Accounting News

 

5月度理事会

 5月20日から23日までロンドンで開催。

 ・ 企業結合(第2フェーズ)

 公開草案に対しコメントを求める期間を通常より長い90日とすることで合意。少数株主持分にかかわる処理が他と相互に関係する事項が多いため。

 ・ コンバージェンス(他基準との統一化)

 IAS33(1株当たり利益)、IAS11(工事契約)、IAS37(引当金、偶発債務および偶発資産)等につき、FASとの違いを中心に見直し。

 ・ 金融商品

 IAS39:金融資産の認識中止については原則として現行の基準に戻すことを暫定合意しているが、さらに細かい条件について検討を行った。

 ・ IFRIC関連

 IFRICで討議されている廃棄費用に関連する処理(見積費用の変化、積立金の処理)につき内容を検討し、全体として合意の意向を伝えた。

 ・ 収益の認識

 収益の定義につき検討の観点を4つから2つに絞る。

 ・ 株式報酬会計

 公開草案ED2では従業員が提供した役務の対価を測定する方法として役務単価の公正価値を用いることを提案していたが、理論上は正しくとも実務的ではないとの意見が多く、FAS123に規定された方法(報酬とした金融商品の公正価値を用いる)の採用を暫定的に決定。

IFRIC秋山委員再任

 2003年6月に任期切れとなった国際財務報告基準解釈委員会(IFRIC)委員4人の選任が行われ、日本からは秋山純一多摩大学教授が再任された。任期は2006年6月までの3年間。

 

FASB基準書第150号「負債と持分の双方の特徴を有する特定の金融商品に関する会計処理」

 FASBは、さる5月に表題の基準書を発行し,5月31日後に結びまたは変更する金融商品に適用した。既存の金融商品に関しては,6月15日後に開始する中間期間の期首現在で適用し,評価額と帳簿価額の間の差異は,会計原則の変更による累積影響額として損益計算書に表示する。ただし,非公開事業体の強制償還金融商品については,12月15日後に開始する会計期間の期首に適用される。

 対象となる金融商品は,強制償還金融商品,資産を移転して発行者の株式を再購入する債務,決済する株数が変動する特定の債務、および関連する独立した金融商品であり,それらは従来貸借対照表の資本の部に含めるか,その特殊性を考慮して負債の部と資本の部の間に表示されてきた。それを基準書第150号は負債の部に含めるよう要求し,また従来配当金などの名目で行ってきた支払いは損益・キャッシュ・フロー計算書中に利息費用として記載するよう要求している。

 なお,概要の紹介には株式(share)という用語を用いるが,それにはわが国の合名・合資・有限会社,その他の法人,匿名組合などの出資金を含んでいる。またその一部を負債に表示させるため,第150号の発効後も資本の部に含める株式を,あえて持分株式(equity share)と呼ぶ。

 強制償還金融商品とは株式の形式により発行された金融商品で,特定日または決定できる日に,または発生することが確実な事象の直後に,資産を移転してその商品を償還するよう発行者に要求している無条件債務を具体化したものをいう。発生することが確実な事象には,出資者の退職・死亡などが含まれる。これにより資本の部がなくなる事業体は,当該商品を「強制償還対象株式」として他の負債とは区分して表示する。

 資産を移転して発行者の株式を再購入する債務とは,発行者の発行済株式以外の金融商品で,発行者の持分株式を再購入する債務を具体化し,またはその債務に指数化され,また資産を移転してその債務を決済することを発行者に要求し,またはし得るもの,たとえば発行者の持分株式にかかる先渡し購入契約または引受プットオプションで、持分株式を引き渡して決済し,または純額により現金決済すべきものをいう。

 決済する株数が変動する特定の債務とは,無条件債務を具体化する金融商品または条件付債務を具体化する発行済株式以外の金融商品で,発行者は持分株式を発行して決済しなければならず,またはし得るもので,はじめにその債務の金銭価値が,○a固定金銭価額,たとえば発行者の持分株式により決済できる債務,○b発行者の持分株式の公正価値以外のあるものの変動額、たとえば発行者の持分株式により決済できる,S&P500に指数化された金融商品,または○c発行者の持分株式の公正価値の変動に正反対に関連する変動額,たとえば,純額株式決済できる引受プットオプションに基づくもので,その条件中の要素の決済時までの変動によって,決済すべき株数が変動するものをいう。

 

