Accounting News

 

6月理事会

 6月16日から18日までイタリアのローマで開催。

 ・ 企業結合

 第1フェーズに関する公開草案ED3 へのコメントに基づき討議。持分プーリング法の適用を廃止し、パーチェス法に統一することが決定された。

 営業権の処理に関するコメントについて次回検討した後、2004年第1四半期に基準を公開する予定。

 ・ 株式報酬会計

 公開草案ED2 に寄せられたコメントを検討したが、決定に至った事項はなし。

 ・ 金融商品

 IAS32 、39の改訂公開草案につき議論。金融機関によるマクロヘッジなど再度公開する項目以外は最終基準の作成に入る。なお、持分金融商品の減損処理について日本の企業会計基準委員会からの指摘に基づき減損の戻し入れは行わないことで暫定的に合意した。

    保険会計(第1フェーズ)

 保険契約の定義を見直すなどの変更を決定し、公開草案をまとめることとなった。草案の公表は7月末、コメントの締切は10月末となる予定。

IFRS1 (初回適用)公表

 EUや豪州などIFRSを会計基準として採用する動きが出てきている中で、他の会計基準に代わってIFRSによる開示を初めて行う際に必要となる事項がIFRS1 として公表された。2005年度の財務諸表を開示する際には比較のため前年度のものと合わせて表示する必要があるため、2004年度分からの適用を可能とするために本基準の作成が急がれていたもの。本基準の適用時期は2004年1月からとなっている。早期適用は奨励される。

 本基準は現体制によるIFRSとしては初めての基準となる。また、解釈指針SIC −8(会計処理の主要な基礎としてのIAS の初度適用)は本基準により廃止となる。

 

基準書第140号改訂に関する公開草案

 FASBは,さる6月に公開草案「適格特別目的事業体および譲渡した資産の隔離〜FASB基準書第140号の改訂」を公表し,7月31日を期限としてコメントを求めた。基準書第140号「金融資産の譲渡およびサービスならびに負債の消滅に関する会計」は,その中で適格特別目的事業体(SPE )を信託,会社または他の法的機関で,その活動は@譲り受けた金融資産の所有権の保有,A受益権商品の発行,B保有する資産からの代金回収と受益権保有者への分配などに限られ,その事業体は譲渡人とは異なる法的地位を有する者と規定している。適格SPEに金融資産を譲渡した譲渡人は,ほかにも条件はあるが,対価を交換に受け取る範囲で譲渡資産の支配を放棄したものとされ,適格SPEは連結対象からは除外しなければならない。草案は,そのような事業体の範囲をより明確にし,また制限しようとしている。

 草案は,SPEが受益権保有者への債務を履行するために,譲渡人,その関係会社またはその代理人に追加的な現金その他の資産を引き渡す義務を負わせる契約を結ぶ場合には,適格でないとする条件を加える。その契約には流動性維持の保証,財務保証などを含む。

 次に,適格SPEが受益権保有者への債務を履行するのに必要なときに,受益権を再発行できる場合には,許容される反対当事者に関して次のような制限が設けられる。@関係会社・代理人を含むどの当事者もすべての確約の公正価額総額の半額を超える公正価額について確約をしてはならず,A受益権の再発行に関する決定をする関係会社・代理人を含むどの当事者もそのような確約をしてはならず,またB最も優先度の高い受益権以外の受益権を有する関係会社・代理人を含むどの当事者もそのような確約をしてはならない。

 基準書第140号は,適格SPEが譲渡した資産からの法的な隔離を達成するために,2段階にわたる譲渡に関する規定をしているが,草案は,その第2段階が受益権の発行である場合には,それに適格SPEが参加することを求めている。

 適格SPEは,株式,パートナーシップ権益などのような持分商品の保有を禁止される。また,満期が適格SPEの終結後になる金融資産を適格SPEが保有する場合には,その資産を受け取る時に処分その他の現金化する方法と時期を特定しなければならないとしている。

 草案は,公開企業については最終基準書発行後最初の中間期の,非公開企業は発行後最初の事業年度の期首後に発生する資産の譲渡について,将来に向けて最終基準書を発効させるよう提案している。

 現行の基準のもとでは適格性の要件を満たしているが,改訂後の要求のどれかを満たさない適格SPEは,最終基準書の発効日後に新しい受益権を発行せず,また最終基準書の発効日前に行った取り決めのもとで譲渡人とは関連のない受益権保有者への確約に従って受け取るべき資産以外の資産を受け取らない限り,継続して適格SPEであると見なされる。

