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産業活力再生特別措置法の見直し

 

 

 産業活力再生特別措置法は,故小渕総理が主宰した産業競争力会議での議論を経て,平成11年8月に成立,同年10月に施行された。同法は,その目的等から緊急性が強く意識され,異例とも言えるスピードで策定から施行に至った。同法の理念は,事業再構築を支援し,「選択と集中」を促進することであった。これまでに140件を超える案件が同法に基づく認定を受け,特例措置の適用を受けている。認定事業者の事業分野に特定の偏りはなく,幅広い分野に及んでいる。また,事業者の規模も大企業に限られておらず,本法が,広く事業再構築に貢献していることがうかがえる。
 しかし,同法は,平成15年3月末日までに申請をした事業者に対して適用される時限立法であり,現在,その期限の延長ならびに講じられる特例措置の拡充について検討が開始されている。


従来の制度の概要
 同法においては,@事業再構築の円滑化,A創業および中小企業者による新事業の開拓の支援,B研究活動の活性化,の三つの制度が定められているが,その中心は@である。事業再構築の円滑化に資する特例措置は,個々の企業の事業再構築計画が一定の要件を満たして主務大臣の認定を受けた場合に講じられる。具体的には,現物出資等の検査役調査の手続や,営業譲渡の場合の債務の一括移転に関する特例等企業再編において活用が想定される商法上の手続等について,その簡素化,合理化が図られるとともに,不動産取得税や登録免許税の課税の特例による不動産所有権の移転や増資に伴う経済的負担の軽減,大規模な設備廃棄に伴う税務上の欠損金の繰越期間の延長など税法上の特例が定められている。
 これらの特例措置をきっかけに,会社分割制度の創設ならびに企業組織再編税制の整備,本年の商法抜本改正における現物出資制度の見直しなど,本格的な制度改正が行なわれることとなった点も,同法制定の影響として見逃せない。


見直しの方向
 同法の期限延長を前提に,産業構造審議会の新成長政策部会が先般取りまとめた報告書では,同法の対象や特例措置の拡充が提案されている。
 まず,従来の認定要件では,個々の企業における生産性の向上が求められているが,特定の産業分野においては世界的な再編成を視野に入れて企業の垣根を超えた再編成が必要な場合もあることから,複数の企業が共同で実施し,当該産業分野の生産性の向上が見込まれるものについても,同法の対象とすることが検討されている。
 特例措置としては,まず,簡易合併や簡易分割などの簡易な組織再編成の手続の対象範囲の拡充や,株式ではなく現金を対価とする合併の容認などの商法上の規制の緩和が求められている。ただし,現金を対価とする合併については,税制上適格再編成にあたらなくなるので,税制上の特例措置も同時に講じられる必要があろう。
 また,税制上の措置としては,欠損金の繰越期間の延長に関して,従来認められていた設備廃棄に伴うものに加えて,組織再編成に伴う割増退職金や共同出資子会社の清算損なども対象とすることが検討対象に掲げられている。
 いずれにしても,税制上の措置は平成15年度税制改正の中心課題の一つとして,年末の議論のゆくえが注目されるところである。

〈Y.O〉