近時の裁判例・働き方改革関連法が示す
不合理な待遇差見直しの視点と使用者の義務
橘 大樹
2018年6月29日、働き方改革関連法の成立により同一労働同一賃金(不合理な待遇差の解消)に関する立法が実現した。他方、同年6月1日には現行法に関する最高裁判決が出ており、これらの動きをふまえて実務をどう考えるべきかみていきたい。
パート・有期との処遇差をどう是正?
給与・手当に関する社内規定変更のポイント
岡西淳也
厚生労働省では、平成28年12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」(以下「ガイドライン案」という)を示した。ガイドライン案は、今後、関係者の意見や国会審議をふまえ、労働政策審議会における議論を経て最終的に確定され、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パート有期法」という)の施行時期1にあわせて適用される予定とされている。あくまでガイドライン「案」であるため、現時点においてはこれが何かしらの基準となったり、これを元に行政指導の根拠とされるものではないが、この考え方の元にある労働契約法20条や現行の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パート労働法」という)8条・9条は現在において存在しており、今後はパート有期法の施行も予定されている。先日の最高裁でのハマキョウレックス事件や長澤運輸事件の判決をみても、ガイドライン案の考えと同じ判断をしている箇所があるため、本稿では、このガイドライン案に沿って社内整備について述べていく。
新たな義務を把握する
派遣元・派遣先の対応上の留意点
村上いずみ
派遣労働者は、派遣元事業主(以下「派遣元」という)との雇用契約期間の定めのあるなしにかかわらず、また、パートタイム労働であるか否かによらず、派遣労働者をひとくくりとして、2020年4月1日に施行される、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(労働者派遣法)の改正法(以下「改正法」という)の適用を受けることとなる。 本稿では、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム労働法に、パートタイム労働者のみならず有期雇用労働者に係る同一労働同一賃金規定も設けられた改正法)における均等・均衡待遇の規定をベースに、派遣労働者に適用される特有の事項に絞り、改正法による労働者派遣事業の運営への影響として、派遣元および派遣先それぞれに必要な対応について解説する。
ドトールコーヒー退職金制度にみる
非正規従業員目線の制度設計・運用のヒント
平本智也
わが社では2017年9月1日より、非正規従業員向けの退職金制度を導入した。一方で、本年6月に働き方改革法が成立し、同一労働同一賃金に関連する項目への何らかの対応が同法施行までに求められ、検討を進めていく必要がある。当社の導入した前記の福利厚生プランは、当初、必ずしも同一労働同一賃金対応を意識したものではなかったが、結果的に同対応につながり、その導入過程は多くの企業の参考になると考えられる。そこで本稿では、当社が導入した制度の概要とその過程、その後の制度への従業員の反応などをまとめる。
プライバシーポリシーに関連する法制度等の動向
石井純一
プライバシーポリシーについては、わが国の個人情報保護法に直接的な規定がないこともあり、その性質について詳らかでない面もあるが、一般的に、個人情報の取扱いに係る実務について、個人情報の主体に対して情報提供を行うための有力なツールであるということには、異論のないところと思われる。そのような性質を有するプライバシーポリシーは、法の規定内容に応じてその内容を見直すべきものであるという前提に立ち、プライバシーポリシーに関係する法制度の改正動向を概観する。
実務的な記載事項を押さえる
日本法に対応したプライバシーポリシーの作成・見直し
野呂悠登
日本の個人情報保護法において、プライバシーポリシーの策定それ自体は義務づけられていないが、同法の義務を遵守するための合理的な手段として広く用いられている。近時、個人情報保護法の改正が行われたため、今一度自社のプライバシーポリシーが同法に対応しているか記載を見直す必要がある。本稿においては、個人情報保護法の平成27年改正をふまえ、同法に対応したプライバシーポリシーを作成するための基本的な考え方を解説する。