 

企業会計基準委員会および日本公認会計士協会、外貨建新株予約権関係の取扱いに関する公開草案を公表

 企業会計基準委員会は、7月23日付で実務対応報告公開草案第10号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」を公表した。これは、昨年3月に公表された実務対応報告第1号で取り扱われなかった外貨建の転換社債型新株予約権付社債の円換算に関する処理を明らかにするものである(本文はhttp://www.asb.or.jp/参照)。

 また、日本公認会計士協会も同日、「会計制度委員会報告第4号『外貨建取引等の会計処理に関する実務指針』の改正について」(公開草案)を公表した。ここでは、上記の企業会計基準委員会公開草案で取り扱われなかった外貨建の新株予約権の円換算等および平成13年商法改正に伴うその他の外貨建取引等の会計処理の取扱いを明らかにするものである(本文はhttp://www.jicpa.or.jp/参照)。

 なお、意見募集はいずれも8月15日(金)まで。

 

日本公認会計士協会、マンガ「BAR レモン・ハート――Special Version ――公認会計士編」を作成

  日本公認会計士協会は、7月6日の「公認会計士の日」を記念して、「公認会計士制度」や「監査」に関する一般の理解を深めることを目的に、「BARレモン・ハート――Special Version ――公認会計士編」を作成し、無料で広く配布することとした。

 ここでは、「第1話・貸し渋りはなぜおこるのか?」「第2話・繰延税金資産のなぞ」「第3話・公認会計士ってなんだろうね?」「第4話・公認会計士は誰の味方?」「第5話・レモン・ハートを監査する!」といった現在各種報道でとり上げられることの多いテーマについてわかりやすく説明している。

〈応 募 先〉

日本公認会計士協会HP(http://www.jicpa.or.jp/ )から申込みを受け付けている。

 

COSO,「企業リスク・マネジメント・フレームワーク(案)」を公表

 さる7月15日,トレッドウェイ委員会後援組織委員会(COSO)より,『企業リスク・マネジメント・フレームワーク(案)』(Enterprise Risk Management Framework)が公表された(10月14日までコメント招聘期間,2004年初旬に最終報告公表予定)。

 同フレームワークは,COSOの『内部統制フレームワーク』を基礎として,近年,高まりを見せているリスク・マネジメント問題に焦点を当てたものである。その特徴は,リスクをネガティブなものに限定し,組織体の3つ目標とリスク・マネジメントの8つの構成要素によって識別される「企業全体としてのリスク」の管理(リスク・ポートフォリオ)を強調している点にある。

 本報告書の内容は,今後は,企業の内部統制や外部監査等にかかわるさまざまな場面で大きな影響を及ぼすものと予想される。

 

日本公認会計士協会、「平成14年度品質管理レビュー実施結果」を公表

 日本公認会計士協会は、7月4日付で、平成14年度品質管理レビュー実施結果を公表した。

 平成14年度に品質管理レビューを実施した監査事務所数は119事務所であり、これらと昨年度からの繰越分5事務所に対して品質管理レビュー報告書を交付するとともに、123監査事務所に対し改善勧告書を交付した。改善勧告の主な内容は以下のとおり。

 @ リスク・アプローチに関する事項

 リスク・アプローチに基づいた監査計画の監査調書における文書化の方針と手続の整備が十分でないか、または監査事務所が整備した監査計画の方針と手続が適切に運用されていない監査業務があるとの改善勧告が行なわれた。

 A 会計上の見積りの監査

 会計上の見積りの監査にかかる改善勧告事項には、滞留債権、滞留在庫、販売用不動産、有価証券、繰延税金資産、退職給付債務等資産性・回収可能性または見積りの検討に関する検討過程およびその結果の文書化の不備に対する指摘がなされた。品質管理レビューでは、会計監査人が独自の見積りを実施することの検討も含め、監査対象会社の会計処理または評価の妥当性の検討過程とその結果を文書化し、不適切な会計処理が判明した場合には会社に修正を求めることを監査事務所に求めた。

 B 監査手続書および監査調書の整備に関する事項

 監査手続書については、リスク評価に基づく監査手続の策定と策定された監査手続がもれなく実施されたことを示す監査調書との関連付けを、監査調書の整備については、体系化、関連する調書とのリファレンスの励行、実施した手続と結果の明確な文書化を求めた。

