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資産の減損と処分に関連する債務

 1996年にFASBが基準書第121号「長期性資産の減損及び処分する長期性資産の会計」の見直しに着手した時には,その議題に処分活動に関連する債務を含めており,2000年6月に公表した公開草案の表題も,「長期性資産の減損又は処分,並びに処分活動に関連する債務の会計」であった。しかし,公開草案への回答者の多くは,その中で提案された債務関連部分に同意しなかったため,FASBはその全体を遅らせずに基準書を分割して去る8月に基準書第144号「長期性資産の減損又は処分の会計」を発行した。残る部分については審議を継続し,2001年中には公開草案を発行する計画である。

 ここで取り扱う「処分活動」には,基準書第144号により非継続事業扱いになる長期性資産の処分と事業体の構成部分のほか,退出(再構築を含む)および従業員の解雇を含む。処分活動関連債務については,従来発生問題専門委員会で合意に達したEITF94‐3「活動から退出するための特定の従業員退職給付および他の費用(再構築により生じた特定の費用を含む)を認識する負債」が会計処理の指標になっていたが,その合意の中には,現在FASBが採用している概念の枠組み中の負債の定義を満たさない部分があったので,それを是正しながら新しい基準を設定しようとしている。

 認識するべき負債の範囲には,従業員に支払う割増退職金,現存する契約債務(オペレーティング・リースを含む)の解除により発生する費用,処分活動に関連する増分直接(その他の)費用を含む。一方,将来発生する生産設備の防護・維持費,生産設備の移転費,従業員の転居費用などは,対応する収益が見込めなくとも,過去の取引または事象の条件を満たさないため,負債の計上は認められないとしてきた。

基準書第4号の廃止

 基準書第4号「負債の消滅による損益の報告」は,1975年に発行され,早期償還であるかどうかを問わず,その帳簿価額と償還金額との差額が重要である場合には,関連税効果額を控除した純額を異常項目として表示するよう要求している。当時FASBは実務的かつ一時的な解決であるとしたのだが,第4号はそのまま持ち越されてきた。最近構成員から,負債の償還はその利率リスクの見合いで行われるものであり,異常項目の取扱いは財務諸表利用者に誤解を与えるとして再検討を求められ,議題に加えられた。FASBはこれに技術的訂正を含めるかどうかを含めて検討の上,2001年中に公開草案を発行し,2002年第一四半期中に最終基準書を発行する計画である。

 

改訂趣意書の公開草案発表

  IASBではIFRSの序文(趣意書・Preface)を新しい組織と目的に合致したものへの改訂を検討していたが、このほど公開草案を発表した。2002年2月15日を期限として草案に対する意見を求めている。

 改訂の主なポイントは次のとおり。

 ・ 適用範囲

  私企業のみならず、適用可能な内容は非営利法人や公的団体にも適用されるとしている

 ・ 字体の使い分け

  従来のIAS で使用されているブラックレターとグレイレターの使い分け(原則と特定の場合との区分のため)を廃する

    基準設定の手続

   IFRSおよび解釈指針の設定手続を規定

解釈指針委員会(SIC )最後の会合

  解釈指針委員会(Satanding Interpretations Committee 、SIC )がIASBの組織改正に伴って11月12、13日に最後の会合を行った。

 SIC は、IAS の適用にあたり基準よりも細部の指針を定めた解釈指針(Interpretations)を設定する機関であるが、来年から国際財務報告基準解釈委員会(International Financial Reporting Interpretations Committee 、IFRIC )に改組され、委員会の開催回数も年4回から6回に増加する。

 

ASBJ、「第1回テーマ協議会」を開催

 企業会計基準委員会は、さる11月1日、第1回テーマ協議会を開催し、今後の審議テーマ(案)の提言についての議論を行った。検討すべきテーマ案は、28項目あげられており、短期・中長期の検討課題として、レベル別に分けられている。ただし、このレベルは絶対的なものではなく、これからの検討次第で優先順位が変わることが十分予想される。また、同協議会は、年2回(7または8月、1月または2月)の開催が予定されており、国際会計基準の動きに対応し、迅速に基準化が進められるよう、的確な提案と意見交換を行っていく意向を表明した。

