雑誌詳細

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2020年8月号

2020年6月19日発売号   1,700 円(税込)

特集1

改正個人情報保護法・近時不正事例からみる
企業のデータ・コンプライアンスと利活用

特集2

改正公益通報者保護法で見直す
実効的な「内部通報制度」

特集1
改正個人情報保護法・近時不正事例からみる
企業のデータ・コンプライアンスと利活用
去る3月10日、「いわゆる3年ごとの見直し」に基づく改正個人情報保護法が第201回国会に提出され、審議が進められています。「不適正利用の禁止義務」、「保有個人データの公表事項の充実」、「個人関連情報の提供規制」等、企業活動に大きな影響のある義務規定が新設・拡充される一方、仮名加工情報等の個人データ利活用を推進する改正も注目されます。本特集では、本改正、近時不正事例、最新のビジネスモデルを題材に、これからの法務部門が担うべき「攻め」と「守り」の「データ法務」を深掘りして紹介します。
テクノロジー・AI

「個人の人格尊重」に立脚した対応を
個人情報保護法の改正経緯と日本企業のデータ・コンプライアンス
宇賀克也

2020年の通常国会に個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)の重要な改正法案が提出されている。本稿では、この改正法案の提出に至った経緯について解説する。また、2019年に大きな社会問題になった内定辞退率データ販売事件を契機に、企業のデータ・コンプライアンスへの関心が高まっているため、これについても論ずることとする。

テクノロジー・AI

影響度別にポイント解説
改正個人情報保護法の全体像と企業実務への影響
中崎 尚

データ活用推進の色が濃かった前回改正と比較して、今回の改正は、「保有個人データの公表事項の充実」、「個人関連情報の提供規制」「不適正利用の禁止の強化」等、データ・コンプライアンスを強化する改正の色合いが強く、企業ビジネスへの影響は少なくない。本稿では、企業ビジネスへの影響という観点を中心に、今回の改正事項を全般的に俯瞰していく。

テクノロジー・AI

個人情報利活用時のデータ・ガバナンス構築に法務部門はどう関わるか
──近時不正利用事案から考える
大井哲也

本稿では、ビジネスシーンにおける個人データ利活用の高まりを受け、企業個人データの利活用の場面で、法務部門がいかにガバナンスを効かせるべきかを論ずる。個人データの利活用は、ビジネス視点からは「攻め」の意義を有するが、他面で情報主体である顧客などの個人情報やプライバシーを保護すべき「守り」の意義もともに重要である。

テクノロジー・AI

規制対象範囲・適正性の判断軸は? 
不適正利用の禁止義務への対応
田中浩之・北山 昇

本改正では、個人情報取扱事業者の守るべき義務として、新たに不適正な利用の禁止義務が追加された。具体的には、個人情報取扱事業者は、違法または不当な行為を助長し、または誘発されるおそれがある方法により個人情報を利用してはならないとされた。本稿では、その立法趣旨等からその射程範囲を考察し、今後のガイドライン等の作成に向けた問題提起を行う。

テクノロジー・AI

ケーススタディで考える利用上の留意点
個人データ取扱いにおける「委託」の範囲
田中浩之・北山 昇

個人情報保護法上、個人情報取扱事業者が、個人データを第三者に提供する場合には、本人の同意を得る必要がある。本稿では、実務上よく利用されているにもかかわらず、解釈上不明確な点が多く、また、違法に行われている実態もみられる個人データの取扱いの委託について考察を試みる。

テクノロジー・AI

追加された公表事項とプライバシーポリシー改訂の要否
保有個人データの公表義務への対応
森 大樹・萩原智治

現行法は、個人情報取扱事業者に対して、保有個人データに関する一定の事項を本人の知り得る状態に置かなければならない旨を義務づけているところ、改正法は、この公表義務の対象となる事項を追加した。本稿では、あわせて改正される見込みの個人情報保護法施行令およびガイドラインの内容もふまえつつ、プライバシーポリシー改訂について解説を行う。

