Accounting News

 

4月度理事会

 4月29日から5月2日までロンドンで開催。

・ 企業結合(第2フェーズ)

 損失は出資割合に応じて少数株主にも負担させることとし、損失が出資額を超える場合、すなわち債務超過の場合も同様とした。

・ コンバージェンス(他基準との統一化)

 IAS12(法人税)、16(固定資産)につきFASBとの差異を検討。

・ 採取産業にかかわる会計

 豪州などのプロジェクトチームによる資料をもとに基

準化への論点を整理。草案作成に向けて検討を継続する。

・ 金融商品(IAS32、39)の改訂

 IAS32:自己株式にかかわる契約の会計処理につきさまざまな場合を検討し、資本と金融商品とのいずれに該当するかを区分した。

 IAS39:全面的時価適用の選択肢を設けることの検討。公開草案に対する意見は賛否が分かれている。

・ 初回適用

 親会社のIFRSを適用済みの子会社に対する適用条件を修正。

・ 保険会計(第1フェーズ)

 IAS39と整合をとるため内容を見直し。今年の第2四半期内に公開草案を発表の予定。

・ 株式報酬会計

 公開草案ED2 に対するコメントを検討。

 

排出権に関するIFRIC公開草案公表

 国際財務報告基準解釈委員会(IFRIC)は排出権の処理にかかわる解釈指針を公表した。二酸化炭素など環境に影響を与える物質の排出が規制されている場合に、それらの排出権にかかわる会計処理を定めたもの。排出権の取得価額と公正価値との差額は政府補助金(IAS20に規定)に準じて処理するものとしている。コメントの提出は7月14日まで。

 

基準書第149号「派生商品およびヘッジ活動に関する基準書第133号の改訂」

 FASBは,さる4月に表題の基準書を公表し,6月30日後に締結しまたは変更する契約,および同日後に指定するヘッジ関係に強制適用するとした。

 この基準書は,他の契約中に組み込まれた特定の派生商品を含む派生商品(以下,集合的に派生商品という)ならびに基準書第133号「派生商品およびヘッジ活動に関する会計」のもとにおけるヘッジ活動に関する財務会計および報告基準を改訂し,明確化している。

 この基準書は,@基準書第133号の改訂を事実上必要とした派生商品導入グループの活動過程の一部として,A金融商品を取り扱う審議会の計画に関連して,また,B市場要素の変動に類似の反応をすると期待される他の種類の契約について要求されるよりも少ない初期純投資の意味,基礎となるものの意味,および金融の構成部分を含む派生商品の特徴に関して提起された導入上の問題に関連して,行った審議会の決定を反映して,基準書第133号を改訂している。

 この基準書は,@初期純投資を伴う契約がどのような状況のもとで基準書第133号で討議している派生商品の特徴に適合するかを明確にし,Aいつ派生商品が金融の構成部分を有するかを明確にし,BFASB解釈第45号「他者の負債の間接保証を含む保証に関する保証人の会計および開示の要求」中で使用した用語と一致させるために「基礎となるもの」の定義を改訂し,またC現存する他の公式見解を改訂している。その結果,同種の性格を持つ契約は同じように会計処理され,財務報告が改善されるとFASBは考えている。

 

FASB職員の見解」(FSP:FASB Staff Positions)

 FASB職員は,しばしばFASBの文書の適切な適用について構成員から質問を受けるが,その関係が広範囲に及ぶときは,特定の主題について職員導入指針(Staff Implementation Guide)を発行してきた。また,発生問題専門委員会の会合で意見表明を行ってきた。

 さる2月から,FASB職員は,その見解(FSP)を通じて適用指針を発行することにした。その手続きは,次のとおりである。

 FASB職員は,審議会委員にFSP草案を配布して見解を求める。委員の過半数が草案に反対しなければ,審議会の公開の会議中にFSP草案を公表し,それをFASBのウェブサイトに掲載し,30日を期限として公衆の意見を求める。その後最終版の草案を作成して審議会委員に配布する。委員の過半数が反対しなければ,FASBの文献として印刷発行するまでその最終版をウェブサイトに掲載する。

 意見は各FSPごとにEメールまたは郵送により提出するよう求める。ファックスは受理しない。

 5月14日現在,FASBのホームページには,「基準書第140号のもとで証券化して売却した債権に関連する発生利息債権の会計」の最終版と,解釈第46号「変動持分事業体の連結」に関連したFSP草案6本が掲載されている。

 

