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平成15年度税制改正の評価と今後の課題

 

   1月17日、来年度税制改正の要綱が発表された。また、同日、政府税制調査会が本年最初の総会を開き、今後の税制改革のあり方に関する検討を開始した。
 これから国会に法案が提出される平成15年度税制改正の内容を概観するとともに、次なる改正に向けた課題について整理したい。


平成15年度税制改正の評価
 今回の改正では、法人税において研究開発税制の抜本的な拡充やIT投資減税の創設、中小企業税制の見直しにより1.3兆円に上る減税が盛り込まれた他、土地流通課税の見直し、相続・贈与税の見直し、証券税制の見直しにより、総額約1.5兆円の減税という大規模な税制改正となった。ただし、いずれも恒久的な制度改革とそれへの上乗せとしての時限措置が加味されている点が今回の改正の特徴である。また、地方税においては、大企業について平成16年度より法人事業税の外形標準課税が導入されることとなり、シャウプ税制以来50年にわたる懸案事項に決着がつけられた。今後、地方税の焦点は法人課税から所得課税へと移ることになろう。
 一方、平成15年度には、発泡酒などの酒税やたばこ税の引上げ、平成16年度には、消費税における免税点の引下げ、簡易課税制度の適用上限の引下げ、所得税における配偶者特別控除制度(上乗せ分)の廃止など増税項目も同時に予定されており、多年度では税収中立の構造となる。消費税引上げの前提となる制度整備が行われるとともに、所得税の課税最低限の見直しに向けた第一歩が踏み出されたわけで、今後の税制改革への布石となる改正である。
 一方、資産デフレへの対応として、土地流通課税については、国税、地方税ともに、大幅な軽減措置が設けられた。また、証券税制においては、ここ数年の改正で複雑になっていた制度が整理され、株式配当、譲渡所得、株式投信の収益分配金に対する税率が20%に統一され、平成15年4月1日以降5年間はさらに10%に軽減されることとなった(株式譲渡所得については平成15年1月1日から5年間)。
 相続税、贈与税については、抜本的な制度改革が行われた。まず、それぞれの最高税率が引き下げられるとともに、税率区分の拡大も行われた。また、生前贈与の円滑化、資産移転の時期に対する課税の中立性の確保の観点から、贈与税と相続税を一体として取り扱う相続時精算課税方式の導入も決定された。


税制抜本改革に向けた課題
 今回の税制改正には、経済活性化の観点からの措置と、今後の抜本改革の第一歩となる措置の両面が含まれている。特に、免税点の引下げや内税方式が明確にされた今回の改正は、近い将来の消費税率引上げを予感させるものである。社会保障財源としてのみならず、直間比率のバランスからいっても、わが国の財政構造改革の観点からいっても、基幹税として拡充が不可欠であろう。また、社会保障制度と関連するわが国の年金課税制度の見直しは、所得税の課税最低限引下げに直結する課題である。ただし、課税最低限の引下げにとどまることなく、所得税率構造のフラット化も必要である。
 この他、法人課税に関しては、政府税制調査会の小委員会で検討中の非営利法人に対する課税のあり方についての結論が待たれるところであり、その後には、組合などを含めた法人課税制度の再構築という大きな課題が控えていることを忘れてはならない。
 また、地方税においては、法人事業税の外形標準課税の導入にとどまることなく、国と地方の税源配分の問題にまで踏み込んだ地方税財源全体の見直しが検討されるべきである。

〈Y.O 〉