テクノロジー・AI

個人情報管理体制の再整備が急務
本人による開示請求、利用停止・消去請求への対応
影島広泰

改正個人情報保護法においては、保有個人データに対する本人の権利が拡充されることになっている。なかでも、開示のデジタル化と利用停止・消去等の対象の拡大は、実務に大きな影響があると考えられるため、本稿では、施行までに対応すべき準備について解説する。

テクノロジー・AI

報告・通知の対象、内容・期限、例外規定ほか
漏えい時の報告義務・本人への通知義務への対応
池原元宏

一定数以上の個人データの漏えいや要配慮個人情報の漏えい等、個人情報保護委員会が定める一定の類型に該当する事案について、個人情報保護委員会に対する報告が法令上の義務として明記された。本稿では、漏えい時の報告義務・本人への通知義務についての対応を解説する。

テクノロジー・AI

匿名加工情報と学術研究の例外のユースケースを解説
医療ビッグデータの利活用
村上諭志・野呂悠登

本稿は、「データ利活用の法務」のうち「医療ビッグデータ」をテーマにして解説をするものである。特に「サービスベンダーによる医療情報の外部提供」と「大学病院とのAIの共同研究」の2つの事例を取り上げて、データ利活用の観点から解説する。

テクノロジー・AI

3つのフェーズで分析するデータ提供の法律問題
パブリックDMPを活用したデジタル・マーケティング
鈴木翔平・森田祐行

本稿では、2020年3月に閣議決定された個人情報保護法改正案の眼目の1つである「個人関連情報」の第三者提供規制によって、影響を受けることが予想される「パブリックDMPを活用したデジタル・マーケティング」をテーマとして、想定事例をもとに、法的な分析を行う。

テクノロジー・AI

ユーザー目線の明瞭な説明と同意取得、独禁法に注意
信用スコア事業の展開
戸田謙太郎・寺門峻佑

個人を信用スコアで格付けするサービスは、これまで中国の芝麻信用、アメリカのFICOスコアなど、海外を中心に広がってきていたが、近年、日本においてもLINEスコア、Yahoo!スコアなど信用スコア事業への参入を表明する事業者が相次いでいる。そこで、本稿では、信用スコア事業の法的課題について、個人情報保護法やプライバシーおよび独占禁止法の観点から分析を行う。

特集2
改正公益通報者保護法で見直す
実効的な「内部通報制度」
第201回通常国会にて、ここ数年改正へ向けた議論が続けられてきた公益通報者保護法が満を持して改正されました。大企業に対する内部通報受付体制整備義務、受付担当者への罰則付き守秘義務、保護する内部通報者の対象の拡大(退職者や役員)等、2006年の施行以来はじめての抜本的改正となるようです。本特集では、改正法の概要と企業対応につき、内部通報制度を実効的に機能させるにはどのようにすればよいのかという視点を交え、解説します。
コンプライアンス

EU指令との比較でみる
公益通報者保護法の改正経緯と主要な変更点
柿﨑 環

公益通報者保護法の改正案は、労働者保護のみならず「公益性」の確保に重点を置く法としての一歩を踏み出した。本稿では、先行するEU指令の規制と比較しつつ、わが国の改正法案における主要な変更点を概観し、周辺制度への影響を検討する。

コンプライアンス

退職者・役員等が追加
「公益通報者」の範囲の変更
中川直政

改正法案では、退職後1年以内の退職者と取締役や監査役などの役員も保護の対象に追加し、本法の目的の実効性のさらなる向上が図られている。本稿では、公益通報者の範囲における変更点について解説する。

コンプライアンス

利用促進への課題は?
外部通報の保護要件の緩和・拡充
深水大輔・角田美咲

公益通報というためには、その目的が不正なものであってはならないが、不正な目的がないというだけで公益通報者が保護されるわけではない。本稿では、外部通報を行った公益通報者が保護を受けるための要件について、改正法案による変更点を中心に解説する。