ASB、会計基準の国際的なConvergenceに対する姿勢を公表

 企業会計基準委員会(ASB)は、さる4月24日、会計基準の国際的なConvergenceに対するASBの姿勢について公表した。

 IFAD(会計開発国際フォーラム)から公表された六大国際会計事務所の編集による調査報告書「GAAP Convergence 2002」(以下、「報告書」)の内容が、Convergenceに対するわが国の姿勢について誤解を生じさせるものとなっており、同報告書により生じた国際社会からの誤解を正すために、ASBの見解を下記のとおり公表し、ASBの基本的な姿勢を改めて確認した。

 なお、この見解は、2003年4月22日のASBの審議を経て、2003年4月24日のIASB(国際会計基準審議会)とリエゾン国の会計基準設定主体との会議の席上にて配布されたものである。

IFAD Report「GAAP Convergence 2002」に、日本はConvergenceを予定していない3カ国(アイスランド、サウジアラビア、日本)の一つとして挙げられたが、これはわれわれの姿勢を正確に反映したものではない。この報告書における各国の方針の分類が必ずしも適切ではないために、日本と他の諸国との比較的小さな差異を徒に誇張する結果となっていることを残念に思う。日本では、会計基準開発において国際的調和をつねに念頭に置いており、IAS39号と同様の金融商品会計基準や、IAS19号と同様の退職給付会計基準を既に導入しているほか、多くの項目について国際基準と同様の規定を採用している。

■資本市場の国際的な統合と、会計基準を含む市場制度の国際統合とは、いうまでもなく表裏の関係にある。各国の資本市場が単一の市場に統合されるときは、市場のインフラもすべて統合されることになる。それが究極のゴールであることはわれわれも否定しない。われわれの考えでは、Convergenceとは望ましい究極のゴールである。Convergenceに向かって進むためには、市場参加者も含めた十分な議論と合意形成が必要である。したがって、われわれがどうしても納得できない事項についてまでConvergenceを優先するというコミットメントはできないが、その点は米国や欧州諸国においても同様であると理解している。

ASBJは、定款(寄附行為)上の目的の一つとして「国際的な会計基準の整備への貢献」を掲げており、Convergenceのための国際的な議論に積極的に参加するとともに、国内基準の改善のための最大限の努力を行っている。われわれASBJは、今後とも会計基準のConvergenceへの貢献と、IASBの基準とわが国の基準との調和の推進に最大限の努力を払うつもりである。

 

日本公認会計士協会、「Trustサービスに係る実務指針(中間報告)」(公開草案)を公表

 日本公認会計士協会IT委員会(以下、「協会」)は、5月19日付で「Trustサービスに係る実務指針(中間報告)」(公開草案)を公表した。

 同公開草案は、平成15年6月30日(月)を公開期限とし、広く意見を求めた上で実務指針として取りまとめられる。これは、平成14年9月4日付の諮問事項「当協会のIINへの加盟、及びTrustサービスのライセンス取得により、当協会としてTrustサービスに関する運用についていかなる対応をすべきかについて検討し、会員に必要な情報の提供をはかられたい」に基づいて同協会が検討したもので、Trustサービスを実施する際に遵守すべき事項をまとめたものである。

 また、同協会では、今後、会員がTrustサービスを実施するに当たって準拠すべき「Trustサービスの原則と規準」および「認証局のためのWebTrustの原則と規準」を翻訳し、公表する予定である。

 なお、同公開草案に記載されているように、会員がTrustサービスを実施するためには、同協会とTrustサービスのサブライセンス契約を締結することが必要となる。

 

日本公認会計士協会、業種別監査委員会報告第12号、13号の改正を公表

 日本公認会計士協会(以下、「協会」)は、4月15日付で業種別監査委員会報告第12号「特定目的会社の計算書類の様式及び監査報告書の文例」(以下、「報告第12号」)の一部改正について公表した。

 報告第12号の主な改正点は、平成15年1月31日付で公表された監査委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務指針(中間報告)」に対応させた点で、平成15年2月18日付総14第468号による諮問「業種別監査委員会報告第12号「特定目的会社の計算書類の様式及び監査報告書の文例」の見直しについて検討されたい」に対するものである。

 なお、報告第12号は、平成15年3月1日以降終了する事業年度から適用される。

 また、同日付で、業種別監査委員会報告第13号の改正「中小企業等投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」(以下、「報告第13号」)についても公表されている。

