▽三角波△

平成15年度税制改正の課題

 

 

  低迷が続くわが国経済を立て直すには、企業と個人の経済活動を活発化させることが必要である。その観点から、政府の経済財政諮問会議や税制調査会が年初来、税制の抜本改革について検討が続けているが、ここに来て、来年度税制改正についての議論が開始する中で、これまでの議論も一層の高まりを見せている。来年度税制改正を中心に今後の税制改正の課題を整理したい。


法人税率の引下げ
 法人税に関しては、組織再編税制の整備、連結納税制度の導入と、このところ非常に大きな制度整備が行われてきたことから、来年度改正において、これらに匹敵するような大改正は行われないものと見られる。もちろん、制度整備の課題としては、従来から懸案となっていた株式交換・株式移転税制の見直しやLLC、LLPといったパス・スルー課税の導入、さらには、連結納税制度の導入を契機に問題が顕在化してきた取引や資産評価の時価のあり方、確定決算主義の見直しなど多くの課題があることは言うまでもない。
 むしろ来年度税制改正において注目されるのは、税率の引下げである。小泉総理がこの7月に1兆円を超える減税の先行実施を行う方針を表明した後、経済財政諮問会議では、減税を恒久的なものとしたうえで、減税規模を少なくともGDPの0.5%、すなわち2.5兆円とすべきとの議論が行われている。これから年末に向けて、先行減税の具体的な内容が議論されることになるが、研究開発促進税制の抜本的な拡充やIT投資を中心とする投資減税に加え、税率そのものの引下げが大きな課題となることは必至である。併せて、産業活力再生特別措置法の延長とタイミングをあわせ、その税制措置の拡充も、今回の税制改正の課題であろう。
 もう一つ忘れてはならないのは、法人事業税の外形標準化の問題である。平成14年度税制改正において、「各方面の意見を聞きながら検討を深め」「平成15年度改正を目途にその導入を図る」こととされていることから、今回の改正でも再度議論されることは間違いない。


個人所得税の改正
 個人所得課税においては、広く薄く負担を公平に分かち合う観点から、課税ベースの見直しが必要とされており、当面の課題としては、配偶者特別控除などの見直しが挙げられる。これと併せて、累進税率の見直しを行い、中堅層の税負担の急激な増加を緩和する必要がある。
 また、景気回復の観点からは、住宅ローン利子の所得控除制度の創設をはじめとする住宅減税の拡充や、世代間の住宅取得資金の移転を目指した贈与税の大幅減税などが今回の改正のテーマである。


固定資産税の見直し
 平成15年は3年に1度行われる土地の評価替えの時期にあたることから、固定資産税の見直しは避けて通れない課題である。平成12年度評価替えにあたり負担調整措置が若干見直されたが、依然として大都市の商業地等では高い負担水準が継続しており、わが国経済の活性化、都市再生の観点から、負担水準の引下げを行う必要があろう。

〈Y.O〉