コンプライアンス

4つの視点から自社制度の再点検を
内部通報体制の整備義務の明文化
岡島直也

現行の公益通報者保護法では、実際には必ずしもすべての事業者において適切な内部通報体制が整備・運用されていない実情が存在した。本稿では、改正法案のうち、民間事業者に課せられる内部通報体制の整備義務について概説する。

コンプライアンス

社内規定・担当者研修の見直しが急務
企業担当者個人の守秘義務の新設
寺田 寛

改正法案12条では、担当者個人の刑事責任を伴う守秘義務が定められた。本稿では、守秘義務の内容を解説し、内部通報制度の実効的な運用を確保しつつ、守秘義務違反を回避するために、企業として取るべき方策の一案を示す。

コンプライアンス

通報者保護体制の強化・検証を通報を理由とする
不利益な取扱い等に対する行政措置の導入
山田将之

事業者としては、通報者に対する不利益な取扱いの防止の徹底を図るとともに、不利益な取扱いが行われた場合にはそれを速やかに把握し是正できる体制を整備しておくことが求められる。本稿では、改正法案をもとに、不利益な取扱い防止のための実効的な措置を解説する。

コンプライアンス

通報判断の指針、利用ルールの周知、通報後の対応
グループ内部通報制度の設計・運用
倉橋雄作

不祥事の兆候(red flag)を早期に把握し、是正を図ることが求められる。その鍵を握る取組みの1つが、グループ内部通報制度である。本稿では、「グループ内部通報制度」をどのように設計・運用すべきであるのかについて、実務上の検討事項を指摘したい。

コンプライアンス

近時の不祥事例にみる
内部通報制度の機能不全要因の解消・改善への処方箋
中村克己

企業不祥事に際して一時的に組成された調査委員会の性質上、再発防止策については、おおまかな方向性の提示にとどまるというのが一般的である。本稿では、調査報告書等で指摘されている内部通報制度の問題点を分析し、その解消・改善に向けた具体的な視点を提供することとしたい。

地平線
米国発「脱・株主至上主義」をどう受け止めるべきか
会社法 国際

上村達男

アメリカ経済界のBusiness Roundtableは2019年8月に、181名のビッグビジネストップの署名を付した「Our Commitment」を公表し、株主第一主義の廃棄とイギリス型の経営目的観への転換を宣言した。日本はもともと明治以来、欧州型の謙抑的な、欧州では今も一貫して変わらない会社法の発想に拠っていたのだが、この間のアメリカの誤った発想に無批判に追随し、周囲の満ち潮に気づかないうちに孤島にひとり取り残されたという姿である。

トレンド・アイ
健康・安全に働くために法務が「対話」を支援
withコロナ時代の70歳就業
労働法

小島健一

70歳就業時代が始まる。高年齢者にとって、雇用ではなく業務委託のもとで就業することは、労働安全衛生法と健康・安全配慮義務に裏づけられた企業の管理・支援の"傘"の外に出るということであり、傷病手当金(健康保険)も労災補償(労災保険)もなく、就業の健康・安全リスクに個人で向き合うことを意味する。

実務解説

企業法務総合 国際

共同法人制度の導入、資格要件緩和、国際仲裁・調停代理の範囲拡大
改正外弁法の概要と日本企業・弁護士へのインパクト
出井直樹

本年5月22日に成立した改正外弁法は、①弁護士・外国法事務弁護士共同法人制度の導入、②外国法事務弁護士の資格要件の緩和、③外国弁護士等の国際仲裁・調停代理の範囲の拡大を内容とする。本稿では、本改正が国際的な法律サービスの実務に、また、そのサービスの受け手である企業等に、どのようなインパクトがあるかを解説する。

ファイナンス

金販法、資金決済法改正で「金融サービス仲介業」が創設
決済法制および金融サービス仲介法制の概要と企業の対応実務(上)
峯岸健太郎・大村由紀子

2020年3月6日、「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。本稿では、①「金融サービス仲介業」の創設、②現行の資金移動業を3つに類型化し、また、収納代行等について利用者保護の措置を設ける等の決済法制の見直しについて2回にわたり解説する。

