雑誌詳細

2月号.jpg

2020年2月号

2019年12月21日発売号   1,700 円(税込)

特集1

民法改正で変わる
契約書・書式のオールガイド

特集2

施行までの対応事項を見通す
会社法改正条文を読む

特集1
民法改正で変わる
契約書・書式のオールガイド
2017年に成立した改正民法(債権法)の施行が2020年4月1日に迫っています。本特集では、改正債権法で変更する必要のある契約書・その他関連する書式をとりあげます。ひととおりの対応を済ませた方は最終確認に、対応未着手の方は最低限見直すべきポイントの把握にご活用ください。なお、本特集では見直すべき条項例を大きなフォントで示し、さらに条項ごとに見直しの優先順位を下記のとおり示しています。 見直す必要がある......★ 立場によって見直す必要がある......☆ 見直したほうが望ましい......○ また、本特集では「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律44号)による改正後の民法を「新法」、改正前の民法を「旧法」と記しています。
民法・PL法等

第1章 契約書・書式の検討
売買契約
板垣幾久雄

新法では、売買契約書で多く規定されている解除、債務不履行に基づく損害賠償、危険負担についても改正がなされたが、必ずしも大きな影響はない。一方、「契約不適合責任」へと大きく変わった「瑕疵担保責任」条項は手当が必須である。また、新法では、この「契約不適合責任」をはじめ、契約の目的や趣旨に関する当事者の合意内容をふまえて判断されるものが多くなった。そのため、契約の目的の記載も重要な再確認事項である。

民法・PL法等

第1章 契約書・書式の検討
賃貸借契約
林田健太郎

新法では、賃貸借の分野において、さまざまな改正がなされているが、賃貸借契約に関係がある改正については、①敷金に関するもの(条項例7条)、②賃借物の修繕に関するもの(条項例9条)、③賃借物の一部滅失等による賃料の減額に関するもの(条項例12条1項)、④賃借物の一部滅失等による契約解除に関するもの(条項例12条2項)、⑤賃借物の全部滅失等による契約終了に関するもの(条項例13条)、⑥原状回復義務に関するもの(条項例14条)、⑦連帯保証に関するもの(条項例17条)が主としてあげられる。

民法・PL法等

第1章 契約書・書式の検討
業務委託契約
浜本 匠

業務委託契約は一般的に、請負または準委任あるいはその両方の性質を有している。請負人の瑕疵担保責任について、旧法では634条から640条までに規定されていたが、これらは削除または改正され、新法では「契約不適合責任」(新法562条~572条、559条)に一本化された。また、新法では、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができ(新法634条)、受任者も成果に対し報酬が支払われる契約内容である場合には委任者が受ける成果の割合に応じて報酬を請求することができる(新法648条の2、634条)。これらの改正をふまえ、業務委託契約書の見直しが必要な各ポイントを解説する。

民法・PL法等

第1章 契約書・書式の検討
消費貸借契約
柴田征範

新法への対応として消費貸借契約においては、①法定利率および遅延損害金、②期限前弁済、について見直しを検討することが想定される。また、③諾成的消費貸借契約を締結するケースにおける条項も検討が必要である。本稿においては、典型的なものとして金銭消費貸借契約を例として取り上げる。また、金銭消費貸借契約に関連するものとして、新たに設けられた消滅時効の協議を行う旨の合意による完成猶予についても触れる。

民法・PL法等

第1章 契約書・書式の検討
保証契約
山本一生

債権法の改正に伴い、保証契約に関し、見直しが必要な主なポイントは以下のとおりである。なお、本稿では改正に関係する条項のみを抜き出している。①履行の請求の効力②保証契約締結時における主債務者の情報提供義務(→保証契約取消リスクの排除)③継続的契約における個人根保証の極度額設定④事業用融資における個人の第三者保証の制限(→保証意思宣明公正証書の作成)⑤主債務者の保証人に対する情報提供義務⑥債権者の保証人に対する情報提供義務(→債務者との守秘義務との関係)

民法・PL法等

第1章 契約書・書式の検討
債権譲渡契約
臺 庸子

新法では、譲渡禁止特約のルールが変更され、債権の譲渡を制限する意思表示(譲渡制限特約)に反した債権譲渡も有効としたうえで、一定の場合に債務者は債務の履行を拒むことができるとされている。債務者の異議なき承諾による抗弁切断は廃止され、将来債権譲渡の有効性についても明文化された。以下では債権譲渡契約書の見直しが必要な各ポイントを解説する。

民法・PL法等

第2章 定型約款
上林祐介

債権法改正により、定型約款に関する規定が新設されたことで、約款を利用した取引を行っている事業者において、従来使用してきた約款の見直しの検討が必要となっている。本稿では、約款の見直しにあたって留意すべき点に触れながら、定型約款に関する各規定について説明する。