公認会計士法改正案、可決・成立

 さる5月30日、公認会計士法改正法案が参議院本会議で可決・成立し、6月6日に公布された(法律第67号)。公認会計士法は、昭和23年に制定され、その後昭和41年の監査法人制度導入などの大改正以来、実に約40年ぶりの抜本改正となった。

 なお、本改正の概要は以下のとおり。

 1 総則

 @ 公認会計士の使命及び責任

 今まで規定のなかった、職業専門家としての使命や公益性の根拠が法律上明文化された。

 A 公認会計士の資格

 公認会計士試験に合格し、業務補助等の期間が2年以上であり、かつ実務補習が修了し内閣総理大臣の確認を受けた者は公認会計士の資格を有することとし、また新試験制度の導入にともない会計士補の資格を廃止することとした。

 2 公認会計士試験等

 公認会計士試験を短答式と論文式の1段階2回の試験とし、試験科目を改めた(短答式:財務会計論、管理会計論、監査論、企業法、論文式:会計学、監査論、企業法、租税法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうち1科目))。また、短答式・論文式でそれぞれ試験科目の一部免除制度を設けた。

 3 公認会計士の義務及び責任

 @ 大会社等に係る業務の制限の特例

 ・監査証明業務と非監査証明業務の同時提供の禁止

 ・監査人の原則7年間での交代制

 ・単独監査の禁止

 A 公認会計士の就職制限

 公認会計士は、会社等に対し監査証明業務を行なった会計期間の翌会計期間終了までの間は、当該会社等の役員等に就いてはならないこととした。

 4 監査法人

 @ 設立等の認可制から届出制への変更

 A 指定社員制度の導入

 監査法人は、特定の監査証明業務について、業務担当社員を指定することができ、指定された監査証明については指定社員のみが業務を執行する権利を有し、義務を負うとともに監査法人を代表することとなり、指定証明に関し非監査会社等に対し負担することとなった監査法人の債務をその監査法人の財産をもって完済できないときは、指定社員のみが無限連帯責任を負うこととした。

 B 規制緩和

 広告規制の撤廃、監査法人の会計年度の弾力化等が認められた。

 5 公認会計士・監査審査会

 公認会計士審査会の名称を「公認会計士・監査審査会」に改め、@公認会計士等の懲戒処分、A監査法人の処分に関する事項の調査審議、B公認会計士等の監査証明業務ならびに日本公認会計士協会の事務の適切な運営を確保するために行なう行政処分についての内閣総理大臣への勧告、C公認会計士試験の実施、などの業務を行うこととした。

 なお、本法律は平成16年4月1日より施行される(ただし試験制度関係は平成18年1月1日施行)。

 

企業会計基準委員会、時価評価凍結・減損会計延期に関する緊急検討の審議結果を公表

 企業会計基準委員会は、6月13日付で「有価証券の時価評価・強制評価減及び固定資産の減損会計の適用に関する緊急検討の審議結果について」を公表した。

 有価証券の時価評価・強制評価減の選択性の導入については、すでに適用されているものであり、市場への情報開示に会計基準が担う役割を犠牲にする十分な意義を見出せない、また減損会計の適用延期についても、会計基準の設定プロセスに対する市場関係者等の信頼を損なう、ということから、いずれもその採用を見送った。

 なお、本審議結果については、本号173頁以降に全文を掲載している。

 

日本経団連、「商法施行規則による株式会社の各種書類のひな型」を公表

 日本経団連は、さる5月27日上記ひな型を公表した。

 これは、近時の度重なる商法改正に対応し制定・改正された商法施行規則を受け、改訂の要請の強かった経団連ひな型を見直したものである。

 なお、本号では139頁以降に全文を掲載するとともに、そのポイントについて97頁以降で解説している。

 

日銀,資産担保証券で中小企業の支援を強化

 日本銀行は6月の金融政策決定会合で、資産担保証券の購入方針を決めた。7月末までに買入が実施される。これにより、中小企業の資金繰りを支援したい政府の政策が日銀によって補強される。

 資産担保証券とは、いわゆる証券化商品である。日銀が想定する資産担保証券の仕組みは次のとおりである。まず、資産担保証券と呼ばれる社債(もしくはCPすなわちコマーシャルペーパー)を公募形式で発行する。その一方で、中堅中小企業(資本金10億円未満の会社で、正常先に分類されている企業)向けの貸付債権や売掛債権などを多数集め、そこから得られる利息と元本の返済金を資産担保証券に対する元利金の支払いに充当する。

