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金融商品〜負債および資本

 FASBは,2000年10月に公開草案「負債,資本または双方の性格を有する金融商品の会計」を発行してこの問題について意見を求めた。公開草案は負債の性格を持つ金融商品が資本勘定に含められたり,負債と資本勘定の間に表示されたりし,一方で資本の性格を持つ金融商品が負債と資本勘定の間に表示されたりすること,またその双方の性格を持つものが負債または資本に含められている問題に焦点を当てていた。

 FASBは昨年11月に,他の金融商品の分割と概念上の問題を解決するのを待たず,適時に必要な指針を提供することが望ましいとして,@資産の移転により決済する自社株式の再購入債務を組み込み,または指数化した金融商品,A強制償還株式およびB初期の確定額,または自社株式の公正価額以外のあるものの変動に基づいて発行すべき自社株式の株数が変動する債務を組み込んだ金融商品の会計に範囲を制限した最終基準書を、第2四半期に発行することを決定した。

 新基準書は,発行日後に創設され、または変更されるすべての契約および2003年6月15日後に開始する中間期の期首から適用する予定である。該当企業は,財務諸表を遡及修正せず,期首現在で会計原則の変更による累積影響額を示すよう要求されよう。

 新基準書は,独立している商品を対象とし,他の商品に組み込まれたデリバティブの分割には触れず,また,分類規定を適用する上で,実質的に重要でない特徴は無視することを求めよう。

 自社株式を再購入する先渡し契約で現金との交換による決済を要求されるものは負債を認識し,当初は決済時に支払うべき金額の現価により計上額を測定する。

 強制償還株式と先渡し契約により再購入する株式は,一株当たり利益計算目的上流通している(outstanding)株式と見なすべきではなく,またそれらに帰属させるべき配当金は,一株当たり利益計算上利息費用と考えるべきだとする。

 資産の移転により自社株式を再購入する債務の後の測定は,他の指針による要求のない限り,公正価額によって行う。また,償還日が確定しまたは決定できる場合には,強制償還株式の貸借対照表価額は,利息法を用いて帳簿価額を償還価額まで増額(accrete)していく。償還価額または償還日が不定である場合には,償還価額により測定する。ただし,新基準書採用時までの増額分は経過措置として認識しない。

 償還株式が強制償還株式になった場合には,その時点の負債を公正価額によって評価し,同額を資本勘定から減額して,損益には影響させない。

 基準書発行後FASBは,この計画中の残された局面である,転換社債などのような複合商品の負債・資本への区分の問題,非支配(少数株主)持分の取扱い,および概念書第6号「財務諸表の要素」中の,負債の定義の改訂などの問題の再審議に取り組む計画である。

 

日本公認会計士協会、監査人の交代に関する実務指針」(公開草案)等を公表

 日本公認会計士協会は、4月15日付で下記の公開草案を公表した。

 1 監査人の交代に関する実務指針(公開草案)

 監査人の交替における前任監査人とのコミュニケーションに関して検討した結果、「監査人の交代に関する実務指針」(公開草案)を公表し、広く意見を求めた上で実務指針として確定することとした。

 同公開草案についての意見は、平成15年5月30日(金)までに、下記電子メールまたはFAXにて受け付けている。

 2 会計監査人と監査委員会又は内部監査人との連携に関するガイドライン(公開草案)

 平成14年改正商法特例法によって新たに導入された「委員会等設置会社」において、監査役制度に代わって監査委員会制度を適用することとなったことに伴い、商法特例法に定める会計監査人と監査委員会との間の報告や説明等に関する業務の円滑な実施にとどまらず、相互の監査の質の向上とその効率化を図りかつ社会のコーポレート・ガバナンスへの支援要請に可能な限り応えるため、会計監査人と監査委員会または内部監査人との連携および相互補完はいかにあるべきかについて検討した結果としてまとめられたもので、今後広く意見を求めた上、実務指針として確定することとした。

 なお、本公開草案についての意見は、平成15年6月13日(金)までに、下記電子メールまたはFAXにて受け付けている。

 (意見受付先)

 担当事務局: 日本公認会計士協会

        リサーチ・センター調査第一課

 電子メール: chousa1 @jicpa.or.jp

 F A X: 03‐5226‐3355

 

「自己資本比率の算定に関する外部監査を「金融機関の内部管理体制に対する外部監査に関する実務指針」に基づき実施する場合の当面の取扱い」の公表

  日本公認会計士協会(業種別監査委員会)は、さる4月15日、業種別監査委員会報告第30号「自己資本比率の算定に関する外部監査を「金融機関の内部管理体制に対する外部監査に関する実務指針」に基づき実施する場合の当面の取扱い」(以下、「報告」)を公表した。