英文例付き
外国法に対応したプライバシーポリシーの作成・見直し
野呂悠登
近時、日本企業においては、日本の個人情報保護法に対応することだけでなく、外国の個人情報保護法制にも対応することが求められている。外国の個人情報保護法制に対応する際には、企業とその取り扱う個人情報の主体との間の最初の接点となる「プライバシーポリシー」を、外国法をふまえて検討することが基本的な対応になる。本稿においては、プライバシーポリシーのGDPR対応を例として、外国の個人情報保護法制への実務対応を解説する。
改正法の概要と規定令
M&A契約における対米外国投資委員会(CFIUS)対応
関本正樹
米国の国家安全保障の観点から外国資本による米国企業の買収等を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の勧告に基づき、米国大統領の買収禁止命令が近年相次いで出されていたところ、CFIUSの権限を強化する法律が2018年8月に成立した。かかるCFIUS改革法の概要を整理するとともに、M&A契約におけるCFIUS対応について検討する。
親会社が不祥事を発生させた場合の子会社対応
─発覚から事後処理までにやるべきこと
中山 崇
最近では、品質偽装、検査偽装、会計不祥事など企業を取り巻くさまざまな事件がメディアを賑わせている。不祥事を起こした企業の目線に立った危機対応、再発防止策などについての記事を目にする機会は多い。今回は、親会社あるいはグループ企業(いわゆる兄弟会社)が不祥事を起こした場合、自社にどのような影響があるのか考えてみたい。当事者とは立場は異なるが、不祥事を起こした当事者ではないための苦労があると思われる。筆者の経験をもとに、不祥事を知ったきっかけ、調査期間中から調査終了後までに起こり得ることを説明したい。
給与を仮想通貨で支払えるのか?
─労基法をふまえた留意事項の検討
松本 藍
近年、日本でも仮想通貨に関するニュースをよく耳にするようになり、利用できる店舗が増えるなど普及していくなかで、昨年4月には改正資金決済法が施行され、仮想通貨とは何かといった定義および仮想通貨の取扱いに関するルールが整備された。そして昨年12月には、GMOインターネットグループが、社員の希望に応じて、給与の一部をビットコインで受け取ることができる制度を導入する旨を発表した。今後、給与の一部を仮想通貨で支払う仕組みを導入する企業は増えていくのだろうか。仮想通貨による給与支払の動向および日本における仮想通貨の法的位置づけ、労働基準法(以下「労基法」という)上の取扱いと留意点、そして給与の一部をビットコインで受け取れる仕組みと類似の特徴を持つ従業員持株会制度を比較解説していく。
Coty事件判決にみる
ネット販売・取引へのEU競争法適用の最新動向
ピーター・マイヤー・押野雅史・樋口陽介・花本浩一郎
本稿では、選択的流通システム(対象商品・サービスの供給者が、一定の基準により選択された販売業者(認定販売業者)に対してのみ当該商品・サービスを供給し、販売業者はみずからに割り当てられた地域内においては当該商品・サービスを選択されなかった非認定販売業者に販売しないこととするシステムをいう)におけるオンライン取引の制限に対するEU競争法上のルールの適用について扱った最新の判例を考察するとともに、今後の見通しについても述べる。
子会社売却・再編の進め方と部門間連携のあり方
小川嘉太郎
子会社売却・再編では、法務部が関与すべき場面が多々あるにもかかわらず、他部からは"蚊帳の外"として扱われることも少なくない。これまでの子会社売却・再編の経験をふまえて、法務部が他部にどのような働きかけをすべきかを共有したい。
海外の取引先が倒産した場合の法務部の初動対応
--米国Chapter11と豪州の任意管理手続を題材に
西谷 敦・荻野聡之
海外の名門企業の倒産のニュースがしばしば報じられている。報道に接して、このような名門企業が倒産するのかと驚くこともしばしばである。もちろん、かかる海外企業と自社が取引をしていたとなれば、一大事である。海外企業との取引は複雑であるため、そもそも自社が倒産した企業自体と取引をしていたのかすら、ただちにはわからないことも多いうえ、直接の取引先である海外企業が「倒産」したとのニュースがあったとしても、「倒産」の意味内容は多義的であり、単なる事実上の不払いなのか、法制度上の何らかの手続が申し立てられている状況なのか、また、その手続は日本法における会社更生、民事再生、破産、私的整理等のどのような手続に近いのかといった点は、調査しないと不明な場合も多い。本稿では、法務部として、海外の取引先が倒産した場合に取るべき初動対応について、概説するとともに、米国のChapter11と豪州の任意管理手続(VoluntaryAdministration)を実例として、初動対応の留意点等について具体的に述べることとしたい。
