▽三角波△

会社の機関形態の選択について

 

  平成14年商法改正において会社の機関制度に関して、従来の制度に加え、新しい制度が導入され、平成15年4月1日からの施行となる。
 これまで、会社の機関は、最高の意思決定機関としての株主総会、業務執行機関としての取締役会および代表取締役、適法性の監査機関としての監査役の三つによって機能の分担と業務執行機関に対する牽制を図っていた。
 今回導入される新しい制度では、会社の選択により、従来の制度の枠内で新たな業務執行機関として「重要財産委員会」を設けたり、従来の制度とは全く異なる「委員会制度」と「執行役制度」をセットで採用することが可能となった。今3月期に係る株主総会から、各社は従来の制度と新しい制度との選択を迫られる。


▽重要財産委員会
 重要財産委員会は、業務運営の機動性を確保するための制度である。具体的には、取締役の数が10名以上(うち1名以上が社外取締役)の大会社(みなし大会社を含む)において設置が認められ、取締役3名以上で組織される機関である。重要財産委員会においては、取締役会の委任に基づき、重要な財産の処分または譲受や多額の借財についての決定をすることができる。
 しかし、新株や社債の発行、その他の重要な業務執行については、取締役会は重要財産委員会に権限を委譲することはできない。つまり、グループ経営の中での組織再編成や他の企業とのアライアンスの構築といった事項については取締役会の決議が従来と同様、必要となる。
 ここで問題となるのは、子会社の株式を売却し、当該子会社をグループから離脱させるような場合である。子会社株式の処分自体は、「財産の処分」として、重要財産委員会の権限の範囲に該当するように見えるが、グループの再編成につながることから、同時に、取締役会の決議事項である「重要な業務執行」にも該当する可能性がある。
 このような場合に、重要財産委員会が子会社株式の処分を行うことができるのかどうかが問題となる。また、仮に重要財産委員会の権限を超
えるとすれば、行われた処分の効力が問題となる。


▽委員会等設置会社
 委員会等設置会社は、大会社(みなし大会社を含む)において定款の定めをもって選択することができる制度であり、取締役3名以上(うち社外取締役が過半数)によって構成される監査委員会・指名委員会・報酬委員会が設置され、経営の基本戦略の決定と執行とを分離するため、執行機関としての執行役を必ず置くこととしている。取締役会自体と監査委員会とが業務執行の適法性のみならず妥当性についても監査を行うことから、従来の監査役は置かれない。また、執行役や取締役の責任は大半が過失責任である。各執行役については、その所掌を定めることとされていることから、従来の取締役のような連帯責任のリスクは回避される。また、利益処分は取締役会の権限とされている。このようなことから業務執行の機動性が従来の制度よりも確保されるというメリットがある。
 しかし第一の問題点は、利益処分の権限まで取締役会に委譲されたにもかかわらず、自己株式の買受については株主総会の決議事項のままである点は矛盾である。
 第二には、取締役と執行役の兼務は法律上認められているが、取締役は業務執行を行わないこととされている関係から、使用人兼取締役や使用人兼執行役が認められるかどうか不明である。従来、使用人兼取締役は多く存在していることから、これらの解釈が明確にされないと、委員会等設置会社を選択するにあたっての障害となるおそれがある。〈Y.O〉