雑誌詳細

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2019年8月号

2019年8月号発売号   1,609 円(税込)

特別企画

法務の到達点と展望を大観する
平成から令和へのメッセージ

特集1

トラブルを避け、解決に導く
契約解除の実務

特別企画
法務の到達点と展望を大観する
平成から令和へのメッセージ
相次ぐ不祥事、コンプライアンス概念の敷衍、国際競争力を高めるためのコーポレート・ガバナンス改革、会社法の制定など、「平成」には現在の企業法務に連なる数々の出来事がありましたが、「令和」に積み残しになっている課題も数多くあります。本特別企画では、(1)平成の法務史を一連の流れのなかで総括し1つひとつの出来事に評価を与えること、(2)平成が遺した課題を明らかにすることを目的とし、各分野を代表する方々に次代へのメッセージをいただきました。
企業法務総合

法科大学院の誕生と法曹養成の変遷
青山善充

平成の司法制度改革の柱として、平成16年に鳴り物入りで導入された法科大学院。しかし、この15年間で法科大学院人気(志願者数)は急落し(初年度72,000人超から平成31年度8,000人割れへ)、学生募集を継続する法科大学院は半減した(74校から現在36校へ)。他方で、平成18年から実施された新司法試験(予備試験組を含む)によって、法曹人口は、この15年間でほぼ倍増し(平成16年約23,000人→平成30年約45,000人)、社会で活躍している。このようななかで、法科大学院在学生に一定の要件で司法試験の受験資格を認める法案が、国会に上程された(平成31年3月12日)。

会社法

会社法の制定
江頭憲治郎

会社法制定の当初の目的は、条文の「現代語化」と会社法制を「一つの法律」にまとめることであったが、ふたを開けると、大幅な実質改正となった。とりわけ、中小会社法制に大きなインパクトをもたらした。

会社法

会社法の制定
藤縄憲一

会社法の制定作業は、会社法が経済のインフラであることが強く意識され、法律実務家が制度設計に積極的に関与した。会社法をより良いものにしていくうえで、法律実務家の責任は、今後ますます重くなっていく。

会社法

金融商品取引法の制定
松尾直彦

平成30年間の企業法務の重要な出来事に関する弁護士アンケートにおいて、金融商品取引法(金商法)制定(平成18年6月)が会社法制定(平成17年7月)に次いで第2位と位置づけられている(日本経済新聞(電子版)2019年1月13日付記事)。金融庁の担当室長として金融商品取引法制の整備に関与した者として、感慨深い。

会社法 コンプライアンス

リクルート事件
久保利英明

リクルート事件は金商法による取引制度改革と、コーポレートガバナンス改革を押し出したマグマであった。平成とはその実現に30年間を費やした。本稿はバブルが膨張し、剥落していった時代への弔鐘と新時代誕生の起点の紹介である。

会社法 コンプライアンス

大和銀行株主代表訴訟事件大阪地裁判決
中村直人

本判決は、内部統制システム構築義務を初めて認めた判決である。また巨額の損害賠償義務を認めたことで、実務に与えたショックは大きく、コンプライアンス経営へ舵を切るとともに、責任制度のあり方を変える契機となった。

会社法 コンプライアンス

村上ファンド事件
牛島 信

村上ファンド事件は、日本におけるアクティビストの印象を悪化させた。しかし、昨今、新型といえるアクティビストが活躍し、機関投資家との「幸福な同棲」を実現しつつあるように思われる。企業には、新しい対応が求められる。

コンプライアンス

東芝事件等の不正会計
弥永真生

平成における不正会計の横綱といえば、オリンパス事件と東芝事件とであろう。これらにより、監査人・監査委員会(・監査役会)による監査、財務報告に係る内部統制につき多くの課題が残っていることが明らかになった。

会社法 コンプライアンス

神戸製鋼等の品質不正
山口利昭

明確な法令違反はなくとも、社会への向き合い方に問題があれば企業の信用が失われる時代となり、一連の品質不正事件はその典型例といえよう。グローバル競争が激化する令和の時代の企業には、さらに自浄能力が求められる。

会社法 コンプライアンス

公益通報者保護法の制定と企業の内部統制
中島 茂

内部通報制度は平成の時代に「不祥事」を予防する手段として始まり、公益通報者保護法も制定された。新しい時代では「個人の尊重」という価値観に立った「真の内部統制」が求められる。内部通報制度はその重要なインフラとなる。

