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企業会計基準委員会、EPSに関する会計基準等の公開草案を公表

 企業会計基準委員会は、さる7月23日、下記の企業会計基準等の公開草案の公表を承認した(公開草案本文は、当委員会ホームページhttp://www.fasf.jp/参照)。

 本公開草案は、意見募集を受けて審議された後、9月中には成案として公表される見込み。

■ 企業会計基準公開草案第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針(案)」

 平成13年商法改正における自己株式の取得及び保有規制、種類株式制度の見直し、新株予約権及び新株予約権付社債の導入等を契機として、国際会計基準、米国基準の動向を踏まえ、1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定方法について定めている。意見募集は、8月30日まで。

■ 企業会計基準適用指針公開草案第5号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針(その2)(案)」

 2月に公表された「自己株式等会計基準」の公開草案時に寄せられたコメントに基づき、当該会計基準等で取り上げなかった、自己株式の取得及び処分の認識時点、無償取得の会計処理、吸収合併に関連する処理、子会社及び関連会社が保有する当該会社の自己株式に関する連結財務諸表上の取扱いについて、実務上の指針を示している。意見募集は、8月30日まで。

■ 実務対応報告公開草案第3号「連結納税制度を適用する場合の中間財務諸表等における税効果会計に関する当面の取扱い(案)」

 平成14年度税制改正による連結納税制度創設に伴い、今9月中間期にも問題となる中間財務諸表等における税効果会計に関する当面の取扱いについて、実務上の取扱いを示している。意見募集は、8月13日まで。

 

6月理事会

 6月17日から19日まで,ドイツのベルリンで開催。

 ■ 企業結合

 第1フェーズについては,すでに討議を終え、公開草案の起案にかかっている。

 第2フェーズでは,偶発的な資産、債務の評価方法について話し合われ、いずれも公正価値をもって評価することで合意した。このためIAS37に規定された定義内容を変更するが、これはUSGAAPとの一致を意図したもので、内容そのものを変更するためではない。併せて、公正価値を決定するための3段階にわたる評価手順を決めた。

 ■ コンバージェンス(収斂)

 各国の会計基準との協調を図るために次の基準に何らかの作業が必要とされた。

 ・IAS12(法人所得税)

 ・IAS14(セグメントの表示)

 ・IAS23(借入コスト)

  ・IAS28(関係会社投資):IAS31(ジョイントベンチャー)と関連づけて

 ■ 保険会計

 証書の保有者が契約期間前に契約を解除できる場合につき討議。

 ■ 株式報酬会計

 株式による報酬については,公正価値で評価することに例外は設けず、非公開の株式であっても同様とすることを合意。その評価について,オプション価格モデルを適用するガイドラインをIFRSの中に含めることとした。

金融商品に関する会計基準改訂草案発表

  金融商品に関する会計基準であるIAS32「金融商品:開示と表示」、IAS39「金融商品:認識と測定」を改訂する公開草案が発表された。EUでの適用を控えて適用を容易にすることと現状の基準にある不整合を解消することが狙い。一般のコメント期限は10月14日までとなっている。

 

公開草案「特定の特別目的事業体の連結」

  FASBは,さる6月にARB第51号「連結財務諸表」の特定の特別目的事業体(SPE)への適用を明確化する解釈の公開草案を公表し,8月30日を提出期限として意見書の提出を求めている。

 ARB第51号「連結財務諸表」は,支配持分を有する子会社を連結対象とすることを要求している。通常その要求は、議決権株式の過半数所有を有する子会社に適用されるが,多くのSPEは議決権株式を持たず,または議決権持分の所有を通じた支配によらない方法により創設されたため,連結の対象外になってきた。

 この草案は,まず所有持分による支配ではなく,変動する権益(variable interest )を通じて財務的な補助を提供し,それによってSPEの資産負債の価値変動の影響を企業が受けるSPEを決定するよう提案している。変動する権益は,金融商品,サービス契約,無議決権持分その他の取り決めによって生じ得る。企業がSPEの変動する権益の過半数を有し,または他のいずれの当事者の変動する権益よりも相当多い(significant )変動する権益を有する場合には,その企業はそのSPEの主たる受益者(Primary beneficiary )となる。

 主たる受益者は,そのSPEの資産負債および活動の成果を連結財務諸表中に含め,また,そのSPEの資産負債および活動の成果に関する情報を開示するよう要求される。さらに企業が管理者となっている連結対象外のSPEについても同様の情報の開示を求められる。