 なお、テーマ案及び優先順位案は以下のとおり。

審議テーマ案及び優先順位

短 期中 長 期

レベル1@平成13年度商法改正に伴う自己株式の取得・売却等に関する会計処理A連結納税制度の導入に伴う会計上の取扱いB退職給付制度に関する会計上の取扱いC減損会計に関する実務指針D固定資産会計(減損会計除く)Eストック・オプションの会計処理F企業結合に関する実務指針

@業績の測定と報告、開示様式の検討(収益の認識及び測定を含む)A基本概念の整理B会計基準の棚卸

レベル2@棚卸資産の会計処理Aリース取引の会計処理B金融商品会計関係Cワラント債及びCBの会計処理の検討D事業の種類別セグメントの事業区分の決定方法の改善

@無形固定資産の会計処理Aリース取引の会計処理B金融商品会計関係C引当金の会計処理D中間財務諸表と年度財務諸表の首尾一貫性の検討E「企業会計原則」の整備F「原価計算基準」の整備G非監査企業の会計基準適用の実態について


その他@株式持分変動計算書の検討Aゴーイング・コンサーンの開示基準

@過年度財務諸表の遡及修正の検討A商法計算書類規則と財務諸表等規則との関係の整理B四半期決算に係る検討C業種別の会計基準の研究

 優先とされるテーマ案のなかでも、レベル1‐短期@、A、Bは最重要とされ、早急に基準化が求められている。また、テーマ案のレベル2Aとレベル1‐中長期Aには、高い関心が寄せられ、とくにリース取引の会計処理については、固定資産の減損適用から考えられる、所有権移転外ファイナンス・リースのオンバランス化の検討と、IASBプロジェクトへの対応とするオペレーティング・リースのオンバランス処理等について、これからの議論が期待される。

テーマ協議会委員名簿

阿部 大輔(日本証券アナリスト協会事務局次長)

石井 泰次(東京証券取引所上場部長)

大日方 隆(東京大学助教授)

川北  博(静岡県立大学大学院講師)

川村 義則(早稲田大学専任講師)

佐藤 卓男(新日本監査法人代表社員)

佐藤 淑子(日本インベスター〓213Fリレーションズ協議会主任研究員)

高木  伸(全国銀行協会企画部長)

寺坂 元之(住友生命保険(相)常務取締役)

藤田 裕一(東京海上火災保険褐o理部課長)

万代 勝信(一橋大学教授)

向井 俊雄(三井物産褐o理部次長)

八木 良樹(鞄立製作所副社長)

山崎 彰三(監査法人トーマツ代表社員)

山田 浩史(松下電器産業褐o理グループ参事)

渡辺 天山(大和証券SMBC轄燒ア部長)

16名 五十音順)

※テーマ協議会議長は委員の互選。

 

東証、四半期財務情報の開示状況の調査結果を公表

  東証は、平成13年10月25日に平成14年3月期第一四半期(4月〜6月)における四半期財務情報の開示に関する調査結果を取りまとめ、公表した。

  今回の調査は、企業業績のすみやかな公表という観点から,四半期ベースによる財務情報開示に関する要望が高まってきており、また、本年8月8日に金融庁から公表された「証券市場の構造改革プログラム」の中でも、発行企業の株主重視の経営姿勢の確立に関する一項目として四半期開示の充実が掲げられ、四半期開示の普及とその内容の充実が喫緊の課題であることを踏まえたものである。

  調査対象は、東証上場の内国会社のうち3月期決算会社であり、TDnet (東証の運営する適時開示情報伝達システム)の登録内容に基づいて調査を行った。主な調査結果は以下とのおり。

  四半期財務情報の開示会社数は、平成14年3月期第一四半期では98社であり、本年6月末日現在の3月期上場会社(1,693社)の5.8 %であった。内訳は、市場第一部・第二部会社81社と、四半期開示が義務づけられているマザーズ上場会社17社となっている。なお、平成13年3月期第3四半期と比較すると、市場第一部・第二部会社では16社増加している。