会社法

コーポレートガバナンス・コードの誕生と浸透
武井一浩

コーポレートガバナンス・コード(CGコード)は、「日本企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上」を目的として、実効的なコーポレート・ガバナンスの実現に資する主要な原則をとりまとめたものである。

競争法・独禁法

独占禁止法と課徴金制度
村上政博

2005年改正の課徴金減免制度の導入により、日本で初めてカルテル(価格協定、入札談合)の禁止が実効性をもつことになった。2019年改正で証拠価値に応じた調査協力による減額が導入され、この結果、カルテル事件の行政調査についてEU競争法上のカルテル調査に近いものになると見込まれている。

テクノロジー・AI

個人情報保護法の制定・改正
岡村久道

わが国の個人情報保護法制の現行の枠組み作りは1999年に開始され、世紀をまたいで2003年に一応の完成をみた。

知財

青色発光ダイオードの特許をめぐる東京地裁判決
升永英俊

紀元前数千年ごろ中東で農業が発見され、地球上で初めて農産物が富を具現するという富のルールが誕生した。その後、19世紀に始まった工業の時代の富のルールは、工業製品が農産物より有利に富を具現するというものである。さらに、1990年代に、工業の時代から知的財産の時代に突入し、富を生み出す源は、工業製品から知的財産や知的財産で保護される工業製品、サービスに変わった。を生む知的財産を創造するには、技術者に発明の動機づけを与えることが有効である。

知財

知財立国へ向けた取組み
塚原朋一

産業界は、知財高裁の発足当時、「知財立国」の要になることを期待したが、発足後の数年間は、拒絶査定の審決の多くを維持し、「同一技術分野論」を多用して特許無効判断を頻発した。2010年以降はプロ・パテントに移行した。

民法・PL法等

民法(債権法)改正法の成立
潮見佳男

債権法の改正は、民法典の百年を契機とした平成の時代の大事業であった。改正法が令和2年(2020年)4月1日に施行されると、実務での本格的な展開は、令和の時代に始まることになる。以下では、平成と令和の時代を架橋することとなった債権法改正の動きを振り返り、未来に向けたメッセージとしたい。

労働法

労働者派遣法の改正
労働法

平成の直前に合法化された労働者派遣は、平成の30年間に躍進・後退・新展開と時の政策に翻弄された。そして、令和に入り派遣労働者の待遇改善の新時代に進む。

労働法

男女の雇用均等・女性活躍の推進
石井妙子

平成の時代、雇用機会均等法、育児介護休業法等の法制が整備され、多くの女性に長期的な就業継続が可能となった。しかし、管理職の女性割合等にみるように、いまだに男女格差が存続している。少子・高齢化を背景に令和の時代の喫緊の課題は、女性活躍推進である。

労働法

働き方改革推進法の制定
土田道夫

働き方改革推進法は、雇用社会における「法の支配」の浸透を図るとともに、従業員を企業における主要な利害関係者に位置づけ、その法的地位を強化する意義を有しており、企業法史上、平成から令和へと受け継がれるべき重要なメッセージを発している。

企業法務総合

平成の金融危機と再生手法の多様化
瀬戸英雄

平成は、バブル経済の後始末から金融危機を経て、昭和の倒産法制を全面改正し、また私的整理の準則化が図られるなど、事業再生手法は一新され、また多様化した時代であった。目先、倒産件数は減少しているが、先送りした多くの課題を抱えながら令和を迎えた。

企業法務総合

インハウス弁護士の増加・企業内法務の地位向上
本間正浩

その人口の増大により、企業内弁護士は弁護士業務の一形態として定着した。一方で、企業内法務に対する期待の高まりとともに、企業の期待も成熟の兆しがあり、今後はその意義と価値が具体的に問われることになる。

特集1
トラブルを避け、解決に導く
契約解除の実務
「契約解除」にまつわる実務は、ビジネス法務のなかでも特に難しい分野です。法務部員には、契約締結の段階で自社にとって不利にならない解除条項を定めることはもちろん、実際の解除・解約の場面においても、のちにトラブルが発生・拡大しないように対応する能力が求められます。本特集では、突発的な「契約解除」にも対応し得る実務について、トラブルを見越した豊富な条項例、ベテラン法務部員による円滑な社内・社外折衝の実際を紹介します。なお、特に「システム開発契約」については、各論として2つの記事でとりあげました。本特集を参考に、解除のノウハウを培っていただきたいと思います。
民法・PL法等

