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会社法現代化の意義と課題

 

   

 法制審議会会社法部会において、平成17年改正に向け、会社法の現代化に関する要綱試案がとりまとめられた。これまでカタカナ文語体表
記であった会社法制の現代語化(ひらがな口語体化)、会社法(商法第2編)と有限会社法、商法特例法の一体化などの形式面での改正だけでも商法制定以来の大改正となるが、今回の改正では、昨今の社会経済情勢の変化に対応するため、実質的内容面でも全面的な改訂を行うこととしている。商法全体にわたる抜本的な見直しであり、論点が多岐にわたるが、主な課題について整理したい。


人的会社・物的会社の整理


 実質的な改訂内容としては、まず、商法総則においては、商号登記の効力(19条)の廃止が注目される。従来、「同一の営業」か否かにより商号の登記の可否が判断されたが、この規定が廃止されれば、定款上の「会社の目的」の内容を柔軟に取り扱うことが可能となる。
 合名会社・合資会社については、あわせて1つの類型として取り扱うとともに、法人が無限責任社員になる道が開かれる。これとともに「新たな会社類型」の提案もなされている。これは米国のLLC の制度を念頭においたものであり、税制面での取扱いの整備と一体となった制度整備が待たれる。
 また、有限会社と株式会社との規律の一体化、有限会社と実質的には類似する譲渡制限株式会社の機関につき有限会社と同様にすることを選択できるようにするなど、従来の株式会社・有限会社・合名会社・合資会社という会社類型をより実質的に経済活動の実態に応じた区分へ転換することが掲げられている。
組織再編の弾力化・機動化
 株式会社の設立に関しては、最低資本金制度の見直し(金額の引き下げまたは撤廃)、募集設立の廃止、事後設立における検査役調査の廃止、いわゆるデット・エクイティ・スワップの際の検査役調査の廃止、現物出資における取締役の財産価格填補責任の過失責任化などがあげられている。
 株式関係では、市場取引・公開買付以外での自己株式の買受け手続の明確化、自己株式の市場取引による売却の容認、子会社による親会社株式の取得の容認、強制転換条項付株式の導入、端株制度と単元未満株制度の一本化(代表訴訟など共益権の取扱い)、会社の判断による基準日以後の株主の議決権行使など、経済界から要望の強い項目が多くとり上げられている。
 計算関係では資本の部の項目が注目される。たとえば、欠損補填のための資本減少については定時総会の特別決議ではなく普通決議で足りるものとすること、利益準備金と資本準備金の区別の廃止、法定準備金の減少額の上限規制(資本の4分の1)の廃止、などがあげられる。


定款自治の拡大

 

 機関関係では、会社の自治に委ねる分野を拡大する方向での課題が多くあげられているのが特徴である。株主総会の招集地の自由化、取締役欠格事由の見直し(破産宣告を受け復権していない者を除外)、取締役の任期の伸長、取締役の責任の過失責任化(違法配当、利益相反取引、利益供与)、代表訴訟制度の見直し(原告適格、訴訟委員会制度)、委員会等設置会社における使用人兼務取締役の禁止、補欠監査役の予選の明確化、会計監査人の設置強制の範囲の見直し(完全子会社については不要とする)、会計監査人を株主代表訴訟の対象とする、等の項目があげられている。

〈Y.O 〉