▽三角波△

営業報告書の記載事項の改正

   先の通常国会で、議員立法による商法改正法案が可決・成立した。今回の改正は、公開会社について定款の規定に基づく取締役会決議による自己株式の取得の途を開くことと、中間配当の財源の拡大を図ることを狙いとした改正である。これに伴い、8月8日に、法務省から商法施行規則の改正案が示され、パブリックコメントに付されている。改正案に示された営業報告書の記載事項に関するポイントを整理したい。


自己株式取得の理由の開示

 まず、取締役会決議による自己株式取得の解禁に伴い、営業報告書における自己株式関連の記載事項について改正が必要となった点である。
 改正法では、実際に取締役会決議に基づき自己株式を取得した場合、取得後最初の定時株主総会において、取得を必要とした理由、取得した株式の数、種類、総額を報告することとされていることから、これらの事項について営業報告書に記載することとされている。


ストック・オプションに係る個別開示の緩和
 あわせて、今回の法改正とは直接関係はないものであるが、有利な条件での新株予約権の付与、いわゆるストック・オプションに関する営業報告書の記載について重要な改正案が提示されている点に注目すべきである。
 これまで、当期に付与されたストック・オプションについては、計算書類作成会社およびその子会社の使用人(これを「特定使用人」という)とそれ以外の者とに区分し、特定使用人は付与数の上位10名、特定使用人以外の者は全員について、それぞれの氏名、割り当てられた新株予約権の数、対象となる株式の数、種類、発行価額、行使条件、消却事由、有利な条件の内容を営業報告書に記載することとされていた。したがって、多数の子会社の役員に対してストック・オプションを付与した場合など、営業報告書に膨大な量の氏名等の記載をしなければならず、実務においては問題が指摘されていた。今回の改正では、従来の「特定使用人」に子会社の役員(取締役、執行役、監査役)を加えて「特定使用人等」とし(計算書類作成会社の役員を兼任している者を除く)、特定使用人等に関しては上位10名の氏名等の記載で足りることとされており、相当、記載量の縮減が図られることとなる。
 ただし、計算書類作成会社の役員の最低付与数以上のストック・オプションの割当を受けた子会社の役員については、全員、個別の開示が必要である。たとえば、特定使用人等のうち、付与数の第1位の者が5名、2位の者が10名おり、2位の者の付与数が計算書類作成会社の役員の付与数の最低付与数であり、2位の者のうち子会社の役員が8名であった場合、1位の者5名と2位の者のうち子会社の役員である8名の合計13名について営業報告書に個別に記載しなければならないこととなる。


特定使用人等に関するストック・オプションの総数の記載
 このように、特定使用人等に関する個別の記載が削減される一方、今回の改正では、特定使用人等に付与されたストック・オプションについての合計数に関する記載事項が追加された。すなわち、@計算書類作成会社の使用人、A子会社の使用人、B子会社の取締役(監査委員以外)、執行役、C子会社の監査委員、監査役の区分にしたがって、それぞれ、ストック・オプションを付与された者の人数や、付与された新株予約権の総数、対象となる株式の種類および数を別途記載することとされている。

〈Y.O〉