産申立てはどう行うか
中国「企業破産法」の仕組みと実務
潘 激鴻・肖 娟
本稿においては,中国における破産制度の構造全般に焦点をあてて,多くの外商投資企業が抱える疑問点を念頭に置きつつ,実際の事例を参照しながら,中国の破産法の実務上の論点について,詳細に考察を加えたい。
テレワーク勤務,時差出勤,検温・マスク着用の義務づけ
規定例付 「新しい生活様式」に対応した企業体制の整備
山浦美卯
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が本年4月7日に発出され,各企業は,新型コロナウイルス感染症拡大防止のため,テレワーク勤務,ローテーション勤務,時差通勤,従業員の検温報告,社内でのマスク着用等といったさまざまな措置を講じてきた。緊急事態宣言自体は,本年5月25日に全面解除となったものの,厚生労働省から公表された「新しい生活様式」の実践例の記載内容からしても,各企業は,今後も同様の措置を講じていくことになろう。そこで,本稿では,上記の各措置を講ずるにあたって必要な事項を検討したうえで,具体的な規定例を示して,どのような企業体制を整備する必要があるのかについて解説する。
労働時間管理,安全配慮義務への具体的対応
規定例付「従業員シェアリング」活用に関する法的課題
渡邊 徹
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で雇用不安は高まったまま推移している。中国では,対策として2月ごろから外食産業の従業員を小売店の配達員として就労させる従業員シェアリングが話題となり,米国の大手ホテルも,他企業と提携して従業員シェアリングを展開した。国内でも,5月ごろから外食産業における休業店舗の従業員人材を,小売業に臨時出向させる動きが話題になった。本稿では,いわゆる「従業員シェア」と呼ばれる現象について,法的な検討を加えて実務的な留意点を概観する。
民法611条の解釈から交渉・和解のあるべき姿まで
新型コロナ対策としての営業自粛と店舗家賃
中野明安
2020年の当初から新型コロナウイルス感染症まん延対策による政府等の不要不急の外出の自粛や事業者の営業自粛等の要請がなされた結果,多くの物販,飲食事業者が当該要請に応じて営業自粛がなされた。そのようななか,使用していない店舗等について家賃の支払義務はどのように考えることがよいか。賃借人から減額を求められた際に賃貸人がとるべき対応はどのようなものであるか,法的にはどのような考え方があるかについて考察する。
座談会 コンピテンシーモデルを軸とした考察
法務と経営を接近させるための法務人材・法務組織戦略
金子忠浩・高野雄市・野村 慧
外資系法務・日系法務・法務エージェントの3名による座談会。法務部のプレゼンスを上げ,法務部が企業の経営に貢献する機能を作らなければならないという共通の理念のもとご参集いただいた。多くの日本企業における法務部と経営との間の距離を克服するためにできることは何か。コンピテンシーの構築を軸として,法務人材・法務組織戦略について熱く語る。
効果的な人事評価に向けた
目標設定・業務整理のポイント
水戸貴之・酒井太郎・新堀光城
人事評価を効果的に行うためには,ターゲット・オペレーティング・モデル(TOM)の枠組みを用いて各業務の種類および範囲の整理を行うことが有用である。新型コロナウイルス感染症拡大を受けた「新たな現実」においては,事業環境が著しく,また急激なスピードで変化することが想定され,部門としての目標・方向性を浸透させるツールとして,効果的な人事評価の重要性はますます高まっていく。
花王株式会社 上司・部下のコミュニケーションで目線合わせ
長谷川亜希子
当社の評価制度は,日本でも多くの会社が導入している目標管理制度をベースにしている。期初に1年間の目標を立て,期末に目標に対する実績で評価するというものであるが,評価は,貢献度部分と行動・プロセス部分とに分かれており,8:2の割合になっている。
カゴメ株式会社 成長につながる定量的目標の導入
早川拓司・小野寺知花
当社では部門課題に基づき,個人ごとに課題・達成基準を定量的なKPIで明確化し,全社に共有しています。法務部門として悩ましい定量指標の設定は,当社が考える法務部門・パーソンのあるべき像をふまえ,量に質の要素を組み込むことで,目標達成が個人や組織の成長につながるように努めています。
一人法務・複数法務
立場別 人事評価の「しかた」・「されかた」
堀切一成
筆者は,主にIT企業の法務として,4社で複数の部下のマネジメントを行い,3社で一人法務として業務を行ってきた。それにより,一人法務の立場,複数法務におけるプレーヤーの立場,マネジメントの立場を,すべて経験している。本稿では,その経験に基づき,それぞれの立場からの,法務部員の評価のしかた,されかたについて述べることにする。