  四半期財務情報を開示している98社の開示情報は、連結情報が80社、個別情報が69社であり、連結情報のみの開示会社は市場第一部・第二部会社に29社みられ

た。また、米国会計基準に基づいて開示している会社は

12社(平成13年3月期第3四半期比4社増加)であった。

  平均発表所要日数は、年度決算や半期決算と比較して内容が簡素となっている場合が多く、連結情報で31.9日、個別情報で32.2日であり、年度決算(連結情報50.3日、個別情報49.2日)や半期決算(連結情報50.9日、個別情報48.1日)よりも相当程度早くなっている。ただし、マザーズ上場会社に限ると、会計監査人による意見表明手続き(いわゆる「レビュー」)が義務づけられていることから、市場第一部・第二部会社よりも

総じて遅く、連結情報40.3日、個別情報40.6日であった。

  四半期の開示内容では、大部分の会社で四半期財務諸表等の要点を記載したハイライト情報(たとえば連結四半期情報開示会社の93.8%)や「企業集団の状況」・「経営方針及び経営成績」という定性的情報(同95.7%)も開示している。開示している財務情報の内容は、マザーズ上場会社には連結情報・個別情報とで四半期貸借対照表と四半期損益計算書の開示が義務づけられているが、市場第一部・第二部会社には特に統一した様式はないため、四半期損益計算書の開示に比べ、四半期貸借対照表の開示会社数の割合は若干低くなっている。また、四半期キャッシュ・フロー計算書の開示は、マザーズ上場会社にも義務づけられていないこともあり、開示会社の割合は低水準(たとえば連結情報開示会社の34.4%)であった。

  東証では、今回の調査結果を踏まえ、今後、望ましいと考えられる四半期開示資料の作成要領を取りまとめ、公表していく方針である。

 

政府税制調査会,来年度の税制改正に向けて審議開始

 政府税制調査会(首相の諮問機関,会長:石弘光一橋大学学長)は,さる11月20日,第18回総会を開催し,平成14年度の税制改正に関する答申に向けての審議を開始した。

 この日は,塩川財務大臣および小坂総務副大臣からの挨拶の後,来年度の税制改正について審議を行う際の前提となる経済情勢,財政状況および税収動向について事務局から説明が行われた。

 続いて,前回の総会以降に開催された基礎問題小委員会および税調と財政制度等審議会との合同会議の審議状況について,石会長より報告があった。

 さらに,所得課税および法人課税の現状について,事務局より説明があり,最後に,平成14年度税制改正における主要検討項目について,事務局より説明が行われ,その後,自由討議が行われた。

 (参考) 平成14年度税制改正における主要検討項目

 [検討に当たっての視点]

 [平成14年度税制改正]

 ・ 基本的考え方

 ・ 法人課税

   連結納税制度

   外形標準課税

 ・ 租税特別措置等の整理・合理化

 ・ 金融・証券関係税制

 ・ 資産課税

 ・ 酒税

 ・ その他

証券税制改正法案,参議院本会議で可決・成立

 さる10月30日に閣議決定され,同日に国会に提出されていた証券税制に係る国税関係の改正法案である「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」について,11月2日に衆議院本会議で財務大臣の趣旨説明と審議が行われ,財務金融委員会に付託された。11月6日には,衆議院財務金融委員会において提案理由の説明が聴取され,審議の後,賛成多数で可決された。同法律案は,11月8日には衆議院本会議で可決され,その後,参議院に送付された。

 参議院においては,11月9日の参議院本会議において,財務大臣の趣旨説明と審議が行われ,財政金融委員会に付託された。参議院財政金融委員会では,11月20日に提案理由の説明が聴取され,11月22日に審議が行われた後,賛成多数で可決された。11月26日には,本法律案は参議院本会議で可決・成立した。

 今回成立した「租税特別措置法等の一部を改正する法律」は,国民が安心して参加できる透明性・公平性の高い証券市場の構築に資する観点から,株式譲渡益課税について,申告分離課税の見直しを行うとともに,緊急かつ異例の措置として「緊急投資優遇措置」を講ずることとするものであり,その概要は,次のとおりである。

 一 申告分離課税の見直し(平成15年実施)