 同報告は、平成14年10月30日に公表された金融再生プログラムにおける「自己資本比率規制上の自己資本比率の算定を外部監査の対象とすることについて、法令上の手当を含めて検討する。」を受けて取りまとめられたものであり、主要行の自己資本比率の算定に関する外部監査を「金融機関の内部管理体制に対する外部監査に関する実務指針」に基づく「合意された調査手続業務」で実施することとし、その場合の留意点、報告書様式および実施にあたって着目すべき内部管理体制のポイント等を示している。また、当該業務の報告書をもって「金融再生プログラム」において求められた「資本の質の実態を見極めつつ、真の充実を図る」ための内部管理体制の整備、運用状況を把握し、自己資本比率算定の適正性確保や自己資本の質的充実に向けた経営管理に資することも期待する。

 なお、同報告は、平成15年3月31日以後に終了する事業年度から適用されるが、今後、自己資本比率の算定に関する欧米での取組みの動向や、金融監督当局等での検討を踏まえ、適宜内容の見直しをする予定となっている。

 

監査基準委員会報告書の改正等について公表

 日本公認会計士協会は、3月25日付で、下記の中間報告の改正等について公表した。

 1 監査基準委員会報告書第17号(中間報告)

  「中間監査」の改正

 平成14年12月改訂の中間監査基準や、すでに改訂監査基準への対応化を終えた他の監査基準委員会報告書に対応させるため、監査基準委員会報告書第17号(中間報告)「中間監査」を改正した。

 主な改正点は、改訂中間監査基準においてリスク・アプローチの明確化が図られたことに伴い、中間監査リスクの構成要素の相互関係を年度監査との比較により示すとともに、発見リスクの程度を4つに分類し、それぞれの程度に応じた実証手続の説明を加えることにより、中間監査に係る監査手続を明確にしたこと,また、継続企業の前提に係る規定を新たに設け、中間監査におけるその留意事項を示した。

 改正後の本報告書は、平成15年9月1日以後終了する中間会計期間に係る中間監査から適用される。

 2 監査基準委員会報告書第24号(中間報告)

  「監査報告」の公表

 改訂監査基準の「第四 報告基準」における基本的な用語等の解釈をはじめ監査報告に関連する留意すべき事項等について検討した結果を、監査基準委員会報告書第24号(中間報告)「監査報告」として取りまとめ公表した。

 改訂監査基準では、その前文三9にあるとおり監査報告に関し抜本的な改訂が行われ、監査基準の「第四 報告基準」として定められた。同報告書は、この「第四 報告基準」における基本的な用語等の解釈をはじめ監査報告に関連する留意すべき事項等を明らかにするものである。

 具体的には、監査報告の意義、二重責任の原則、監査の基準、合理的な保証、職業的懐疑心、財務諸表に対する意見、監査範囲の制約等の用語の意味するところを説明し、また、財務諸表の適正性を判断するに当たっての監査人の対応としては、実質的な判断を求められることから、これに関する規定を設けた。このほか、監査報告書等が本来の目的以外に使用された場合の監査人の対応等にも言及している。なお、同報告書は、平成15年3月1日以後終了する事業年度に係る監査から適用される。

 また、監査基準委員会では、改訂監査基準および改訂中間監査基準に対応させるための既存の報告書の改正や新規の報告書の作成を、これらの基準の改訂作業に併せて行ってきたが、既存の報告書については、第1号(中間報告)「分析的手続」から第19号(中間報告)「確認」まで18本の報告書(第2号(中間報告)「特記事項」は廃止)を改正し、また、新規の報告書については、第22号(中間報告)「継続企業の前提に関する監査人の検討」、第23号(中間報告)「企業の事業内容及び企業内外の経営環境の理解」、そして本報告書の3本を新たに取りまとめた。当初予定していた改訂監査基準および改訂中間監査基準へ対応させるための一連の作業は、本報告書の公表をもって一応終了することになる。

 今後、同委員会では、さらなる実務指針の整備に向け、監査の基準を構成する協会の監査に係る実務指針を明確にし、これらの実務指針の体系化(報告書番号の付け直しを含む)を行うことを予定。また、平成14年10月に公表された国際監査基準の公開草案「Audit Risk」が本年中に取りまとめられるのと並行して、第5号(中間報告)「監査リスクと監査上の重要性」や第21号(中間報告)「十分かつ適切な監査証拠」等関連する監査基準委員会報告書の見直しを進めるほか、国際監査基準の「統治責任者とのコミュニケーション」に相当する実務指針の作成を行うこととしている。

