雑誌詳細

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2018年2月号

2017年12月21日発売号   1,609 円(税込)

特集1

労働時間法制、同一労働同一賃金
「働き方改革」法案要綱の全容を解く

特別企画

AIで変わる法規制

特集1
労働時間法制、同一労働同一賃金
「働き方改革」法案要綱の全容を解く
本特集では、2017年3月に公表された「働き方改革実行計画」、9月に公表された法案要綱をもとに、労働時間法制、同一労働同一賃金を中心に、今、日本企業に求められている働き方改革の本質に迫ります。
労働法

大変革期を乗り越える鍵は積極的な労使対話に
山田久

解散・総選挙で当初の予定より後ずれしているものの、政府は国会に「働き方改革」関連法案を提出する方針である。その柱は「労働時間規制の見直し」と、いわゆる「同一労働同一賃金」の導入である。これらは、首相官邸の強いリーダーシップの下、公労使の合意のうえで2017年3月に取りまとめられた。「働き方改革実行計画」を法的効力によって推進するためのものである。今回の動きについては、その内容・そこに至る経緯とともに、従来からみれば「異例」であった。労働時間規制の見直しの目玉である「罰則付き残業上限規制」は、長年その必要性が議論されながらも結論を得られなかった、正に「労働基準法70年の歴史の中で歴史的な大改革」(「働き方改革実行計画」より)である。

労働法

働き方改革は何を「改革」するのか
改正の全体像と対応ポイント
倉重公太朗

働き方改革関連法律案要綱(以下「働き方改革関連法案」という)は平成29年の194回臨時国会にて審議に入る予定であったが、周知の通り、解散により先送りとなった。その後の報道では、重要法案の提出は平成30年1月召集予定の第194回通常国会に先送りとのことである(本稿執筆の平成29年11月時点)。後述するように、働き方改革関連法案は労働時間の上限規制や脱時間給制度などが一体となっているが、野党は脱時間給制度を「残業代ゼロ法案」などと批判しており、法案審議に多くの時間を要するとみられるため、通常国会に先送りされるであろう。通常国会では、予算審議・予算関連法案が優先されるため、働き方改革関連法案は早くて平成30年4月、遅ければ5月の大型連休明けまで審議できないとの見方もあるようだ。当初の予定では、働き方改革関連法案の多くは平成31年4月の施行を目指していたが、成立時期によっては施行日が1年程度遅れる可能性はあろう。本稿では、働き方改革関連法案の全体像と注目すべきポイントを総論的に述べる。

労働法

時間外労働・長時間労働の是正
北岡大介

本稿では、平成29年9月に厚労省が取りまとめた「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(以下「働き方改革関連法案」という)のうち、時間外労働・長時間労働の是正に係る改正労働基準法案要綱(以下「改正労基法案」という)の内容と実務上の課題・対応策等について解説する。

労働法

高度プロフェッショナル制度の導入と課題
岡田和樹

平成27年4月に国会に提出されたものの、労働組合や一部マスコミから「残業代ゼロ法案」と批判され、審議入りすらできないでいた「高度プロフェッショナル制度」がいよいよ実現しそうである。平成29年7月、政府と労働組合の全国組織である連合「日本労働組合総連合会」が、「年104日の休日の確保」などを条件に制度の導入に合意したと報じられたが、連合内の反対により正式合意にはいたらなかったものの、政府は、「合意内容」を盛り込んだ「働き方改革」関連法案を閣議決定し、国会に提出する予定である。平成29年10月の総選挙で与党が圧勝したこともあり、同法案の成立は必至とされている。いよいよ実施されることになる制度の内容と課題を検討する。

労働法

法改正が目指す「不合理な待遇差」の禁止とは
橘 大樹

働き方改革関連法案では、いわゆる同一労働同一賃金に関する改正も予定されているが、「同一労働同一賃金」は単なるキャッチフレーズに過ぎない。言葉にとらわれず法改正の内容を着実に概観していきたい。