 C 検出事項要約調書の作成に関する事項

 監査人が発見した未訂正の財務諸表の虚偽の表示による影響を検討するため、未訂正の検出事項を集計し、検討結果を明確にすることを監査事務所に求めた。

 D 残高確認手続に関する事項

 残高確認手続については、監査基準委員会報告書第19号に従い、監査意見表明前までに残高確認に関する監査手続が完了していることを明確にするよう求めた。

 E 監査意見表明のための審査機能に関する事項

 審査機能に問題のある監査事務所に対し、適切な審査体制の確立を求めた。

 F 利害関係者の確認に関する事項

 監査を実施するにあたっての利害関係者の確認については、文書による個別・具体的確認を監査従事者から定期的に入手することを求めた。

 G 監査契約の継続に関する事項

 監査契約の締結に際して、リスク評価過程およびその結果が明確でないため、改善の要請を行った。

 H 品質管理の実施状況の点検に関する事項

 監査法人ないし比較的多数の公認会計士を有する監査事務所については、監査事務所としての品質管理の実施状況の点検が求められており、点検のためのチェックリストとして、品質管理レビューで使用している監査業務レビュー手続書等を提供し、点検の早期実施または充実をはかることを求めた。

 以上に加え、改訂監査基準への適切な対応および改正公認会計士法への対応についてが今後の課題として示された。

 

財務省・財政制度等審議会,「独立行政法人に対する会計監査人の監査に係る報告書の改訂について」を公表

 財務省・財政制度等審議会財政制度分科会法制・公会計部会公企業会計小委員会は、7月4日付で上記報告書の改訂を公表した。

 これは、本年3月に独立行政法人会計基準および同注解が改訂され、さらに14年1月に改訂された企業会計の監査基準をうけたものである。

 具体的には、新たに区分経理に係る会計処理および連結財務諸表に係る会計基準が設定されたことをうけた監査の考え方ならびにリスク・アプローチに基づきより効果的でかつ効率的な監査の方向性が示されるとともに、実際の監査実務で問題となった点についても、必要な改訂が行なわれている。

 なお、本報告書の全文は財務省HP(http://www.mof.go.jp/index.htm)参照。

 

日本監査役協会「連結計算書類制度のQ&A 」を公表

 近年、大規模公開会社においては企業グループ連結経営を重要課題と位置付け、また官・学・実務界においても同様の方向で議論されている。

 昨年の商法等の改正に伴い、新たに連結計算書類の制度が導入された。すなわち、連結計算書類は監査役と会計監査人の監査を受けることとし、商法施行規則の規定により監査報告書の作成も必要としている(ただし当面は、いわゆる商法特例法上の大会社のうちの、有価証券報告書の提出企業を対象として、その作成を義務付けている)。また、連結子会社に対する調査権が監査役・会計監査人に付与されるなど、会計監査における業務範囲の拡大が図られ、監査役・会計監査人の果すべき役割は、これまで以上に高まっている。

 日本監査役協会の会計委員会では、上記の制度では具体的に何を求められているのか、など本制度の概要をQ&A 集としてとりまとめ、同協会HPに公表している。なお同委員会では今後、具体的な実務対応などについても、引き続き検討していく予定である。

 

東証、平成15年3月期の連結決算発表状況等の集計結果を発表

 東証は、さる6月25日、東証上場会社の平成15年3月期の連結決算発表状況等をとりまとめ発表した。今年の特徴点は以下のとおりである。

 1 連結決算発表会社数は同数

 連結決算発表会社数は、前年と同数の1,573社となった。増減はないが、その内訳は、増加要因が新規上場43社、新規作成12社などであり、減少要因が上場廃止49社、作成取り止め7社などであった。また、3月期決算会社全体(1,714社)のうち、連結決算発表会社の占める割合は91.8%と、前年(92.5%)より若干減少した。

 2 連結決算発表までの所要期間は短縮傾向

 決算期末から連結決算発表までの平均所要日数は、前年比で1.8日短縮し、46.5日となった。具体的には、4月中に発表を行った会社が前年比で41社増加して174社となる一方で、6月に発表を行った会社は7社減少して1社となるなど、全体として発表の早期化の動きが見られた。

 3 連結決算と個別決算の同時発表会社は引き続き増加

 連結決算発表会社1,573社のうち、連結決算と個別決算を同時に発表した会社数は、前年の1,524社から26社増加して、1,550社となった。連結決算発表会社全体に占める割合も前年から1.6ポイント増加して98.5%となった。

