雑誌詳細

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2019年1月号

2018年11月21日発売号   1,609 円(税込)

特集1

英文契約実務のセンスを鍛える

特集2

副業・兼業の制度設計と労務管理

特別企画

シェアリングエコノミーのトラブル対策

特集1
英文契約実務のセンスを鍛える
この条項はなぜ・どういう場合に必要なのだろうか。この用語の使い方・言い回しはネイティブからみて正しいのだろうか。Plain Englishを使ってみたいけれど、本来の意味と違ってしまったらどうしよう。対米企業渉外がうまくいかない......。本特集では、そんな悩みを抱える法務部員・弁護士に向け、英米法に通底する考え方の基礎を出発点として、英文契約実務の「センス」を考えます。
企業法務総合

日米契約観の差違にみる
"契約社会アメリカ"の考え方の基本
樋口範雄

本誌の読者なら、これから記述することは既知のことであり、あまりに基礎的なことだと思われるかもしれない。しかし、「常に基本に帰れ」ということもある。私は、アメリカのロー・スクールで契約法を学び、帰国後も、アメリカの契約法のケースブックを何種類か学生と一緒に読んできた。私自身は、契約実務に携わったわけではないが、それでも、アメリカの「contract」と日本の「契約」が相当に異なることがわかった。細かな相違は別として、アメリカの契約と日本の契約には、次のような違いがある。

企業法務総合

アメリカ契約法の基本原則・概念から詳説する
契約書ドラフティング・レビューの着眼点と修正例
山本志織

英文契約においては、準拠法はアメリカ法とは限らず、さまざまな選択がなされるが、それでもニューヨーク州法やカリフォルニア州法などが選択されることも多く、また準拠法にかかわらず、程度の差こそあれ、アメリカ法の影響を受けることもある。アメリカ契約法の基本原則・基本概念を理解したうえで、自己のリスクを軽減し、自己に有利となるためのポイントが何であるかをつかみ、適切な英語の表現・用語を使用して、契約条項のドラフティングやレビューを行うことは有用であろう。本稿では、アメリカ契約法の基本原則・基本概念を紹介しつつ、当事者がリスクを軽減し、自己に有利なドラフティングやレビューを行うためのポイントや英語の表現・用語を取り上げたい。

企業法務総合

メールでの変更交渉は契約内容に含まれるか
契約書修正実務のトレンドと留意点
キャサリン・オコーネル

「変更」は人生において絶えず起こり得るものと言われており、契約書もその例外ではない。契約のライフサイクルにおいて、一方または両方の当事者が契約の1または複数の側面に変更を加えたくなることもあるだろう。契約が修正される場合、原契約を何らかの形で変更するものであって、契約全体を置き換えるものではないが、原契約の一部を置き換え、追加し、削除し、または訂正することは多々ある。本稿では、契約の修正が必要な場合において、契約変更に用いられるさまざまな方法、変更の交渉がメールで行われる際に注意すべき落とし穴について説明する。

企業法務総合

ネイティブ弁護士が自信をもってすすめる
具体的表現にみるPlainEnglishの活用術
エリックマークス・茂木香子

英文契約書に接する機会がある方であれば、誰しもその長さや複雑さに苦労した経験があるだろう。そもそも契約書は、日本語であっても、専門用語と独特の言い回しの羅列にみえるが、それが英語で書かれているとなると、解読の手間は倍以上になる。さらに、自分で英文契約書を作成したり修正したりする場面となると、自分の英語が意味をなしているのかの不安も相まって、なかなか作業は進まない。本稿は、そのような悩みを抱える読者に、ありがちな冗長な表現の例、混同・誤解を招く表現の例、そして、形式面での注意事項を解説し、より簡易でより伝わりやすい表現方法を提案することを目的とするものである。

企業法務総合

日本企業に伝えたい
対米企業交渉・訴訟の10の原則
ライアン・ゴールドスティン


昨今では海外進出へ関心を寄せる段階から実際に進出を試みる、あるいはすでにしている企業が目立つ。そのなかでも約6、800の日本企業が進出しているといわれる米国市場において、知的財産訴訟で被告として訴えられる日本企業の数は、原告として訴訟を起こす企業の約2倍という調査結果もあるとおり、日本企業が予期せぬ交渉事に巻き込まれるケースも考えられる。こうした現状をふまえ、米国企業に対し交渉・訴訟を有利に進めることのできるスキルを身につけておくことは、みずからの企業活動を支えるための重要なタスクであろう。本稿では、日本企業が米国企業を相手に交渉・訴訟を有利に進めるためのポイントを報告する。