労働法

日本郵便(東京)事件にみる労契法20条の判断基準
岸 聖太郎

労契法20条をめぐっては、2016年に、ハマキョウレックス事件(大阪高判平28.7.26)、長澤運輸事件(東京高判平28.11.2)と相次いで控訴審判決が出され、社会的にも大きな耳目を集めた。2017年6月16日、労働政策審議会から厚生労働大臣に同一労働同一賃金に関する法整備について建議が行われたが、建議報告書作成に向けた審議でもこれらの裁判例を意識した議論がなされている。そして、この建議の内容をふまえて「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(以下「法律案要綱」という)が作成されているわけであるが、建議以降にも労契法20条をめぐる裁判例は続いており、後続の裁判例は法律案要綱の作成過程において考慮されておらず、今後の法案化に当たり新たな問題提起、影響を与える可能性を秘めている。

労働法

有期雇用者・パートタイマーの待遇差是正
石嵜裕美子

期雇用労働者(以下「有期雇用者」という)およびパートタイマーに対する「同一労働同一賃金」、ないしはこれらの者の待遇差の是正に関する法の整備は、パートタイム労働法(以下「パート法」という)を改正し、同法を有期雇用者一般にも適用する形で行われる。これにより、労契法20条がパート法8条(均衡待遇規定)へ統合されるほか、有期雇用者にもパート法9条(均等待遇規定)が新たに適用される。もっとも、改正の主眼は均衡待遇規定の強化にあり、実務上の主戦場に大きな変更はないと予想される。

労働法

派遣労働者の待遇差是正
佐々木晴彦

派遣労働者に関する待遇差について、現行の派遣法は、派遣先の労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、同種業務に従事する一般労働者の賃金水準、派遣労働者の職務の内容、職務の成果等を勘案して賃金決定を行う配慮義務を規定するにとどまる。本改正は、非正規社員の待遇是正の一環として、労働市場法である派遣法に差別の概念3を持ち込み、均等・均衡規定を法的義務として創設し、あわせて法的(実施)義務をも含んだ関連諸規定の整備を図るものである。

労働法

INTERVIEW 株式会社イトーヨーカ堂
企業利益に寄与する真摯なパワハラ・メンタルヘルス対策
久保村俊哉

当社株式会社イトーヨーカ堂は、株式会社セブン&アイ・ホールディングス傘下の事業会社の1つです。全国169店舗、約48、000人の従業員で構成され、その約80%が非正規社員です。私は店舗での食品事業部の惣菜担当、マネジャー、人事部を経て2002年から現職の勤労厚生部で労務を担当しています。主な業務は、全従業員の労働時間管理、労働災害管理、労務トラブル対応、疾病による休職者管理等です。

労働法

INTERVIEW 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 
テレワーク導入を契機とした働き方改革の取組み
本合暁詩・山下健介

当社は企業における人事課題・組織課題の解決支援のサービスを行っており、社員各人が専門性を高めて成長することが会社の成長につながると考えています。テレワーク等、働き方改革を進めることで総労働時間が削減されれば、専門性を高めるための学習時間を確保することができます。また、空いた時間を活用してさまざまな社会体験を充実させることにより、新たな価値が創出されると考えています。 制度の導入前は、客先への移動時間や、資料を印刷するために帰社する時間がタイムロスになっていました。そのため、社外での勤務を認めるテレワーク制度を2013年に導入しました。

労働法

働き方改革の経済分析
山本 勲

現在注目されている働き方改革は、日本的雇用慣行と呼ばれる雇用システムを見直すものであり、その必要性は、日本的雇用慣行の経済合理性が低下していることにある。経済学では、通常、企業や労働者は常に合理的な行動をとることを想定するため、雇用慣行に非効率性が生じるとは考えにくい。しかし、労働市場を取り巻く環境が大きく変化することで、かつては合理的であった企業や労働者の行動が、いつの間にか非合理的になってしまうことはしばしばある。日本では現在、少子高齢化やグローバル化、急激な技術革新など、さまざまな環境変化が生じている。