 4 今年の特定日への集中傾向は若干緩和

 連結決算の発表がもっとも集中した日は5月23日(金)であり、発表会社数は昨年の最集中日5月24日(金)よりも29社下回る246社(連結決算発表会社全体に占める割合は15.6%)で、集中傾向は若干緩和されているものの、依然として特定の日に相当数の会社が発表を行っている。

 5 早期発表会社上位の顔ぶれはほとんど変わらず

 発表までの所要日数が早くなった会社数は、1,135社(同74.9%)であった。また、所要日数の最短は(株)メッツ、(株)アドヴァンの4日であり、以下、京都きもの友禅(株)8日、(株)ホギメディカル10日、日立機電工業(株)18日、(株)クレスコ、KOA(株)、HOYA(株)21日である。

 

東証、平成16年3月期第1四半期業績の概況の公表状況等の集計結果を発表

 東証は、7月3日、東証上場の3月期決算会社に関する平成16年3月期第1四半期(平成15年4月〜6月)の公表所要日数等の中間集計を発表した。

 東証上場の3月期決算会社1,725社のうち、1,380社の集計をまとめたものである。第1四半期業績の概況の公表予定日は、7月中が388社、8月中が599社、9月中が4社、未定が389社である。公表予定がもっとも集中している日は8月8日(金)であり、公表会社数は152社(3月期決算会社全体に占める割合は8.8%)である。

 また、開示予定の内容は、連結・単体ともに開示する会社数は578社、連結のみ開示する会社数は467社、単体のみ開示する会社数は283社、開示内容未定の会社数は52社である。

 

日銀,短観を公表

 7月1日、日銀短観(2003年6月調査)が発表された。内容は、市場関係者の予想よりも景気の足元が明るいことを示すものだった。

 大企業の製造業の業況判断(「良い」−「悪い」)は−5と、3月調査に比べて5ポイント改善した。中堅企業、中小企業、非製造業ともおおむね改善している。イラク戦争によって世界経済の不透明感が強まっていたことやSARSの影響にもかかわらず、景気は底堅い状況にあるといえるだろう。3月調査時点で懸念されたイラク戦争が予想よりも早期に終結したことも、好影響を及ぼしていると考えられる。

 2003年度の設備投資計画を見ると、大企業の製造業が前年比11.5%の増加となっている。しかも3月調査比で増額修正である。2002年度の設備投資が大幅に落ち込んでいたことの反動があるとはいえ、設備投資計画からも、景気の状況が底堅いと判断できる。

 この業況判断は収益計画にも反映されている。売上高の伸び率はほぼゼロ前後の計画ではあるが、利益率については強気となっている。この結果、経常利益は、大企業の製造業で二桁の増益、調査対象企業全体でも二桁に近い増益を見込んでいる。なお、経常利益の計画について業態別に3月調査と対比すると、製造業は上方修正の一方で非製造業は下方修正しており、多少まだら模様となっている。

 この利益計画が達成された場合、大企業の製造業の売上高経常利益率は2000年の水準を上回り、バブル崩壊以降の最高水準を達成する。同時に、日本経済が健全だった1980〜85年頃の利益率水準に戻ることにもなる。大企業を中心に、リストラの効果が出てきたといえる。

 この短観の結果を受けて、証券市場では株価と金利の上昇(債券価格の下落)の動きが強まった。7月初旬、日経平均株価で10,000円、10年国債金利で1.4%にまで上昇する場面がみられた。昨年度末から今年度初めにかけての相場展開と全く逆の動きである。

 もっとも短観の業況判断は、先行きに関して慎重である。9月の業況について、「ほとんど現状と変わらない」と見ている。相場も、7月初旬の上昇によって当面の目標を達成した感がある。依然として欧米経済が不透明な現在、これからが景気回復の正念場というところだろう。

 

政府税調,各地で対話集会を開催

 政府税制調査会(首相の諮問機関,会長:石弘光一橋大学学長)は,さる6月17日にいわゆる中期答申をとりまとめたところであるが,少子・高齢社会における税制のあり方について,幅広く国民の意見を問うため,「税についての対話集会」(地方公聴会)を開催している。日程は,次のとおりとなっている。

〈第1回〉7月24日(木)さいたま市(ホテルブリランテ武蔵野)

〈第2回〉8月4日(月)函館市(函館国際ホテル)

〈第3回〉8月22日(金)熊本市(KKR ホテル熊本)

〈第4回〉8月23日(土)神戸市(神戸国際会議場)

 なお,現在の政府税調委員は,9月13日に任期が終了することから,来月上旬にも最後の税調が開催され,対話集会での議論の報告が行われるのではないかと考えられる。