Accounting News

IFRIC(国際財務報告基準解釈委員会)

 今年3回目の会合が7月23、24の両日ロンドンで開催され、以下の議題が討議された。

・相互に関連する取引

 複数の取引が個々に処理されるか一括して処理されるかにより結果が異なる場合がある。フレームワークに従ってそれぞれの取引の処理方法を協議。

IAS18(収益)に関する事項

 次の項目につき協議。

 −未収あるいは繰延収益がフレームワークの負債概念と一致するか

 −返品権つき販売の返品率の合理的な見積方法と収益計上の時期

 −バーター取引で収益を認識しないことの妥当性

IAS32(金融商品の開示)

 金融商品の中で負債と資本の判別がつきにくいものの内容を協議。

・使用権

 IAS17 に基づきリース取引として処理すべきケースを例示し検討。

 以下の2項目については今回より議題に加わった。

・排出権

 環境保護に絡んで汚染物質等の排出権が取引されるようになってきているため、それらの会計処理について検討を開始。

・関係会社の持分にかかわるデリバティブ

新評議員に橋本徹氏就任

 6月に退任した福間年勝氏に代わり、橋本徹富士総合研究所理事長(元富士銀行会長)が評議員に就任することが9月11日に発表された。

 

基準書第146号の詳報

 FASBは,さる6月付で基準書第146号「退出又は処分活動に関連する費用に関する会計処理」を発行した。基準書は,12月31日後に開始する退出または処分活動に適用される。早期適用は奨励されるが,前に発行した財務諸表を修正再表示することはできない。退出活動には,ある事業分野の売却または終結,ある場所での事業活動の閉鎖,他の場所への再配置などのリストラクチャリングを含むが,それには限られない。処分活動の処理は,基準書第144号の処分に関連する。

 退出または処分活動に関連する費用は,関連する負債が発生した時に認識し,その公正価額により測定する。公正価額を合理的に見積もることができない場合には,見積もることができたときに認識する。負債の発生は,取引または事象の結果,将来他の実体に資産を移転し,またはサービスを提供する債務から生じる。退出計画の公表だけではまだ負債は発生していないため,その時点で認識してはならない。

 基準書は従業員給付に関連して発行された基準書第87号(退職金・退職年金),第88号(年金制度の清算・縮減),第106号(他の退職後給付),第112号(雇用後給付)などを改訂していない。したがって,従来の規程により退職金等を支給するときは,該当する基準書を適用する。従来の規程によらず,一度限りの給付の取り決めによって非自発的に解雇される従業員に解雇給付を支給する場合で,@経営者が解雇計画を確約し,A解雇する従業員数,該当者の職種,勤務地,解雇日を特定し,B従業員が非自発的に解雇された場合に受け取る給付の種類と金額を自分で計算できるよう,詳細に給付の取り決め条項を設定し,Cその計画を相当変更したり撤回することが考えられない解雇計画を従業員に伝達した場合で,彼らがいつ離職するかを問わず解雇給付を受け取ることになる場合には,解雇計画を従業員に伝達した日現在で解雇給付に関する負債を認識し,その公正価額により測定する。

 従業員が解雇されるまで勤務を継続することが解雇給付を受け取る条件になる場合には,伝達した日に解雇日現在の解雇給付に関する負債を認識し,その公正価額により測定する。負債とそれに対応する費用は,将来の勤務期間にわたって比例配分により認識する。

 オペレーティング・リースその他の契約を契約期間満了日前に終結する場合には,そのために発生する負債と費用を契約終結日現在で認識し,その公正価額により測定する。リースした資産の使用を停止し,またはその後財貨もしくはサービスを受け取る権利の使用を停止するが,契約を解除しないため,経済的利益なしに契約の残存期間にわたり継続して費用が発生する場合には,その停止日現在で将来の契約期間にわたって発生する費用を負債として認識し,公正価額により測定する。契約がオペレーティング・リースである場合には,負債として認識する金額から,転貸契約を結ぶ意図の有無にかかわらず,見積転貸収益の公正価額を控除する。

 退出または処分活動に関連する費用は,それが非継続事業関連でない限り,損益計算書中の税引前利益計算,営業利益(わが国の範囲より広い)を表示するときは営業利益計算中に含める。また,退出または処分活動を開始した期間から完結する期間まで,活動の予測される事実および状況を含む記述,主な費用の種類別による予測総額,期中発生額,累積発生額,負債の期首残高,発生額,決済額、期末残高等を開示する。