労働法

ILO「国際労働基準」と日本の取組み
田中竜介

本稿では、国際労働基準の国内および国外における適用場面として、現在日本で進行中の働き方改革の主要テーマに関連する国際労働基準を紹介するとともに、グローバルビジネスと企業の社会的責任に関する官民の各種取組みと国際労働機関(InternationalLabourOrganization)の採択した多国籍企業宣言について紹介する。

特別企画
AIで変わる法規制
昨今、AIの登場によりさまざまな法領域において制度・規制の見直しの必要性が指摘されています。自然人や法人を対象としている法の中にAIをどのように位置付けるか、何を根拠に規制をするのかは、法のそもそもの趣旨・目的を振り返ることにも繋がります。本特別企画では、公法・私法の幅広い分野を対象として、第一線で活躍されている研究者・実務家の方々に、来るべきAIと法の未来図を描いて頂きました。
企業法務総合 テクノロジー・AI

総論 AIに対して法はどう向き合うか
新保史生

AIという用語は、「人工知能」という表記をしなくても一般に理解されるようになりつつあり、第3次AIブームではAIの進化が目に見えて急激に進みつつある。AIを利用したさまざまなサービスの実装、自動走行システムによる自動運転車の普及に向けた取組みをはじめとして、AIが搭載されたロボット、掃除機やAI搭載スマートスピーカーなどの家電製品、ソニーのaiboも復活するなど、日常生活でAIが利用される場面が増えつつある。音声認識ツールでは法律の専門用語であってもかなり正確に入力され、翻訳精度も飛躍的な向上が見られる。パソコンのキーボードを高速でブラインドタッチできる能力や語学力などは、AIを活用したさまざまな機能を活用することで将来的には不要になるのではないだろうか。

企業法務総合 テクノロジー・AI

憲法 個人の尊厳・自律とAIによる評価
山本龍彦

憲法の基本原理は、国家活動だけでなく、法律および裁判所による法律解釈を通じて私企業の経済活動をも拘束する(一般に憲法の私人間効力と言われる)。たとえば、企業の経済活動に適用される男女雇用機会均等法は、1条で、「この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのっとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る......」と規定する。企業は、同法を通じて憲法の平等原則を実現することが要請されていると言えよう。

労働法 テクノロジー・AI

労働法 デジタル経済時代の労使関係
濱口桂一郎

本特集は「AI(人工知能)」を標題に掲げているが、AIは第4次産業革命ともいわれる今日の大変革の(重要ではあるが)一部に過ぎない。IoT(モノのインターネット)、3Dプリンタ、ロボット、ビッグデータ、クラウドソーシング、モバイルコミュニケーション、遠距離データ通信等々、膨大なバズワードが知的世界を飛び交っている。その中で近年世界中で注目を集めているのが、これらによって労働のあり方自体が大きく変わっていくのではないか、それに対して労働法制はどう対応していくべきなのか、という問題である。

企業法務総合 テクノロジー・AI

行政法 AI社会における行政規制・行政によるAIの活用に向けて
横田明美

社会に発生するさまざまな危険に対して、行政規制は業法、危険物規制、施設基準等を事業分野に応じて組み合わせることで安全を確保している。すでに生じつつある変化とAIの特質から、横断的課題を予想し、行政規制に期待される役割を検討しよう。

民法・PL法等 テクノロジー・AI

不法行為法・PL法 民事責任―AI・ロボットと責任の分配
波多江 崇

AIや、AIを搭載したロボットには、開発者でさえも予想できない動作をすることが避けられないという本質的な特徴(予測不能性)があると考えられている。民法の不法行為法は、過失責任の原則を取っており、ここにいう過失とは、予見可能性を前提とした結果回避義務違反である。そうすると、AIやロボットの想定外の動作により損害が生じた場合には、その利用者や開発者に予見可能性が認められず、結果的に被害者が誰に対しても不法行為責任を追及できない事態(「責任の空白」)が生じる可能性がある。