民法・PL法等

第3章 施行日・経過措置
塗師純子

新法は、令和2年(2020年)4月1日から施行されることとなった。新法の施行日前に締結された契約や、すでに発生した債権債務について、新法、旧法のいずれの規定が適用されるのかについて、関連する附則の条項とともに、主な点を概観していきたい。

特集2
施行までの対応事項を見通す
会社法改正条文を読む
会社法

要綱からの変更点を押さえる
改正に至る経緯と施行までの見通し
三笘 裕・小宮慶久

今回の改正は、政府や東京証券取引所がこれまで実施してきたコーポレート・ガバナンス強化のための一連の取組みの延長線上に位置づけられ、実務にも影響のある内容が多く含まれている。本稿は、改正法の個別の項目の解説に先立ち、改正法の決定に至る経緯や施行時期の見通し、変更が予想される実務内容の全体像を概観するものである。

会社法

CHAPTER1 株主総会に関する規律
1-1 株主総会資料の電子提供制度の新設
黒田 裕・金田 聡

今般の改正による会社法により、株主総会資料の電子提供制度が導入されることとなった。これは、株式会社が、株主総会参考書類等(株主総会参考書類、議決権行使書面、計算書類、事業報告および連結計算書類)を紙媒体による送付に代えて自社のウェブサイト等に掲載することにより、株主に対して適法に提供したものとする制度である。

会社法

CHAPTER1 株主総会に関する規律
1-2 株主提案権の濫用的行使の制限
黒田 裕・金田 聡

株主提案権については、近年、一人の株主により膨大な数の議案が提案されたり、会社を困惑させる目的で議案が提案されるなど、株主提案権が濫用的に行使され、それによって株主総会における審議の時間等が無駄に割かれる事例が散見される。そこで、改正法では、株主提案権の濫用的な行使を制限し、株主総会の意思決定機関としての機能を確保するための措置として、株主が提案することができる議案の数を制限することが規定された。

会社法

CHAPTER2 取締役等に関する規律
2-1 報酬等の方針決定義務化と情報開示
石井裕介

現行法では、報酬等の決定方針の決定は、指名委員会等設置会社の報酬委員会にのみ義務づけられているが(会社法409条1項)、改正法361条は、以下の①②の会社につき、定款または株主総会の決議による会社法361条1項各号に定める取締役(監査等委員である取締役を除く。以下同じ)の報酬等の定めがある場合には、定款または株主総会決議で個人別の報酬等の内容を直接定めていない限り、取締役会に取締役の個人別の報酬等の内容についての決定方針として法務省令で定める事項(以下「報酬等の決定方針」という)を決定することを義務づけている(改正法361条7項)。

会社法

CHAPTER2 取締役等に関する規律
2-2 会社補償・役員等賠償責任保険
小林雄介

改正法430条の2は、役員等にその職務の執行に関して発生した費用や損失の全部または一部を会社が負担することを認める会社補償の制度を定めている。会社補償については、適切な経営の促進、外国人材の招聘、適切な防御活動による会社の損害抑止といった意義が認められる一方で、その運用のあり方によっては役員等の職務の適正性が損なわれたり、構造上会社との利益が相反するといった懸念が存する。この点、現行法においては会社補償に関する規定はなく、その解釈は必ずしも確立されていなかったところ、改正法は会社補償が適切に運用されるように会社補償をすることができる範囲や手続等の明確化を図っている。

会社法

CHAPTER2 取締役等に関する規律
2-3 社外取締役の活用促進、設置の義務化
小林雄介

平成26年会社法改正に係る会社法の一部を改正する法律の附則25条において、「政府は、この法律の施行後2年を経過した場合において、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、企業統治に係る制度のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、社外取締役を置くことの義務づけ等所要の措置を講ずるものとする」こととされていた。この点について、平成26年会社法改正で導入された

会社法

CHAPTER3 その他の規律
3-1 株式交付制度の新設
森田多恵子

株対価M&Aは、特に企業のイノベーションや成長戦略を支える手段として、欧米企業が幅広く使っている手法である。たとえばGoogleは多くの会社と提携して成長してきたが、著名なYouTubeの取得を含め、株式対価と現金対価との混合対価での取得を行っている。これまで日本に株対価M&Aの手法が(会社法上の組織再編行為以外に)整備されていなかったこと自体、日本企業の国際競争力において大きなハンディ・デメリットであった。今回の改正法により新設される「株式交付」は、こうした株対価M&Aの基本となる手法を会社法が条文化したものである。