経済産業省ブランド価値評価研究会報告書がThe FASB REPORTで取り上げられる

 経済産業省企業法制研究会「ブランド価値評価研究会」により、公表財務諸表データのみで公正かつ客観的な貨幣額評価を世界で初めて可能にしたブランド価値評価モデルが公表されたが、いままさにインタンジブル資産のディスクロージャーを審議事項の一つとして掲げ、最終的な基準作りのためのプロジェクトを進めているFASBがブランド価値評価研究会報告書を高く評価し、2002年8月8日にFASBで合同検討会が行われた。

 検討会にはFASBからはRobert Hertz委員長、John M. Foster委員およびHalsey G.Bullenインタンジブルズ・シニアマネージャー他スタッフが出席し、経済産業省側からは広瀬義州委員長(早稲田大学教授)他オブザーバーが出席し、ブランド価値評価モデルの構造等について熱心に議論された。その内容は本誌10月号で既報の通りであるが、このたびThe FASB REPORT, Financial Accounting Series, No.235(8月30日号)でも取り上げられた(“Japanese Committee on Brand Valuation Visits to Discuss Hirose Report")。英語圏以外の国から発信されたリポート等がFASBで取り上げられたのは最初であり、きわめて画期的である。日本から発信した「ブランド価値評価モデル」が、それだけFASBに注目されている証しとみられ、FASBと経済産業省ブランド価値評価研究会との今後の協議等の動向が注目される。

 

ASB 、会計基準および適用指針等を公表

 企業会計基準委員会は、さる9月25日、企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」を公表した。

 これは、平成13年の商法改正における自己株式の取得及び保有規制の見直し、種類株式制度の見直し、新株予約権および新株予約権付社債の導入などを契機として、1株当たり当期純利益および潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定方法について検討がおこなわれたもの。さる7月25日に公開草案を公表し、広く意見募集がされ、同委員会に寄せられたコメントを検討、公開草案の修正を行った上で、9月20日の第20回企業会計基準委員会で承認され、公表にいたった。

 また同日、企業会計基準適用指針第5号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針(その2)」も公表されたが、これは、さる2月21日に公表された企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針」の公開草案に対して寄せられたコメントに基づき、当該会計基準および適用指針で取り上げなかった項目に関して追加して実務上の指針を検討したのもので、同じく9月20日開催の第20回企業会計基準委員会で承認の後、公表された。

 また、同委員会は8月29日付で、平成14年度税制改正の連結納税制度導入にともない、今9月中間期での取扱いを示した実務対応報告第4号「連結納税制度を適用する場合の中間財務諸表等における税効果会計に関する当面の取扱い」も公表している。

 なお、上記会計基準および適用指針等については、本号別冊付録に全文を収録しているので、ご参照いただいきたい。

ASB 、デット・エクイティ・スワップに関する会計処理について公開草案を公表

 企業会計基準委員会は、さる9月11日、実務対応報告公開草案第5号「デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」を公表した。

 会社再建の一手法として行われているデット・エクイティ・スワップに関しては、実行時における債権者側の会計処理について実務上の取扱いが検討されており、さる9月10日の第19回企業会計基準委員会で実務対応報告の公開草案の公表が承認された。

なお、同実務対応報告の概要は以下のとおり。

 1 対象とするデッド・エクイティ・スワップ(債務の株式化)

 2 デッド・エクイティ・スワップ実行時における債権者側の会計処理

  1 基本的な考え方

  2 取得した株式の取扱い

  3 取得した株式の取得時の時価

  4 適用時期

 なお、同公開草案の意見募集は平成14年9月27日で締め切られており、10月上旬にも成案として公表される見通し。

 また、デット・エクイティ・スワップの実行により生じた株式の評価については、引き続き当委員会において検討される予定である。

 

東証、平成15年3月期決算会社240社が第1四半期財務情報を開示

 東証は、9月9日、上場会社の約8割を占める3月期決算会社を対象とした平成15年3月期第1四半期(平成14年4月〜6月)における四半期財務情報の開示状況についての調査結果を公表した。なお、本年6月27日付で上場会社に通知した「四半期財務情報の開示に関する要請」の趣旨に沿って、四半期末時点における業績の進捗状況および財政状態の変動状況等を開示しているものについても集計対象に含めている。今回の主な特徴点は以下のとおりである。