知財 テクノロジー・AI

知財法 ビッグデータ、学習済みモデル、AI生成物の保護
柴野相雄・松村将生

昨今のAIブームの火付け役となったのは、機械学習という方法の中の、深層学習(ディープラーニング)という手法が登場したことによる。深層学習を含む機械学習においては、いわゆるビッグデータを用いて、特定の機能を持たせることを目的として学習を行い、いわゆる「学習済みモデル」を生成する。この学習済みモデルに新たなデータや指示を入力することで、AIは「AI生成物」を出力する。

競争法・独禁法 知財

独禁法 デジタル・カルテルが問う「合意」要件
植村幸也

独占禁止法(競争法)の分野では、近時、「デジタル・カルテル」が大きな話題だ。それが何を意味するのかはっきりしないが、人工知能(AI)や高度な価格設定アルゴリズムによりカルテル類似の結果が生じる場合を指していることが多い。AIの時代には、人間が合意しなくても価格をつりあげることができるようになるのではないか、そのため、合意の存在を要件とする現在のカルテル規制ではデジタル・カルテルを規制するのに不十分ではないか、というのがここでの問題意識である。

ファイナンス テクノロジー・AI

金融法 市場取引、金融サービス、コンプライアンスにおけるAIの活用
森口 倫 

金融における財務分析による投資判断やリスク管理は、単純化していえば数字のパターン分析と呼べるものであり、人工知能(以下「AI」という)が話題になる以前から長年営まれてきた。そして、金融業において、人工知能が大きなインパクトを持つのは、ビッグデータの分析によって新たなパターンをより精緻に認識・予想することが可能になるからであると考えられる。

企業法務総合 テクノロジー・AI

刑事法 AI・ロボットと刑事法―取得情報とプライバシーを中心に
松尾剛行

自動運転車に関する刑事責任、特別刑法、サイボーグ刑法、自律型ロボット兵器に対する規制、ロボットやAIを責任主体とすべきか等さまざまな問題がある中で、本稿では紙幅の関係で、刑事手続法についてのみ検討する。

争訟・紛争解決

司法制度 裁判過程・司法判断におけるAIの可能性
大屋雄裕

たとえばAI裁判官によって自動的に、理由も示されないまま判決が下され、さまざまな事件が高速かつ瞬時に処理されていくような光景を、AIによる司法制度の変化という言葉からは連想するだろうか。もちろん「汎用AI」と呼ばれるようなもの、人間に相当するような認知・判断を持ち、我々を完全に代替することができるプログラムが実現した未来において(それがどのくらい遠い時代なのか、数十年か無限の彼方かについては意見が分かれている)、そのようなAIの働き方や機能に制限を加えないのであれば、そういった光景が現実のものになるかもしれない。

国際 テクノロジー・AI

国際法 AI搭載兵器の責任をめぐる法的問題
佐藤丙午

AI(人工知能:ArticialIntelligence)に対する期待と懸念が、国際社会を動かしている。GoogleやAmazonなどのサービスは、社会に革新的な変化をもたらしている。AIを組み込んだ民生製品の宣伝は珍しくなく、SFやハリウッド映画の世界が目前に展開する予感がする。

地平線
揺籃期のジェネラル・カウンセル--期待される役割
企業法務総合

伊藤ゆみ子

最近、ジェネラル・カウンセル(GeneralCounsel、以下「GC」という)について関心が高まっているのか、私のような者にも話を聞かせてほしいと声が掛かる機会が増えている。GCに「法律顧問」という訳語を当てる新聞記事などもなお散見されるが、これは誤解を招く翻訳である。

トレンド・アイ
自然人、法人に次ぐ「電子人」概念の登場
テクノロジー・AI

工藤郁子

人工知能(AI)を備えた人型ロボット「ソフィア」に世界で初めて市民権を付与すると2017年10月にサウジアラビアが発表し、話題となった。これはもちろん、脱石油依存を掲げて次世代ビジネスへの投資を呼び込もうとする同国の広報施策にすぎない。アザラシやアニメキャラクターに与えられる「特別住民票」と同種と言える。実際に、2017年11月、東京都渋谷区が会話型AI「渋谷みらい」に特別住民票を交付している。