埼玉県の暴排条例にみる
「暴力団排除特別強化地域」の導入意義と影響
渡邉雅之
平成22年から23年にかけて各都道府県においては暴力団排除条例が公布・施行され、暴力団排除の後押しに寄与してきた。平成30年4月1日に施行された埼玉県暴力団排除条例は、「暴力団排除特別強化地域」における特定営業者風俗・飲食店営業等を営む者と暴力団員の禁止行為を定め、違反をすると罰則を科すもので、暴力団排除の流れを一層推し進めるものとして注目されている。本稿では、昨今の暴力団排除条例の動向をキャッチ・アップするため、利益供与の禁止措置の代表例として埼玉県暴力団排除条例における措置を紹介するとともに、同条例における「暴力団排除特別強化地域」の措置の意義について解説する。
改正銀行法で新設!freee株式会社の実例にみる
電子決済等代行業の登録申請における留意点
桑名直樹・木村康宏・中山一道・山本礼史
2018年6月1日に施行された銀行法等の改正法で、新たな業種として「電子決済等代行業」が新設され、登録制とされた。当該業種が新設された趣旨は、銀行のシステムを利用した新規サービスを提供するいわゆるFintech事業者の台頭を受け、当該事業者の金融規制上の位置づけを明確にするという点にある。本稿では、実際に電子決済等代行業登録を行った当社の経験を手掛かりに、電子決済等代行業登録に係る手続について概説する。
岡田譲治
近年、グローバル化やIT技術の進歩等によりビジネス環境が大きく変化している。ビジネス環境の変化は、新たなビジネス・チャンスを創出するが、想定外のリスクも生み出す。フィンテックの進歩により仮想通貨が出現し、新たなビジネスにつながるとともに新たなリスクが発生していることは、その典型例である。当局も然るべき規制を検討しているが、後追いとなる面もあり、企業がみずからリスク管理手法を新たに考案して対応することも必要となっている。
弁護士業界の国際化進む
「外弁法制」改正の概要
出井直樹
法曹界にも国際化の波が押し寄せている。その1つが、政府が臨時国会に提出しようとしている「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」(いわゆる「外弁法」)の改正案である。外弁法は、外国で法曹資格を有する者で一定の要件を満たした者が、法務大臣から外国法事務弁護士の資格承認を受け、日本弁護士連合会に外国特別会員として登録することによって、日本で原資格国法 (資格を取得した国の法律)その他指定外国法の法律事務に従事することを認める法律であり、弁護士および弁護士法人以外は日本で法律事務に従事できないとする弁護士法の例外規定という性格を有する。以下、今回の外弁法改正の要点とその考えられる影響を解説する。
LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所
2018年8月〜9月
最新判例アンテナ
第9回 商事留置権の目的物に不動産が含まれるとした事例(最判平29.12.14民集71巻10号2184頁)
三笘 裕・大澤 大
最新判例アンテナ
第9回 商事留置権の目的物に不動産が含まれるとした事例(最判平29.12.14民集71巻10号2184頁)
日置巴美
本年6月に経済産業省が公表した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(以下「契約ガイドライン」という)では、AI・データの契約実務に着目し、その集積が少ないことから想定外の問題を生じかねないとして、交渉時の検討事項や契約ひな形が示されている。AI・データの利用が企業活動において特別ではなくなった昨今、どの企業もこれらに関する契約に直面し得る。しかし、契約ガイドラインが前提とするとおり標準的契約がないことに加え、「AI」、「データ」という何やら新しいテーマが与える「従来の企業活動で取り扱ってきた契約と異なる特殊な取決めが必要なのではないか」という戸惑いも影響してか、契約の目的を達成し得るか疑わしい契約書にしばしば遭遇する。そこで、本号から3回にわたって、AI・データにまつわる契約実務について、初回となる本稿では契約ガイドラインを実務で活用するためのポイントを、第2回・第3回ではAI・データの利用に関する事例も交え、AI・データの利用に関する契約の勘所をお示しする。