 1 申告分離課税への一本化

 源泉分離選択課税は,平成14年12月31日をもって廃止する。

 2 上場株式等に係る申告分離課税の税率の引下げ

 平成15年1月1日以後に上場株式等を譲渡した場合の税率を,現行の20%(個人住民税含め26%)から15%(個人住民税含め20%)に引き下げる。

 3 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除制度の創設

 平成15年1月1日以後に上場株式等を譲渡したことにより生じた損失の金額のうち,その年に控除しきれない金額については,翌年以後3年間にわたり,株式等に係る譲渡所得の金額から繰越控除を認める。

 * 平成13年9月30日以前に取得した上場株式等に係る取得費の特例の創設

   平成15年1月1日から平成22年12月31日までの間に譲渡をした上場株式等で平成13年9月30日以前に取得したものの取得費については,選択により,平成13年10月1日における価額の80%相当額とすることができる。

 二 長期(1年超)保有上場株式等に係る特例

 1 暫定税率の特例の創設

 平成15年から平成17年までの間に1年超保有の上場株式等を譲渡した場合の税率を,上記(15%)にかかわらず,7%(個人住民税含め10%)とする。

 (注) 暫定税率の適用がある場合には,新規公開株式に係る課税の特例の適用を停止する。

 2 100 万円特別控除の特例の延長

 長期(1年超)保有上場特定株式等の譲渡所得に係る100 万円特別控除の特例について,その適用期限を平成17年12月31日まで延長する。

 三 緊急投資優遇措置

 個人が,改正規定の施行の日以後平成14年末までの間に購入した上場株式等を,平成17年から平成19年までの3年間に譲渡した場合において,その購入額の合計額が1,000 万円に達するまでのものに係る譲渡益については,一定の要件の下,非課税とする。

 

ストック・オプションの整備、会社関係書類の電子化等を盛り込んだ商法改正法案が成立

  さる11月21日、「商法等の一部を改正する法律」および「商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」が参議院本会議で可決・成立した。

 今回の改正は、これまでのストック・オプション制度を「新株予約権」として整備し、付与対象・付与上限を撤廃することとし、また株主総会の召集通知や議決権の行使をインターネットでも可能とする等企業経営に大きな影響を与えるものといえる。

 改正商法の施行は、政令により定めることとされているが、2002年4月を目指すこととされている。

 なお、改正商法の概要は、本号巻末の(資料)にある法律案要綱を参照のこと。

 また、この法律案の成立に際し、衆参ともに以下の付帯決議が付されている。

●衆議院・法務委員会

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

一 ストック・オプションの目的である株式の付与の上限及びストック・オプションの付与対象者の制限の撤廃に伴い、株主の利益が損なわれることのないよう、ストック・オプションを付与することを必要とする理由の開示に際して、十分な情報公開の必要性があることについて周知徹底に努めること。

二 ストック・オプションに係る税制について、税の

公平性・所得の捕捉可能性等を踏まえて整備すること。

三 会社関係書類の電子化・計算書類の公開制度の電子化等の導入に伴い、会社等が用いる電磁的方法の信頼性・安全性の確保に向けて努力すること。

四 株式会社の大多数を占める小規模会社における計算書類の公開制度が必ずしも十分に実効性を上げていない現状にかんがみ、公開制度に係る今回の改正が実効性のあるものとなるよう努めること。

●参議院・法務委員会

 政府は、本法の施行に伴い、次の事項について格段の配慮をすべきである。

一 ストック・オプションの付与対象者及び付与できる株式数の制限の撤廃に伴い、会社による株価操作、インサイダー取引等が行なわれないよう監視体制を一層整備するとともに、株主以外の者に新株予約権を有利発行する場合には、これを必要とする理由を開示することが株主保護の観点から重要であることについて、周知徹底を図ること。

二 ストック・オプション制度に係る税制については、税の公平性・所得の捕捉可能性等を踏まえて整備すること。

三 会社関係書類の電子化、計算書類の公開制度の電子化等の導入に伴い、会社等が用いる電磁的方法の信頼性・安全性の確保に努めるとともに、個人情報の保護に十分留意するよう周知徹底を図ること。

四 株式会社の大多数を占める小規模会社においても、計算書類の公開の制度趣旨が十分理解され、その実施が図られるよう、その趣旨の周知徹底を図るとともに、この制度を定着させるために必要な環境整備に努めること。