実務解説
企業法務総合

東大ローの人気ゼミを覗く
総合商社のビジネスと法務部の役割
淵邊善彦・有泉浩一

本記事は、TMI総合法律事務所の弁護士であり、東京大学大学院法学政治学研究科教授の淵邊善彦が、東大ロースクールで担当している企業法務に関するゼミにゲスト講師を招いた講義の際のエッセンスを紹介するものである。ゲストである丸紅株式会社の法務部長・有泉浩一が、国内有数の規模とクオリティを誇る総合商社の法務部の組織や業務を紹介するとともに、法務部が商社ビジネスの中でどのような役割を果たしているかを解説する。また、ケーススタディでは、実際の案件をベースに、国際仲裁案件における法務部や弁護士の果たす役割について検討した。

国際

国際建設における契約約款「FIDIC」の概要
小西かおり

FIDIC契約約款とは、FIDIC(FederationInternationaleDesIngenieursConseils/InternationalFederationofConsultingEngineers)(国際コンサルティング・エンジニア連盟)という団体が作成・出版している国際建設契約に関する契約書式であるが、その内容はもちろんのこと、その存在や名前についても法務担当者における認知度が高いとは言いがたい。そこで、本稿では、FIDIC契約約款をより多くの法務担当者に知ってもらうべく、その概要について紹介したい。

労働法 国際

ブラジル労働法改正の要点解説
柏 健吾

ブラジルの労働法(1943年法5452号。以下「旧法」という)を改正する法律(2017年13467号。以下「改正法」という)が、2017年11月11日に施行された。ブラジルでは、法律上も裁判上も労働者保護が強く、法律上要件が不明瞭な制度は労働者に有利に解釈され、また、法律上何らの定めのない権利義務が裁判例により創設されることも少なくない。

連載
企業法務総合

LEGALHEADLINES
森・濱田松本法律事務所

2017年9月〜10月

民法・PL法等

不動産業・建築業の債権法改正対応
第1回 不動産業(売買)(その1)
猿倉健司

2017年5月26日に民法(債権法)の改正法案が成立し、3年以内(2020年)に改正民法が施行されることになる(以下「改正民法」という)。この改正は、債権法に関する箇所を中心に、民法制定以来約120年ぶりに抜本的な見直しを行うもので、改正項目は約200項目に及ぶ。不動産取引その他のビジネスにおいて用いられている契約書は、現行の民法を前提に作成されているが、改正民法には、現行民法とは大きく異なる規定が多数存在する。そのため、今後は、現在使用している契約書の各条項について、改正民法でどのように変わるのかを確認したうえで適切に見直すことが必要不可欠となる。

企業法務総合

ストーリーでわかる契約が決算書に与える影響
第2回 リース契約
横張清威

居酒屋での打ち上げも、お互い苦労した点や、これからの展開について留意しなければいけない点などにつき、各々の立場から建設的な意見が繰り広げられ、和気藹々とした話が繰り広げられていた。当初の法務部の西島と財務部の本田との確執も、徐々に薄れていくようであった。

ファイナンス

仮想通貨の法的性質を探る
第2回 ビットコインの私法上の位置づけ(総論)
後藤出・渡邉真澄

銀行券や貨幣といった強制通用のある現金通貨について、通説は、抽象的な価値がその本質的要素であり、銀行券、貨幣といった「物」は、その個性をまったく欠く一定量の価値を示す媒体と位置づけている。ビットコインも、強制通用力はないものの、一般に決済に利用されており、資金決済法上も、物品の購入等の「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ」ることが同法2条5項1号の「仮想通貨」の要素とされている。