 FASBは,この解釈案により,関係する当事者間に有効にリスクを分散していない現存する非連結SPEは主たる受益者の連結対象になると考えている。

 基準書第140号「金融商品の譲渡およびサービスならびに負債の消滅に関する会計」第35項中に定義した適格SPEおよび類似の特徴を有する他のSPEはリスクを分散しており,この提案は,譲渡人がそのSPEの連結を禁止する第140号の規定を改訂することを考えてはいない。ただし,他の当事者は,この提案により適格SPEを連結するよう要求されることがあり得る。

 リース目的で使用されているSPEは,有効にリスクを分散していないため,賃貸人または賃借人による新たな連結対象になるであろう。リース以外の活動に従事するSPEも似たようなことになると考えられる。

 この提案は,解釈が最終的に発行された後に創設されるSPEには直ちに適用される予定である。当日以前に創設され当日現在で存在するSPEについては,2003年3月15日後に開始する会計年度または中間期間から適用する予定である。

新議長にハーツ氏を選任

 FASB前議長ジェンキンズ氏は,5年間の任期が満了した6月末をもって退任する意思表示をしたため,財務会計基金 (FAF)は,プライスウォーターハウスクーパースのハーツ氏を選任した。

 FAFはまた,このほど,FASB委員を7人から5人に減員する提案を撤回し,会計基準を採択するために必要な賛成者数を7人中5人から4人に減らした。

 

「金融システムと行政の将来ビジョン」公表

 7月、金融庁は「金融システムと行政の将来ビジョン」を公表した。この報告書は、昨年10月、柳澤大臣の問題提起を受けて発足した懇話会での議論を集約したものである。懇話会では、不良債権処理も重要だが、日本の金融の将来ビジョンを描くことがより重要との問題意識で討議がなされた。

 報告書では、銀行中心の金融から、市場機能を中核とした金融へと移行することが金融システムを強化し、利便性を高めるために重要だとの基本認識を示している。

 そのうえで、資金コストを明確に意識した資金供給の必要性(貸出金利を引き上げる必要性)、金融仲介機関の専門能力と機能を高める必要性(証券化や機関投資家機能の促進)、資金供給者である個人の利便性を考慮する必要性(たとえば、一つの窓口で多様な金融商品を購入できるしくみ)をかかげている。従来の、銀行、証券会社、保険会社といった業態別の金融から、専門的な金融機能を提供する機関が分業態勢を構築するシステムに変化すべきだと訴えるものであり、それらの金融機能を支える重要な社会インフラとして取引所などの金融市場があるという考え方であろう。

 金融取引への参加者に関して、従来型の銀行機能よりも投資銀行機能や地域金融機関の重要性が示されている。一方、企業の外部資金調達ニーズが低下するなかで、大企業の組織再編などを支援する投資銀行業務へのニーズ、中小企業に対する従来型銀行機能の存続が指摘されている。個人の場合、多様化する金融ニーズに対応するしくみが重要になるとしている。以上に対して行政は、その軸を業態から機能へ転換すると同時に、システミックリスク対応、利用者保護、金融技術革新の先導が重要になるとの方向感を示した。

 報告書では公的金融にも言及している。郵貯や簡保について、民間金融とのイコール・フッティングや、民間金融商品の販売窓口として郵便局ネットワークの活用を検討する必要があると指摘されている。また、政策金融機関については、政策金利の見直しとともに、住宅ローン等の貸出債権の証券化支援に改革の軸足を置く必要性が示されている。

 他方、不良債権の扱いは「金融の将来ビジョンへの架橋」というものである。将来ビジョンを意識しつつ、当面の大問題である不良債権の処理を行うという意味だろう。不良債権処理のために、銀行のビジネスモデルを転換して収益力の強化を図る必要性と、不良債権処理のツールとして証券化のプロセスを推進する必要性が指摘されているのは、将来ビジョンと整合的である。

 今後、この報告書がたたき台となり、金融審議会で具体的な政策対応が議論される予定である。

 

東証、平成14年3月期の連結決算発表状況等の集計結果を発表

 東証は、さる6月26日、東証上場会社の平成14年3月期の連結決算発表状況等を取りまとめ発表した。今年の特徴点は以下のとおりである。

 1 連結決算発表会社数は増加傾向

 連結決算発表会社数は、前年の1,554社から16社増加して1,570社となった。16社純増の内訳は、増加要因が新規上場41社、新規作成16社、決算期変更3社であり、減少要因が上場廃止34社、作成取り止め7社、決算期変更3社であった。また、3月期決算会社全体(1,698社)のうち、連結決算発表会社の占める割合は92.5%と、前年(92.3%)より若干上昇した。

 2 連結決算発表までの所要期間は短縮傾向

 決算期末から連結決算発表までの平均所要日数は、前年比で2.0日短縮し、48.3日となった。具体的には、4月中に発表を行った会社が前年比で30社増加して133社となる一方で、6月に発表を行った会社は37社減少して8社となるなど、全体として発表の早期化の動きが顕著に見られた。