法規制と解除の要件・効果を確認する
「契約解除」の基本的留意点と実務ポイント
花野信子・佐藤敬太

解除の実務では、①解除事由、②解除手続、③解除の効果に注意する必要がある。いったん契約関係に入った当事者が離別すると、当事者間で築き上げた関係(過去)の清算が必要となり、金銭賠償が生じる場合もあるという点で、解除は離婚にも似た難しさを有し、ビジネス法務のなかでも悩ましい分野である。本章では、解除をめぐる法規制と実務ポイントの概要を紹介する。

民法・PL法等

契約類型ごとの特徴を押さえる
解除条項・中途解約条項起案の際の留意点
太田大三・田村遼介

本稿では、被解除者側に債務不履行等の事由がある場合に契約関係を消滅させる(原則として遡及的に消滅させる)条項を解除条項とし、被解約者側の事情とは別に契約関係を消滅させる(原則として将来に向かって消滅させる)条項を中途解約条項というものとする。また、主に売買契約や請負契約において、目的物に瑕疵がある場合等の担保責任に基づく解除については、本稿の対象外とする。

民法・PL法等

非常時に備えての一工夫
英文契約書における解除条項のドラフティング
飯谷武士・竹ノ谷健人

契約解除や取引の中断に関する条項は、取引上の非常時(契約違反や当事者の信用不安等)に発動される。取引が順調に実施されれば適用されることのない条項ではあるが、万が一何らかの非常事態が生じたときは、大きな意味を有する。本稿では、英文契約書で頻繁にみられる契約解除条項(Termination Clause)を参照しながら、解除事由(Termination Event)および解除の効果(Eect of Termination)のドラフティング上の実務的な視点を紹介する。

民法・PL法等

トラブルの発生・拡大を防ぐ
契約解除時の法務部員の心得
中川裕一

企業内法務での花形の仕事といえば、大型契約の締結である。新聞の記事やテレビのニュースを飾るような契約締結までこぎ着けられるのは、企業内法務部員達にとって、最も輝かしいタイミングであろう。 しかしながら、筆者が企業内法務として最も面白味を感じるのは、契約の終了や中途解約のほうである。大型契約の締結のような未来に向かっての大きな仕事と比較すると、契約の解除、中途解約、終了などは、後ろ向きに見られ社内でも評価されることはない地味な仕事であるが、トラブルを避けて円満に終了させたり、紛争になっても自社に不利にならずに終了させられると、この仕事の面白さを感じるものである。

民法・PL法等

解除事由の具体化が鍵
システム開発契約における紛争解決条項の検討
伊藤雅浩

本稿では、システム開発取引における契約解除・ビジネス中断に係る条項を取り上げる。システム開発取引は、大型・長期・複雑であり、かつ、今なおトラブルが多い類型の取引であり、契約の目的を達成しないまま取引を中断してしまうという事例が後を絶たない。システム開発紛争では、典型的には、発注者であるユーザーが契約を履行遅滞・履行不能等を理由として解除し、既払い金の返還や損害賠償を請求するのに対し、受注者であるベンダが解除事由を争うとともに、既履行分の報酬等を請求するという争いの構図となる。各当事者の債務の内容が明確になっていないことが多く、解除事由の存否の判断も困難を要する。そしてその結果、いったん紛争化してしまうと、解決に至るまで数年要することは珍しくない。

民法・PL法等

座談会 法務部はいつ・どのように関与すべきか?
システム開発における解除の手法とタイミング
大井哲也・影島広泰・伊藤雅浩

本日は、システム開発の解除の原因となる事象やその責任の所在、そして解除の際の法的構成はいかなるものが考えられるか、紛争解決における留意点は何かについて、議論したいと思います。周知のとおり、システム開発はトラブルの多い取引類型です。トラブルが多くなる要因として、取引期間が長期間にわたること、成果物についての共通認識を持つことが難しいことがあげられます。ユーザからすると、システムが完成したら終わりではなく、保守やメンテナンスのことも考慮に入れ、当該ベンダと付き合うことができるかを考えなければなりません。

実務解説

争訟・紛争解決

改正民事執行法の概要と企業実務への影響
──債務者の財産開示手続を中心に
今井和男・有賀隆之

民事執行法の一部を改正する法律(以下「改正法」という)が、令和元年5月10日の参議院本会議において可決成立した。改正法においては、民事裁判制度に対する国民の信頼を確保することなどを主な目的として民事執行法に大幅な改正が加えられており、今後の企業法務に与える影響も少なくないと考えられる。本稿では、企業法務に対する影響が特に大きいと思われる債務者の財産状況の調査に関わる改正部分を中心にポイントを解説する。

