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保証に関する保証人の会計および開示要求

 FASBは,さる5月22日にFASB解釈の公開草案「保証に関する保証人の会計および開示要求,他の債務の間接保証を含む」を公表し,6月21日を回答期限として一般の意見を求めた。

 保証については,FASB基準書第5号「偶発事象の会計」第12項が,保証(債務保証および譲渡債権の買戻し保証を含む)による偶発損失は,損失の発生の見込みが極めて少なくとも,その性格・金額を含めて開示することを求めている。また,解釈第34号は,その保証には他の債務の間接保証を含むとしている。FASBは,開示の要求および保証債務に関する当初負債の認識に関して異なる解釈が行われていることを観察し,それらを明確にするために,この解釈草案を発行した。

 この解釈草案の範囲からは,保険業の会計原則により会計処理する保険・再保険会社の発行する保証契約,キャピタル・リースにより会計処理する賃借人の残存価額保証,および仕入先からのリベートは除かれる。

 草案は,保証人が個々の保証または保証グループについて,@保証人が保証の履行を要求される事象または状況を含む保証の性格,A保証により将来支払を要求される最大限度額,B負債計上額,およびC遡求権または担保の性格およびそれらにより保証人が回収できる範囲の開示を求めている。また,その保証については,基準書第107号「金融商品の公正価額に関する開示」により公正価額を開示すべきこと,さらに関連当事者のための保証については,基準書第57号「関連当事者の開示」要求の対象になること,および被保証人のための保証が存在することにより,その被保証人が関連当事者になる可能性があることに言及している。

 FASBは,この開示要求が保証に関連する債務と流動性リスクの透明性を改善するものと考えている。

 草案はまた,特定の事象または状況により保証期間にわたって保証を実行する用意ができている債務を含み,保証の当初に引き受けた(直接債務・偶発債務を含む)すべての債務を公正価額により測定し,負債として計上するよう規定することを提案している。ただし,この規定は,製品補償,デリバティブとして会計処理する保証などには適用されない。

 FASBは,この要求により,現行の実務では保証取引を明確に分離せずに売買契約,サービス契約,ジョイントベンチャー契約,またはその他の契約に組み込んでいたために,基準書第5号の要求を満たさないとして多くの企業が認識しなかった負債を認識させる効果があると考えている。

 草案は,負債の測定に関する規定を02年9月15日後開始する年度から発効させ、期首現在の保証について従来認識していなかった負債部分を認識・測定し,会計原則の変更による累積影響額として,損益計算書上異常項目と純利益の間に表示するよう提案している。また,開示に関する規定は02年10月15日後開始する年度から発効させるよう提案している。

 

ASB ,IASB会議などについて検討

 国際対応専門委員会(企業会計基準委員会:ASB )は、さる6月10日、16月開催のIASB会議の議事対応について(株式報酬、企業結合)、2IAS 32号および39号改訂公開草案について、審議をおこなった。議事の概要は以下のとおり。

 1 6月開催のIASB会議の議事対応について

Share-based Payment」について、5月のIASB会議の暫定的合意内容、6月に開催されるIASBのアドバイザリーグループ会議の討議内容、会計処理および測定の問題に関する6月のIASB会議の討議内容について説明がなされた後、IASB会議に先立って開催されるアドバイザリーグループ会議で、非公開企業が付与したオプション・権利確定条件の取扱い等について討議がおこなわれ、IASBでは、その会議での助言を踏まえて、これらに関して暫定合意が形成される予定であることを説明した。

 質疑応答および意見交換では、おもに権利確定条件の取扱いに関する議論がされた。

 米国基準とIASBでは、費用の総額をいつ決定するのかに関して根本的な考え方の違いがあるため、概念的な整理が必要であるとの意見があった。

Business Combinations」(Phase 2)に関する6月のIASB会議討議内容において検討されたパーチェス法の適用に関連し、IAS 37号の見直しの可能性について報告がされた。