 この日銀が購入する資産担保証券にはいくつかの条件が付いている。まず、大企業向けの債権等が入ってもいいが、あくまでも中堅中小企業向け関連の債権が50%以上でなければならない。格付けは複数の格付機関からBB格以上(CPの場合はa ‐1格)を取得していること、発行から満期までの期間が3年以内の証券であること、国内で発行された円建て証券であることも必要である。

 以上の措置は2005年度末までの時限措置であり、当面の購入額は1兆円である。

 今回注目されるのは、格付けの要件がBB格にまで緩和されている点だろう。日銀の購入対象となっている株式の要件がBBB以上であることからすれば、今回は思い切った措置を打ち出したと評価できる。また、日銀自身が、民間の金融資産を満期まで保有する目的で買い入れるのは初めてである。

 日銀や経済産業省は中小企業の金融政策に注力を始めていた。その切り札が証券化商品である。経済産業省は、信用保証協会、政府系金融機関、民間金融機関などの情報に基づいて中小企業庁が立ち上げた「中小企業信用リスク情報データベース(CRD=Credit Risk Database)」を活用し、中小企業向けの証券化商品の普及を模索している。CRDを使えば、証券化商品の信用リスクが統計的に把握できるとする。

 民間金融機関が中小企業に資金提供をし、その一方でCRDを用いてその債権を証券化することで、資産担保証券として発行した社債を日銀に購入してもらえれば、中小企業の金融に新たな道筋をつけることができる。この意味で、今回の日銀の政策は画期的な意味を有している。

 

東証、3月期決算会社の株主総会の集中度合を公表,今年は調査開始以来最低の68.1%

  東証は、6月13日、東証第一部、第二部、マザーズに上場する3月期決算会社1,723社(市場第一部1,268社、第二部431社、マザーズ24社)の定時株主総会の開催日を集計し、公表した。

  例年、3月期決算会社の定時株主総会の開催が集中するのは、6月最終営業日の前営業日であり、今年(6月27日(金曜日))も1,174社(全体の68.1%)が定時株主総会の開催を予定し、引き続き顕著な集中状況を示している。しかし、集中度合は平成8年以来8年連続で減少しており、今年は前年比で8.3ポイント減少している。なお、定時株主総会の開催日に係る集計を開始した昭和58年以降、今年が最低の集中割合となっている。これまでの最低の集中割合は昭和58年3月期の70.1%であり、最高は平成7年3月期の96.2%であった。

 また、最も早く定時株主総会を開催したのは、市場第一部のステラケミファ梶i6月10日開催)である。

東証、3月期決算短信の集計結果を発表、前期の企業業績は大幅改善

 東証は、6月10日、平成15年3月期決算短信(連結・単体)の集計結果を発表した。連結決算短信の集計対象会社数は、平成15年3月期に連結決算短信を発表した1,572社のうち、銀行業、証券業、商品先物取引業、保険業、その他金融業および平成14年4月以降の新規上場会社等の196社を除く、1,376社である。その概要は、以下のとおりである。

 まず、経営成績をみると、売上高は425兆318億円(前期比+0.83%)と小幅ながら増収となった。一方、利益面は、営業利益が21兆1,446億円(+27.59%)、経常利益17兆3,828億円(+56.22%)、当期純利益5兆4,767億円(黒字転換)と、大幅な増益となった。製造・非製造別でみると、製造業では、売上高が前期比+2.68%と小幅増収に転じるとともに、営業利益+49.93%、経常利益+98.36%、当期純利益+2773.03%と大幅な増益を記録した。非製造業では、売上高が前期比−1.39%と2期連続の小幅減収となったが、営業利益が+7.08%、経常利益+19.74%、当期純利益の黒字転換と収益は改善した。

 次に、財政状態をみると、総資産が474兆5,820億円(前期比−3.11%)、株主資本140兆4,072億円(−2.02%)とともに減少したが、株主資本比率は29.59%(前期29.26%)と若干改善した。製造・非製造別でみると、総資産は非製造業(前期比−3.74%)が製造業(−2.57%)よりも減少したが、株主資本では製造業(−2.57%)の減少が非製造業(−0.96%)を上回った。

 収益関連指標をみると、総資本経常利益率は3.60%(前期比+1.35ポイント)、株主資本当期純利益率(ROE)は3.87%(+3.92ポイント)と、大幅に改善した。製造・非製造別でみると、総資本経常利益率は製造業3.91%、非製造業3.24%であり、株主資本当期純利益率は製造業4.16%、非製造業3.31%と、いずれの指標も製造業が上回った。