星 正彦
新型コロナ対策に向け,官民あげて必死の努力がなされるなか,第201回通常国会では,令和2年度予算,新型コロナ対策補正予算のほか,新規の内閣提出法案59件(他に継続1件)が審議され,ビジネス実務に重要な影響を及ぼす法律が成立した。
澤井智毅
新型コロナウイルスに世界が直面するなか,プレスや有識者の方から,医薬品アクセス問題や強制実施権について,問われることが少なくない。その際,私は「医薬品へのアクセスは,その流通経路や製造能力等に依存し,必ずしも知財権がその障壁となるものではない。知財について言えば,今日の命も大事であり,10年,20年後の次世代の命も大事。医薬品や医療機器の発展を常に願わなくてはならない」と答えるようにしている。
石原遥平
ODR(Online Dispute Resolution) は,「IT・AI等の先端技術を用いたオンラインでの紛争解決手続」と定義されている。ただ,書籍や文献をみても統一的な定義はいまだ確立されておらず, ICTを活用して紛争の処理,管理,解決,そして将来の紛争の予防まで繋げようとするものや,民事紛争解決の場でICTが活用されるありとあらゆる場面を含むものなど,広範な概念として議論されていることも多い。
海賊版対策の実効性は担保されるか
改正著作権法等の概要と今後の課題
中嶋乃扶子・吉成あかり
2020年6月5日,著作権法等の改正法案が可決,成立した。改正法の目玉は,侵害コンテンツのダウンロードの違法化や,リーチサイト対策(侵害コンテンツへのリンク掲載を侵害行為とみなすこと等)を通じた,いわゆる海賊版対策の強化であり,一部の規定については2020年10月1日に施行される。本稿では,今般の改正に至った経緯および改正法の概要について触れたうえで,特に大きな社会的影響が予想される海賊版対策の強化について解説する。
資金決済法改正で三種の資金移動業を創設
決済法制および金融サービス仲介法制の概要と企業の対応実務(下)
峯岸健太郎・大村由紀子
2020年3月6日、「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。本稿では、①「金融サービス仲介業」の創設、②現行の資金移動業を3つに類型化し、また、収納代行等について利用者保護の措置を設ける等の決済法制の見直しについて2回にわたり解説する。
地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」の改正等からみる
MaaS実現に向けた法制度整備の最新動向
佐藤典仁
政府の2019年6月21日付成長戦略実行計画のなかでは,モビリティがSociety5.0のなかで重要な柱として位置づけられるとともに,同日付成長戦略フォローアップのなかで,モビリティ関係の施策として日本版MaaSの推進が掲げられている。具体的には,自家用有償旅客運送の見直し,タクシーの相乗り導入・柔軟な料金制度の実現などが盛り込まれており,今般の法改正等および通達改正等により,これらが徐々に実現されることとなる。本稿では,これらのMaaSの推進に関する法改正等および本通達改正等につき概説する。
米国におけるサイバーセキュリティ法制と訴訟リスクの検討(上)
馬場厚史・山岡裕明
本稿では,米国での企業活動に際して留意すべきサイバーセキュリティの規制・基準・訴訟類型について2回にわたり概括的に紹介する。第1に,連邦レベルでのサイバーセキュリティ規制を取り上げる。第2に,州レベルでのサイバーセキュリティ規制を取り上げる。第3に,企業のサイバーセキュリティに大きな影響を及ぼす自主基準を紹介する。最後に,企業活動に際して直面し得る訴訟類型を取り上げる。
事後・事前的規制から同時協働へ
現代科学技術への「法」のアプローチ
大屋雄裕
AIなど先端的な科学技術は,予期せぬ社会的問題を引き起こし得るだろう。だがそのような懸念に社会の側から取り組む姿勢はいま,変わりつつある。その背景にある法と技術の関係の変化とは,どのようなものだろうか。法の伝統的な機能と現代科学技術のあいだにあるギャップを認識することから,議論を始めよう。
クッキーの利用に関する各国・地域の法的規制(上)
石井夏生利
日本にはクッキーの利用を直接に規制する法制度は存在しない。しかし,クッキーに限らず,技術的な追跡手段に対する法的対応のあり方を考えるうえで,他の国や地域の議論を整理することには有用性があると考えられる。そこで,本稿では,誌幅の許す限りで,クッキーの利用に関する各国・地域の法的議論を概観する。
LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所編
法とことばの近代史
第2回 〈刑〉と〈律〉
山口亮介
本連載では、法に関するさまざまな言葉の来歴について、江戸期をはじめとする前近代から明治初期にかけてのさまざまな情報や史料などを手がかりにしながら解説する。第2回は〈法〉に関係するものとして,〈刑〉と〈律〉という語のあり方について概観します。
画像比較ですっきり理解!「知財侵害」回避のための着眼力
第1回 知財侵害リスクと著作物の類似性
飯島 歩
企業活動には,さまざまな知財侵害のリスクが潜んでいる。製品開発における特許権,工業デザインにおける意匠権,ブランディングにおける商標権,販促資料の作成やソフトウェア開発における著作権など,企業が事業活動を一歩進めるたび,各種知財の見えないハードルを越える必要がある。第1回は,知財侵害のリスクがどのようなものかについて説明し,その後,著作物の類似性に関する事例を紹介する。
最新判例アンテナ
第28回 使用者責任が成立する場合において被用者から
使用者への逆求償が認められた事例
三笘 裕・小川美月
本件は,貨物運送業を営むY社に雇用され,Y社の業務としてトラックを運転していた際に被害者を死亡させる交通事故を発生させ,被害者の相続人の1人に賠償金を支払ったXが,Y社に対し求償金等の支払を求めた事案である。
証拠からみる 独禁法違反認定の鍵
第8回 ソニー・コンピュータエンタテインメント事件
向 宣明
本連載は、独占禁止法違反を疑われる行為の当時の文書が、証拠としてどのように評価されることになるのか、実例をふまえた検討を行うことで、同種事案への対処についての示唆を得ようとするものである。第8回は、不公正な取引方法(再販売価格の拘束や拘束条件付き取引)に関する事例である土屋企業事件を取り上げる。
株式会社以外のビークルの実務
最終回 従業員持株会・労働組合
早川将和
従業員持株会や労働組合は,会社が事業活動に直接利用するビークルとは異なりますが,多くの会社ではその従業員により組成,利用されています。両者はいずれも民法組合をベースとしたものであり,その性質が共通するところがあることから,本連載の最終回では従業員持株会と労働組合について取り上げます。
ストーリーでわかる 訴訟手続の基本(刑事編)
第4回 公判手続①
沖田美恵子・門田和幸
本連載では、民事・刑事訴訟の全体像について読者の概括的理解に資するべく、ある具体的なストーリーを設定し、その進展を追う形で、各局面における訴訟手続の概要や実務的な留意点を解説する。連載期間は約1年を予定しており、前半が民事訴訟編、後半が刑事訴訟編となる。刑事編第4回では、公判手続について解説する。
対話で学ぶ 法務対応の勘所
第10回 M&A案件(競争法対応)
朝倉 亮
大学卒業後、総合商社の法務部に配属された新人Aは、法律事務所での勤務経験がある社内弁護士Bが率いるチームに所属し、さまざまな案件を担当することになった。第10回は、当社100%子会社のX社と,X社の競合他社に当たるY社との経営統合に対する競争法上の問題について検討する。
世界の法律実務・遊歩録
第10回 宇宙旅行を計画しているなら,宇宙法を知ること
ワキーン・テルセーニョ
「世界の法律実務・遊歩録」では、国際法律事務所のさまざまなオフィスで活躍するロイヤーが、世界のおもしろい・びっくり・どっきりな法律実務やエピソードを紹介していきます。第10回目は,宇宙旅行をする際に課される法的義務と宇宙条約についてご紹介します。
「個人情報保護法」世界の最新動向
第8回 オーストラリア
石川智也・津田麻紀子
近時、各国の個人情報保護法制の厳格化・執行強化の動きが指摘され、グローバルでのデータプライバシー・コンプライアンス体制の構築を重要課題として掲げる日本企業が増えてきている。本連載では、その構築のための基礎知識と、日本企業が特に関心を有している法域における個人情報保護法制の概要について紹介する。第8回では、オーストラリアの個人情報保護法について紹介する。
東南アジアの贈収賄規制・執行の最新事情
第2回 マレーシアの贈収賄――民間賄賂について厳しく摘発
大塚周平 Kelvin Kho ・Tan Yi Li
本連載では、東南アジア各国の贈収賄法制度・執行実務・近時の傾向および留意点とともに、贈収賄対応におけるポイントを、現地の経験・知見をもとに解説する。第2回は,最近大きな改正のあったマレーシアの贈収賄規制について解説する。
要件事実・事実認定論の根本的課題 ── その原点から将来まで
第28回 要件事実論における基本的視点②
――要件事実論の視点からみた所得税法
伊藤滋夫