Accounting News

10月理事会

 10月20日、24日にカナダのトロントで開催。中間の日にはカナダ、米国の会計基準設定団体との会合が行われた。

 ・ 企業結合

 耐用年数の不明確なのれんや無形固定資産をセグメントに開示する基準を緩和した。また、減損テストの方法や開示についても公開草案から変更が行われた。

 IFRS適用以前に行われた企業結合につきIFRSに基づく処理を遡及して行うことを容認することで合意。実務の難しさや比較可能性の低下など問題点はあるものの、より有用な情報を提供することを優先させた。

 ・ 金融商品

 IAS32 (開示)の中で、金融資産/負債と持分との区分について暫定的に合意。その結果金融負債と持分証券との区分が規定された。

 IAS39 (認識と測定)については、不活性な市場での評価、非金融資産の売買契約などにつき協議。

 ・ 既存IFRSの改善

 IAS1(財務諸表の開示)、16(有形固定資産)、21(外国為替レート変動の影響)につき討議。

 ・ 収益認識

 契約上の権利義務から生ずる資産負債の分析に関する概念モデルを検討。

 ・ 株式報酬会計

 従業員以外との取引についてもより合理的な測定ができるという反証がない限り公正価値を用いることで暫定的に合意。

 株式の代わりに現金を受け取る選択権のある場合は負債として認識する。

 ・ 中小規模企業の会計基準

 基本の考え方として開示内容の見直しは行うが、認識と測定についての原則は変更しない。IAS19 (従業員給付)につきスタッフが作成した文案を検討。

 

収益の認識

 収益は,通常財務諸表中最大の単一項目であり,収益の認識を含む問題は,会計基準設定機関および会計士が直面する最も重要,かつ困難な問題である。しかし,収益の認識に関する包括的な基準書が存在しないため,FASBの概念書中の広範な概念指針と,権威のある文献の間には相当の相違が認められる。FASBは,2002年5月にこの問題を議題としてとり上げ,○a現存する権威のある文献および認められた実務との間にある矛盾を消去し,○b最近の収益認識指針中に発生した空白部分を埋め,また○c将来起きる問題に焦点を当てるための指針を提供することにした。この基準書は企業一般に適用するものを計画しているが,検討の過程で特定の取引および業界を後にその範囲から除外することはあり得る。

 FASBはこの基準書を開発するに当たり,認識に関連する概念を中心とする接近法(トップダウン)と,詳細な権威のある公式見解中の指針および他の認められる実務を積み上げて指針および実務の棚卸を行う接近法(ボトムアップ)の両面から作業を進めている。

 トップダウンの面では,概念書第6号「財務諸表の要素」が資産と負債の変動によって収益を定義しているが,同第5号「企業の財務諸表中における認識及び測定」中の認識規準は資産と負債の変動に焦点を置いていないという問題がある。FASBは,暫定的に概念書第6号の資産負債の変動に焦点を置き,第5号の実現および利益の稼得過程を優先しないことに決定した。その決定は,概念書第5号の改訂に結びつく。

 一方,ボトムアップは,特に収益認識に関する基準書の開発に焦点を置き,まず詳細な権威のある公式見解および他の認められた実務を積み上げて指針および実務の棚卸を行う。これには業界特有の実務などのような他の実務の検討も含まれる。これにより,収益認識のための会計モデルと取引集団(ファミリー)を識別して基準書開発に当たり検討すべき特定の状況を識別することができる。単一または類似の取引に異なる会計モデルが適用されていれば,それは問題が存在することを意味するため,これらの問題を識別し理解することは一般基準設定には必須の手続である。

 これらのトップダウンとボトムアップによる暫定的結論は相互に反復して調整し,双方の間に整合性を保つものに収斂させていく。

 FASBは,この計画の中で,収益,未履行契約,観察可能な市場がないときの公正価額に関する資産負債の定義を検討することになると考えている。

 この議題は,国際会計基準審議会(IASB)と提携して行っている。すなわち,両者の職員が分担して調査をし,審議の時期を調整し,公開草案と最終基準書の発行も同時にする計画であるが,審議は別個に行っており,したがって,一方で暫定的結論に達したものが,他方では達していないことはあり得る。

 FASBは,基準書および関連する改訂に関する公開草案を2004年後半に,また最終基準書を2005年中に発行する計画である。

 