 4月にパーチェス法の適用時に偶発資産・偶発債務を公正価値で測定することが暫定合意されているが、これに関連して、偶発資産・偶発債務の定義をFASB提案と整合するよう見直すべきかどうかという論点がある。IASBスタッフは、IAS 37号を改訂せず、前記の取扱いは企業結合で生じるものにのみ適用することを提案している旨を説明した。

 続く、質疑応答および意見交換では、Phase 2において、偶発資産を公正価値で測定することが暫定合意されているが、のれんに影響がある重要な事項であるため、本来はPhase 1で検討すべきではないか、といった意見や、また、リストラ引当金は買収価格の中に織り込まれており、負債計上されるべきである、との意見があった。それらに対してIASBでは、企業結合を契機とするリストラ引当金は負債の定義を満たすとはいえないため、計上を認めないことで暫定的に合意している、との回答がされた。

 2 IAS 32号および39号改訂公開草案について

 6月中に公表されるIAS 32号および39号の改訂公開草案について、以下の報告がなされた。

 @ 企業の自社株を基礎としたデリバティブの会計処理について、その指針を示している。

 A 認識の中止について継続的関与アプローチ(譲渡した資産またはその一部分について譲渡人が継続的関与を有する範囲で認識の中止を認めないとするアプローチ)が採用されている。

 B 企業は、どのような金融商品であっても、それを当初認識時に売買目的(公正価値の変動を損益計算書に計上)に指定することができるとされている。

 質疑応答および意見交換では、売買目的の指定を企業の意図だけで行えれば、売却可能資産をデリバティブでヘッジした場合に生じる問題は解消される、といった意見や、一方で、企業の意図だけで自由に指定できることがよいかどうかの問題がある、との意見があった。

 金融商品の基準については、IAS 32号とIAS 39号は統合した方がよいのではないか、との意見に対して、IAS 32号とIAS 39号の統合は、相当の手数がかかるため、当面、現状のままとしたいという考えがIASBにある、との返答があった。

 認識の中止については、採用を提案している継続的関与のアプローチが、米国とも日本とも異なる方向性であり、Convergenceの観点からIASBはどのように考えているのか、との質問に対して、異なる方向性であることは認識しているが、米国のように膨大なルールブックを用意する必要のあるアプローチよりも、提案した分かりやすいアプローチの方にメリットがあるという考えに基づいて公開草案は作成されている、とコメントをした。

 

日本公認会計士協会,中小会社の会計のあり方に関する研究報告(経過報告)を公表

 日本公認会計士協会(会計制度委員会、以下「協会」)は、さる6月10日、中小会社の会計のあり方に関する研究報告(経過報告、以下「報告」)を公表した。

 これは、同協会が、平成14年1月17日付け総13第467号による諮問「中小会社の会計基準及び開示基準について大会社と同様であるべきかを検討し、異なる場合にはどのようなものであるべきかを調査研究し報告されたい。」に基づき、中小会社の会計のあり方について調査研究を行ってきたもので、中間段階における研究内容を経過報告としてまとめたもので、趣旨は、商法改正により本年4月から電磁的方法(インターネットのホームページを利用)によって、中小会社の計算書類も容易に公告できるようになり、不特定多数の者によって閲覧が可能になったことから、会計基準を統一し、計算書類を作成する必要性が生じたことに対する同協会の考え方を示す内容となっている。

 基本的な考え方としては、適正な計算書類を作成するための会計基準は会社の規模に関係なく一つであるとして、必要に応じ、中小会社の特性を考慮して適用方法には簡便法等を認めるというものである。

 同報告では、この考え方を「T中小会社の会計のあり方について」で示し、「U個別項目」で、商法および法人税法の観点から中小会社の会計処理上特別の配慮が必要なものや留意点を整理している。概要は以下のとおり。

