企業を成長させる法務
法務機能の在り方研究会報告書の概要
北村敦司・金澤 優
昨今、ビジネスのグローバル化の加速、第4次産業革命のもとでのイノベーションの進展等、日本企業の経営環境が大きく変化しているが、これは企業が直面する法的リスクがこれまで以上に多様化・複雑化することをも意味している。このような状況をふまえ、当省では、企業法務の有識者や法務省および文科省の協力を得て、平成30年1月に「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」(以下「本研究会」という)を立ち上げた。本研究会は、これからの日本企業の競争力強化に資する経営と法務機能のあり方を中心に議論を重ね、そこで明らかになった日本企業の課題と克服に関する提言等を「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(以下「本報告書」という)としてとりまとめ、平成30年4月18日に公表した。
法務部の構成・位置づけに変化?
合衆国法務部の最新動向と日本との比較
ダニエル・H・フット
「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(以下「報告書」という)は、企業法務の国際競争力への貢献の可能性について、重要な調査結果および分析を提供している。報告書が指摘するように、法務機能は大きく分けて、①企業価値を最大化する観点から、「会社の事業や業務執行を適正、円滑、戦略的かつ効率的に実施できるようにする」、いわゆる「ビジネスの良きパートナー」としての機能および②企業価値を守る観点から、法的リスク管理のために「経営や他部門の意思決定に関与して、会社の権利や財産、評判などを守る」、いわゆる「ガーディアン」としての機能がある。前者を「攻め」としての機能、後者を「守り」としての機能と称して、「会社を健全かつ持続的に成長させるという法務機能の目的において、『守り』と『攻め』は表裏一体の関係にあり、両者は単純に切り分けられるものではない」と報告書は注意している。
相互理解をもとにより高度な対応の実現を
事業部門との協働による法務機能の底上げ
石島真奈
経済産業省が本年4月に公表した「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(以下「報告書」という)策定にあたって、主に事業側の視点の提供という趣旨で議論に参加させていただいた。ヤフー株式会社の法務部門での勤務を経て、2017年度からメディアカンパニーにおいて事業開発に関わるなかで自分自身の視座と意識の変化を興味深く感じていたこともあり、研究会初回には、法務部門と事業部門との間における相互期待値にギャップが生じるケース、相互期待値が合致するケースをそれぞれ可視化することを目的に、「事業部門が期待する法務部門の在り方」というテーマでプレゼンテーションを行った。本議論の目的が競争力強化であることをふまえると、法務が関わる領域において事業成長がどのように推進され得るかについては、法務の組織論にとどまらない議論を広げることも重要と考えている。
「法務が強い」とはどういうことか
企業の意思決定過程と法務部門の権限・組織
伊藤ゆみ子
本年4月、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」(以下「研究会」という)の報告書(以下「報告書」という)が経済産業省により公表された。筆者は、研究会の臨時委員として、その議論の一部に参加する機会を得たのであるが、本稿では、「企業の法務能力」を向上させるという観点から、研究会が課題の一類型とした「組織・オペレーション」について、報告書の内容にも触れつつ、筆者の考えを述べることとしたい。
国際競争力に資する法務人材の獲得・育成の要点
平野温郎
今求められている新たな法務機能とは、経営の成功に能動的にコミットするというものである。このような機能を発揮して企業の国際競争力に資する法務人材には、①幅広い専門的知識、②法的思考力、③社会常識・人間力、④語学力が求められる。企業は、法曹資格の有無には関わりなく、これら4要素を備えた多様な素材を獲得すべきである。また、グローバルかつ中期的な視点から、知識、実務経験・スキル、プラクティスマネジメントの三位一体による計画的育成が重要であり、最初から即戦力となる人材は稀である。本年4月に経産省より公表された「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(以下「本報告書」という)は、いわば法務部門のあるべき近未来形を示したものという性格もあわせ持つ。もっとも、個社の事情によってできること、できないことがあるのは当然である。
積極的なパートナーとなるために
法務部門の機能と組織の設計・運営
斎藤輝夫