財務会計基準機構,運営維持に向けた財政基盤の強化を推進

 財団法人財務会計基準機構(以下「財団」)は,さる11月13日,同財団の今後の活動を維持すべく財政の基盤強化にむけて,新たな財政基盤強化活動を推進することを公表した。

 主な目標としては,財団の財政の柱となる会員の加入増加であり,3年を目処に全上場企業の加入を目指す。なお,そのための具体的な活動として,下記のような対策があげられた。

 1 会員マークの新たな制定および利用の促進。

 同財団会員企業が,公表する資料(決算短信,説明会資料など)に利用することによって,同財団会員として開示に対する積極的な姿勢を一般に評価してもらえるとともに,未加入の企業に加入検討の契機を与える。

 2 支援団体と連携したトップおよびボトムの両サイドからのきめ細かい会員勧誘活動の推進および受益者すべてが支援していく必要があるという社会的な意識の醸成。とりわけ資本市場からの資金調達者である上場企業にあっては,その前提となる会計基準の開発コストを応分に負担する必要があることの理解浸透に注力。

 3 その他の活動

 ・企業会計基準委員会の活動を活発化させ,会計基準の整備,充実をはかる。

 ・セミナー,講演会,調査・研究等刊行物のさらなる充実により,一般事業収入の拡充をはかる。

 

東証、決算短信等における定性的情報の記載事例について発表

 東証では、さる10月7日、決算短信等における定性的情報の記載事例(平成14年4月期〜平成15年3月期)について優良な事例のとりまとめを行ったと発表した。内容は以下のとおりである。

 東証では、上場会社各社の事業活動、経営成績および財政状態に関する適切な情報開示を通じ、投資者の的確な投資判断を促すため、平成11年以来、財務諸表によって表示される数値情報だけでは読み取ることが困難な上場会社各社の経営実態について、上場会社自身がその分析・判断に基づいて説明を加え、その内容を文章情報(以下「定性的情報」という)として「決算短信」等に記載するよう要請している。

 年を追うごとに開示内容の充実が着実に図られつつあるが、会社情報の開示をめぐっては、近年、上場会社の事業活動に伴うさまざまなリスクや事業の将来の見通しといった情報に対する投資者のニーズが急激に高まりをみせており、定性的情報の開示の重要性は、極めて高いものと考えられる。

 東証では、定性的情報の開示充実に係る要請を行って以来、折りに触れて、上場会社各社の実際の記載事例を紹介しているが、今般、平成14年4月期から平成15年3月期までの決算短信における優良な事例についてとりまとめた。

 決算短信等における定性的情報の記載事項については、次の項目を掲げている。

 1 経営方針

 1 会社の経営の基本方針

 2 会社の利益配分に関する基本方針

 3 投資単位の引下げに関する考え方および方針等

 4 目標とする経営指標

 5 中長期的な会社の経営戦略

 6 会社の対処すべき課題

 7 コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方およびその施策の実施状況

 8 関連当事者(親会社等)との関係に関する基本方針

 9 その他、会社の経営上の重要な事項

 2 経営成績および財政状態

 以上の項目に関して紹介している記載事例では、他の上場会社との比較において相対的に特徴的な内容となっていると考えられるものを中心に掲げているが、この開示事例に沿って記載することを要請しているものではなく、それぞれ各社の実態に応じて、投資者に対し、具体的に、分かりやすく説明するよう工夫し、その内容の充実を図ってほしいとしている。

 なお、実際の開示資料の作成に当たっては、@これらの項目全ての網羅的な記載が必ずしも求められるものではないこと、またAこれらの項目ごとに区分した記載が求められるものではないこと、さらにBこれらの項目に該当しない内容でも、上場会社の経営実態を適切に開示する上で必要と考えられる事項については、情報開示の充実の観点から積極的な記載が望まれることに留意して、上場会社各社の実態に応じて、定性的情報の開示の充実に努めてほしいとしている。

東証、国際取引所連合(WFE)の年次総会開催

 国際取引所連合(World Federation of Exchanges ,略称「WFE」)の年次総会が、10月12日から3日間、場所はニューヨーク、招聘者はニューヨーク証券取引所として開催された。WFEは、東京、ニューヨーク、ロンドンをはじめとする世界の主要54取引所が加盟する国際機関で、総会においては、新会員の加盟等の組織運営に関する決議、世界の資本市場に関する共通のテーマについての討議等が行われる。