争訟・紛争解決

選任・判断の迅速性で得られる実効的救済措置
「緊急仲裁人制度」の概要と活用上の留意点
武藤佳昭・吉田武史・ドミニク・シャーマン

多くの主要な仲裁機関で導入されている「緊急仲裁人制度」は、仲裁合意のある当事者間で、仲裁廷の成立を待たずに、緊急的な現状保全や義務履行等の暫定的救済措置を求めることができる制度である。本稿では、緊急仲裁人の発令する暫定的または保全的な救済措置について解説する。

労働法

兼業・副業、フレックスタイム、テレワーク
働き方改革時代における従業員・会社間の「利益相反」と対応策
白石紘一

働き方改革の具体的施策として取り上げられることの多い、兼業・副業やリモートワークをはじめとした多様・柔軟な働き方に対する関心は、引き続き高いように思われる。他方で、これらの施策の実施は、新たな手法や制度の導入であるため、従業員や会社の意識や業務体制が追いついていないことによって不都合も生じているようである。本稿では、働き方改革によって従業員が得る"自由"と会社の"利益"との利益相反をいかに調整するかを論じる。

会社法

完全子会社化、株式売却
親子上場解消の手法と各スキームにおける留意点
森本大介・古梶順也

親子上場をしている会社に対する経営監視の目が一層厳しくなってきており、今後親子上場の解消についての検討を行う上場会社がますます多くなることが予想されることから、本稿では、親子上場を解消する際の留意点について解説する。

連載

企業法務総合

LEGAL HEADLINES
森・濱田松本法律事務所編

2020年4月~5月

企業法務総合

法とことばの近代史
第1回 連載にあたって/〈法〉
山口亮介

本連載では、法に関するさまざまな言葉の来歴について、江戸期をはじめとする前近代から明治初期にかけてのさまざまな情報や史料などを手がかりにしながら解説する。第1回は、〈法〉の持つ意味内容の射程に特に注目をしながら検討を行う。

国際

東南アジアの贈収賄規制・執行の最新事情
第1回 シンガポールの贈収賄――民間賄賂について厳しく摘発
大塚周平・Hamidul Haq

本連載では、東南アジア各国の贈収賄法制度・執行実務・近時の傾向および留意点とともに、贈収賄対応におけるポイントを、現地の経験・知見をもとに解説する。第1回は、シンガポールの贈収賄について解説する。

テクノロジー・AI

「個人情報保護法」世界の最新動向
第7回 シンガポール
石川智也・津田麻紀子

近時、各国の個人情報保護法制の厳格化・執行強化の動きが指摘され、グローバルでのデータプライバシー・コンプライアンス体制の構築を重要課題として掲げる日本企業が増えてきている。本連載では、その構築のための基礎知識と、日本企業が特に関心を有している法域における個人情報保護法制の概要について紹介する。第7回では、シンガポールの個人情報保護法について紹介する。

争訟・紛争解決

知って、活用! 国際仲裁・国際調停
第5回 国際仲裁の手続②(主張書面・証拠の提出、ヒアリング、仲裁判断、簡易仲裁制度)
岡田春夫

本連載の前半では、仲裁とはどのような紛争解決手続か理解を深めるために、日本の裁判や米国の裁判とも適宜比較しながら国際仲裁の基礎知識について述べる。後半では、このような国際紛争を解決する手段としての調停の動向と実務ならびにこれに対応すべく昨年2018年11月に開設された京都国際調停センターについても述べる。今回は、主張書面・証拠の提出、ヒアリング、仲裁判断について解説するとともに、簡易仲裁制度についても解説する。

国際

世界の法律実務・遊歩録
第9回 法律事務所のリーガルテック事情
ヨハン・エルロット

「世界の法律実務・遊歩録」では、国際法律事務所のさまざまなオフィスで活躍するロイヤーが、世界のおもしろい・びっくり・どっきりな法律実務やエピソードを紹介していきます。第9回目は、この数年間で急速に発展してきたリーガルテックについてご紹介します。