テクノロジー・AI

いわゆる「忘れられる権利」の法制化
――個人情報保護法改正へむけた中間整理の概要
石井夏生利

本稿では、個人情報保護委員会が2019年4月25日に公表した「個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」をふまえ、いわゆる「忘れられる権利」を中心に、欧州連合(EU)の議論動向に触れつつ、現行法の位置づけ、関連する裁判例、適用主体、適用条件、地理的範囲、表現の自由との調整等に触れつつ、立法化を巡る今後の方向性を論じる。中間整理が、利用停止等に関する個人の権利範囲拡大をいわゆる「忘れられる権利」に及ぼすことを仮に含意しているとしても、慎重かつ分析的な検討が求められる。

労働法

Q&Aで解説
年休の時季指定義務をめぐる実務課題と解決策
中山達夫

働き方改革関連法は、平成30年6月29日に可決・成立し、同年7月6日に公布された。働き方改革関連法は、「働き方改革実行計画」に基づき、雇用対策法、労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法などの法律を一括して改正したものである。 そして、労働基準法の改正のうち、「年5日の年休の時季指定義務」については、大企業・中小企業を問わず本年4月1日から施行されている。具体的には、会社は、年10日以上の年休が付与されている労働者に対して、年休を付与した基準日から1年以内に、5日の年休について時季を指定しなければならないこととされ、違反した場合には30万円以下の罰金も定められている。 そこで、本稿では、直近で実務への影響が大きいと思われる「年5日の年休の時季指定義務」について実務上の留意点などをQ&Aで解説する。

国際

シンガポール国際仲裁(SIAC)の最新事情から考える
国際仲裁の利点と戦略的活用の視点
大塚周平・中川浩輔

企業間の国際取引が常態化した現在、国際紛争を解決する手段として商事仲裁手続がグローバルスタンダードになっている。従来は欧米が国際商事仲裁の中心地であったが、国際経済におけるアジアの重要性が増すにつれて、アジア地域における商事紛争の解決の重要性も増し、その結果、国際仲裁のハブとなるべくアジア諸国が熾烈な競争・プロモーションを繰り広げるようになった。なかでもシンガポールの国際仲裁制度のハード面・ソフト面の整備は顕著であり、今やアジアにおける一大紛争解決ハブの様相をみせつつある。本稿では、シンガポール大手法律事務所に在籍し、多くの国際仲裁案件を代理する機会のある筆者らの立場より、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)の最新事情をふまえ、国際仲裁の実務とその戦略的活用について述べる。

企業法務総合 コンプライアンス

5つの類型ごとに検討する
従業員が刑事事件を起こした際の法務部対応(下)
沖田美恵子・魚住 遼

従業員が刑事事件を起こした際の法務部門の対応は、刑事事件の類型に応じて検討することが有用である(類型については【図表】参照)。前号では、この5類型に共通する留意点を論じた。本号では、類型ごとに具体的な設例を設定したうえで、重視すべき留意点について個別に論じる。

企業法務総合

デジタルプラットフォームを始める際の法的留意点(上)
矢田悠・玉川竜大

近年、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)と呼ばれるアメリカの巨大IT企業をはじめとして、デジタルプラットフォーマーの影響力が増すとともに、これらに対する規制のあり方についての議論が急速に活発化しつつある。しかし、デジタルプラットフォームビジネスは、こうした最先端テクノロジーを有する大企業の専売特許ではない。在庫の仕入れや多額の設備投資を必要としないという特徴を持つことから、有望なビジネスのアイデアや、豊富な取引データ・ノウハウなどを有するものの、十分な人的・物的資源を持たないスタートアップや中小企業であっても、一定のシステム投資を行えば新規参入は十分可能なビジネスモデルである。本稿では、デジタルプラットフォームビジネスを新たに始めようとする事業者の観点から、企画段階で押さえておくべき法律上のポイントを全2回で概説する。

コンプライアンス

気候変動に関する情報開示をめぐる最新動向
――TCFDフレームワークへの対応ポイントを中心に
塩瀬 恵

2015年に国連気候変動枠組条約第21回締約国会議でパリ協定が採択されて以降、気候関連に関する情報開示の動きが加速している。日本においては2018年6月の未来投資会議で、安倍総理が環境問題への対応をコストから競争力の源泉へと位置づけ、また情報開示を通じた企業と投資家との対話を促し、ESG投資を促進していこうとしている。本稿では、こうした動きの背景とともに、そのなかでも日本が取組みを推し進めているTCFDによる気候関連財務情報開示について概観する。

