Accounting News

 

公開草案等の公表続く

 2005年に予定されているEU内市場上場企業等へのIFRS適用に向けた基準の整備や米国基準(FAS)とのコンバージェンス(収斂)活動を受け、IFRS、IFRICの新設および改訂にかかわる草案が相次いで公表されている。

■公開草案第4号「非流動資産の処分及び廃止事業の表示」

 7月24日公表。FASとの差異を調整する短期的プロジェクトによる改訂の第一段であり、売却予定資産の会計処理についてFAS144「長期性資産の減損又は処分に関する会計処理」による処理方法を採用する。これにともないIAS35「廃止事業」は廃止される。コメントの締切は10月24日。

■公開草案第5号「保険契約」

 7月31日公表。保険契約に関する基準の第1フェーズとして同契約にかかわる開示の改善を目的とする。IASBは引き続き第2フェーズとして契約上の権利義務を公正価値により測定することを検討している。コメントの締切は10月31日。

IAS39改訂案「金利リスクのポートフォリオ・ヘッジに対する公正価値ヘッジ会計」

 8月21日公表。金融商品の会計処理に関するIAS32、39の両基準についてはさまざまな論点について検討が続いている。コメントとして寄せられた項目のうちマクロヘッジの適用について認める方向での草案がまとまったためこれを公表したもの。コメントの締切は11月14日。

■解釈指針案「廃棄、復旧及びそれらに類似の負債の変動」

 9月4日公表。有形固定資産の廃棄等にかかわる見積費用が変動した場合、その変動はIAS16「有形固定資産」により取得原価の一部として処理するとともにIAS37「引当金、偶発負債及び偶発資産」に従って負債としても計上することとしている。

 見積キャッシュフローや割引率の変動を織り込むこととした点が対応する米国基準であるFAS143「資産の除却義務の会計」と異なっており、コンバージェンスに対するスタンスの表れとも考えられる。コメントの締切は11月3日。

 

企業会計基準委員会,外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の取扱いを公表

 企業会計基準委員会は,さる9月22日,実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」を公表した。

 これは、新株予約権付社債制度は平成13年11月商法改正で導入されており,これを受け2002年3月29日に実務対応報告第1号「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」が公表されているが、ここで扱われなかった外貨建の転換社債型新株予約権付社債の円換算に関する処理についてその取扱いを明確にすべきという指摘があったことから、その実務上の取扱いを明らかにしたものである。

 また、上記以外の外貨建新株予約権の円換算等および平成13年商法改正に伴うその他の外貨建取引等の会計処理の取扱いについては、日本公認会計士協会から、「会計制度委員会報告第4号『外貨建取引等の会計処理に関する実務指針』の改正について」が公表される予定である。

 

日本公認会計士協会、会員に対する懲戒処分内容を公表

 日本公認会計士協会は、9月2日の理事会で、綱紀委員会の答申に基づき、次の3件について懲戒処分を行なうことを決定し、9月5日に公表した。

 1 商法監査会社の監査人2名(処分内容:会員権停止6ヵ月)

 会社は、平成9年4月期に休眠会社となった子会社に対する貸付金を回収可能性のないことを認識しながら、平成13年4月期の当該会社清算結了まで損失処理せずにいた。監査人も全額回収不能と認識し、会社に損失処理するよう指導しつつも、平成9年4月期から平成12年4月期までの間適法意見を表明していた。これを、虚偽の財務書類を故意に虚偽のないものとして監査意見を表明したことと認定し処分を行なった。

 2 投融資事業を目的とする匿名組合の監査人1名(処分内容:会員権停止3ヵ月)

 投融資事業を目的とする匿名組合が融資した債務超過会社に対する貸付金の回収可能性および保証人の債務負担能力を確かめる監査手続が不十分であり、投資リスクにかかる十分な証拠を入手できず、監査意見を形成するに足る合理的な基礎が得られなかったにもかかわらず監査意見を表明したこと、また、当該監査人は監査法人の社員でありながら個人的に監査契約を締結し監査意見を表明していることから、監査法人社員の競業禁止規定に抵触する等により上記処分を行なった。

 3 ホームページに顧客会社の情報を掲載した会員(処分内容:戒告)

 顧客会社の財務情報の一部をHPに掲載したことは守秘義務違反に該当すること、業務終了後の会社役員および従業員の交友状況を題材に加工を施した誹謗・中傷記事をHPに掲載したこと、が倫理規則に違反するとし、上記処分を行なった。

