▽三角波△

平成16年度税制改正の課題

   

 株価の持ち直しに象徴されるように、わが国経済に幾分明るさが見え始めてきた。平成10年度税制改正以来、法人税にあっては、大幅な税率引き下げ、課税ベースの見直し、組織再編税制の整備、連結納税制度の導入など大きな改正が続き、個人課税においても、所得税の税率構造の改正、証券税制の毎年のような見直し、相続時精算課税の導入などが行われてきた。
 平成16年度改正に関しては、年末にかけての税制改正議論の直前に総選挙が行われることがほぼ確実になりつつあり、与党における改正議論は短期決戦になるものと見られる。そうした状況の中での来年度税制改正の課題を整理したい。

連結付加税の廃止
 平成14年度税制改正において導入された連結納税制度だが、適用グループが徐々に増えてはきているものの、まだその数は必ずしも多いとはいえない。
 その大きな原因の1つが、2%の税率の連結付加税の存在である。導入時の税収減少対策として2年の時限で創設されたものだが、実際の連結納税採用グループは予想を大幅に下回り、減収額の予想も見直しを迫られており、今のところは、2年という当初の期限をもって付加税は廃止される可能性が大きい。
 しかし、財政難の折、付加税廃止を楽観視することはできない。来年度の廃止を前提に、9月末の申請期限までに、来年度からの連結納税適用の申請を行なったグループとしては、仮に付加税が延長された場合、どのように対応すべきか懸念されるところである。承認がなされていなければ申請を取り下げることが可能であろうが、承認がなされてしまった場合については、承認の取消しを改めて申請できるのか、取り消せたとしても、以後5年間にわたって連結納税の申請はできなくなるのではないかという問題がある。


事業再生に係る税制措置
 事業再生の観点からは、まず、欠損金の繰越期間(5年)の延長が重要である。帳簿保存期間との関連からみて、7年に延長することがまず考えられるのではないか。
 あわせて、事業再生に関してはこれまで、早期事業再生ガイドラインの策定、産業活力再生特別措置法の拡充、産業再生機構の設立など、事業再生に関連し、多くの施策が講じられてきたところである。
 しかし、こうした制度整備に対応した税制措置は必ずしも十分とはいえず、特に、会社更生法に基づく場合とそれ以外の場合とで、事業再生に対する税制上の取扱いが大きく異なっているという問題がある。そこで、資産評価損益、貸倒損失の認定、貸倒引当金などの点での見直しが必要である。


住宅ローン減税の見直し
 住宅ローン減税制度は、本年12月末に期限を迎える。しかし、上向きつつあるわが国経済のトレンドを確実にする観点、あるいは、良質な住空間の創出を目指すという観点からいっても、国民の住宅投資に対する税制面からのバックアップ措置を引き続き講じることの必要性は言うまでもないことである。平成16年度税制改正においては、従来の制度を延長すべきなのか、あるいは、これに代わる大胆な優遇措置を打ち出せるのかという点が争点となろう。

〈Y.O 〉