会社法

CHAPTER3 その他の規律
3-2 社債管理補助者制度の新設
森田多恵子

社債管理者を設置する必要がないときは、社債管理補助者を定め、社債権者のために、社債の管理の補助を行うことを委託することを認める制度が新設された。社債管理補助者の設置は任意であるが、設置する場合は、その旨を募集事項に含めなければならない(改正法676条8号の2)。

地平線
ビジネスと憲法──経営者が考える意味はどこにあるのか
企業法務総合

大八木成男

戦後70数年の怒涛の歴史を経て、グローバル化とデジタル技術革新が進展するなかで、国家や経済社会、企業を取り巻く環境が激しく変化しつつある。しかし、国のかたちを示す日本国憲法は一度も改正されていない。大きく変動するこれからの社会に現行憲法とその付属法で対応できるのか、いくつかの課題について考えてみる。

トレンド・アイ
中立スキームという新たな仕組みづくり
組織を元気にする「職場ガバナンス」の構築
労働法

森淳二朗

職場ガバナンスを育てたいと考えるようになってから、もう3年になる。ガバナンスとは、よい経営を引き出すために経営者を規律づける機能や仕組みのことをいう。それを経営ガバナンスと呼ぶなら、職場ガバナンスとは、よい職場をつくるための機能または仕組みということになるが、今は企業の人と組織を元気にするための実践的工夫の段階にすぎない

LAWの論点
契約締結時における「説明義務」の内容と責任(下)
民法・PL法等

小林和子

債権法改正の議論のなかでは、説明義務に関する規定を設けることも検討されたが最終的には、規定を設けることは見送られた。本稿の目的は、契約締結をする際、企業はいかなる場合にどのような内容・程度の説明義務を負うのか、説明義務違反があった場合には、企業はどのような責任を負うのかについて検討することにある。

速報解説
「出席」は法的評価か?
アドバネクス株主総会決議取消請求事件控訴審判決
会社法

弥永真生

令和元年10月17日に、東京高等裁判所は、総会会場に入場した法人株主の使用人は職務代行者としてではなく、傍聴者として入場したと判断し、法人株主の事前の書面による議決権行使は撤回されたとは認められず、当該使用人は、修正動議との関係では欠席したものと扱われるとの判断を示した(平成31年(ネ)第1603号)。

座談会
連載 先輩・後輩で描く企業法務のグランドデザイン
最終回 「企業法務のグランドデザイン」
企業法務総合

名取勝也・須﨑將人・中山剛志・宮下和昌

本日は、連載の総括企画として、これまでファーストリテイリングやIBMのリーガルヘッドを務めてこられた名取先生にもご参加いただき、「企業法務のグランドデザイン」をテーマとした座談会を開催させていただきました。

実務解説

企業法務総合

サントリーの導入事例にみる
企業法務におけるAI・リーガルテックの導入プロセス
明司雅宏

AIによる契約審査をはじめリーガルテック花盛りであるが、果たしてどのサービスを使うか、あるいは予算化などさまざまな検討をされている企業も多いであろう。特にAIによる契約審査は、何か法務部門の仕事を奪うのではないかという誤解も多い。例えれば、現段階のリーガルテックは「自動運転」ではなく、初期の「ナビゲーションシステム」である。しかし、そこには法務業務の本質を明らかにする強い力があることも確かである。

企業法務総合 民法・PL法等

サブスクリプション・サービスの法的留意点(上)
──サービス・モデル別の検討
中本緑吾

これまで、サブスクリプション・サービスは、おおむねビジネスモデルの視点で語られることが多く、あまり法律面や契約内容に関する検討はされてこなかったように思われる。そこで、本稿では2回にわたり、サブスクリプション・サービスに関する契約(以下「サブスクリプション契約」という)の現状を整理したうえで、法的性質や法律構成等に焦点を当てつつ、その課題と運用について検討したい。

テクノロジー・AI

使用・開示範囲に関する十分な合意形成を
「限定提供データ」の侵害対応をめぐる最新実務
波田野晴朗・山郷琢也

2018年5月、企業が活用する大量に蓄積された電子データを保護するための改正不正競争防止法(以下「不竸法」という)が成立した。データの保護は古くから議論がされてきたが今般ついに立法化に至ったものであり、今後のデータの不正利用をめぐる実務に大きな影響を与えるものと思われる。本稿ではこの限定提供データ侵害について、実務への影響や対応について概説する。

テクノロジー・AI

「情報銀行」制度の概要と情報提供を受ける際の義務・留意点
佐藤有紀・砂田有史・小山健太

近時、個人情報の主体である個人の一定の関与のもとで個人情報を第三者に提供する「情報銀行」の仕組みが整いつつある。本稿では、情報銀行から個人情報の提供を受ける事業者(提供先事業者)の義務として留意すべきものを現時点で公表されている情報から整理した。