本年4月に経産省が「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(以下「報告書」という)を公表した意義は大変大きく、その内容も筆者としては多くの部分が共感できる。他方、日本企業の法務部門はさほど歴史が古い組織ではなく発展途上にある会社も多い。また組織が充実しているところでも会社によって法務機能に対する見方は異なる。したがって、報告書の内容に対して違和感を感じている企業も少なくないと思われる。本稿では、法務の役割、組織設計に焦点を当て、報告書を紹介するとともに、実務的対応の観点から筆者の私見を加え考察したい。なお、本稿は筆者個人の見解であり、筆者の所属する組織の見解、方針とは無関係である。
「法の遅れ」に対応するボトムアップ型ルールメイク
石原遥平
近年よく「XTech」という言葉を耳にする。「Technology」とは、多義的な意味を有するが、「科学や機器を利用して物の生産に結び付けること及びその技術」をいい、特定の分野に関連づけて「Engineering」と同じ意味で使われることが多いとされる。この「Engineering」という言葉の本質は科学を実用化し、人類の生活に「役立てる」ことを目的とする技術の探求・研究である。人の役に立つモノやサービスを作れれば、それがビジネスとなり、新たなビジネスを生み出す。その意味で、新しいビジネス=既存産業とテクノロジーの融合による課題解決ともいえ、既存産業(X)×Technologyが結び付くのは必然ともいえる。
風営法改正事例にみるルールメイク後の産業推進
齋藤貴弘
2016年6月23日、改正風営法が施行された。これまでのダンス営業による規制を撤廃し、深夜12時以降禁止されていた飲食店による遊興を新設された特定遊興飲食店営業の許可を条件に認める内容である。特定遊興飲食店許可の取得条件が厳しいという課題を残しつつも、草の根的な署名運動により始まった風営法改正運動は大きな成果を得た。
改正法と新しい働き方への対応
労働時間の適正把握・管理
西 芳宏
【事例1】改正法下での労働時間把握の具体策:2018年6月29日に、働き方改革法が可決、成立し、同年7月6日に公布された。この働き方改革法のうち、改正労働基準法の36協定の上限規制に対して企業が労働時間管理にあたり実務上注意すべき点は何か。
近時の3つの最高裁判決にみる
定額残業代制
横山直樹
テックジャパン事件(最判平24.3.8労判1060号5頁)以降、最高裁は、相次いで定額残業代に関して重要な判断基準を示した。これらの判決に呼応するように東京地裁の運用にも変化がみられることから、以下では最高裁判決を解説したうえで、どのような運用であれば訴訟に耐え得るかを考察したい。
対象業務範囲・みなしの効果・健康管理
裁量労働制
近藤圭介・山口翔平
【事例1】専門業務型裁量労働制の対象業務:当社では、エンジニアに対して専門業務型裁量労働制の適用を検討している。もっとも、昨今は適用対象業務でない業務に従事している従業員に対して裁量労働制を適用した企業が実名報道されるなどしているので、そもそも当社のエンジニアに対して専門業務型裁量労働制を適用できるか慎重に吟味したいと考えている。そこで、専門業務型裁量労働制の適用対象業務の範囲について知りたい。
就業規則・運用の再点検
変形労働時間制
小山博章・林 栄美
【事例1】1カ月単位の変形労働時間制において就業規則に規定が必要な事項;当社では、シフト制を採用しているが、就業規則には、「変形労働時間制を採用すること」と「毎月1日を起算日とする」とだけ記載しており、現場で毎月作成する勤務割表において各日の始業時刻や終業時刻を特定する形で1カ月単位の変形労働時間制を運用している。この就業規則の記載および運用で問題ないか。
社外取締役に求められる役割と選任時の視点
中西和幸
上場している大企業にとって、社外取締役を選任することは、今や普通のこと、常識ともいえる。現在は、単に社外取締役を選任するだけでなく、社外取締役の独立性や多様性、専門性などの要素を、どの程度求めるか、がポイントとなっている。そのため、社外取締役を実際に選任するためには、社外取締役に求めるものや社外取締役に必要とされる要素を考慮し、探し方から候補者を適切に絞り込む過程において、十分な工夫と検討が必要である。
社外取締役の再任・交代の留意点
松山 遙
会社法改正およびコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)の適用開始を受けて、社外取締役の選任が本格的に進み始めてから、すでに数年が経過した。多くの上場企業において、複数の社外取締役が選任されるようになり、取締役会の議題の選定や資料の作成・事前説明の方法等が工夫され、指名・報酬に関する諮問委員会も設置されるなど、社外取締役を活用したガバナンス体制の構築・運用が進んでいる。社外取締役の果たすべき役割・機能が大きくなってくるなか、次なる課題として、社外取締役のサクセッションについても検討しておかなければならない。
経験から語る
女性社外取締役活用の有用性と課題
金野志保
私は2005年に初めて上場企業の社外役員を拝命した。就任当時、社外役員業務を行うためにコーポレート・ガバナンスを学ぶにつけ、「まもなく企業に女性役員が必要とされる時代が来る」と感じていたが、はたして時代の波が押し寄せ、現在は3社の上場企業の社外取締役(および1社の社外監査役)を務めさせていただいている。「女性社外取締役」という、これまでに先例があまりなかったポジションに就くということは、企業側も就任側も何かと苦労が多く、本稿ではその試行錯誤をお伝えしたい。もっとも、私は単なる一実務家であり、必ずしも学術的なエビデンスに基づかない稚拙な考察も多々あるかもしれないが、その点はどうかお許しいただきたい。