企業法務総合

ロイヤーから「失われる技術」
テクノロジー時代における契約書ドラフト・管理の落とし穴
外国法事務弁護士事務所 パートナー外国法事務弁護士

AIおよびその他のテクノロジーの飛躍的な発展は、法律実務およびロイヤーの「業務範囲」に多大な影響を及ぼしており、これからも影響を及ぼすであろう。ロイヤーがほんの10年前に行っていた日常業務の多くは、コンピュータが行い、クライアントは、インターネットで容易に取得可能な情報に基づき、電子リサーチを利用してみずから「法務」を行う機会が増えている。クライアントは、単純なグーグル検索によって、モデル契約書から、ほぼすべての法的話題に関して法律事務所が作成する非常に詳細なメモランダムまたはその他の出版物まで、簡単に入手することができる。

特集2
副業・兼業の制度設計と労務管理
労働法

特別寄稿 副業・兼業解禁の意義と課題
─労働法の観点から
土田道夫

周知のとおり、厚生労働省は、「柔軟な働き方に関する検討会報告」(2017年)において、「働き方改革実行計画」(2017年)を受け、原則として副業・兼業を認める方向で普及促進を図る方針を打ち出した。また、2018年には、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という)を公表するとともに、副業許可制を定めてきた従来のモデル就業規則を改め、企業への届出によって原則として副業を営み得る内容に改訂した。企業においても、こうした政策転換を反映して、副業を容認する動向が生じている。働き手の意識も変化しており、総務省「2017年就業構造基本調査」(2018年7月)によれば、副業人口(副業を持つ就業者[267万人]+追加就業希望者[424万人])は691万人に達し、全就業者の1割を超えることが明らかになった。本稿では、こうした状況をふまえて、副業・兼業の解禁が有する意義と課題について、労働法の観点から解説する。

労働法

従来の日本型雇用は次のステップへ
副業・兼業解禁の必要性と制度設計3つの視点
白石紘一

これから兼業・副業の導入を検討する企業においては、何を目的として導入するのかを明確に意識する必要がある。昨今の経営環境の変化を背景とすると、①兼業人材の受入れによる人材確保、②イノベーション、③自律的に動ける人材の育成、④採用力の向上、⑤離職防止(リテンション)といったものがあろう。また、制度設計においては、i導入目的を経営陣も含めて共有すること、iiマネージャー層の意識改革を行うこと、iiiデメリットを過剰におそれないことが必要である。

労働法

現行制度の問題点をふまえた論点整理
労働時間・健康管理と企業の安全配慮義務
荒井太一

2018年1月に厚労省から「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「本ガイドライン」という)が公表されて以降、副業・兼業の解禁について検討を行う企業も増えてきた。他方、導入にあたっては、特に労働時間管理や健康管理について懸念する向きも多いようである。本稿では、厚労省「柔軟な働き方に関する検討会」(以下「本検討会」という)における議論も参考に、副業・兼業における労働時間管理および安全配慮義務について説明する。本稿では、従前より締結されている労働契約の労務提供先を「本業先」と称し、本業とは異なる使用者に雇用されたり、みずから事業を営む場合の労務提供先を「副業・兼業先」と定義して説明する。

労働法

INTERVIEW 多様なキャリアへの理解で実現する
サイボウズ株式会社の複業制度
山羽智貴・野間美賀子

当社では「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」を人事制度の基本方針としています。社員1人ひとり、個性が違うことを前提に、それぞれが望む働き方・報酬が実現できるよう、人事制度を組み立てています。たとえば、当社には「働き方宣言制度」があり(次頁【図表1】参照)、月曜日から金曜日までの時間の使い方、どこで働くのかについて各社員が宣言し、原則その宣言に則って自由な働き方をすることが可能です。複業制度も、多様性を認め1人ひとりが働きやすい環境をつくる取組みの一環として位置づけています。当社の社風として「個性の尊重」「公明正大」「自立」があり、以下で述べるとおり複業制度もこの社風を基礎に運用しています。

