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企業結合――買収法の手続と非支配(少数株主)持分

 FASBは,プーリング法の適用を禁止し,買収法の適用のみを求めた基準書第141号「企業結合」を2001年に公表し,同年7月から強制適用したが,当時その手続規定の改訂は行わなかった。FASBは,情報の透明性と概念書との整合性を増進することを目標に,また国際会計基準との収斂を視野に入れて,国際会計審議会(IASB)と提携してその作業を進めており,公開草案を本年第3四半期中には公表し,90日のコメント期間を設定して意見を求める計画である。以下は暫定的結論のうち,非支配持分に関連する部分の抜粋だが,この部分については,1999年中にFASBは公開草案を公表しているため,再度改訂草案を出すか,最終基準書を発行するかの結論には到っていない。

 企業結合の定義を変更し,事業の純資産または持分権益の支配の取得をもたらす事象および状況を含める。しかしジョイントベンチャーは引き続き対象外とする。

 連結子会社の純資産中の非支配持分は識別し,貸借対照表中の資本の部に区分表示する。

 段階取得により支配を取得した場合には,支配獲得日現在でそれまでに行った投資を公正価額により再測定し,保有損益を連結損益計算書中に認識する。また,それまでに他の包括利益中に累積した当該投資にかかる未実現保有損益は戻し入れて損益に含める。

 親が子を取得した後における連結グループの子に対する持分の増減は,連結財務諸表上,資本取引(所有者による投資と所有者への分配)として会計処理する。投資の増減額と対応する持分の増減との間の差額は,直接資本勘定(資本準備金)中に認識する。

 純資産もしくは持分権益の売却により子を処分したとき,または売却以外の方法によって親が子を支配しなくなったときは,当該取引に伴う損益を連結損益計算書中に認識する。認識すべき損益は,支配の喪失をもたらした取引による売却代金があればそれと子会社純資産中の親の持分から売却後に残る投資の公正価額を控除した金額との差額である。その場合には,子の純資産中の非支配持分の帳簿価額を,対応する資産負債の非支配持分の帳簿価額と相殺消去する。

 暖簾は,取得時に支配持分だけではなく,非支配持分に属する部分を含めて,その総額を認識する。また非支配持分の有無を問わずに,取得した暖簾の報告単位への割当ては,報告単位に割り当て,減損のテストも同様に行う。非支配持分のある子会社に暖簾の減損損失が発生した場合には,比例配分により当該損失を支配持分と非支配持分に配分する。

 損益計算書には連結純損益のみならず,支配持分と非支配持分に帰属する純損益を表示する。包括利益を表示する計算書にも,支配持分と非支配持分に帰属する包括利益を表示する。損益計算書の個々の項目と包括利益を表示する計算書中の個別の他の包括利益は,連結を基礎に記載する。非支配持分の残高がマイナスになっても子の損失中の非支配持分に帰属する部分は非支配持分に帰属させる。ただし,保証などの要素の影響があれば,それは考慮する。

 

企業会計基準委員会、企業会計基準適用指針公開草案第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針(案)」を公表

 企業会計基準委員会は、8月1日付で上記公開草案を公表した。

 これは、平成14年8月に企業会計審議会より設定された「固定資産の減損に係る会計基準」を受け、当委員会が専門委員会を設置し検討を行なっていたもので、今年3月に公表された「『固定資産の減損に係る会計基準の適用指針』の検討状況の整理」により寄せられた各界の意見を踏まえ、公表したものである。

 ここでは、@資産のグルーピングに際し、将来の使用が見込まれていない重要な遊休資産を独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位とすることを明確にした、A減損の兆候を示す例として当該資産・資産グループがおおむね過去2期営業活動から生じる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスという点について、当期の見込みが明らかにプラスとなる場合を除外する、B同じく減損の兆候について市場価格の著しい下落をおおむね50%程度下落した場合とする、など経営戦略上重要な方向性が示されている。

 なお、本公開草案は9月3日で意見募集を締切り、寄せられた意見を検討した上で、10月にも成案とする見通し。

 

国際会計士連盟、世界的な企業会計不信を払拭するための報告書を公表

 さる8月6日、国際会計士連盟(IFAC)は、報告書「財務報告(企業会計)に対する社会の信頼の再建に向けて――国際的な視点」を公表した。本報告書では、世界的な企業会計不信を払拭するため、企業統治を強化し、監査の有効性を改善し、企業に対する規制の基準を引き上げるための提言が盛り込まれている。また、ここでは会計士業界のみならず、世界中の資本市場に重要な関係を有する専門職業を規制する上で関係ある人々が直面する課題について言及している。

 本報告書の全文等は、国際会計士連盟のHP

http://www.ifac.org/credibility)より入手できる。また、日本公認会計士協会も近く本報告書の全文を翻訳する予定。

 

日本公認会計士協会、会計制度委員会研究報告第9号「附属明細書のひな型」(公開草案)等を公表

  近年の一連の商法改正により商法施行規則が大幅に改正されたことを受け、日本公認会計士協会(会計制度委員会)では、この商法施行規則改正への対応や従来からの実務における解釈の明確化等のため「附属明細書のひな型」について検討して現行のひな型から大幅に記載方法を見直すこととし、公開草案として広く意見を募集することした。