公取委の想定事例を分析
働き方改革に起因する下請法・独禁法違反の概要と企業対応
板崎一雄
平成30年6月、働き方改革を推進するための法律が遂に成立したが、その前月、公正取引委員会は、働き方改革に関連して起きる可能性がある下請法、独占禁止法違反の事例を公表していた。働き方改革によって、なぜ、下請法等違反が起きるというのだろうか。従業員の労働時間減少のために、外注は1つの有効手段と考えられるが、どういった行為が問題になるのか。その概要や対応策について述べたい。
管理部門の分掌と連携がカギ
下請法違反の早期発見へ向けた社内調査のポイント
沖田美恵子
近時、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という)に関する当局の執行が活発化しており、企業や世間の関心も高まっている。悪質事案として勧告を受ければ企業名が公表されレピュテーションの低下を招くが、公正取引委員会は、調査開始前に自発的に違反を申し出た親事業者については一定の要件のもとに勧告を行わない取扱いとしており、違反の早期発見は企業にとっても有益である。そこで、企業が下請法違反を早期かつ効率的に発見するための端緒の把握や調査について、管理部門が行うものを中心に解説する。
平成29年度主要企業結合事例
─地銀間統合における公取委対応を中心に
石垣浩晶・矢野智彦
今年6月6日、公正取引委員会(以下「公取委」という)は、「平成29年度における主要な企業結合事例について」(以下「『公表事例』」という)を発表した1。今年の届出数は306件であり、平成25年以降の増加傾向は維持されているが、平成28年度よりも4.1%減少した。第二次審査へと移行したものは1件に留まり例年に比べて大きく減っている(【図表1】)。「公表事例」で報告されている12事案の審査内容および公取委の判断の概要は【図表2】のとおりである。
今秋より運用開始!
内部通報制度に関する認証制度の概要
遠藤輝好
いよいよ企業の内部通報制度の認証制度がスタートする。具体的には、この秋には「自己適合宣言制度」が、そして、平成31年度には「第三者認証制度」が始まる。コンプライアンス経営の要である内部通報制度に対する評価は、取引先や投資家等ステークホルダーの重要な関心事であり、企業の対応は喫緊の課題である。そこで、本稿では、企業が認証制度にどう向き合えばよいか、ポイントを解説する。なお本稿では以下、後掲の報告書で提案されている「内部通報制度認証」を制度の名称として用いる。
日米の裁判事例から読み解く
株式価値評価における「取引価格」採用の考え方
池谷 誠
本誌2016年12月号の拙稿において、少数株主の締出し(スクイーズド・アウト)を伴う組織再編に係る反対株主による株式買取請求事件について、株式価値評価に係る主要な論点について整理したが、本稿では、それらの論点のうち、組織再編等において当事者間で合意された実際の取引価格(合併価格)が公正な価格として認められるかどうかという論点につき、最近の事例を基礎として検討する。また、わが国の事件とともに、株式価値評価に係る豊富な事例が蓄積されているデラウェア州の事件についても同様の論点が存在するため、基本的な考え方の違いがどこにあるか、比較検討する。なお、本稿において意見に係る部分は筆者の所属する組織とは関係がなく、筆者の個人的見解である。
近藤光男
従来の通説によれば、株主総会決議取消しの訴えを起こす権利は議決権の存在を前提とするものであり、議決権のない株主にはこの権利を否定する。しかし、最近の下級審判決には議決権のない株主にも提訴権がある旨の判示がみられた。本稿は、株主が議決権を行使できない場合をいくつかに分けて、決議取消しの訴えを起こす権利と議決権の関係を検討する。
岡 俊子
6月の株主総会シーズンが終わると、決まってこういったメールが届く。「某大企業から、女性の社外取締役の候補を尋ねられています。この質問にはいつも困ってしまうのですが、どなたかお心当たりの方はおられませんでしょうか?」知人の女性社外取締役からである。2015年にコーポレートガバナンス・コードが策定されて以来、コーポレート・ガバナンス先進企業と、社外取締役をお飾りにしている企業との差はさらに開いてきている。
日置巴美
データを活用する企業がユニコーン企業として注目され、GoogleがガーナのAI研究拠点開設予定を公表し(アフリカ進出)、また、三菱UFJ信託銀行が情報信託銀行の実証実験を行うなど、データ利用に関するニュースを見ない日はない。他方で、EU一般データ保護規則(GDPR)の施行や、Facebookのデータ流用への世間の反応にみられるように、データについて考えるとき、利用とともに保護の側面に光が当たる。データは、産業構造までも変革させ得る新たな資源となり得るが、データ主体が観念される個人情報、パーソナルデータ(以下「個人情報等」という)を利用するとき、保護の観点を忘れてはならない。
LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所
2018年7月〜8月
最新判例アンテナ
第8回 日本国内において金銭の貸付けの一部を業として行っている限り、顧客が国外の借主のみであっても貸金業法の規制に服するとした事例(東京高判平28.12.12判時2349号18頁)
三笘 裕・淺野航平
企業結合審査対応の最新実務
第2回 日本の企業結合審査対応①
宇都宮秀樹・藤田知也
本号では、企業結合審査の対象となる「一定の取引分野」の画定と、独禁法上問題となりやすい水平型企業結合について、実務上のポイントを解説する。
外国人弁護士世界一周
第15回 アメリカ合衆国
ライアン・ゴールドスティン
80年代後半、日本はバブル時代でした。アメリカ市場で活躍する日本企業の様子が連日、マスメディアを賑わしているにもかかわらず、公立高校では日本の歴史が教科に含まれていませんでした。いったい日本とはどんな国なのか......大いに関心を持って、私はダートマス大学アジア学科で歴史を専攻し、日本文化に触れました。中でも驚いたのが「参勤交代」です。戦略的でありながら平和的に国を治めようとする制度は他国ではみられない独特な文化だったのです。
日本人に知ってほしいアメリカ紛争解決の現場感
第2回 アメリカの裁判官はどのような役割を果たすか
奈良房永・合嶋比奈子
今年5月、米国連邦最高裁判所の女性裁判官、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事(85)の半生を描いたドキュメンタリー映画「RBG」が公開された。女性弁護士やロースクールの学生を中心に人気を集め、5月の母の日には母親を誘って映画館へ出かけたという話も聞いた。2015年にタイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ表紙を飾ったギンズバーグ判事は、この冬公開予定のハリウッド映画「OntheBasisofSex」のモデルでもある。今、世界で彼女ほど注目を集める裁判官はいないのではないだろうか。そこで今回、ギンズバーグ判事を例として、米国の司法制度における裁判官の役割を紹介したい。
交渉術・心理学でUP!契約書交渉のキホン
最終回 契約書交渉のプロセス
米盛泰輔
契約書の交渉において納得のゆく合意に達するためには、交渉のプロセスについても理解しておく必要があります。そこで、本連載の最終回では、交渉のプロセスにおける重要な問題として、事前の準備(Q21)、ペンディングにした論点の管理(Q22)、中間的な覚書の作成(Q23)、交渉経緯の記録(Q24)および相手方による計略的戦術への対応(Q25)について解説します。
法務2.0リーガルテックのフロンティア
第4回 一般消費者(BtoC)向けリーガルテックの現在
橘 大地
社会生活を送るなかで、法的なトラブルに見舞われることがある。会社における取引上のトラブルであれば、即座に上長に報告のうえ、法務部に相談し、(場合により顧問弁護士に法的助言を得ながら)法務部または上長が解決のための意思決定を行うことが通常であろう。しかしながら、社会生活上のトラブルに遭遇した場合、統計的には、家族や友人に相談のうえ、みずからの判断で、話し合いによる平和的解決を目指すことが多いとされる。
若手弁護士への箴言
第3回 正義・良心・数字
髙井伸夫
これまでの私の弁護士生活を支えたモットーをあえて1つあげるとすれば、「結局は正義が勝つ」である。この思いは81歳になったいまでも変わらない。そしてこれを経営の立場から表現すると、「良心経営」となる。それでは、弁護士は顧客の利益を最大限にすべく、愚直に目の前の仕事に打ち込み、社会正義に尽くしさえすればよいのか?否である。
すぐに使える危機管理の書式
第9回 内部通報規程
藤津康彦・山内洋嗣・村田昇洋
企業において、平時からの不正・不祥事の予防や早期発見に努めることは極めて重要である。内部通報制度は、不正・不祥事の早期発見による主体的・能動的な対応を可能とするための最後の砦であり、近時急速に浸透しているが、必ずしも従業員からの信頼が得られていない場合もあり、その実効性向上に頭を悩ませる企業は多い。
海外最新コンプライアンス事情
第4回 インド
大河内亮
インドにおいては1990年代に市場開放や外国からの投資の誘致を積極的に進める方向に政策を大きく転換し、ナレンドラ・モディ首相が率いる現政権は、その流れをさらに強力に推し進めようとしている。先進国の企業活動がインド国内で盛んになるにつれて、徐々にコンプライアンスの重要性に対する意識も高まりをみせている。また、2000年代に入ると、近代的な競争法が制定された。さらに、労務においてもセクシャル・ハラスメントに関する立法・施策が導入されており、個人情報を保護するための法制度の一層の整備のための検討も進められている。このように、インドにおいてコンプライアンスが求められる事項は増加し、その水準は引き上げられている。
要件事実・事実認定論の根本的課題──その原点から将来まで
第19回 詐害行為取消権─新民法(債権関係)における要件事実の若干の問題
伊藤滋夫