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   金融審議会,金融システムに関する報告書を公表


 7月28日、金融審議会(首相の諮問機関)は3つの報告書を公表した。公的資金を破綻前の銀行に注入する枠組み、自己資本としての「繰り延べ税金資産」の扱い、信託業に関する制度改革である。このうち前2者は銀行システムのあり方に関する報告である。これに対して信託業に関する制度改革案は金融のみならず、社会制度全般にかかわる問題であり、それだけに影響度が大きい。

 信託とは委託者、受託者(信託会社等)、受益者の三者が関係する契約形態である。通常の契約が二者間で締結されることと比べ、関係が複雑である。この複雑さは、逆に長所でもある。信託を用いると、財産に関する所有権等の権利の帰属と、その権利に基づく経済的利益の帰属とを分離することが可能になるからだ。

 日本でも信託は証券化の仕組みに用いられている。また、金融審議会の報告書で指摘されているTLO(Technology Licensing Organization 技術移転機関)への活用も期待される。TLOとは、たとえば大学が保有している特許などの技術を信託し、企業がその技術を利用、対価を信託に支払うという仕組みである。

 このように信託の役割に対する期待が大きいも

のの、制度的な整備は遅れている。現在、信託に関する主要な法律として、信託法、信託業法、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)の3つがある。現実の信託業務は信託業法と兼営法に基づいて営まれているが、制約が大きい。

 信託業法は1922年に制定された古い法律であり、信託の対象となる財産を金銭、有価証券、金銭債権、動産、不動産に限定している。このため、特許などの無形資産を対象にできない。

 兼営法は信託業務の免許を実質的に銀行に限定してきた。信託銀行がそれである。その理由の1つは銀行の保護育成にあったが、現在にはその必要がなくなった。

 以上から、金融審議会の報告書は、信託できる財産の範囲の拡大、信託業務を銀行以外に拡大することを提案している。

 今後、信託業務に参入する場合の基準、受託者責任や受託に関する情報開示の整備を含め、信託業法の改正作業が喫緊の政策課題となろう。同時に信託の基本法である信託法自身の見直しも進められよう。その信託法の改正の後、再度、信託業法の手直しが行われるものと予想される。