 なお、研究については今後も引き続きおこなわれ、最終報告書は今年の秋頃を予定している。

〈研究報告(経過報告)の概要〉

 T 中小会社の会計のあり方に関する研究報告

   (経過報告)

  1.中小会社の会計のあり方の検討の必要性

  2.中小会社の会計基準を検討する主体

  3.中小会社の範囲

  4.中小会社の特性

  5.当協会の基本的な考え方

  6.個別項目の検討

 U 個別項目

  1.有価証券

  2.棚卸資産

  3.経過勘定項目(前払費用、未収収益、未払費用及び前受収益)

  4.有形固定資産

  5.ソフトウェア

  6.税効果会計

  7.研究開発費(試験研究費)

  8.引当金

  9.退職給付引当金

  10.ヘッジ会計

  11.リース会計

  12.外貨換算

  13.キャッシュ・フロー計算書

  14.後発事象

  15.計算書類注記

  16.中間決算

 

生保、2001年度決算発表

 経営破綻が相次いでいるために注目されていた生保会社の2001年度決算が発表された。3月末の株価の戻りがあったため、最悪の決算は免れたが、厳しい状況に変わりない。

 2001年度の生保決算のうち、資産運用に関連する注目点は次のとおりである。なお、生保会社の勘定には、資産運用の成果がそのまま契約者に配分される保険(変額保険や企業年金を含む)のための特別勘定と、通常の保険のための一般勘定(生保会社の資産の大部分を占める)とに分けられるが、以下では大手生保会社4社(日本、第一、住友、明治)の一般勘定について説明する。

 資産残高について、時価会計の影響や期末の有価証券の評価損益などを除いた実質ベースでは0〜3%の増加であった。保険契約残高が減少している影響から増加率は低いものの、資金が流出している状況にはない。

 資産構成を見ると、為替ヘッジ付きの外債運用が急増している。後で述べるように、生保会社の自己資本が逼迫していることから為替リスクを増加させることは困難だが、他方で資産運用利回りの向上が喫緊の課題であるため、為替ヘッジ付きの外債運用が選択されたものと考えられる。他方、各社ともリスク圧縮の観点から株式を売却している。株式含み益が急減し、むしろ含み損の状態になった会社も出現したことが背景にある。国内債については、企業貸付の減少もあり、概ね各社とも増加させているが、住友だけは減少させた。

 時価評価した運用収益は各社とも−1%内外で不振だった。株価が銀行株中心に急落した影響が大きい。各社とも有価証券評価損もしくは売却損を数千億単位で計上すると同時に、株式含み益を減少させている。また、利息配当金収入も、低金利の継続にともなって漸減を続けている。為替ヘッジ付き外債運用は利回り上昇効果をもたらしたものの、当該年度の特別の変動要因やキャピタル損失とインカム収入の入り繰りなどを調整した実質ベースで見ると、各社とも前年度と比べて0.1%内外低下しており、1.8%〜2.2%程度の水準だった。保険契約に対する保証利率(予定利率)の平均が3.5%内外であることからすれば、各社とも1%程度の逆ざや状況にある。

 自己資本に関しては、内部留保で積み増した会社(日本)、劣後ローンを取り入れて積み増した会社(住友)、株式評価損に対応するために各種準備金を取り崩した会社に分かれる。他方で日本も保険業法112条に基づき株式評価益を計上しており、必ずしも楽な決算ではなかったようだ。有価証券含み益を除くオンバランスベースでの自己資本の比率は3.6〜5.6%であるが、利息を支払っている基金や劣後ローンを除くと2.6〜4.5%に低下する。いかにオンバランス自己資本を積み増すかが今後の各社の経営課題となろう。

 