 なお、本件については倫理規則の存在の希薄、HPの公開性の認識の希薄に原因があるとして、再発防止のため、協会は@本件の概要を会員・準会員に公表する、A倫理規則の更なる周知を図る、BHPの開設および維持、インターネット上での情報開示に際しても守秘義務の重要性を認識し、職業専門家としての自覚を持ち節度ある行動をするよう指導する、こととしている。

 

日本公認会計士協会、「会計制度委員会報告第13号『退職給付会計に関する実務指針(中間報告)』の改正について」等を公表

 日本公認会計士協会は、9月2日付で上記実務指針の改正を公表した。

 本改正は、確定給付企業年金法の代行返上にかかる政省令等の公布に伴い、実務指針の見直しを図ったものである。

 ここでは、代行返上にかかる退職給付債務と年金資産の消滅は返還日に行なうという従来の基本的な考え方に変更はないが、代行返上にかかる政省令等の公布により、代行返上にかかる具体的なスケジュールが明確になったことから、これに対応し、返還日を返還額である最低責任準備金を国へ納付した日としている。

 また、将来分返上認可の日において、代行部分にかかる退職給付債務と年金資産が消滅したものとして会計処理することを一定の条件のもとに認めた経過措置の適用を平成16年3月31日まで延長することとし、その他注記事項にかかる規定の整備や字句の統一、設例の新設などを行なっている。

 本改正実務指針は平成15年9月1日以後終了事業年度から適用される(改正実務指針全文は本号125 頁以降に収録している)。

 さらに、同協会では同日付で「非営利法人委員会研究報告第10号『消費生活協同組合会計における企業会計の基準の適用について』」を公表した。

 これは、上場会社等の株式公開会社および商法上の大会社においては、いわゆる新会計基準が適用されているが、消費生活協同組合においてこれらを自主的に適用することが望ましいか否か検討したものである。

 

法務省、商法施行規則の一部改正を公布・施行

 法務省は,さる9月22日,平成15年7月商法改正の施行期日に関する政令の公布を受けて(平成15年9月25日施行),これに対応するための商法施行規則(平成15年法務省令第68号,以下「省令」)の一部を改正した。おもな改正内容は下記のとおり。なお,同省令も平成15年9月25日より施行されている。

 1 営業報告書の記載事項

 取締役会決議による自己株式の取得解禁に伴う営業報告書の記載事項の整備をはかるとともに、ストック・オプションに係る個別開示の緩和を行っている。

 2 中間配当財源の見直し

 期中の資本取引により生じた剰余金の増加分が中間配当限度額に算入されることとなったことに伴い,期中に行われた資本取引により生じる剰余金の増減につき,これを適切に中間配当限度額に反映させることが必要となったことに伴う所要の措置を講じている。

 

東証、平成14年度株式分布状況調査に係る全国証券取引所のとりまとめを発表

 東証は、さる9月1日、平成15年3月末現在の内国上場会社のうち、平成14年度中に到来した最終決算期末時点で未上場の会社を除く2,661社の上場普通株式を対象とした株式分布状況調査に係る全国証券取引所のとりまとめを発表した。内容は以下のとおりである。

 平成14年度の全調査対象会社の総株主数は、前年度に比べ39.0万人(1.1%)増加して3,502万人となった。これを所有者別にみると、個人は3,377.1万人(前年度比25.3万人増)、事業法人は88.6万人(同15.2万人増)などとなっている。また、平成15年3月末の株式保有金額(全調査対象会社の上場普通株式の時価総額)は、14年3月末と比べ株価の下落が大きく影響し74兆円(23.8%)減少して236兆円となった。

 1 個人株主の動向

 株主数の大宗を占める個人株主についてみると、14年度の個人株主数は、25.3万人(0.8%)増加し3,377万人となり、個人株主数は7年連続の増加となった。なお、総株主数に占める個人株主数の構成比は96.4%となった。

 14年度中に投資単位の引き下げを実施した会社は162社であり、引き下げ実施会社全体で、個人株主数は13年度に比べて47万人増加した。また、引き下げ実施会社のうち、個人株主数が増加した会社は150社であり、そのうち39社で個人株主数が2倍以上になっている。投資単位の引き下げ実施会社数は、10年度28社、11年度42社、12年度108社、13年度127社、14年度162社と、ここ数年急増している。