 3 討議資料「公会計概念フレームワーク」の検討結果について

  討議資料「公会計概念フレームワーク」は、国(一般会計、特別会計)、地方公共団体および独立行政法人等(独立行政法人、特殊法人、認可法人、地方公営企業等)に係る包括的な考え方と会計方法について検討した内容を取りまとめたものであり、前文である「「公会計概念フレームワーク」の検討結果について」、個別に行われた議論を列挙した「「公会計概念フレームワーク」に関する論点表」および議論の対象とされた「公会計概念フレームワーク」の3点から構成されている。

 わが国では初めて、公会計の概念フレームワークについての検討がなされたことから、同討議資料の検討過程においても構成員の意見が分かれ、結論を得るまでに至らなかった項目があることは、前文である「「公会計概念フレームワーク」の検討結果について」および論点表で紹介されている。今後、公会計の概念フレームワークについて議論を行う際に、同討議資料がベースとして利用されることを期待し、これらの論点表も併せて公表している。

 4 「金融商品会計に関するQ&A」の改正

 今回の改正では、満期償還日までの期間において元本の償還が行われる債券に係る償却原価法の計算方法を明らかにするためにQ&A24‐2を追加している。

 なお、本誌126 頁以降に全文を掲載しているので、参照されたい。

継続企業の前提に関する監査基準の改訂等に伴う「株券上場審査基準」等(新規上場申請者が提出する監査概要書関係を含む。)の一部改正について

 継続企業の前提に関する監査基準の改訂等および監査概要書の記載内容の変更に伴い、株式会社東京証券取引所の「株券上場審査基準」等が一部改正され(平成15年4月1日施行)、平成15年3月1日以後終了する事業年度および連結会計年度に係る監査報告書ならびに平成15年3月1日以後開始する中間会計期間および中間連結会計期間に係る中間監査報告書から適用される。

 

東証、平成15年3月期決算会社266社が第3四半期情報を発表

 東証は、4月1日、昨年12月末時点で東証に上場している3月期決算会社1,700社を対象に、平成15年3月期第3四半期情報(平成14年4月〜12月)の開示状況の調査を実施し、その調査結果を発表した。四半期情報としては、主に売上高、経営成績の進捗状況の開示している会社を集計対象にしたが、銀行業(85社)のように預貸金や債権残高等の財政状態の変動状況にかかる情報が四半期の動向を見る上で有用な業種については財政状態にかかる項目を四半期情報として開示している会社も集計した。今回の調査結果は以下のとおりである。

 第3四半期情報の開示会社数は266社と第1四半期よりも26社増加し、3月期決算会社に占める割合も15.6%と第1四半期より1.6ポイント上昇した。また、第3四半期末から四半期情報の開示までの所要日数は、35.5日(第1四半期比+1.8日)であった。

 開示内容としては、経営成績の進捗状況の開示が、開示会社266社のうち65.8%で行なわれた一方、財政状態の開示は88.7%であった。また、損益計算書での開示が51.9%、貸借対照表の開示が49.2%、キャッシュフローの開示が24.4%であった。

東証、早期事業再生ガイドラインの制定や産業再生機構法の施行に対応するために上場制度の改正要綱案を公表

 東証は、4月10日、早期事業再生ガイドラインの制定や産業再生機構法の成立を踏まえ、上場廃止基準の見直しを中心とした上場制度の改正要綱案を公表した。

 まず、早期事業再生のための上場制度見直し案は、早期事業再生の障害を取り除くことを主眼に置いた改正であり、4つの内容からなっている。

 上場廃止基準関係では、上場会社が再建のための法的整理・私的整理を必要とするに至った場合に、投資者保護のために設定した4つの前提条件(@上場維持を申請するとともに再建計画を開示すること、A100%減資を計画するものでないこと、B再建計画が認可されることが見込まれるまたは私的整理の場合には再建計画が成立したこと、C公益または投資者保護の観点から上場維持が適当と認められない状況にないこと)に適合し、かつ再建計画の開示日の翌日から1カ月間10億円以上の時価総額を維持した場合には、上場廃止しないというものである。

 また、会社分割への対応としては、上場会社が人的会社分割を行う場合であって、承継会社に上場契約を承継させようとすることを分割契約書または分割計画書に定めて上場廃止となるときには、当該承継会社の株券を簡易な上場審査手続きにより速やかに上場することができるというものである。

 あと2点は、上場前に会社分割を行っている新規上場申請者の設立後経過年数に係る上場審査基準の整備と、新規上場時における親会社情報の開示状況に係る審査要件の柔軟化である。