 本公開草案は協会HP(http://www.jicpa.or.jp/)参照。なお、意見募集は平成15年9月12日(金)まで。

 また、同協会は7月22日付で、平成14年1月に監査基準が大幅に改訂されたこと等に伴い学校法人委員会報告第40号「学校法人の寄附行為等の認可申請に係る書類の様式等の告示に基づく財産目録監査の取扱い」を公表している。本報告は平成16年3月31日以後の財産目録に係る監査から適用されるが、早期適用を妨げないとしている。

 

東証、四半期財務情報の開示に関する今後の取組みを発表

 東証は、さる8月11日、「四半期財務情報の開示に関するアクション・プログラム」の推進に向けた今後の取組みをとりまとめ発表した。内容は以下のとおりである。

 東証では、上場会社の業績変化に関する適切な開示制度を構築する観点から、昨年6月に「四半期財務情報の開示に関するアクション・プログラム」を公表し、各種の施策・方針について実施・検討を進めている。

「アクション・プログラム」の公表からほぼ1年を経過した現在、上場会社による「四半期業績の概況」の開示が開始され、「四半期財務情報の作成及び開示に関する検討委員会」による「四半期財務情報の作成・開示に関する手引き」を主な内容とする報告書が公表されたところである。東証では、このような四半期開示をめぐる現状を踏まえ、改めて「アクション・プログラム」の推進に向けて、上場会社を対象として、今後の取組みについてとりまとめをした。

 1 四半期財務情報開示の充実に関する上場制度上の手当て

 上場関係規則を一部改正し、平成16年4月以後開始する事業年度から、現行の「四半期業績の概況」の開示(売上高等の開示)にかえて、「四半期財務・業績の概況」の開示を求めることとする。適時開示の実務上、最低限開示することが必要な開示項目としては、売上高、営業利益、経常利益、四半期(当期)純利益、総資産および株主資本の各項目(連結作成会社にあっては連結ベース(単体ベースは不要)、連結非作成会社にあっては単体ベース)並びに四半期財務情報作成にあたっての基本となる事項(財務情報を作成した基本的な考え方)とする方針である。また、「四半期財務・業績の概況」における財務情報については、公認会計士の関与を形式的に求めることはしないものとする。

 ただし、システム対応や子会社における対応等の必要がある上場会社についての実務的な準備期間を考慮し、3年程度の経過措置を設けることとし、その間の「四半期財務・業績の概況」の開示は任意とする。

 2 経過期間における取扱い

 東証では、早期定着を目指して、経過期間においても、「四半期財務・業績の概況」を積極的に開示するよう要請する。なお、経過期間における四半期開示の定着状況、準備状況等によっては、必要に応じて趣旨に沿う形で経過措置の見直しを行うことがある。

 3 四半期損益計算書・貸借対照表の作成方法

 四半期財務情報に係る要約損益計算書・要約貸借対照表等を作成する場合における具体的な作成方法については、その明確な会計処理基準がないという現状を踏まえ、基本的に上場会社の判断に委ねることとする。ただし、投資者の混乱をできる限り避ける観点から、「四半期財務情報作成のための基本となる事項」として、中間(連結)財務諸表等との取扱いの差異など注意すべき事項を記載するものとする。なお、開示内容についてできる限り各社間の整合を図るためにも、中間(連結)財務諸表等の作成基準をベースとしつつ、一部簡便な方法により四半期財務情報を作成・開示する場合にあっては、「四半期財務情報の作成・開示に関する手引き」を参考にすることが望ましい。

 

国際会計士連盟,「職業会計士の倫理規程」(公開草案)を公表

 国際会計士連盟(IFAC)は,さる7月18日に,改訂倫理規程の公開草案を公表した。同規程は,現在の倫理規程が各国の倫理規程策定のための「模範規程」であったのに対して,世界中のすべての加盟団体および構成員が従うべき「基準」となるものであることから,わが国を含めて,今後多大な影響を及ぼすことが予想される(実際,内容の革新性に鑑みて,コメント招聘期間も通常より長い120日間,11月30日までとなっている)。また,規則主義ではなく,原則主義に基づいている点も大きな特徴であり,今後の監査規制の方向性を伺わせるものとなっている。この動向を受けて,わが国でも近日中に今回の公開草案の内容を踏まえた倫理規則の改訂が予定されている。

 

日本監査役協会,「第25回監査役スタッフ全国会議」を開催

  近年の度重なる企業不祥事を受けて、各社ともコンプライアンス体制の確立やリスクマネジメントに対し積極的に取り組んでいる。また、一連の商法改正も受け、今や監査役、監査委員会の取締役にとってもこれらは理解し実践すべき喫緊の課題となっている。

 そこで、日本監査役協会では、9月11日(木)・12日(金)の2日間、四国高松(全日空クレメント高松)において、「予防監査の視点から見た内部統制――監査の課題とスタッフの役割」をテーマに第25回監査役スタッフ会議を開催する。同会議は、昨年の協会の定款変更により監査役の専任スタッフのみならず他の業務と兼務している方も対象となったが、これにあわせこれらの方々にも求められる共通課題である本テーマについて議論するとしている。