資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
当社ではファイナンス研究で第一人者とされる専門家のアドバイスを受け、当社の資本コストは3.5%程度と見積もっております。ただし、推計値に相当程度の幅があることや、しかも時間経過により変化していくことなどを認識しております。
上記専門家等からは資本コストと5年平均のROEを比較し、十分な価値創造をしてきたか否かを判断する一助とするとするようアドバイスを受けております。当社のROEの5年間平均は3.1%であり、おおむね資本コスト並と認識しております。
他方、当社のPBRは約0.4倍であり、この指標を基準とした場合には市場評価との間に乖離が生じております。当社は今後も付加価値や収益力強化や株価上昇に向けた努力を続けるとともに、市場との対話を促進し、当社の経営や事業価値に対する適正評価を得られるよう努めてまいります。
具体的な対応としては、2022年12月21日に公表した「上場維持基準の適合に向けた計画書」の「3.企業価値向上に向けた取組について」に記載の内容と重複しますが、すでに行っているものも含めて次のようなものがあります。
① SDGsへの取組み:今年2月より当社ホームページに「SDGsへの取組み」というコーナーを設け、これまで環境認証を取得した新しい社屋の建設や、環境に配慮したプロジェクトが対象となる「グリーンローン」の借り入れ等を紹介しました。今後もサステナブルな社会の実現に向けて身の丈に合った貢献を続け、投資家の皆様に積極的にお知らせしてまいります。
② 業務改善・経費削減プロジェクト:社外取締役の松尾武氏はNHK理事を経てNHK出版の社長を経験しており、企業経営・出版業に精通しています。これまで当社では松尾氏の提案で業務改善・経費削減プロジェクトを進めてきました。このプロジェクトには部長・副部長クラスが参加してさまざまな提案や議論を行ってきたところです。今後プロジェクトの成果を実行に移してまいります。
③ 出版分野の変更:大きな法改正がない中、この5年ほどはコーポレートガバナンスコードやスチュワードシップコード、SDGs、ESGなどソフトロー的なものに関する出版を強化してまいりました。また大学では情報関連学部の新設が続き、社会人のデータサイエンスへの関心も高まっているため、この分野の出版にも挑戦しております。今後も社会の変化を捉えて出版分野を柔軟に変更してまいります。
④ 返品率・粗利益率の改善:当社はこれまで適正部数の印刷・適正部数の配本に継続して注力してまいりました。その結果2012年9月期の返品率(返品額/総売上高)は28.7%でしたが、2022年9月期の返品率は23.3%まで改善しております。今後も当社は引き続き返品率の改善を行い、電子書籍への取組みとあわせて無駄となる費用の削減を図り、利益確保と資源の有効利用や環境保全に努めてまいります。
⑤ コストアップの価格転嫁:近年燃料や各種原料のコストアップが続いております。消費者の需要の強さを見極めつつ、コスト上昇分の価格転嫁を進めてまいります。新刊がこの対応の中心となりますが、既刊も商品の性質により増刷時などに価格を上げております。
⑥ 旧社屋の収益化:当社は旧社屋の近接地に新社屋を建設しました(2023年3月竣工)が、本社移転後の旧社屋所在地(東京都千代田区神田神保町1-31-2)の520㎡強の土地については、神保町交差点から至近距離の好立地にあるため、建設コストの推移や資金調達環境等を勘案しながら、将来的に収益物件化を検討してまいります。