Accounting News

1月理事会

 1月22、23日の両日ロンドンで開催。金融商品に関するIAS32、39の改訂に向けた公開討論会への準備として、参加者への事前質問状案の内容を検討。さらに、以下の議題について討議した。

■企業結合(第2フェーズ)

 買収対価が非貨幣性資産によって支払われた場合、買収価額はその公正価値によることとした。また、本フェーズでの検討対象を100%買収の場合に限っていたものを、それ以外の場合も含めることに変更した。

■コンバージェンス(収斂)

・ 退職後給付:収益費用の表示方法につき、包括損益プロジェクトとの関連を図りながら検討。

・ 処分のために保有する資産:米国FAS144との協調を討議。

・ 政府補助金:現行のIAS20を廃し、米国FAS116、豪州UIG−11と協調する基準を作成することを考慮。当面はIAS41(農業)で規定したガイドによることで合意した。

■初回適用

・ 金融資産の認識の中止に関しIAS39の改訂前後で取扱いが異なる問題につき、現基準によることとするように改案。同基準改訂後に移行措置を検討する。また、複合金融商品の負債区分認識を負債部分が消滅していれば不要とした。

・ IFRS適用会社の連結子会社に対するIFRS移行時特例の規定を一部変更。

・ 固定資産の再評価にあたり認められる基準を追加した。

 今年第2四半期中には基準を公開する予定。

■保険契約

 保険契約にかかわる権利義務の測定に公正価値を適用する方向で検討を進める。第1フェーズとして金融商品に関する2基準(IAS32および39)の範囲でカバーできない部分を例外として認める。第2フェーズとして公正価値の適用による本格的な基準を作成する。

 

FASB解釈第46号「変動持分事業体の連結」

 FASBは,さる1月に会計研究公報(ARB)第51号「連結財務諸表」の連結範囲に関連して表題の解釈を発行した。ARB第51号は,他の会社の直接または間接支配持分を有する場合にはその会社を連結対象にしなければならないとしながら,支配持分を有する通常の条件は直接または間接に過半数の議決権持分を有することであるとしているため,この解釈は支配持分に関する規定を補足するものとして発行された。

 この解釈の範囲からは,非営利組織,従業員給付制度,登録投資会社,FASB基準書第140号の規定する適格特別目的事業体への譲渡人,生命保険会社の特別勘定などは除外されている。

 この解釈は,変動持分事業体(variable interest entity)の変動持分(variable interest)の過半数を有しているものを当該事業体の主たる受益者(primary

beneficiary)であるとした上で,主たる受益者は当該変動持分事業体を連結対象にすることを求めている。

 ここで,変動持分事業体とは,次のどちらかまたは双方の特徴を有するものをいう。

 1  リスクのある持分投資だけで,さらに他に劣後する財務的な(他の持分を通じてその事業体の予測損失の一部または全部を吸収するために提供される)援助なしにはその事業体が活動するに十分な資金調達ができないこと。リスクのある持分投資が予測損失より少ない場合がそれに該当する。また,その事業体へのリスクのある持分投資が総資産の10%に満たない場合には,十分な資金がないと推定される。

 2  その事業体に持分投資を行った者が,@議決権または類似の権利の行使によりその事業体の活動について意思決定をする直接または間接的な能力,Aその事業体の予測損失が実際に発生したときにはその損失を負担する義務,BAの損失を負担するリスクの補償として予測残余財産を受け取る権利のいずれか1つ以上を有しない場合

 変動持分事業体の変動持分とは,契約,所有または他の財務的取決めにより事業体の純資産の変動とともにその持分が変動するものをいう。変動持分事業体への持分(equity)投資に対応する持分(interest)は,議決権の有無を問わず変動持分となる。

 変動持分事業体の主たる受益者は,主たる受益者から移転した部分を除き,主たる受益者になった日現在における変動持分事業体の資産,負債および非支配持分を公正価額により測定し,その結果損失が発生するときは異常損失として直ちに認識し,利得が発生するときは企業結合の場合に準じて資産を減額する。

 この解釈は,ある条件のもとで,変動持分事業体の性格,目的および活動を含む,特定の開示を求めている。

 この解釈は,1月31日後に創設される変動持分事業体に適用される。また1月31日以前に創設した変動持分事業体の変動持分を有する公開会社は,6月15日後に開始する最初の四半期または年度の期首に適用される。なお,1月31日後に当初発行するすべての財務諸表に関して,経過措置としての開示要求がある。

 

企業会計審議会、新メンバー公表

 企業会計審議会(金融庁所管、新会長:加古宜士早稲田大学教授)は、さる1月16日、総会を開催し、組織編成を行った。審議会の新メンバーは下記のとおり。

企業会計審議会名簿(平成15年1月16日現在)

