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 基準書第147号「特定の金融機関の取得」

 FASBはさる10月に表題の基準書を発行し,取得日が10月1日以降の取得に適用した。基準書第72号「銀行または貯蓄貸付機関の特定の取得に関する会計処理」ならびにFASB解釈第9号「買収法で会計処理する企業結合により貯蓄貸付組合または類似機関を取得したときのAPB意見書第16および17号の適用」は,金融機関の取得への買収法の適用に関する解釈指針を規定したが,同基準書は,その適用対象を複数の相互企業間の取引に限り,他の金融機関の全部または一部の取得は,基準書第141号「企業結合」および同第142号「暖簾および他の無形資産」に従って会計処理するよう求めている。10月1日現在の未識別無形資産は,同日または第141号採用日のどちらか遅い日現在でのれんに振り替え,その後は減損対象として償却を停止する。

 同基準書はまた,第144号「長期性資産の減損又は処分の会計」を改訂し,その範囲に預金者・貸付先関係無形資産およびクレジットカード保有者無形資産などのような長期顧客関係無形資産を含めることにより,それらを割引前キャッシュ・フローによる回収可能性テストおよび減損損失の認識・測定対象に含めている。

 譲り受けた資産および活動が事業 (business) を構成せず,取得が企業結合の定義を満たさないときは,取得原価をその相対的公正価額に基づいて取得資産および引受負債に配分し,のれんを認識してはならない。

公開草案「株式に基づく報酬に関する会計――経過措置および開示」

 FASBは,さる10月に表題の公開草案を公表し,提出期間を30日間として意見を求めている。

 基準書第123号「株式に基づく報酬に関する会計」は1995年に公表され,1996年から強制適用された。

 FASBは当初ストック・オプションなどの株式に基づく報酬を付与したときには,その公正価額により評価して費用に計上するよう提案したが,企業・政界の強力な反対によりその強制適用を断念し,APB意見書第25号の規定する本源的価値により評価する方法も認めたため,大多数の企業が本源的価値による評価方法を継続適用してきた。ところが最近の会計批判の風潮を契機として,第123号が望ましい方法であるとする公正価額による評価方法を適用する企業が増加している。

 第123号は,会計処理を変更する場合には,変更後に付与するものについてのみ公正価額による方法を適用することを求めて,遡及適用を認めず,また本源的価値による方法を継続適用するときは公正価額によった場合の損益への影響を開示することを求めている。

 公開草案は,会計処理を変更する場合には変更後に付与・変更し,または決済するものについてのみに適用するほか,1995年以降に付与・変更し,または決済したものについて,採用年度以降に報酬費用を認識する方法,およびそれらを1995年以降に遡及して報酬費用を認識する方法の三つの方法を選択適用できるよう提案。また,開示をより明瞭化する具体案を提示している。強制適用は2003年からで,早期適用は奨励される。

 

東証、決算短信の様式と記載内容を一部変更

 東証は、10月3日、全上場会社に対して、代表者名の記載や金融支援を受けている場合における記載内容の充実など、決算短信の一部見直しを通知した。

 まず、決算短信の様式の改正は、米国等で相次いでいる企業会計の不正疑惑により、財務諸表に対する投資者の信頼性の向上が喫緊の課題となっていることを踏まえ、財務諸表の重要性に関する認識を高める観点から決算短信の最初に代表者の役職、氏名の記載を求めることとした。今までは、代表者名の記載は求めておらず、問合せ先の責任者名を記載することとしていた。そのため、通常は経理担当の役員名または部長名が記載されていた。

  次に、決算短信の記載内容の見直しは、金融支援を受けている場合の定性的情報についてである。上場会社が債務免除等の金融支援を受け、再建計画を開示している場合には、「経営方針」の「中長期的な会社の経営戦略」において、当該再建計画の進捗状況などの開示を求めている。しかし、当該再建計画の進捗状況に関する開示の現状をみると、主に、資産の売却、資本の増強、負債の削減等財政状態の改善に係る内容が中心であり、収支計画等に係る内容まで開示している上場会社は限定的な状況であった。

  そこで、今回、債務免除等の金融支援を受けている場合には、当該再建計画の進捗状況について、収支計画等も含めて計画(事業再構築計画、資金調達計画、債務弁済計画等)との対比(計画の進捗が順調である場合はその旨、計画とのかい離が生じている場合はその要因やその後の再建計画に与える影響等)をわかりやすく具体的に記載することを求めた。

 適用は、平成14年9月期決算短信および平成15年3月期中間決算短信からとしている。

 

政府・日銀の金融政策が大きく転換

 9月から10月にかけて、金融政策が大きく転換した。日銀が銀行保有株の購入方針を公表したことに呼応する形で、金融庁が不良債権問題対応のためのプロジェクトチームを発足させ、さらにはペイオフ全面解禁の延期という重要な政策を相次いで打ち出した。一方、株式市場は一連の金融政策から混乱に陥り、日経平均株価は一時、8,000円ぎりぎりの水準にまで急落した。

 9月に日銀が銀行保有株の購入方針を公表した後、それを受けた政府の政策が注目されていたが、9月末に金融担当大臣が柳沢氏から竹中氏に交代、政府の金融に関する政策が急変した。10月、まず金融庁は「金融分野緊急対応戦略プロジェクトチーム」を発足させた。同時に、ペイオフの全面解禁を2年間延期することも決定した。

 金融庁がプロジェクトチームを設置したのは、不良債権問題に対する抜本的かつ早急な対応を図らなければ、日本の金融システムが再生しないとの判断からである。10月中にもプロジェクトチームの結論が出される予定である。その内容は、現在も多額の不良債権をかかえる銀行と、銀行から全面的な支援を受けて生き延びている企業にとって厳しいものになると予想されている。金融庁がペイオフ全面解禁を延期したのも、不良債権の処理を進めるためには、ペイオフによる無用の混乱を避けたいとの意向がある。

 10月、日銀は銀行からの株式購入を財務省と金融庁に申請した。購入先は銀行を対象とすること、購入対象株式は信用格付がBBB格相当以上であること、購入価格は時価、購入予定期間は最長2年間、購入総額は2兆円を限度とし、購入対象先別の限度額は「銀行の株式保有制限法に定めるコア自己資本」を超過した額または累計5,000億円のどちらか低い額までとすること、1銘柄当たり発行済株式数の5%を超えて購入しないこと、購入した株式は信託銀行に信託し、議決権行使はその信託銀行に行わせること、購入した株式は原則として5年間売却せず、その後10年間の内に売却すること、購入した株式の評価損を決算に計上すること等を明らかにした。

 一方株式市場は混乱している。10月初旬株価は急落した。相次いで公表された重大な金融政策をどう解釈していいのか消化不良に陥っていることと、アメリカ市場での株式の急落が原因である。アメリカ市場が反発したため、10月中旬以降は戻し気味だが、今後の展開は予断を許さない。