 

日米租税条約,全面改定へ基本合意

 日米租税条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約――昭和47年条約第6号)の改正については,平成13年10月から両国間で交渉が行われてきたが,さる5月27日〜6月3日,ワシントンにおいて,新租税条約の締結に係る第4回交渉が行われた結果,基本合意に至った。

 今回の改正は,およそ30年ぶりに行われるものであり,この間の両国の社会経済情勢の変化等を踏まえて,現行条約の内容を全面的に改めるものである。

 基本合意された内容は,OECDモデル条約を基本としつつも,戦略的パートナーである日米両国の緊密な経済関係を反映して,積極的に投資交流の促進を図り,

併せて租税回避の防止のための措置をとるものとなる。

 新条約においては,日米間の配当,利子および使用料の支払における源泉地国課税(源泉徴収税率)が大幅に引き下げられ,特に使用料,一定の親子間配当および一定の主体の受け取る利子については源泉地国免税となる。

 今後,両国政府部内における必要な手続を経た上で署名が行われ,条約の内容が確定することとなり,その後,国会での審議を経た上で,新条約が発効することとなる。

政府税調,中期答申をとりまとめ総理に提出

 政府税制調査会(首相の諮問機関,会長:石弘光一橋大学学長)は,昨年6月に「あるべき税制の構築に向けた基本方針(基本方針)」をとりまとめ,中長期的視点から持続的な経済社会の活性化を実現するためのわが国税制のあるべき姿の全体像を示し,平成15年度税制改正では,その第一歩としての種々の改正が行われた。

 本年1月には,小泉内閣総理大臣から政府税制調査会に対し,平成15年度税制改正の成果を踏まえ,「基本方針」で示した考え方のうち,少子・高齢社会を支える税制などの課題について,さらに検討を深めるようにとの指示があり,「少子・高齢化と税制」,「地方分権と税制」,「金融・証券税制」などの課題に焦点を絞って審議が進められてきたが,さる6月17日に開催された第44回総会において,いわゆる中期答申「少子・高齢社会における税制のあり方」がとりまとめられ,同日,石会長から小泉総理に手渡された。

 企業関係では,概略,次のような記述がある。

 ■ 消費税

 ・ 平成15年度税制改正により信頼性・透明性が一層向上

 ・ 将来,歳出全体の改革を踏まえつつ,国民の理解を得て,二桁の税率に引き上げる必要

 ・ 税率引上げ時の検討課題

  ――食料品等への軽減税率の採用の是非

  ――仕入れにかかる「インボイス方式」の採用

  ――社会保障支出や社会保障負担との関係を明確に説明

  ――地方消費税の充実確保を図っていく必要

 ■ 法人課税

 ・ 国際的な整合性のとれた歪みの少ない中立的な税制を基本としつつ,構造改革・経済活性化のために必要な対応

  ――税率引下げは,経済状況,税負担水準や税体系全体のあり方との関連,先進国との税率のバランスを踏まえ,今後検討すべき課題

  ――多様な形態による事業・投資活動,民間非営利活動が円滑に行われるよう適正な課税を確保,公益法人についても適正課税を検討

  ――法人事業税の外形標準課税制度の定着に努めていくことが必要

 ■ 環境問題への対応

 ・ 環境問題に対する総合的な取組みの一環として,税制面での対応について幅広い観点から検討

 ■国際課税

 ・ 租税条約の新規締結・改正を推進,国際課税制度全般の見直し

 ■ 不良債権処理と税制

 ・ 繰延税金資産等の課題に対する金融行政,企業会計を含めた全体の対応策の一環としての税制面での対応

 

日本監査役協会、「補欠監査役の選任制度に関するQ&A集」をまとめる

 6月号本欄で既報のとおり「法務省民商1079号(4月9日付)」により定時株主総会における社外監査役補欠者の予選が認められた。

 これをうけ、今6月の総会では、ミサワホームホールディングス、明治乳業、東海パルプ、日本CMK等いくつかの企業で予選決議が予定されている旨新聞紙上で報じられており、今後予選決議を実施する企業が増えるものと予想される。

 日本監査役協会では、今般これら企業の動向に鑑み、実務対応を検討するうえでの疑問点などについて「補欠監査役の選任制度に関するQ&A集」をとりまとめた。すでに会員企業に対しては協会HPの会員サイトにて提示しているが、一般への公表については今後、同協会の機関誌である『月刊監査役8月号』(本年7月末発行)に掲載される予定。