 3 連結決算と個別決算の同時発表会社は引き続き増加

 連結決算発表会社1,570社のうち、連結決算と個別決算を同時に発表した会社数は、前年の1,466社から55社増加して1,521社となった。連結決算発表会社全体に占める割合も前年から2.6ポイント増加して96.9%となった。

 4 今年も特定日への集中傾向は高水準

 連結決算の発表がもっとも集中した日は5月24日(金)であり、発表会社数は昨年の最集中日5月25日(金)よりも5社下回る273社(連結決算発表会社全体に占める割合は17.4%)で、集中傾向はほとんど改善されなかった。

 5 早期発表会社上位の顔ぶれは変わらず

 発表までの所要日数が早くなった会社数は、1,138社(同75.4%)であった。また、所要日数の最短は(株)メッツの1日であり、以下、(株)アドヴァン3日、(株)ホギメディカル10日、京都きもの友禅(株)12日、日信工業(株)16日、日立機電工業(株)17日、KOA(株)17日、花王(株)22日、(株)クレスコ22日、HOYA(株)22日である。

東証、上場会社の四半期財務情報開示に向けたアクション・プログラムを発表

 東証は、さる6月27日、上場会社の「四半期財務情報の開示に関するアクション・プログラム」を策定し、公表した。これは、6月25日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」の「経済活性化戦略」の項目の一つに、「金融庁は、四半期開示に向けた取組みを強化する観点から、取引所等に対し、その進め方等を明らかにする行動計画の策定を、6月中に要請する」ということが盛り込まれたことを受けての対応である。

 アクション・プログラムの内容は、2段階からなる。まず、遅くとも2003年4月以降に開始する事業年度の第1四半期から「四半期業績の概況」(たとえば、売上・受注・収益動向に関する事項、主な資産・負債等の増減に関する事項などの部分的な財務情報と、これらに関連する記述的情報でも合致)の開示を上場会社に義務付ける。そして、次の段階として、環境整備等の進展状況を睨みながら、2004年4月以降に開始する事業年度から、諸外国における四半期情報の開示と遜色のない内容を備えた四半期財務・業績情報の開示を義務付けることを目標としている。また、開示される四半期財務・業績情報に係る公認会計士または監査法人による関与または保証についても、諸外国の状況等を踏まえて検討することとしている。

 

日本監査役協会,理事会で諸方針を決定

 日本監査役協会は,さる7月11日に行われた第118 回理事会において,「委員会制度導入会社」に会員資格を認める方針,「監査役候補者の紹介・斡旋事業」を開始する方針等,委員会等設置会社を選択する会社、ならびに監査委員会を構成する取締役受け入れのための定款変更方針を決定した。おもな内容は以下のとおり。

 1 「委員会制度導入会社」に会員資格を認める

 日本監査役協会は7月11日の理事会で,「商法等の一部を改正する法律」が成立し,平成15年4月1日から施行されることから,改正法によって監査委員たる取締役を選任した委員会制度導入会社を法人会員等として認める方針を決定した。

 2 「監査役候補者の紹介・斡旋事業」を開始

「企業統治に関する商法等の一部を改正する法律」の成立により,大会社では「社外監査役」を半数以上選任しなければならないことになり,「社外監査役」に相応しい人材の確保が急務になっている。

 日本監査役協会は,6,000 人を超える現職の監査役を会員とする組織で,監査実務に精通した会員は改正法による「社外監査役」に相応しい人材であり,この人材を有効に活用する方策として,社外監査役に就任する意思がある者のリストを作成し,「社外監査役候補者」を求める会社に無償でその情報を提供する業務を行っているが,これをさらに一歩進め,無料職業紹介事業を行うことの許可を得たうえで「監査役候補者の紹介・斡旋」を事業として行う方針を決定した。

 3 本部事務所移転

 協会本部が手狭のため実務部会,研修会等を外部の会議室を借り受けて開催しているが,これを解消するとともに会員へのサービス充実のために,本部事務所を「千代田区」に移転する方針が承認された。

 4 韓国調査団派遣

 監査委員会設置および社外監査役の選任を義務化している韓国の実情等を調査するため,韓国調査団を派遣することを決定した。

日本監査役協会ホームページに新コーナー「今月の監査役」をスタート

  日本監査役協会では、ホームページにおいて毎月1名会員監査役をとりあげ、監査役としての活動(日常業務、悩み、やりがい、失敗談など)を紹介する新コーナーをスタートさせた。第1回は(株)環境管理センターの飯田冨美子監査役。