会社法

登用を考える企業へ向けた
外国人社外取締役活用の実際的効果
ブルース・アロンソン

このエッセイでは、筆者自身の経験というより、主として上記の同僚、友人らから寄せられた体験談に基づいて、日本企業における外国人社外取締役が果たすべき役割をできる限り具体的に考察したいと考える。

コンプライアンス

中小企業も要注意!
企業を取り巻くサイバーリスクの現状と保険の活用
山越誠司

わが国におけるサイバー保険の理解と普及は進んでいない。そもそも、サイバーリスクの実態把握が難しいので当然なのかもしれない。まずは、サイバーリスクが何かということを理解し、サイバーセキュリティを強化することが重要である。ある程度対策が充実してくると、サイバー保険の位置づけや活用方法も明確になり、社内でも議論しやすくなる。間違いなくサイバーリスクへの対応は、これからのリスクマネジメントの重要課題になろう。

企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2019年10月~11月

会社法

最新判例アンテナ
第22回 いわゆる事前警告型買収防衛策の廃止について株主提案権の対象とはならないとした事例
三笘 裕・小宮慶久

テクノロジー・AI

「個人情報保護法」世界の最新動向
第2回 データプライバシー・コンプライアンス体制構築のための基礎知識(後編)
石川智也

第1回では、各国での個人情報保護法制の厳格化・執行強化の動きと、そのような動きをふまえたグローバルでのデータプライバシー・コンプライアンス体制の構築の必要性について述べた。第2回では、実際にどのようにデータプライバシー・コンプライアンス体制を構築するかについて述べたうえで、体制構築のために必要な各国の個人情報保護法制の調査の視点について、若干のコメントを行う。

争訟・紛争解決

知って、活用!国際仲裁・国際調停
第2回 仲裁機関の比較と選択
岡田春夫

前回(第1回、2019年12月号掲載)では、仲裁地の重要性を説明し、日本企業にとって日本を仲裁地にすることがよいこと、仲裁を日本に持ってくる方法としては、できればJCAA(仲裁地日本)、難しければICC(仲裁地日本)やSIAC(仲裁地日本)も検討に値することを述べた。第2回となる本稿では、日本企業に利用されている世界の仲裁機関の比較と、日本の企業等にとって、仲裁機関をどのように選択すればよいのかを解説する。

国際

世界の法律実務・遊歩録
第4回 「最近まで存在したアイスランドのこわい法律」
山田香織

「世界の法律実務・遊歩録」では、国際法律事務所のさまざまなオフィスで活躍するロイヤーが、世界のおもしろい・びっくり・どっきりな法律実務やエピソードを紹介していきます。第4回目は、世界のびっくりする法律のなかでも、ひときわ奇妙な、つい最近まで存在したアイスランドのこわい法律についてご紹介します。

争訟・紛争解決

ストーリーでわかる訴訟手続の基本(民事編)
第4回 尋問申請・尋問準備
大久保由美・福谷賢典

甲社が製造し顧客の工場に納入した機械が、乙社から供給を受けた部品の腐食による折損が原因で運転を停止し、甲社はこれにより損害を被ったため、乙社に対して損害賠償請求訴訟を提起した。同訴訟の第1回弁論準備手続期日において、乙社は、「乙社部品が腐食したのは、甲社機械中で高温かつ酸性の液体に長時間さらされたためであるが、そのような使用環境について甲社から説明を受けていない」旨を準備書面で主張した。しかしながら、甲社は、乙社から部品を購入する前に、当該部品の使用環境をメール等で連絡しており、担当者間の打合せでも使用環境について議論していたことから、第2回弁論準備手続期日において、その旨反論することとした。

企業法務総合 国際

ロイヤーの使い方を押さえる!法務のための英単語辞典
第10回 「法」を表す表現
豊島 真

「法律を勉強する」を英語でいうとstudylawとなるが、「会社法」は一般にCompaniesActと訳されている。かと思えば、「民法」はCivilCodeと訳されていたりする。どれも「法」なのに、何が違うのだろうか。今回は、「法」に関連する表現をみていこう。

競争法・独禁法

証拠からみる 独禁法違反認定の鍵
第2回 安藤造園土木事件
向 宣明

本連載は、独占禁止法違反を疑われる行為が行われていた当時の、関係従業員の手帳等の物的証拠が、違反の有無の判断のなかでどのように評価されることになるか、実例をふまえた検討を行うことで、同種事案への対処についての示唆を得ようとするものである。今回は、違反となる合意(入札談合)の意思形成の過程について日時場所等をもって特定する必要はない等の判断を示した事例とされる安藤造園土木事件(以下「本件事案」という)を取り上げる。なお、証拠の状況を理解することは、判示の趣旨を理解するうえでも有用であり、参考になる。