労働法

始めてみよう!法務部員ならではの「複業人生」
小林洋光

働き方改革法が成立し、今までにない柔軟かつ自律的な働き方が本格的に模索されている。企業内法務は、もともと自律的な業務遂行が求められる点と業界横断的に通用する実務能力が身につく点において、法務部員こそが働き方改革の最前線に位置すると考えている。一方で法務部員による複業1について情報発信が少ないため、複業の機会に気づけない現状がある。本稿では、筆者の複業の経緯と実際を紹介することで、多くの法務部員の複業実践を後押しする一助としたい。

特別企画
シェアリングエコノミーのトラブル対策
本特集では、近年日本でもさまざまなサービスが生まれ拡大しているシェアリングエコノミーを取り上げ、その概況を述べるとともに、事例別・ビジネス別にシェアリングエコノミーに関する想定トラブル事例を基に、弁護士がトラブルへの対策を考察した結果をとりまとめている。これまで、具体的なトラブル事例をあげて、対策を考察した記事はあまりみられなかったと思われる。シェアリングエコノミーに関係する個人・法律家・企業の関係者等の参考になれば幸いである。
企業法務総合

"課題先進国"日本におけるシェアリングエコノミーの可能性
石原遥平

「シェアリングエコノミー」についてはさまざまな定義がなされているが、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が2016年11月にとりまとめた「シェアリングエコノミー検討会議中間報告書」によれば、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」であるとされる。そして、そのメリットとして提供者は遊休資産の活用による収入を得ることができ、利用者は所有することなく利用ができるというメリットがあると指摘されている。

企業法務総合

事例検証① "場所のシェア"
水谷幸治

シェアリングエコノミーのうち場所のシェアは、使用形態に着目すると、宿泊を伴うものと、宿泊を伴わないものに分類することができる。前者の典型例はいわゆる民泊であり、後者の典型例は駐車場や会議室等の時間貸しである。

企業法務総合

事例検証② "乗り物のシェア"
堀田昂慈・黒澤圭一朗・應本昌樹

乗り物のシェアは、大別すると①提供者が乗り物に利用者を同乗させる形態(ライドシェア)と、②提供者の乗り物を利用者自身に使用させる形態(カーシェア等)の2つの形態が存在する。また、ライドシェアは、無料または燃料代等の範囲でのみ費用を受け取る「非営利型ライドシェア」と、これを超えてサービス提供の対価を受け取る「営利型ライドシェア」に区別されることがある。


企業法務総合

事例検証③ "スキルのシェア"
神田泰行

スキルのシェアとは、シェアリングエコノミーのうち、役務を対象とするものを指す。現在、日本では、さまざまな役務について、役務を受けたい人(以下「利用者」という)と役務を提供したい人(以下「提供者」という)をつなぐアプリケーション(以下「アプリ」という)が多数存在している。

実務解説

争訟・紛争解決

債務名義の実効性強化でどう変わる?
民事執行法改正要綱の概要と実務への影響
古賀政治

平成30年10月4日、法務省法制審議会民事執行法部会総会において平成28年11月から審議されてきた民事執行法改正についての要綱が採択された。民事執行法部会で主要なテーマとして審議されたのは以下の3つであった。第一は、現行の財産開示手続(民事執行法196条以下)の見直しと、金融機関あるいは公的機関等の第三者が保有する債務者財産情報を債権者に取得させるための第三者からの情報取得制度創設である。

会社法

補償範囲などに大きな違いが
米国型・欧州型の表明保証保険の比較と利用検討
宍倉浩司

世界的なカネ余りも追い風となっており、M&A全体では2018年上期には前年同期実績から6割超増え、約2.5兆円と過去最高を記録したようだ。また、空前の低金利や国内マーケット縮小に対する懸念が後押しして、日本企業によるクロスボーダーM&Aの件数も増えている。M&Aは、新規事業の立上げや事業の多角化・国際化などの経営戦略を実践するうえで有効な手段だが、その反面、ターゲット企業に内在するさまざまなリスクへの対処を誤ると、買収後に大きなトラブルを抱え込むことにもなりかねない。そのようなリスクをヘッジする手段として、表明保証保険の活用が脚光を浴びている。