企業法務総合

日本企業の大型渉外契約から学ぶ
英文契約書作成・交渉の心構え
本郷貴裕

日露戦争にて陸でも海でも優勢だった日本が講和を結ぼうとしたのは、実はもう日本には余力が残されていなかったからだ。1ルーブルも賠償金を得られなかったポーツマス条約に当時の日本国民は怒り狂ったが、朝鮮半島からロシアの脅威を排除し、樺太の南半分を獲得することに成功した全権大使小村寿太郎の手腕は評価されるべきだろう。彼がおそらく意識したと思われる交渉方法を契約交渉に応用すべく、事例を交えて紹介したい。

地平線
増える外国人雇用と避けられぬ課題
労働法

上林千恵子

2019年4月1日より改正入管法が施行された。この入管法は日本の移民政策上、大きな転換点となるだろう。新入管法で規定された新たな在留資格「特定技能」は、事実上、単純労働者の受入れを可能とした資格だからだ。この「特定技能」の在留資格者(特定技能者)は2023年まで最大で34.5万人(「新たな外国人材の受入れについて」(2019年4月))と見込まれる。今後、日本で就労する外国人労働者数は現在よりもさらに増加すると見込まれよう。

トレンド・アイ
「デジタル課税」をめぐる国際的議論の潮流
国際 税務

佐藤修二

デジタル課税という言葉が、世を賑わしている。対になって登場するのは、「GAFA」である。いうまでもなく、Google、Apple、Facebook、Amazonの総称である。デジタル課税の議論は、米国を本拠地とするGAFAを念頭において始まり、主要な論客は、ヨーロッパに所在する。その意味では、「米国vs欧州」という政治的色彩も感じられるが、仮に何らかの国際的合意がなされれば、グローバルに展開する日本企業にも影響する可能性がある。そこで本稿では、議論の現状をご紹介したい。

連載

企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2019年4月〜5月

民法・PL法等

最新判例アンテナ
第16回 詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は、履行の請求を受けた時に遅滞に陥るとした事例(最二小判平30.12.14金判1562号38頁)
三笘 裕・平野裕佳

企業法務総合

先輩・後輩で描く企業法務のグランドデザイン
第2回 契約書業務からの脱却
須㟢將人・中山剛志・宮下和昌

これからの企業法務は、契約書の作成やチェックといった業務に重きを置きすぎてはいけない。契約書に限らず、法的な問題が内在する文書すべてを法務業務の対象とすべきである。たとえば、各種許認可の当局への届出書等や、上場会社における開示文書、広報が公表する広報文書、IR活動で投資家に配布する文書、WEB掲載の文書、パブコメなど、あらゆる文書に、法的な問題やリスクが内在する。そうした文書すべてを法務業務の対象とすべきである。

企業法務総合

ロイヤーの使い方を押さえる!法務のための英単語辞典
第4回 「行使」「強制」を表す表現
豊島 真

exerciseといえば、「運動する」など体を動かすときに使う単語であるが、法律の分野では「(権利を)行使する」という意味で使われる。一見両者にはあまり関係がないようにみえるが、exerciseの語源は家畜を囲いの外に出して働かせる(家畜という労力を行使する)ということであり、そこから、「運動する」や「行使する」という意味に発展したそうである。

企業法務総合

法務部に伝えたい"実効的"内部監査のコツ
第4回 内部監査での心構え----原則を大切に
樋口 達

今回は、内部監査を行う過程で直面する問題として、1書類の改ざんをどのようにすれば見破ることができるか、2なぜ会社が設定したルールが守られないのか、という2つのテーマから、「原則」を守ることの重要性について取りあげたいと思います。

会社法

異業種M&Aの成功ポイント
第4回 買収前の留意点1(異業種DD~スタンドアロンの見極め~)
金 瀚鏑・田中大貴・関口智弘

M&Aの一般的な成功率は3~5割といわれており、買収目的を達成するにあたってはさまざまな障害が存在する。以前はM&Aになじみの薄かったわが国日本においても、2000年代以降、合従連衡を目的としたM&Aだけでなく、新規領域の進出を狙ったM&Aが見受けられるようになり、キャッシュが豊富な大企業によるITスタートアップの買収や、既存事業から離れた事業を経営する企業の買収が増えている。

