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りそなグループ,実質国営化へ


 5月17日、政府は金融危機対応会議を開催、預金保険法102条に基づき、りそなグループに対する2兆円規模での公的資金の注入が決定された。グループは、りそな銀行、埼玉りそな銀行、りそな信託銀行、近畿大阪銀行、奈良銀行をかかえている。

 りそなグループは、大和銀行、あさひ銀行が中心となり設立した銀行グループである。あさひ銀行が埼玉銀行と協和銀行の合併により設立されていたことからすると、旧都銀3行によるグループだ。

 今回、公的資金の注入をもたらした直接の原因は、りそなの今3月末決算に対して、監査法人が税効果会計の適用を厳格化したことである。不良債権処理に対する税効果額の減少に加え、新たな不良債権処理や株式評価損の計上によって、グループ全体の自己資本比率が、国内行基準4%を割り込む見込みとなった。このため、りそなグループは公的資金の注入申請に追い込まれた。

 大手銀行への公的資金の注入は1998年、99年以来のことである。また、預金保険法に基づく特別支援の第1号となる。

 りそなグループには優先株や劣後ローンの形態で、すでに公的資金が1.1兆円注入されているが、その優先株を無配にすることもりそなの役員会で決定された。この決定を受けて政府がりそなの優先株を普通株に転換すれば、それだけで議決権の半分程度を保有できる。これに2兆円の公的資本が新たに加わることになり、りそなグループは実質国営化される。

 今後であるが、預金は完全保護が継続される。公的資本の実際の注入額は自己資本比率10%を目標に決定されるとみられ、資本面での健全性も増す。他方、既存の普通株の扱いについては決まってはいない。ただ、竹中大臣は減資を否定している。これは、他の銀行株への悪影響に配慮した発言だと受け止められている。

 りそなグループは大手銀行の中で最も体力がないとみられていた。それだけに、今回の影響は限定的だとの見方がある。その一方、すべての大手銀行に対して、税効果会計に見合うだけの収益性を銀行業務で確保できているのかどうか、疑問視する声が昨秋以来、強まっているのも確かだ。このことからすると、金融システム問題が新たな段階に入ったとの見方も可能である。