 これは、平成13年6月12日付総13第42号による諮問「中小企業庁から公示された「中小企業等投資事業有限責任組合会計規則」と「金融商品に係る会計基準」とで相違があるため、中小企業等投資事業有限責任組合の財務諸表における株式等の評価額を組合員(法人)の財務諸表に取り込む際にどのように取扱うべきか、また、ある程度の実務を経験した現時点において当初中間報告とされた業種別監査委員会報告第13号「中小企業等投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い(中間報告)」の見直しが必要か否かについて検討されたい」に対するものであり、今回の主な改正点は、旧業種別監査委員会報告第13号(改正・平成14年12月10日)の監査報告書の文例を、平成15年1月31日付で公表された「監査委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務指針(中間報告)」」に対応させたことである。また、この改正により、標題から中間報告が削除されている。

 なお、今回改正した報告第13号中の監査報告書の文例に関する部分については、平成15年3月1日以降終了する事業年度から適用される。

 

日本公認会計士協会,「公益法人委員会報告第20号「信用金庫等監査における監査報告書の文例」の平成15年3月期末からの取扱い」を公表

 日本公認会計士協会(以下、「協会」)は、4月15日付で公益法人委員会報告第20号「信用金庫等監査における監査報告書の文例」(以下、「報告第20号」)の平成15年3月期末からの取扱いについて公表した。

 信用金庫等の監査において、報告第20号を基に監査報告書を作成する場合は、平成15年1月31日付で公表されている「監査委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務指針(中間報告)」」の「W 商法監査における監査報告書」に準じて報告書を作成することを求めている。

 

経済産業省、新会計基準が経済・企業経営等に与えた影響についての実証分析に関する報告書を公表

 経済産業省は、さる5月6日、新会計基準の設定が、企業経営と経済システムに与えた影響に関する実証分析報告書を公表した。なお、概要は下記のとおり。

 1 調査目的

 経済産業省では、1998年から急速に設定・改訂が進められた企業会計基準について、これら新会計基準の設定が、わが国の経済・金融システム・企業経営にどのような影響を与えたかを定量的に評価するため、神戸大学須田教授ら6名の研究者と協同して、実証分析を行った。

 2 調査結果概要

 調査は3つに区分して分析され、下記の調査結果を得た。

 1 新会計基準の設定が証券市場に与えた影響

 @ 連結範囲の拡充と有価証券強制評価損の適用による市場流動性の向上

 2000年3月期決算企業1,056 社に対し、新会計基準導入後の期間における売買スプレッド水準を測定したところ、特に連結範囲の拡充と有価証券に対する強制評価損の適用が売買スプレッドの低下をもたらした。これらの会計基準によって、新会計基準設定後の期間における売買スプレッドはそれ以前の期間に比べて小さくなり、市場の流動性が高まったと考えられる。

 A 研究開発費会計基準の適用は研究開発型企業の株価への悪影響を及ぼした

 2000年度の研究開発額(連結ベース)が期首総資産の3%を超える研究開発型企業247 社について、研究開発費会計基準の公開草案が公表された1997年12月22日周辺の株価動向を調べたところ、研究開発費会計基準の公開草案が公表されたときに当該企業の株価は有意に下落。研究開発費会計基準の適用は、研究開発型企業の株価に対し悪影響を与えたといえる。

 2 新会計基準の設定が企業経営に与えた影響

 @ 退職給付会計基準の適用による研究開発投資への影響はない

 また、前述の研究開発型企業について、退職給付会計基準が企業の研究開発投資に与えた影響を調べたところ、退職給付会計基準が研究開発投資に有意な影響を与えたことを示す証拠は得られなかった。

 A 新会計基準の設定が株式の相互持合い解消を促進した

 昨年8月に実施したアンケート調査のうち、株式持合いについて有効な回答の得られた481 社について、新しい会計基準の設定と持合株式の放出に与えた影響を調査したところ、研究開発費会計と税効果会計の影響が小さいほど、また、連結会計と時価会計の影響が大きい企業ほど、統計的に有意に株式の相互持合いを解消しており、その後の当該企業の株価の動向を調べたところ、トービンのQ(企業の市場価値と企業の有する資産の買換費用の比)が有意に上昇していることが明らかとなった。企業は、持合株式を放出することによってマーケットリスクが企業業績に与える影響を抑制し、資産の利用効率を高めるよう、持合株式の放出を行っていることが明らかになった。

 B 時価評価基準の適用による社債契約条項の変化および負債コストの増加

 1996年1月から2001年9月までに起債された無担保社債1,779 銘柄について、時価評価基準の影響を調査したところ、財務上の特約は時価会計の公開草案の公表後に統計的に有意に減少した。また、有価証券の時価評価の影響が大きい企業の社債ほど、財務上の特約が設定されていない。