国際

読み方・書き方徹底マスター法律中国語・基礎講座
第4回 時間の表現
森川伸吾

企業法務総合

基礎から学ぶ広告マーケティング法
第4回 景品表示法と不正競争防止法の違い
木川和広・中林憲一

不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という)が定める不当表示(景品表示法5条各号)と不正競争防止法(以下「不競法」という)が定める誤認惹起行為(不競法2条1項14号)は、ともに商品や役務について誤認を招く表示を規制しており、その要件も似通っている。しかし、景品表示法と不競法とでは、法律の本来の目的に違いがあり、それを反映して、景品表示法の不当表示と不競法の誤認惹起行為とでは規制対象や効果等に違いがある。そこで、本稿では、具体例も交えつつ、景品表示法の不当表示と不競法の誤認惹起行為の違いについて解説したい。

税務

法務部員のための税務知識
第8回 税務調査
岩品信明

税務調査では、税務リスクが顕在化し、企業としては実際に納税を強いられるおそれがある。一定の税務リスクがあるとしても税務調査で効果的な対応をして課税の負担なく切り抜けることができることもあり、税務調査対応の巧拙は金銭的な負担と直結している。

国際

外国人弁護士世界一周
第7回 インド
ビーラッパンビーラスレシュクマル

インドでは、子供の進路を親が決めることが珍しくなく、むしろ、当たり前の状況です。我が家もその例外ではなく、親戚や周りからIT系の工学部に進学するのがブームでその波に乗るべきと勧められました。数学に興味のない私にとっては悩ましかったです。私が住んでいた村から十数名も工学部に進学していましたが、誰も弁護士になっていないという理由でいったん保留となりました。そんな状況の中、誰も弁護士になっていないのであれば逆にチャンスではないかとの声が親戚の1人からあり、親もその意見に最終的に納得して、挑戦への道を選ぶことになりました。

税務

入門税務コーポレートガバナンス
第5回 不適切な税務処理を繰り返さない再発防止策の徹底
佐藤修二・武藤雄木・山下貴

国税庁は、2016年7月から、納税者による納税義務の自発的かつ適正な履行(以下「税務コンプライアンス」という)を促進するため、大企業の税務コーポレートガバナンス(以下「税務CG」という)を推進させる取組みを本格化している。その取組みの中で、不適切な税務処理を繰り返さないための再発防止策が重要なポイントとして位置付けられているが、取締役の内部統制システムの構築義務の適切な履行という観点からも実効性のある再発防止策の策定が求められている。

企業法務総合

先輩に学ぶ!法務ママの活躍録
第7回 完璧主義より完走主義。ワークライフバランスを大切にしたい。
中川淑子

子供も仕事も私の生きがい。できる範囲内で無理せず両立するのが私のスタイル。マイペースの私を支えてくれたたくさんの人に感謝したい。

国際

NextIssueはどこにある?海外の今を読む
第11回 民間の活動を後押しするイギリスのチャリティ制度改革
松元暢子

わが国では、100年に一度といわれる公益法人制度改革の結果、2008年に公益法人関連3法が施行された。また、約100年前である大正11年(1922年)に制定された信託法は、2006年に全面改正されたが、その際、公益信託に関する部分の改正は行われず、現在、法制審議会信託法部会において公益信託法の改正が検討されている。2006年の信託法改正の際に公益信託に関する部分の改正が行われなかったのは、当時、公益法人制度改革が進められていたため、これをふまえたうえで公益信託法の改正を行おうとしたためである。このように、わが国では、この10年ほどの間に、公益法人や公益信託についての法制度に大きな動きが見られ、日本の公益法人・公益信託法制にとって重要な時期を迎えているといえる。

企業法務総合

突撃!となりの法務部法務部員の育成方法
第6回 アルプス電気株式会社法務部
岡本 厚

当社の事業は、スマートフォン等の各種電子機器あるいは自動車に使用される電子部品の製造販売であるため、グローバルに市場展開しており、国際法務のウエイトが高い点が特色といえます。欧米、中国の海外現法にも法務部門があり、現地採用の社内弁護士と日本からの出向者で現地での法務案件に対応しています。グローバルという視点で、知的財産や競争法に関連する分野には特に力を入れています。