 今回の年次総会における主な議論を2つあげると、1つは、現物取引所のみで構成されていたWFEに、派生商品取引所も加入できるように会員枠の考え方を拡大したことである。したがって、従来は「Stock Exchanges」と「Stock」という文字がついていたが、それを取り除いた。もう1つは、世界で活発に議論されているコーポレート・ガバナンス問題である。WFEメンバーとしてはどのように考え、どのような理念の下に上場企業に臨むべきかを討論すべきであるということで、下部組織のワーキング・グループで半年以上議論を積み重ね、中間でとりまとめをしたが、今回は継続審議となった。

 また、次回の第44回年次総会については、2004年10月11日から3日間、東証の招聘により、東京で開催されることになった。東京でWFE総会が開催されるのは、1989年以来15年ぶりとなる。なお、東証は、2003年1月からWFEの副議長を務めている。

 

日銀,証券市場の整備促進へ

 昨年11月、日銀は「証券化市場フォーラム」を開催した。

 昨年4月、日銀は証券化によって発行された資産担保証券を金融政策の一環として買い入れることを決定、7月に具体的な買い入れスキームを導入した。それと同時に証券化市場の発展に資するため、市場関係者との意見交換の場として「証券化市場フォーラム」の開催を約束していた。

 このフォーラムでは、現在の証券化市場がかかえる問題点が包括的に議論された。

 日銀サイドから提示のあった問題意識は、証券化商品の流動性が不十分であること、投資判断に必要な情報が十分に行き渡っていないこと、債権譲渡にかかる手続の煩雑さや市場慣行が証券化を阻害していること、組成にかかるコストや組成の機動性を阻害する要因があること,である。

 それに対して参加者は、証券化商品の流動性を高める必要性と情報開示に問題があることは認めつつも、その具体的な対応策について多様な意見を述べるにとどまり、必ずしも意見の一致をみなかった。また、売掛債権の証券化が進まない背景として、譲渡禁止特約などの市場慣行が障害になっているとの意見が強かった。その他、証券化に関するデータベースの整備、特別目的会社や信託など証券化ビークルの使い勝手の向上や税制面での対応の必要性、住宅ローン債権の証券化に関する問題点などに対して意見が表明された。

 以上の議論をふまえ、日銀は次の5つの分科会を順次開催し、議論を深めたいとしている。すなわち、@より透明性・流動性の高い市場に向けた課題、A証券化ビークルに関する課題、B売掛債権の証券化についての課題、C銀行貸出債権の証券化についての課題、D住宅ローン債権の証券化についての課題、である。

 フォーラムは今年度末までに報告書をとりまとめる予定である。それを受けて日銀は、法的手当が必要なものについて改正の働きかけを行うなど、市場整備を促すものと考えられる。市場関係者から、今回のフォーラムについて「市場横断的に意見交換できる」と評価が高いことから、今後の活発な議論が期待できよう。

 

日米,租税条約(新条約)に署名

 米国時間11月6日(木),ワシントンにおいて,日本と米国との間で,「所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」の署名が行われた。

 現行の日米租税条約は昭和46年(1971年)に全面改正されたものであり,今回の改正はおよそ30年ぶりである。

 今回の新条約は,現行条約の内容を全面的に改め,OECD条約モデルを基本としつつも,日本と米国の緊密な経済関係を反映して,積極的に投資交流の促進を図るため,投資所得に対する源泉地国課税を大幅に軽減するとともに,条約濫用による租税回避の防止規定を設けるなど,現行条約やこれまでのわが国の租税条約例にない新しい規定が盛り込まれている。 新条約の主な内容は次のとおりとなっている。

 1 配当所得

  @ 配当に対する限度税率の引下げ(一般の配当15%〓330D10%,親子間配当10%〓330D5%)

  A 一定の親子間配当(持株割合50%超の子会社からの配当)については源泉地国免税

 2 利子所得

  一定の主体(政府,中央銀行,一定の金融機関等)が受け取る利子所得については源泉地国免税

 3 使用料

  使用料については,一律源泉地国免税

 4 特典制限

  投資所得に対する源泉地国課税が大幅に軽減したことに伴い,条約特典の濫用のおそれが増大すると考えられることから,これを防止するため,条約上の特典を享受できる者を一定の要件を満たす適格な居住者等に限定されている。