 また、公開草案公表後、特約を設定している社債の利率は変化していないものの、特約を設けていない社債については有意に増加したことから、有価証券の時価評価基準を設定することで、財務上の特約を設定する慣行は消え、起債会社は利率の増加という形で追加的なコストを負担したといえる。

 C 退職給付会計基準の適用とインセンティブ・システム

 昨年8月に行ったアンケート調査の中で、経営者報酬制度および従業員の成果配分制度を導入もしくは導入を予定している企業43社と導入しない企業289 社について、退職給付会計基準との関係を調べたところ、@退職給付会計基準の影響が小さい企業ほどインセンティブ・システムを積極的に導入している、A外国法人持株割合が高く、持合株式放出割合の大きい企業ほど、インセンティブ・システムを積極的に導入していることが分かった。インセンティブ・システムの構築に退職給付会計基準がネガティブな影響を与えたということを示している。

 なお、利益と経営者報酬の関係については、2000年以前は、個別財務諸表の利益が大きな説明力を持ち、連結会計中心の会計制度が導入された2000年3 月期以降は、個別財務諸表利益の相対的説明力が小さくなった。2000年3月期以降、経営者報酬制度で連結会計利益が活用されたことを示している。

 3 政府の規制に与えた影響

 @ 税効果会計基準の適用と銀行の自己資本比率規制

 上場している全銀行を対象に、1999年から2001年までの税効果会計実務を分析したところ、税効果会計は、銀行の不良債権処理を促進し、銀行は繰延税金資産の回収可能性を考慮しつつ、自己資本比率規制に抵触する可能性を見据えて繰延税金資産を計上していることが分かった。

 また、証券市場は、銀行が裁量的に計上した繰延税金資産を一般に資産として評価したが、自己資本比率の低い銀行が計上した繰延税金資産に対してはマイナスの評価を下した。繰延税金資産に対する証券市場の反応は,1999年から2000年および2001年について変化

し,時の経過とともにマイナスの評価を下すようになった。

 (研究者)

 須田一幸(神戸大学経済経営研究所教授),薄井 彰(早稲田大学大学院金融経済研究科開設準備室教授),音川和久(神戸大学大学院経営学研究科助教授),乙政正太(阪南大学経営情報学部助教授),首藤昭信(専修大学商学部専任講師),宮尾龍蔵(神戸大学経済経営研究所教授)

 

東証、上場会社に財務会計基準機構への会員加入を再要請

 東証は、4月28日、わが国の企業会計基準の整備を担う(財)財務会計基準機構からの会員加入の促進に向けた協力要請を受けて、未加入の上場会社に対して会員加入を求める通知を行ったと発表した。同財団の運営資金は、主に上場会社の会費で賄われているが、財務諸表を作成する上場会社の加入状況を見ると、全上場会社が利用する市場インフラであるにもかかわらず、34%の加入率に止まっていることを踏まえての対応である。東証からの要請文は以下のとおりである。

「『財団法人財務会計基準機構』は、民間機関が企業会計基準の整備において主体的な役割を担うことを目的とした『企業会計基準委員会』の運営母体として、平成13年7月に発足いたしました。

 本財団は発足して以来、財団内の中核機関である企業会計基準委員会において、市場参加者のニーズを踏まえたテーマを選定、常勤体制の下で迅速かつ透明性の高い開発プロセスを確立する、つまり資本市場参加者が自らの責任で開示ルールを開発し、自ら守っていくという設立趣旨を踏まえ、『自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準』といった会計基準や、『新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い』といった実務対応報告など、適時、適切に会計実務に係る重要な施策を精力的に作成してきています。まさに、わが国の会計基準が国際的な動向や財務諸表の作成者、利用者の声を反映して速やかに開発される体制になったことを実績において示しております。

 もちろん、このような機能を十分に発揮するには、企業会計基準の作成において主体的な役割を担える充実した組織と高い独立性をもった運営を安定的に行うことが必要であることは申し上げるまでもありません。

 私どもでは、本財団の運営に係る資金につきましては、会計基準を利用し財務諸表を作成する全ての公開会社が主体的に支えていくことが重要であると考え、本財団への加入を上場会社各位に繰り返しお願いしてまいりました。

 本財団設立の趣旨をぜひご理解いただき、会計基準を利用し資本市場に参加している関係者の一員としてその円滑な運営のため、一日も早く本財団の会員としてご参加賜りますよう私ども東京証券取引所からも重ねてお願い申し上げます。」