 

氏  名・現  職

(会 長)

加古 宜士 早稲田大学教授

(委 員)

安藤 英義 一橋大学教授

伊藤進一郎 住友電気工業鰹任監査役

引頭 麻実 大和証券SMBC潟Vニアコーポレートアナリスト

 奥山 章雄 日本公認会計士協会会長

 神田 秀樹 東京大学教授

 古賀 信行 野村證券且謦役副社長

 斎藤 静樹 東京大学教授

 島崎 憲明 住友商事鰹務取締役

 下田 卓志 鞄結桴リ券取引所常務取締役

 関  哲夫 新日本製鐵椛纒\取締役副社長

 辻山 栄子 武蔵大学教授

 友永 道子 公認会計士

 中村 芳夫 日本経済団体連合会専務理事

 平松 一夫 関西学院大学学長

 宮島  司 慶應義塾大学教授

 八木 良樹 鞄立製作所代表取締役副社長

 山浦 久司 明治大学教授

 脇田 良一 明治学院大学学長

(臨 時)

池上  玄 国際監査・保証基準審議会理事

(委 員)

遠藤 博志 日本経済団体連合会経済本部長

 加藤  厚 日本公認会計士協会常務理事

 黒川 行治 慶應義塾大学教授

 小宮山 賢 公認会計士

 西川 郁生 企業会計基準委員会副委員長

 万代 勝信 一橋大学教授

 森 金次郎 日本税理士会連合会会長

 山田 辰己 国際会計基準審議会理事

(専 門)

梅山  勉 且O井住友銀行財務企画部副部長

(委 員)

大日方 隆 東京大学助教授

 川村 義則 早稲田大学助教授

 逆瀬 重郎 鞄立製作所財務一部主管

 長坂 武見 ソニー褐o理部連結管理担当部長

 都  正二 企業会計基準委員会委員

(幹 事)

相澤  哲 法務省民事局参事官

 市川 育義 公認会計士

 金井 沢治 公認会計士

 松岡 寿史 公認会計士

 

日本公認会計士協会、公認会計士法改正等に対する意見について公表

  日本公認会計士協会(以下「協会」)は、さる2月25日,共同記者会見を開催し、下記の項目について公表した。

 ・ 公認会計士法改正に対する意見

 金融庁の提案の何点かについて、公認会計士のプロフェッショナルとしての権威を損なうものであるとし,その内容に修正を求めた。また、監査法人における社員責任の一部限定について、第三者責任についても、有限責任形態の早期導入を引き続き検討することを要望した。

 ・ 銀行等金融機関において貸倒引当金の計上方法としてキャッシュ・フロー見積法(DCF法)が採用されている場合の監査上の留意事項

 銀行等監査特別委員会報告第4号の規定に基づき、銀行等金融機関において貸倒引当金の計上方法としてキャッシュ・フロー見積法(以下「DCF法」という)が採用されている場合に、貸倒引当金の妥当性を判断する上での留意事項をとりまとめた。

 ・ 銀行等金融機関の正常先債権及び要注意先債権の貸倒実績率又は倒産確率に基づく貸倒引当金の計上における一定期間に関する検討

 協会(DCF等検討プロジェクトチーム)が、「金融再生プログラム」で示された金融機関の資産査定の厳格化に関する施策のうち、主要行において暫定的に定められている1年基準および3年基準問題について検討したもの。

 ・ 会長通牒「主要行の監査に対する監査人の厳正な対応について」

 金融庁が、平成14年10月30日に公表した「金融再生プログラム」で、新しい金融行政の枠組みの1つとしてあげた「資産査定の厳格化」、「自己資本の充実」、「ガバナンスの強化」の3点の施策として、「繰延税金資産の合理性の確認」と「外部監査人の機能」を示しているが、この諸点について、主要行の財務諸表監査担当者に対し、留意点を明らかにした。

 ・ 公開草案「再生計画の策定支援及び検証について(中間報告)(案)」

 民事再生法等により企業が作成する再生計画を検証するための調査研究を行った結果を、同協会(経営研究調査会)による、経営研究調査会研究報告公開草案として公開し、広く意見を求めている。なお、意見の提出は、平成15年4月30日が締切りとなっている。