労働法

会社がすべきこと・しなくてよいこと
メンタルヘルス不調者への対応実務
第5回 精神疾患従業員との面談・退職勧奨
向井 蘭

精神疾患に罹患した従業員と連絡がとれず困っている、精神疾患で休職中の従業員に退職勧奨したいがどのように面談をすればよいか等、精神疾患に罹患をした従業員との対応で悩ましい問題が起こり得る。一方で退職勧奨によりパワーハラスメント、精神疾患の症状がより悪化した等主張されるリスクもあり得る。法的リスクを避けつつ、いかに解決を図るか非常に悩ましい論点である。本稿では、精神疾患従業員との面談・退職勧奨についてとり上げる。

企業法務総合

第2キャリアとしての弁護士
第5回 スポーツ・エンターテインメント法務に精通した弁護士を目指して
大橋卓生

1990年、東京ドームで初のローリング・ストーンズの来日コンサートを鑑賞し、みずからコンサートの企画等にかかわりたいと考えて株式会社東京ドームに入社した。入社後は法務担当として、マイケル・ジャクソンやマドンナ、XJapanなど大物アーティストの公演契約や、NFLやMLBなどスポーツ興行契約を担当した。その過程で社会人になってはじめて法律を勉強し、契約書の問題点が把握できるようになり、契約書を起案できるようになったことから、法務への大きな興味を持つようになった。

企業法務総合

若手弁護士への箴言
第11回 競争的解決と協調的解決
髙井伸夫

いわゆるバブル経済が崩壊し、日本企業の終身雇用制度が揺らぐと同時に成果主義が導入され始めた平成初期、当時懇意にしていた編集者から、彼が発案した「そば粉理論」なるものを教えてもらい大いに共感したものだ。いわく、そばはそば粉だけでなく"つなぎ"の存在があってはじめて美味しく食べられるものであるのと同様に、組織の場合も、専門的能力を備え高い成果を上げる自律した"そば粉社員"だけでは成り立たず、専門性は見劣りがしても組織の一員としてつなぎのような役割を果たす"つなぎ社員"の存在によってうまく機能するという指摘であった。

会社法

事業承継におけるM&Aの基本と心構え
第2回 ふさわしい譲渡先(買い手)の見分け方
福谷尚久

M&Aで会社を譲渡するのは、あらゆる意味で不安なものだ。自分の"分身"である会社を、また"家族"とも考えていた従業員を、赤の他人に譲ることへのためらいを売り手から聞いたのは、一度や二度のことではない。こうした不安の多くは、売却先や手続、さらにはその後会社がどうなるのか、といった、これまで考えたことのないことからくるものだ。中でも「一体どんな会社が引き継いでくれるのか?」という点は、こうした不安の根幹である。ここではそうした不安を取り除くために、どのような会社が譲渡先として考えられるのか、相手方のニーズや対応にはどんな特徴があり、何が買収を決断する要因になるのか、を中心に示していく。

会社法 国際

法務が主導するアジア子会社管理
最終回 アジア子会社管理における内部通報制度構築の重要性
志村公義

過去5回にわたり、アジア各国における法務・コンプライアンス体制の現状と課題について解説してきた。まず、総論(第1回)で述べたように、より効果的なコンプライアンス体制を構築するうえで、「① 規程制定→②導入→③監査」の一連のワークフローに従うのが実践的である。すなわち、コンプライアンス体制の構築とは、①規程などを整備し、遵守すべきルールを策定し、③当該ルールをセミナーなどを通じて、各アジア子会社に浸透させていき、3当該規定の内容、導入活動による浸透度を監査し把握し、それをもとに①規程、②運用を見直すことを繰り返すことが肝要である(【図表1】)。

民法・PL法等

債権法改正企業対応の総点検
第4回 不動産賃貸借における債権法改正の留意点
妹尾 悟

今般の民法改正では、不動産賃貸借に係る規定も多岐にわたって改められたが、そのなかには、従来の判例法理を明文化するかたちで条文が整備されたものがある一方、民法に規定された制度の内容自体が変わるなど、実務上も従来とは違った対応が求められるものもある。そこで本稿では、まず今般の民法改正によって実務上の対応の見直しが必要になる点を概観する。そのうえで、従来の判例法理等が明文化されたものなど、従来の実務を踏襲することが予想される事項を確認することによって、今般の改正の実務への影響を具体的に明らかにしたい。

民法・PL法等

要件事実・事実認定論の根本的課題──その原点から将来まで
第22回 売買─新民法(債権関係)における要件事実の若干の問題
伊藤滋夫