▽三角波△

連結納税制度と会社分割

 

  

 連結納税制度が適用されている法人(以下、「連結法人」)が会社分割を行った場合、単体での申告期間が生じる場合があることから、その期間における所得計算上の取扱いについて特別の規定が設けられている。
 また、分割法人がすべての事業を分割承継法人に移転させ、自らは分割後ほどなく解散するという場合、これが組織再編税制上、適格であれば、分割法人の欠損金を分割承継法人が引き継ぐことができる(以下、「合併類似適格分割型分割」)。こうしたことから、連結法人が合併類似適格分割型分割を行った場合の欠損金の取扱いも問題となる。


単体申告年度が生じる理由
 合併と異なり、分割を行っても、分割法人は解散しないことから、連結納税の承認が取り消されることはない。しかし、連結法人が連結親法人事業年度の中途で、自己を分割法人とする分割で分社型分割以外の分割を行った場合には、連結親法人事業年度開始の日から分割の日の前日までの期間と分割の日から連結親法人事業年度終了の日までの期間とをそれぞれ一事業年度として納税申告を行うことになり、連結事業年度開始の日から分割の日の前日までの期間(「連結前事業年度」)は連結事業年度に含まれないこととされている。したがって、連結事業年度の中途で分社型分割以外の分割を行った場合には、単体申告期間が生じることとなる。


単体申告期間中の所得計算
 分割法人の連結納税の承認は取り消されないので、分割法人は連結法人であり続けており、そのことから、単体申告期間中も、連結納税に準じた取扱いがなされている。分割前事業年度において連結法人間で行った資産の譲渡に関しては、連結納税の適用がある場合と同様に、譲渡損益の繰延措置が講じられ、また、分割前事業年度において連結法人間で行われた寄附金の全額損金不算入や受取配当の全額益金不算入が適用される。
 また、単体期間中に欠損金が生じた場合には、分割が組織再編税制上、適格か否かにかかわらず、当該欠損金は、連結事業年度の連結所得計算上、直接損金として計上される。


繰越欠損金の取扱い
 分割を行っても、通常は、分割法人の繰越欠損金は分割法人に残るので、その引継ぎの問題は生じない。ただし、合併類似適格分割型分割を行った場合にのみ、その引継ぎが生じる。分割の日が連結事業年度開始の日かそれ以外の日かによって、いったん単体になって合併類似適格分割型分割をするのか単体の期間なしに合併類似適格分割型分割をするのかという違いが生じるため、単体としての欠損金の引継ぎなのか、連結欠損金個別帰属額の引継ぎなのかという税法上の規定が異なる点に注意しなければならないが、いずれにしても、組織再編税制上、欠損金が引き継げる場合には、欠損金ないし連結欠損金個別帰属額を引き継ぐことになる。
 これとの整合性をとるため、連結グループ内で合併類似適格分割型分割を行った場合でも、組織再編税制上の「みなし共同事業要件」を満たさない場合には、特定資本関係成立前から有する資産の譲渡によって生じた欠損金額は連結欠損金額から除かれることになる。

〈Y.O 〉