 個人の株式保有金額は、14年3月末と比べ12兆円減少し48兆円となった。また、株式保有比率は20.6%(同0.9ポイント増)となり、3年連続の上昇となった。

 2 国内法人の動向

 銀行(長銀、都銀、地銀)の保有金額は、14年3月末と比べ8兆円(同32.4%)減少し18兆円となった。また、保有比率は7.7%(同1.0ポイント減)となり、連続して低下している。信託銀行の保有金額は、14年3月末と比べ11兆円(同17.9%)減少し50兆円となった。しかし、保有比率は21.4%(同1.6ポイント増)となり、7年連続して増加した。同様に、生命保険会社の保有金額は7兆円(同32.4%)減少し15兆円となり、株式保有比率は6.7%(同0.8ポイント減)となった。損害保険会社の保有金額は2兆円(同25.5%)減少し6兆円となり、株式保有比率は2.6%(同0.1ポイント減)となった。事業法人等の保有金額は16兆円(同24.8%)減少し50兆円となり、株式保有比率は21.5%(同0.3ポイント減)となった。

 3 外国人の動向

 外国人の株式保有金額は、14年3月末と比べ14兆円減少し41兆円となった。また、株式保有比率は17.7%(同0.6ポイント減)となり、2年連続の低下となった。

 4 自己名義株式の動向

 自己名義株式を保有している会社数は2,408社あり、全調査対象会社の90.5%(同5.4ポイント増)となっている。また、自己名義保有金額は14年3月末の3倍強に当たる2兆円となり、全調査対象会社保有の自己名義分の割合は1.16%となった。

 

売上消費税額の計算における端数処理の特例の見直し

 売上消費税額の計算に係る消費税法の原則的考えは,「税込受取金額×5/105 (端数も含む)」であるが,「税抜価格」を基礎とした代金決済を行う場合には,一領収単位ごと(レシート1枚ごと)に端数処理をした後の消費税相当額を基礎として売上消費税額の計算を行うことが認められている。

 平成16年4月から,対消費者取引については「税込価格」が表示される総額表示が義務付けられることから,この特例措置は存置する根拠がなくなり,廃止されることになった。

 しかしながら,現在,多くの事業者において「税抜価格」を前提にした値付けが行われているという実態も踏まえ,総額表示の義務付けの円滑な実施を図る観点から,「税込価格」を前提にした商品等の値付けや商品開発等が定着するまでの期間を考慮し,所要の経過措置が講じられている。

・「税込価格」を基礎とした代金決済を行う場合は,「当分の間」,一領収単位ごと(レシート1枚ごと)に「税込受取金額」に含まれる消費税相当額の端数処理を行う場合,端数処理後の消費税相当額を基礎とした売上消費税額の計算が認められる。

・「税込価格」を基礎とした代金決済を行う場合(やむを得ず「税込価格」を基礎とした代金決済が行えない場合)は,「3年間(平成19年3月31日まで)」,従来の端数処理の特例の適用が認められる(「総額表示義務」を履行している場合に限られる)。

 (注) なお,総額表示義務の対象とならない事業者間取引等については,「税抜価格」を基礎とした従来の端数処理の特例の適用も「当分の間」認められる。

 

日本公認会計士協会、「監査委員会報告第75号『監査報告書作成に関する実務指針(中間報告)』の改正について」を公表

 日本公認会計士協会は、9月2日付で上記実務指針の改正を公表した。

 本改正の主な内容は、以下のとおり。

 @  平成14年12月の改訂中間監査基準の公表を受けて、中間連結財務諸表および中間財務諸表に関する中間監査報告書の見直しを行った。

 A  平成14年5月に成立・公布された商法等の改正により連結計算書類制度が導入され、また、平成15年2月に改正された商法施行規則において会計監査人の監査報告書に関する規定が新設されており、これを受け見直しを行なった。

 本改正は、中間連結財務諸表および中間財務諸表に関する監査報告書については、平成15年9月1日以後終了する中間連結会計期間および中間会計期間にかかる中間監査から適用される。

 また、連結計算書類の導入に関する規定は、平成17年3月期決算から適用される。

 

日本監査役協会、「連結計算書類の監査役監査要綱」を公表

 日本監査役協会は、昨年の商法等の改正による連結計算書類制度の義務付けをうけて、すでにその概要を「連結計算書類制度のQ&A」として公表しているが、この度同制度に対する監査役の実務的なガイドラインとなる上記報告書を同協会HPにて公表した。

 本報告書は、@連結計算書類の監査に取り組むべき基本姿勢、A連結計算書類の作成手続・連結の範囲・会計監査人監査の相当性判断などの監査上の留意点、B連結に特有の会計処理などの解説、という3部構成となっている。また、連結計算書類の監査報告書が例示されているなど、監査役が株主に対する説明責任を果たすうえで実務上、参考となるものである。

 なお本報告書は、監査役存置会社の監査役向けにとりまとめられているが、委員会等設置会社の監査委員たる取締役、また米国SEC基準に基づく連結計算書類の作成・提出が認められている企業においても、参考となる。