  平成15年3月期第1四半期において四半期財務情報の開示を行った東証上場の内国会社は、240社(前年同期比+142社)と前年同期を大幅に上回り、3月期決算会社全体に占める割合も14.0%となり、前年同期比で8.2ポイントの増加となった。業種別の状況をみると、昨年10月の経済対策閣僚会議の「改革先行プログラム」において四半期ごとの経営情報の開示要請が行なわれた銀行業が85社(前年同期0社)と過半を占め、サービス業25社、電気機器業24社、卸売業21社、証券業・商品先物取引業20社という状況であった。

  また、第1四半期末から四半期財務情報の開示までの所要日数は、今年度より新たに四半期財務情報開示に取り組む上場会社が過半を占めたことなどを受け、前年より2.8日長い33.7日となった。最も早く開示を行った会社は、(株)アドヴァン(7月5日)であり、次いで(株)ホギメディカル(7月10日)であった。

 なお、財務諸表形式による開示は、四半期開示を行った上場会社のうち、損益計算書の開示54.2%、貸借対照表の開示49.2%、キャッシュフロー計算書の開示26.7%という状況であった。

東証、平成13年度の従業員持株会の保有金額2兆3,360億円、保有比率0.98%

 東証は、9月13日、平成13年度の従業員持株会に関する調査結果を公表した。調査対象会社は、東証上場内国会社のうち、大和証券、大和証券エスエムビーシー、野村證券、日興コーディアル証券の4社が事務委託契約を締結している従業員持株会実施会社1,648社である。今回の特徴点は以下のとおりである。

  まず、全調査対象会社の従業員持株会が保有している金額は、株価下落の影響から、前年度に比して1,940億円減少して2兆3,360億円となったが、時価総額に占める保有比率は0.01ポイント増加して0.98%となった。

  また、調査対象会社の従業員持株会の総加入者数は、前年度比1万人増(前年度比+0.6%)の180.6万人となったが、調査対象会社の全従業員に占める割合は前年度比0.3ポイント低下の50.7%となった。従業員持株会の加入者1人当たりの保有金額は、前年度比11.5万円減少の129.3万円であった。

  奨励金を支給している会社は、1,542社となり、全調査対象会社の93.6%であり、奨励金額(拠出金1,000円当たりの金額)別では、40円以上60円未満が51.3%を占め、平均支給額は66.24円であった。

 

日銀、銀行保有株式の直接買取へ

 9月18日、日銀は、金融政策決定会合の後に開いた金融安定化会合において、銀行保有株式の直接買取を決定した。日銀法第33条の通常業務では株式の直接買取は認められていないため、第43条に基づき、財務大臣および内閣総理大臣の認可を受けたうえでの例外業務として行うことになる。先進国の中央銀行として、異例の政策である。

 日銀が第43条の例外措置を申請してまで銀行保有株式を直接買い取ることとしたのは、株価の継続的な下落が銀行の財務体質を毀損し、それが金融システム不安の一つの要因になっていると判断されたためである。さらには9月に入って株価が急落、バブル崩壊以降の新安値を更新したことと、その対策として日銀にETF(株価指数連動型投資信託受益証券)を購入させる案が一部に浮上していたことも影響していると考えられる。

 株式買取の詳細は今後の詰めに残されているが、当日の記者会見で明らかにされた素案は次のとおりである。

 買取価格は時価。日銀は上場株式を銀行から直接買い取るが、対象銘柄には一定の基準が設けられる予定。買取後の損益は日銀の損益にそのまま反映されることから、株価下落による損失に備えるために準備金を計上する。買取期間は1年程度、最長10年程度保有の後、市場で売却。買取の対象銀行は、自己資本(Tier 1)を超えて株式を保有している大手銀行と一部地銀の15行程度であり、生保などの機関投資家は含まない。買い取った株式の議決権は原則として行使しない。

 買取の規模について、大手銀行の保有株式は25兆円、Tier 1は17兆円であることから、最大8兆円程度が対象となるが、一般にはその半分の4兆円程度が買い取られるものと推測されている。

 今後、買取対象銘柄の選定基準、買取規模などが日銀の健全性維持の観点をも勘案して決められよう。一方、日銀が銀行保有株式を買い取ることで一時的に株価の需給が好転するとしても、企業業績が好転しないかぎり、株価の上昇はない。また、金融システムの安定を図るには、銀行の不良債権問題の解決が基本的な条件となる。今回の日銀の政策はこれらの抜本的解決のための時間稼ぎではあっても、直接の効果がないのは明らかである。