ケーススタディで学ぶAI・データの利用に関する契約のポイント・実務対応
第1回 AI・データの利用に係る契約のためのポイント
日置巴美
本年6月に経済産業省が公表した「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(以下「契約ガイドライン」という)では、AI・データの契約実務に着目し、その集積が少ないことから想定外の問題を生じかねないとして、交渉時の検討事項や契約ひな形が示されている。AI・データの利用が企業活動において特別ではなくなった昨今、どの企業もこれらに関する契約に直面し得る。しかし、契約ガイドラインが前提とするとおり標準的契約がないことに加え、「AI」、「データ」という何やら新しいテーマが与える「従来の企業活動で取り扱ってきた契約と異なる特殊な取決めが必要なのではないか」という戸惑いも影響してか、契約の目的を達成し得るか疑わしい契約書にしばしば遭遇する。そこで、本号から3回にわたって、AI・データにまつわる契約実務について、初回となる本稿では契約ガイドラインを実務で活用するためのポイントを、第2回・第3回ではAI・データの利用に関する事例も交え、AI・データの利用に関する契約の勘所をお示しする。
法務担当者のための非上場株式評価早わかり
第1回 算定書の評価結果をどう読むか
明石正道・岡野健郎
平成28年7月に下されたジュピターテレコム事件最高裁決定は、わが国における企業買収の実務に多大な影響を及ぼすものとして注目された。当該決定では、一般に公正と認められる手続により公開買付けが行われ、公開買付価格と同額で二段階買収が行われた場合、原則として公開買付価格を取得価格とするのが相当との判断が下された。これを契機として、株式価値が争われる裁判の争点は手続の公正性に移っている。しかしながら、このような流れは、必ずしも株式価値算定の重要性が低下したことを意味するものではない。「一般に公正と認められる手続」が行われたかどうかの認定は、第三者委員会の設置、専門家の意見の聴取といった事実の存在だけを基準に行われるものではなく、それぞれの手続に実効性があったかどうかについての検討を伴うからである。かかる検討の対象には、株式価値算定書の記載内容の合理性も含まれるため、法務担当者がその意味するところを理解すべき必要性はむしろ高まっている。本連載では、年間数百件の企業価値評価に携わっている筆者らが、4回にわたり、法務担当者として非上場株式の評価結果から何を読み取るべきかを伝授する。
契約解除時の実務ポイント
第1回 初期対応とその他基本事項
花野信子・佐藤敬太
企業の法務部または弁護士は、社内や顧問先の担当部署から、取引先との契約解消に関する相談を受けることがままあるだろう。その際に、「解除を実施するには、解除条項に該当することを確認したうえで、解除権の行使をすべき」との助言のみでは、解除条項の読み方・解釈を含めた法的問題や、解除の実施に伴うビジネス上の問題点に関する検討が不十分な可能性がある。そこで、本連載では、解除の実施から広く契約関係終了に伴う諸対応の要点を簡潔に整理し、解除の実務に関する「交通整理および舵取り」を行うことを目的とする。
会社法改正後の株主総会電子提供制度への実務対応
第1回 Q1〜Q4
伊藤広樹・茂木美樹
Q1:現在、政府では会社法制(企業統治等関係)の見直しが検討されていますが、その見直しのなかでは、「株主総会資料の電子提供制度」という制度を新たに創設することが検討されているようです。これはどのような制度なのでしょうか。
海外ドラマ・映画で学ぶ法律英語─日頃からのちょっとずつseason3
第3回 LEGALLYBlonde(キューティ・ブロンド)
大島忠尚
元カレを追いかけて、全米でも有数のHarvardLawSchool(ハーバード・ロースクール)に入学した、おしゃれで明るく常に前向きな主人公。しかし、西海岸の高級住宅地BelAirで家族や友人に恵まれ何不自由なく育った彼女には、東海岸に位置するハーバードはまったく未知の世界。そして少しだけ場違いな感じ......。さてさて、恋の行方はどうなるのか。そして無事卒業できるのか。
