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ますます増加する国債発行額


  

  平成14年度の補正予算と今年度予算が固まってきた。これらの予算に組み込まれる大量の国債発行が市場関係者の注目を集めている。

 平成14年度、税収が当初予算額47兆円よりも2.5兆円不足の44兆円程度にとどまることと、景気対策のために補正予算が組まれる。この結果、新規国債の発行額(新規財源債)は、それを30兆円以内に抑制するとの政府目標が崩れ、35兆円近くに達する見込みである。

 15年度については、先行減税や景気低迷で税収がさらに減少し、42兆円程度でしかないと予想される。他方、歳出は82〜83兆円程度と見込まれる。税収で歳出の半分程度しか賄えない状況に陥るわけだ。この税収で賄えない額の大部分は国債発行に依存することになる。すなわち、来年度の新規財源債の発行額は36〜38兆円の範囲だろうと市場関係者は見積もっている。

 ところで、発行される国債は新規財源債だけでない。償還を迎える国債の借換えが必要になる。

 14年度、新規財源債と借換債を合わせた国債発行総額は134兆円、そのうち経過措置的に財投特別会計で消化される分と、郵貯、簡保、公的年金等で消化される分を差し引いた残りの約105兆円が市場で発行されることになる。来年度、この市場で発行される国債は115兆円程度になるものと予想される。昨年度に比べ、今年度に市場での国

債発行額が増加するのは、新規財源債に借換債の増加が足し合わされるからである。

 借換債の増加は来年度だけの問題ではなく、今後、より深刻になる。とりわけ2008年には借換えに必要な額だけで140兆円にも達すると予想されている。このため財務省は、今年2月から国債を市場から購入し、それを消却すると公表した。消却することで、2008年の要償還額を抑制しようとの狙いである。

 市場は、来年度に発行される国債の満期年限別の構成にも注目している。超低金利にある現在、また借換債の大量発行を避けるためにも、満期年限の長い国債が発行されるのではないかとの観測がある。昨年12月初め、10年以上の国債の金利が、それよりも短い年限の国債との対比で多少上昇気味に推移したのはこの観測のためである。

 いずれにしても、国債の大量発行は公社債市場の負担になりつつある。昨年の9月、当時証券市場全体が混乱気味だったとはいえ、新発10年国債の入札が札割れになった背景には国債の大量発行がある。10月末、日銀が金融政策を変更し、それまで毎月1兆円ペースで長期国債を買い入れてきたのを毎月1.2兆円に増額したのは、金融の一層の緩和と同時に、国債市場を安定化させる意図があったものと推察できる。