 また協会は、さる2月18日、下記項目についての公表を行った。

 ・ 非営利法人委員会報告第24号「公益法人監査における独立監査人の監査報告書の文例」

  平成14年1月に、企業会計審議会から公表された「監査基準の改訂に関する意見書」の趣旨を踏まえたものである。

 ・ リサーチ・センター審理情報〔19〕「包括的長期為替予約のヘッジ会計に関する監査上の留意点」

 現存する包括的な長期為替予約取引について、ヘッジ会計の適用に当たり監査上留意すべき点についてまとめたもの。

 さらに協会は、1月31日付で平成14年1月の監査基準改訂に対応して改められた監査報告書の作成についての実務指針である監査委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務指針(中間報告)」を公表している。

 

続く予定利率引き下げ議論

 保険契約の予定利率引き下げが論議されている。

 保険契約に組み込まれている予定利率は、保険料を算出するための基礎数値の1つである。保険会社は払い込まれた保険料を運用し、投資収益を得るわけだが、その投資収益率を予め見込んで保険料が算出される。この見込まれた投資収益率が予定利率である。予定利率が高い(低い)と保険料は安く(高く)なる。

 生命保険の場合、予定利率は長らく4%であったが、審議会の要請もあり、昭和50年頃からバブル期に至るまで引き上げが続き、最高6.25%にまでなった。当時、金利は低下傾向だったが、株価が堅調だったので、この高い予定利率が問題となることはなかった。平成に入り、バブルが崩壊して高い予定利率が問題となった。

 現在、超低金利と株価下落が続いているため、投資収益率は予定利率に達しない。いわゆる逆ザヤの状況である。逆ザヤの額は、生保業界全体で年間1兆円から2兆円の間だとみられる。この逆ザヤが解消するには、市場金利の上昇を待つか、予定利率を引き下げるしかない。しかし、予定利率の引き下げは保険契約で定められた債務を保険会社が不履行すること、すなわち経営破綻に等しい。

 平成7年以前の旧保険業法には、監督庁の命令によって予定利率を引き下げられるとの条文があった。改正後、その条文は消滅した。昨年末頃からの論議は、法律により、保険会社が経営破綻する前に予定利率を引き下げられるようにすべきかどうかについてである。また、予定利率の引き下げが監督官庁の命令等によって一斉になされるべきか、個別会社の判断に委ねるべきかの議論は、旧業法の条文を意識したものである。

 次に問題になるのは、個別会社の判断だとして、その手続きである。株主総会に相当する総代会の特別決議と、引き下げ対象契約者の圧倒的多数の賛成が条件になると考えられている。当然、保険契約に劣後する基金(株式会社の株式に相当)や劣後ローンがどの程度の損失を負担するのかも考える必要がある。しかし、それらの資金の相当部分が銀行によって供給されていることからすれば、銀行システムへの影響も議論されなければならない。

 最後に、予定利率の引き下げ効果が契約当初にまで遡及するのかどうかであるが、この点は遡及しないことでほぼ合意されている。すなわち、過去の高い予定利率からの収益は契約者の既得権として保護されよう。

 予定利率引き下げ問題は一昨年の金融審議会によって中間報告されたものの、1年間放置されてきた。今回、金融庁は積極的であるが、一般の論調は依然として厳しい。法改正されるかどうかは、そのタイミングも含めて依然、微妙である。

 

東証、継続企業の前提に関する監査基準の改訂等に伴う上場制度の見直し案を公表

 東証は、2月18日、改訂監査基準および改訂中間監査基準が平成15年3月期および平成15年9月中間期から適用されることを踏まえ、「継続企業の前提」に関する経営者の評価を適時開示要件として追加するとともに、上場審査基準上の取扱いを明らかにすることなどを内容とした上場制度の見直し案を発表した。パブリックコメントの手続きを経た上で規則改正を行い、4月上旬を目途に施行する予定である。

 まず、上場会社に適用される適時開示要件の新設は、2つの内容からなる。1点は、上場会社は、「継続企業の前提」に重要な疑義を抱かせる事象または状況を認識し、当該疑義に関する事項を財務諸表等または中間財務諸表等に注記することを決定した場合は、直ちにその概要を開示するというものである。もう1点は、上場会社は、監査報告書または中間監査報告書において公認会計士等により「継続企業の前提」に関する除外事項を付した限定付適正意見が記載された場合には、直ちにその内容を開示するというものである。なお、不適正意見または意見を表明しない旨の記載がなされた場合には、上場廃止の対象となる。

 次に、新規上場申請会社に適用される上場審査基準では、直前期の監査報告書において、「継続企業の前提」に関する事項について無限定適正意見が記載されていることを要するというものである。直前期より前の期間に不適正意見等が記載されている場合や、直前期に無限定適正意見であっても追記情報が記載されている場合には、記載内容に留意して審査を行うこととしている。

 そのほか、市場第一部銘柄指定基準においても、上場審査基準と同様な見直しを行うとしている。