 次に、(株)産業再生機構関与事案に係る上場制度の見直し案は、魅力ある投資対象として再生することを支援する観点から、上場廃止基準と上場審査基準等に特例を設けるというものである。具体的には、@過剰債務を解消するために一時的に債務超過となった場合でも直ちに上場廃止とならないように上場廃止基準における債務超過基準に特例(猶予期間を1年間延長して3年)を設けるとともに、A速やかに再上場が可能となるように上場審査基準における「利益の額」の基準について特例(2年間または3年間の「利益の基準」は適用せず、最近1年間の「利益の額」が4億円以上)を設けるなどである。なお、猶予期間の延長に当たっては、再建計画を公表している会社を対象として、(株)産業再生機構による債権の買取り等の決定を証する書面と債務超過解消計画の前提となる事項等が監査人により検討されたものであることを記載した書面の提出を求めることとしている。

 今回の上場制度の改正は、パブリック・コメントの手続きを経て、4月下旬の施行を予定している。

 

厚生年金基金の代行返上とその影響

 厚生年金基金の運用利回りの低迷が続いているため、政府に代わって運用してきた公的年金資金の一部を返還する動き(代行返上)が顕著になってきた。最近の株価下落をもたらしている要因の1つが、この代行返上にともなう株式の換金売りだとみられている。

 厚生年金基金をはじめとする企業年金の運用利回りは、2000年に−9.8%と大幅に悪化した後、2001年に−4.2%となったのに続き、2002年も−12%と3年連続してマイナスになったと推計されている。これは年金資金の運用対象として3割程度を占める国内株式の下落によるところが大きい。

 年金の運用パフォーマンスがマイナスとなったことから、多くの企業は年金債務に対する準備金の積立不足に陥っている。大企業などは、政府が運営している厚生年金の掛け金の一部について、それを企業独自の年金部分に付け加えることで厚生年金基金としての形を整え、政府の年金資金運用を代行してきた。この厚生年金の代行部分も積立不足に陥っている。

 2002年4月に確定給付企業年金法が施行され、企業は厚生年金の代行部分を返上できるようになった。これにより、企業は基金を解散することなく代行返上できるようになった。ちょうど年金資金の運用パフォーマンスが極端に悪い時期と重なったため、代行返上を申請、認可される基金が急増している。また、基金そのものを解散する企業も増加している。

 2002年度の厚生年金基金の解散は過去最高の73基金に達した模様である。また、代行返上することを決めた企業は、今年度初にあった1653基金の3割以上、最終的には半分に達するとの見方もある。

 厚生年金基金が代行返上するには、運用していた有価証券の現物もしくは現金を10月以降、政府に返還することになる。現物で返還するには、国内株式は東証株価指数に、国内債券は野村證券が公表する指数に連動するような銘柄構成であることが条件となっている。

 多くの基金はこれらの指数との十分な連動性を欠いているため、資産を売却、現金化して代行返上しようとしているようだ。代行部分は約30兆円の資産規模があるため、現金での代行返上の動きが顕著になれば、証券市場に売却の圧力がかかることになる。債券市場はともかく、低迷が続き、買い手が不在とされる国内株式市場にとっては、大きな株価下落材料となる。

 政府サイドから厚生年金基金に対して、現物で返上するようにとの要請が出されたとの報道は、株価下落と代行返上との関連を懸念したからだとみられている。

 

日本監査役協会の監査法規委員会および会計委員会が報告書を発表

 日本監査役協会監査法規委員会および会計委員会は、それぞれ報告書『監査役から見た平成14年商法・商法特例法改正の捉え方――主として会社機関の選択制に関して』、『改訂監査基準への監査役の対応――会計監査人監査の方法・結果の相当性判断の一環として』を、さる4月10日にまとめた。

 なお両報告書は、同協会ホームページよりダウンロードできる。

補欠監査役認められる

 次期定時株主総会までの間に、死亡等により監査役が法令または定款に定める員数を欠くに至る場合に備え、定時株主総会で予め補欠監査役を選任し、死亡等により監査役が法令または定款に定める員数を欠いた時は、その選任されていた補欠監査役を監査役に就任させることができるよう、日本監査役協会から法務省民事局に要望していたところ、平成15年4月9日付法務省民商第1079号でこの補欠監査役が認められた。法務省民商第1079号は、同協会ホームページで閲覧できる。

日本監査役協会第2回Netアンケート実施

 委員会等設置会社を認める選択制が導入されたことを受けて、商法改正対応に関する会員会社の動向調査を実施した。同アンケート調査は、日本監査役協会のホームページを利用し、会員会社4,100社を対象としている。質問項目には、委員会等設置会社選択の如何、制度選択のポイントの他、監査役選任およびその同意権の行使等が含まれている。結果は、5月中旬に同ホームページに掲載される。