企業法務総合

東京五輪を見据えた
「アンブッシュ・マーケティング」を未然に防ぐ広告法務
大橋卓生

2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下「東京オリパラ」という)まで2年を切り、東京オリパラ関連のイベントが増え、その機運は盛り上がりをみせている。他方、オリンピック・パラリンピックの公式スポンサーでない企業が、オリンピック・パラリンピックに便乗して自社の広告宣伝を行う「アンブッシュ・マーケティング」は厳しく規制されている。オリンピック・パラリンピックなど大きなスポーツイベントでは公式スポンサーからのスポンサー収入が不可欠になっており、公式スポンサーの価値を毀損する便乗商法を規制するものである。本稿ではアンブッシュ・マーケティングとその対策をふまえ、アンブッシュ・マーケティングにならないための広告法務の要点を解説する。

会社法

「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」改訂の概要と企業対応
松村謙太郎

経済産業省は2018年9月28日に「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」(以下「CGSガイドライン」という)の改訂を公表した。かかる改訂により、社長・CEOの後継者計画に関する内容の充実が図れるとともに、取締役会議長、社外取締役、指名委員会・報酬委員会等に関してもいくつか興味深い提言が追加されている。今後の企業の実務対応として、CGSガイドラインの内容をふまえて自社に適した取組みを模索することが求められる。

LAWの論点
共同研究における発明者の認定
知財

山田剛志・氏家隆国

2018年10月、京都大学の本庶佑特別教授が、免疫療法に関する基礎研究の成果が認められ、ノーベル生理学・医学賞を受賞されたことは記憶に新しい。本庶教授の基礎研究をもとに小野薬品工業株式会社が開発したがん治療薬「オプジーボ」にはさらなる期待、注目が集まることとなったが、治療薬開発は本庶教授(京都大学)と小野薬品工業との間の共同研究として行われたということであり、産学連携の一例といえよう。文部科学省の主導もあり、以上のような大学と企業との共同研究の例は増えてきているが、その共同研究において一定の成果が出た場合、権利の帰属等を含め、さまざまな問題が生じることがある。その1つとしては、発明者の認定があげられる。本稿では、近年増えつつある発明者の認定が裁判で争われる場合に関連して、発明者の認定方法、大学と研究者、共同研究における権利の帰属などを概説するとともに、そのようなケースに遭遇し得る研究者、大学、企業等において、発明者の認定に備えてどのような点に留意しておくべきかを述べることしたい。

地平線
ベンチャー企業の飛躍に欠かせない法務の役割
企業法務総合

田村真理子

わが国では約1万社のスタートアップが日々新しい挑戦をしている。先端的な技術やアイデアで新たな価値を生み出しているベンチャー企業にとって、スピードや革新性が成長のカギといえるが、それゆえ法的なリスクが常につきまとい、法務事項への対応が必須であり、その重要性は高まってきている。

トレンド・アイ
福利厚生充実策として注目
給与前払サービス導入の法的課題
労働法

右崎大輔

近時、労働人口減少や雇用の多様化を背景に、深刻な人材不足が生じており、企業の「人手不足倒産」という状況も生じている。このような状況を改善するため、企業としては、福利厚生の一環として、給与前払サービスを導入し、求人の際の売りの1つにしている例もある。ここに、給与前払サービスとは、本来の賃金支払日より前に、労働者に対し、賃金(給与)の一部に相当する金銭の支払を受けることができる権利を付与し、労働者の福利厚生を図るものをいう。

連載

企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2018年9月〜10月

民法・PL法等

最新判例アンテナ
第10回 グループ内部統制システムの一環として相談窓口を設けた場合における親会社の子会社従業員に対する責任を否定した事例(最判平30.2.15集民258号43頁)
三笘 裕・小山田柚香

テクノロジー・AI

ケーススタディで学ぶAI・データの利用に関する契約のポイント・実務対応
第2回 データ取引編
和田祐造

データは無体物であり、民法上、所有権や占有権等の対象とはならないため、所有権等の概念に基づきデータの権利の有無を定めることはできない。また、一定の要件を満たさない限り、特許権、著作権等の知的財産権が発生しないし、営業秘密や限定提供データとして不正競争防止法で保護されるものでもない。したがって、取引されるデータ一般につき保護を受けるためには、当事者間の債権債務として契約で規定する必要がある。そのうえで、さらに不正競争防止法の営業秘密や限定提供データとして、あるいは著作権や特許権等で契約以外に上乗せして保護されるか、と考えるのが素直だと思われる。