企業法務総合

対話で学ぶ 法務対応の勘所
第9回 グローバル・コンプライアンス(内部通報制度を中心に)
朝倉 亮

大学卒業後、総合商社の法務部に配属された新人Aは、法律事務所での勤務経験がある社内弁護士Bが率いるチームに所属し、さまざまな案件を担当することになった。第9回は、経営幹部からグローバル・グループベースでのコンプライアンス体制を見直すように指示された際の、法務部内での具体的なアクションプランについて検討する。

争訟・紛争解決

ストーリーでわかる 訴訟手続の基本(刑事編)
第3回 捜査手続②
沖田美恵子・本多茂雄

本連載では、民事・刑事訴訟の全体像について読者の概括的理解に資するべく、ある具体的なストーリーを設定し、その進展を追う形で、各局面における訴訟手続の概要や実務的な留意点を解説する。連載期間は約1年を予定しており、前半が民事訴訟編、後半が刑事訴訟編となる。刑事編第3回では、前回に引き続き捜査手続について解説する。

企業法務総合

株式会社以外のビークルの実務
第5回 LLP
鈴木龍介

LLPは、ビジネスにおける多様な組織形態の必要性に応えるかたちで設けられた比較的新しいビークルです。LLPの利用の目的にはさまざまなものが考えられますが、同業者間における新規事業の研究や、グループ内での試験的な事業のためのビークルとして使われている例もあり、会社や法人以外のビークルの選択肢の1つといえます。そこで、本連載の5回目は、LLPについて取り上げます。

会社法 国際

米国ジョイントベンチャーの最新実務
第7回 持分譲渡に関する条項
竹内信紀・田中健太郎・松永耕明

本連載は、米国にて、米国の州法を準拠法として組成されたJVについて、公開情報をもとに、米国JVの実例や件数、その一般的なスキーム等を検討し、英文のJV契約のサンプル条項を明示しながら、米国JVに係る検討事項および問題点を紐解く連載である。本稿では当事者が保有しているJV持分の譲渡に関連する条項を中心に論じる。

税務

PI CK UP 法律実務書
『ホームラン・ボールを拾って売ったら
二回課税されるのか──新しい「税」の教科書』
南 繁樹

本書は、「二重課税」という切り口から税法を貫く重要な原理を整理する。本書の問題と数字を追ううちに、プリズムが赤・青・黄の光を発するように、税法の背後にあるさまざまな原理が浮かび上がる。灰色に見えた税法が、赤糸・青糸・黄糸の織りなす美しいタペストリーのように輝きを放ちはじめる。

競争法・独禁法

証拠からみる 独禁法違反認定の鍵
第7回 土屋企業事件
向 宣明

本連載は、独占禁止法違反を疑われる行為の当時の文書が、証拠としてどのように評価されることになるのか、実例をふまえた検討を行うことで、同種事案への対処についての示唆を得ようとするものである。第7回は、課徴金の賦課について公取委の判断が覆された事例である土屋企業事件を取り上げる。

会社法

株主・株式からみた中小企業M&Aの実務
第4回 株主の追跡・確定の問題
辛嶋如子

中小企業M&Aの大半は後継者問題に起因する「事業承継型M&A」である。背景にあるのは日本社会の現代的課題である少子高齢化問題であり、国策と合致することから大変な盛り上がりをみせている分野である。中小企業では、定款上の株券発行会社であっても株券未発行のことが多い。第4回では、このように会社法上の資料を欠く状況のなかで、どのように株主が確定されていくのかをみていく。

労働法

最新判例アンテナ
第27回 有効な労使協定がない計画年休制度の有効性が否定され、雇止めが無効であるとされた事例
三笘 裕・武原宇宙

本件は、英会話講師X(原告・控訴人)が、英会話スクールを運営するY社(被告・被控訴人)と締結していた1年間の有期労働契約について、1回目の更新は行われたものの、2回目の更新をY社から拒否されたため、労働契約上の地位確認と未払賃金の支払を求めた事案である。