企業結合審査対応の最新実務
第3回 日本の企業結合審査対応②
宇都宮秀樹・藤田知也
本号では、水平型企業結合の締めくくりとして協調的行動による競争の実質的制限に関するポイントについて説明した後、垂直型企業結合および混合型企業結合について解説する。
外国人弁護士世界一周
第16回 中国
鮑 栄振
1982年に大学を卒業後、私は司法部、中国法学会に相次いで勤務し、日本の司法機関、法律家団体、法学研究団体、大学法学部などの方々との交流に関わる業務を担当してきました。そのため、しばしば、中日両国の司法機関や法律家団体のトップ、ひいては政府首脳の通訳を務める機会があり、中国の改革開放実施以降、いわば中日法律交流の本格的な開始以降、約20年間にわたって数々の中日法律界、法学界の交流に携わり、多くの歴史的な瞬間を目撃してきました。
日本人に知ってほしいアメリカ紛争解決の現場感
第3回 訴状送達
奈良房永・合嶋比奈子
日本と米国の訴訟制度にはさまざまな違いがあるが、特に知っておきたいのが、訴状の送達に関するルールである。従来、米国の裁判所で日本企業を訴える場合、訴状の送達は「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」(以下「ハーグ条約」という)に基づいて行われてきた。米国内の被告に対しては通常、手渡しによる送達が1日で完了するのに対し、ハーグ条約のもとでの日本の被告への送達は米国の国務省、日本の外務省、そして日本の裁判所を経由して行われ、3〜4カ月の時間を要する。
法務2.0リーガルテックのフロンティア
第5回 裁判所のテクノロジー活用で変わる裁判手続
橘 大地
民事裁判手続にインターネットテクノロジーを活用し、裁判手続における利用者の利便性を向上させるための議論が開始されている。発端は、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」にて「迅速かつ効率的な裁判の実現を図るため、諸外国の状況も踏まえ、裁判における手続保障等総合的な観点から、利用者目線で裁判に係る手続等のIT化を推進する方策について速やかに検討」することが明記されたことに始まる。同閣議決定を受け、内閣が設置する日本経済再生本部は、2017年10月に「裁判手続等のIT化検討会」を設置し、同検討会は2018年3月に実現に向けた取りまとめを発表した。
若手弁護士への箴言
第4回 信頼を築くコミュニケーション
髙井伸夫
「はじめに言葉ありき」─新約聖書「ヨハネによる福音書」の冒頭の記述である。解釈はさまざまあるが、神の言葉に従って人間社会ができた、すなわち、「話す」言葉があってはじめて「聞く」ことができ、コミュニケーション、心の交流が生まれ、それによって社会の秩序が生まれたのである。
すぐに使える危機管理の書式
最終回 不祥事対応を見据えた就業規則等の整備
梅津英明・新井朗司・千原 剛
企業の不祥事においては、その実行主体が従業員であることが多い。そのため、不祥事の発覚の端緒から、調査を経たうえで社内処分の実施に至るまで、さまざまな局面において、企業と従業員との関係が問題になる。企業と従業員との関係は、基本的に両者の間の労働契約(書面や口頭のほか、就業規則等の社内規則によるものも含む)によって規律されるところ、平時から、就業規則等の内容を不祥事対応を見据えたものにしておくことは、不祥事対応を円滑に進めるという観点から有益であることに加えて、従業員に対する一定の牽制として不祥事の事前抑止にもつながるものと考えられる。そこで、最終回である第10回となる本稿では、従業員との関係で不祥事対応を見据えて平時から準備しておくことが便宜と思われる、就業規則等の規定例および書式を紹介する。
海外最新コンプライアンス事情
第4回 ベトナム
三木康史
ベトナムは、よくも悪くも、贈答・接待がビジネスにおいて重要な役割を果たす国である。企業同士の取引では担当者レベルでの贈答・接待は日常茶飯事であるし、税関・警察・許認可当局を含む公務員であっても例外ではない。日系企業の現地法人でも、税務調査における税務署員からの賄賂の要求、通関時の通関職員からの賄賂要求、投資・事業ライセンスの取得・拡張時の許認可当局からの賄賂要求、購買担当者によるサプライヤーからのキックバックの受領など、贈答・接待をめぐる問題は枚挙に暇がない。「日系企業の購買担当になると家が建つ」という笑い話があるほどである。