民法・PL法等

契約解除時の実務ポイント
第2回 解除に関するドラフト上の注意点
花野信子・佐藤敬太

連載第2回目となる本稿では、解除条項、解除通知および合意解約書をチェックまたはドラフトする際の留意点について説明する。

会社法

会社法改正後の株主総会電子提供制度への実務対応
第2回 Q5〜Q8
伊藤広樹・中川雅博

Q5:株主総会資料の電子提供措置として、株主総会資料を自社のウェブサイト以外に掲載することも許されるのでしょうか。たとえば、EDINET(開示用電子情報処理組織)を利用して株主総会資料を掲載することも可能なのでしょうか。

競争法・独禁法

企業結合審査対応の最新実務
第4回 日本の企業結合審査対応③
宇都宮秀樹・藤田知也

本号では、日本の企業結合審査手続の最終回として、公取委が問題点を指摘した場合の対応(問題解消措置)について説明し、最後に、企業が知っておくべき公取委の審査手法について説明する。

国際

外国人弁護士世界一周
第17回 アメリカ合衆国
ジェリー・メステッキー


私の日本との関わりは、13歳の夏休みに栃木県にいる家族の友達の家に滞在したときに始まりました。その後アメリカの高校と大学で日本語と日本文学を学び、1990年から91年には関西外国語大学の交換留学生となりました。卒業後は、セントルイスにあるワシントン大学ロースクールに入学し、東アジア研究プログラムで学びました(J.D./M.A.取得)。ロースクールでの2年目に神戸大学法学部の研究生となりました。

国際 争訟・紛争解決

日本人に知ってほしいアメリカ紛争解決の現場感
第4回 時と場合によって変化するreasonableの意味
奈良房永・合嶋比奈子

本連載ではこれまでに日本とアメリカの法制度を比較しながら、判例法に基づくアメリカの制度では法律に変化が起きやすいこと(第3回「訴状送達」参照)、裁判官の裁量が大きいこと(第2回「アメリカの裁判官はどのような役割を果たすか」)、またその結果として訴訟弁護士の役割が日本と若干異なること(第1回「訴訟における弁護士の役割」)を紹介してきた。今回は、米国のさまざまな分野の判例法で用いられる「reasonablepersonstandard」という基準について説明したい。この基準こそ社会とともに変化する判例法の性質をよく表しており、この基準が適用される分野の多さからも、米国で訴訟に対応する企業が知っておくべき概念の1つである。

企業法務総合

法務2.0リーガルテックのフロンティア
最終回 リーガルテックは法務の働き方をどう変えるか
橘 大地

本連載では、契約や知的財産権分野等、さまざまな切り口から技術進化を紹介してきた。本稿では、これらのリーガルテックサービス群が法務部員の働き方にどのような影響を及ぼすのかを検証し、連載の締め括りとしたい。

企業法務総合

若手弁護士への箴言
第5回 建前と本音を見抜く
髙井伸夫

いまから10年前、海外経験の豊かな知人が、「日本人にとってのグローバル化とはあくまでも日本人が国外で活躍することを指しており、多くの外国人が日本に入ってきて日本人と共生することは、本音ではまったく望んでいないだろう」と私に言った。彼の指摘は10年経った現在でもそのまま当てはまるのではないだろうか。少子高齢化による労働力不足に対応すべく、日本政府は外国人労働者を本格的に受け入れる政策に舵を切った。この動きの先には当然、日本は移民を受け入れるのかどうかという国民的議論が必要である。

会社法 国際

海外最新コンプライアンス事情
最終回 ロシア
小林英治・松嶋希会

ロシアでは、法令遵守に多くの書面の作成が要請され、また、各行政機関が定期的に調査に入るため、企業の事務負担は重いといわれてきた。しかし、ロシア政府は、近年、事業者の行政対応の負担を軽減するため、行政調査の効率性を高め、形式的な調査を抑制する方針を打ち出している。さらに、各行政機関に対して、調査対象となり得る事業者の基準を設定して公開するよう指示するとともに、事業者に対して、かかる基準に照らして自社を査定し、積極的に法令遵守体制を整備することを推奨している。

民法・PL法等

要件事実・事実認定論の根本的課題──その原点から将来まで
第20回 保証債務①─新民法(債権関係)における要件事実の若干の問題
伊藤滋夫