 

政府税調,「あるべき税制」の実現に向けた議論の中間整理を公表

 政府税制調査会(首相の諮問機関,会長:石弘光一橋大学学長)では,さる6月14日に「あるべき税制の構築に向けた基本方針」を公表し,その後全国5カ所で「税についての対話集会」を行ってきたところである。

 9月3日に開催された第32回総会では,「対話集会」での参加者からのアンケート結果などについて事務局から説明があり,「対話集会」における意見等を踏まえ,8月27日と8月30日の基礎問題小委員会でまとめられた「「あるべき税制」の実現に向けた議論の中間整理」について説明が行われ,議論の結果,この「中間整理」を税制調査会における議論の中間的な整理をしたものとして公表することが了承された。首相から指示のあった5項目について,「中間整理」の概要は,次のとおりとなっている。

 1 配偶者特別控除,特定扶養控除等(略)

 2 外形標準課税については,その内容について必要な検討を加え,その意義の更なる周知に努め,早急に導入すべきである。

 3 研究開発減税・投資減税については,既存の租税特別措置の統廃合を大胆に進めつつ,真に有効な政策税制を集中・重点的に講じることとする。以下の考え方に基づき,研究開発減税・投資減税の集中について,検討を進める。

 1 研究開発税制

   厳しい経済状況の下,研究開発の分野でも合理化,効率化が進められる中で,試験研究費の額が「増加」した場合等に税額控除を行う現行制度が有効に機能しなくなっている面があり,見直す必要がある。このため,英米等の例も参考としつつ,新たな研究開発税制を設ける。

 2 設備投資税制

   一般的な投資促進税制は,企業が過剰な設備・債務を抱え,キャッシュフローを借入金の圧縮に充てている中で,設備投資の増加につながるか疑問がある。経済社会の活性化や構造改革のために,真に有効な戦略分野に集中・重点化した投資促進税制を設ける。

 4 消費税の免税点制度等については,以下の方向で抜本的な改革に取り組む。

 1 事業者免税点制度

   事業者免税点の水準は,消費税制度の創設当初から長期間にわたって据え置かれたままであり,また,諸外国と比べても極めて高い。このことを踏まえ,免税事業者の割合を現在の6割強から相当程度縮小させるべく,現行の免税点制度の大幅な見直しを行う。

 2 簡易課税制度

   これまで2度にわたり簡易課税制度の適用上限を引き下げてきた。しかしながら,全ての事業者に対して本則の計算方法による対応を求めることが消費税制度のあるべき姿であるので,基本的には,廃止の方向で検討する。

(申告納付制度および総額表示方式のあり方については,「基本方針」の考え方に沿って,検討を行う。)

 5 相続税・贈与税(略)

 政府税調の今後の進め方としては,9月末以降,総会,基礎問題小委員会を開催して,さらに掘り下げた議論を行い,11月中旬頃を目途に税制改革についての考え方をとりまとめる予定となっている。

 

日本監査役協会、企業統治法施行後の対応状況アンケートの結果発表

 今回のアンケートは「企業統治に関する商法等改正法」が施行されて以降、初めて行われた5月・6月株主総会での各社対応動向を明らかにする目的で行ったものである。この結果は多くの企業が改正法によって監査役権限強化を積極的に評価し、迅速な対応をとっていることを表している。

 同アンケートは企業統治法の評価、監査役選任に関する監査役会の同意権行使状況、社外監査役・社外取締役の選任状況、取締役の責任軽減を取締役会で行うため定款変更状況の他に、監査役・監査委員会制度の選択状況についてまとめている。

 詳細は日本監査役協会ホームページ協会ニュース(http://www.kansa.or.jp)からダウンロードできる。

日本監査役協会会計監査委員会、会計委員会報告まとまる

 同協会会計監査委員会は9月9日、委員会報告書『連結決算時代における監査役と他の監査主体との連携の実務』をまとめた。この報告書は監査役が会計監査人等の他の監査主体との間で、どのような理念に基づいて、どのような要領で連携を進めていけばよいかについて、基本的な留意事項を実務に即して整理したものである。『月刊監査役』11月号に掲載される予定。