 5 その他

  上記の他に次のような規定が設けられている。

  @ 両国間で課税上の取扱いが異なる事業体への対応

  A 移転価格課税の処分の期間制限(課税年度終了時から7年以内に調査開始に制限)

  B 支店利子税(日本の金融機関等の在米支店に係る支店利子税を免税)

  C 情報交換のための調査権限の創設

  D 国内法の実質的な改正等に伴う問題解決のための協議

  E 保険に係る米国の連邦消費税の取扱い(日本の保険会社に係る連邦消費税を免税)

  F 匿名組合に対する課税の取扱い(日本の源泉地国課税を確保)

 新条約は,両国において国内法の手続きに従って承認された後,両国間で批准書を交換した日から効力が生じる。

新条約が2004年4月1日以降同年内に発効した場合には,わが国においては,新条約は次のものに適用される。

 1 源泉徴収される租税に関しては,2005年1月1日以後に租税を課される額

 2 源泉徴収されない所得に対する租税および事業税に関しては,2005年1月1日以後に開始する各課税年度の所得

 

経済産業省,日本版LLC制度報告書を公表

 経済産業省は、11月17日、「人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案――日本版LLC制度の創設に向けて」と題する報告書を公表した(詳細は

http://www.meti.go.jp/feedback/index.htmlを参照)。

 企業の競争力の源泉が「物的資産」から「人的資産」へとシフトし、戦略的な思考や経験に基づく深い知識を有する人材の確保と活用が経営者・起業家の重要課題となっている。このような中、企業の「器」を決定づける組織法制においても、人材の能力を有効に活用するための新たなる選択肢を提供することを目指す。

 LLC (Limited Liability Company )とは、米国で活用が進んでいる新しい会社制度の一種である。外見は株式会社と同様、出資者が全員有限責任の法人でありながら、会社の内部ルールについては組合と同様、法律で規制されることなく自由に決められるところに特徴がある(有限責任制の人的会社制度)。

 LLC は、総会や取締役会などの会社機関を設ける必要がないことから、運営コストが低く、定款において意思決定の方法を自由に決められることから機動性も確保できる。また、金銭出資の多寡に拘束されることなく、人材の貢献に応じた利益の分配が可能となる。

 このため、専門的知識やノウハウのある人材が集まって事業を展開する人材集約型の産業分野(ソフトウエアなどの情報産業、投資顧問業や投資銀行などの金融産業、経営コンサルタントなどの経営支援サービス産業、共同研究開発事業など)で活用されており、米国ではここ5年間で株式会社が60万社増加する一方、LLCも約60万社増加している。

 同報告書では、日本の会社制度においてはLLCのような会社制度(有限責任制の人的会社制度)が用意されていないため、事業を行う上での選択肢を増やして人材集約型企業の振興や創業を促す観点から、株式会社などと並ぶ新しい会社制度としてLLC制度を創設するよう提言している。

 今後のスケジュールとしては、報告書に関してパブリックコメントを募集(12月17日締め切り)するとともに、その結果も踏まえながら、会社組織の整備など必要な制度整備に関して、平成17年における会社法の抜本改正を予定している法務省をはじめとした関係者と議論を進めていく予定である。

 

監査役協会、定時会員総会開催

 日本監査役協会は、昨年10月29日定時会員総会を開催し、次の議題について決議を行った。

 1 第30期の事業報告、収支計算書案および監査報告、第31期の事業計画および予算案

 2 定款変更

   委員会等設置会社においては、監査委員以外に監査に携わる役員を任命する会社があるので、その者を登録監査役等として登録することができることとする。

 3 理事・監事候補者の選出

   第31期における理事45名、監事3名を選任した。

   なお、総会後に開催された理事会において下記の者が役付理事に選任された。

会長:吉井毅

副会長:笹尾慶蔵,宮原秀彰,宮川東一郎,後藤洋治

常任理事 飯田冨美子,中條邦宏,松香茂道, 大川博通,佐竹靖夫,勝田和行, 二宮博昭,江崎泰充,花岡義明,川口和三

専務理事:高橋弘幸