▽三角波△

証券税制改革の中での

特定口座制度の見直し

 

 

  来年度税制改正の中で、注目される課題の一つに証券税制が挙げられる。一時は日経平均が8,000円に迫るという厳しい状況の中、株式市場の活性化、ひいてはデフレ対策として、証券税制が注目されている。しかし、証券税制についてはここ数年、相次いで改正が行われ、さまざまな特例措置も講じられていることから、今回の改正では、その簡素化も含め、抜本的な見直しが必要である。その観点からは、金融商品に係る利子・配当・譲渡益課税の一律化や、株式と株式投資信託の譲渡損益の通算、さらには、利子、配当、譲渡損益との通算という方向性を打ち出す必要がある。一方で、9月から開設受付が始まった「特定口座」をめぐる問題にも対処していく必要がある。

最近の改正
 平成11年度税制改正において、源泉分離課税方式を平成13年3月末をもって廃止することと併せ、有価証券取引税、取引所税が廃止された。しかし、平成13年度税制改正では、廃止の期限が平成15年3月末に延長された。
 また、平成13年4月の緊急経済対策の一環として、長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度(100万円の特別控除)が創設された(平成13年10月1日〜平成15年3月31日、平成13年11月改正で平成17年12月31日まで延長)。
 ところが、平成13年11月改正において、源泉分離課税方式を平成14年12月31日をもって廃止することとされる一方、一定の株式譲渡益に係る税率の特例措置および譲渡損失の繰越控除制度が創設された。あわせて一定の上場株式等を譲渡した場合の非課税措置(緊急投資優遇措置)も創設された。
 さらに、平成14年度税制改正において、申告分離課税方式への一本化をふまえ、証券会社に設定した「特定口座」を通じて行われる一定の株式の譲渡についての、源泉徴収不要の特例などの措置が講じられた。


特定口座制度の問題点
 特に、平成15年1月から株式譲渡益課税が申告分離課税に一本化されることに伴い、投資家の申告負担を軽減するため、特定口座制度が導入されることとなったが、わかりづらいということの他にもいくつかの問題点が指摘されている。
 たとえば、特定口座内株式の売却の都度、特定口座内調整所得金額を算定し、毎月源泉徴収税額を算定納付するしくみがとられ、多く徴収された所得税は、その月に源泉徴収された金額を限度として還付されることから、還付申告が必要となる場合も生じる可能性がある。源泉徴収税額を年間分を一括して国庫納付するしくみとする必要があるのではないか。
 また、平成4年末以前に取得した株式を特定口座に移管する場合、一律に「みなし取得価額」が適用するしくみがとられているため、バブル期に高値で購入した株式を特定口座に移管した場合には、取得価額が下がってしまうことになる。一定の株式については平成4年末以前に取得したものについても実額での移管を認めるべきではないか。
 特定口座を利用し、申告を行う必要のない場合、その株式譲渡益は、所得税では,配偶者控除等の適用判定に影響を及ぼさないが、住民税では加算され、影響が出る点が懸念されている。住民税の取扱いも所得税に合わせるべきではないか。

〈Y.O〉