東証、平成14年3月期決算会社の77%が6月27日に株主総会

  東証は、6月13日、東証第一部、第二部、マザーズに上場する3月期決算会社1,717社の定時株主総会の開催日を集計し、公表した。

  例年、3月期決算会社の定時株主総会の開催が集中するのは、6月最終営業日の前営業日であり、今年の場合も6月27日(木曜日))に1,313社(全体の76.5%)が開催を予定しており、引き続き顕著な集中状況を示している。しかし、集中度合は、平成8年以来7年連続で減少しており、今年は前年比で3.0ポイント減少した。なお、定時株主総会の開催日に係る集計を開始した昭和58年以降において、最高の集中割合となったのは、平成7年3月期の96.2%(1,015社)であった。

  また、最も早く定時株主総会を開催したのは、マザーズ上場会社の(株)メッツであり、5月31日であった。市場第一部・第二部銘柄では、KOA(株)の6月8日が最短であった。

東証、ニューヨーク証取と市場監視情報の交換協定を締結

 東証は、6月4日、ニューヨーク証券取引所(NYSE)と市場監視情報の交換に関する協定を締結したと発表した。

  今回の合意は、昨今のグローバル取引や投資の拡大に対応し、両市場の公正性、透明性の一層の充実を図ることを目的としたものである。両取引所は、2000年2月に包括的な協力関係を謳った相互協力協定を締結して協力関係を構築してきたが、今回の市場間情報の交換に関する合意は、このようなパートナーシップに基づくものであり、スタッフレベルでのノウハウの交換を含む両者の緊密な協力を促進するものである。

 両取引所は、この協定における合意に従い、各市場で取引されている金融商品に関する情報や書類、および各取引所の取引参加者に関する情報について、その提供を求めることができることとなった。入手した情報は、市場監視および不公正取引の調査のための活動において使用することができる。今後は、同分野における諸制度の国際協調に向けた検討、さらには各関係諸機関の国際間連携に向けた施策などを積極的に支持・推進していくこととしている。

東証、外人の株式保有比率が12年ぶりに下落

 東証など全国5つの証券取引所は、6月20日、2001年度の株式分布状況の調査結果を発表した。

 調査対象は、平成14年3月末現在で全国5取引所に上場している内国会社2,673社のうち、平成13年度中に到来した最終決算期末時点で未上場であった17社を除く2,656社の上場普通株式である。

 調査結果によると、個人株主数(延べ人数)は、前年度に比べて136万人増加して3,351万人となり、6年連続で増加した。個人の株式保有比率(市場価格ベース)は0.2ポイント上昇して19.7%となった。その一方、外人の株式保有比率は、0.5ポイント低下して18.3%となり、12年ぶりに下落に転じた。また、銀行(都銀、長銀、地銀合計)は、1.4ポイント低下して8.7%となり、5年連続して調査開始以来の最低を更新した。

 そのほか、投資単位の引き下げ実施会社127社のうち、個人株主数が増加した会社は116社にのぼり、そのうち31社で2倍以上増加していた。

 

政府税調,あるべき税制の構築に向けた基本方針をとりまとめ総理に提出

 政府税制調査会(首相の諮問機関,会長:石 弘光一橋大学学長)は,本年1月17日の第23回総会において,小泉内閣総理大臣より「21世紀のあるべき税制の構築に向けて,広く税制上の課題について,広い角度から,積極的に取り組んでほしい」旨の指示を受け,中長期的な視点からのわが国税制の抜本改革に向け本格的な審議を進めてきた。

 この間,政府税調は,総会を7回,基礎問題小委員会・起草会合を14回,税についての対話集会を全国6ケ所で開催し,さる6月14日の第30回総会において「あるべき税制の構築に向けた基本方針」をとりまとめ,同日,石会長から小泉総理に手渡された。

 また,先般(6月7日),総理から政府税調に対して,来年度の税制改正においては,次のような事項の具体化を含め,あるべき税制の実現に向け,引き続き検討を行ってほしいとの指示があったところであり,政府税調では,今後,この5項目を中心に,あるべき税制の具体化のための検討が進められる見込みである。

 ・ 配偶者特別控除,特定扶養控除等の簡素・集約化

 ・ 外形標準課税の導入による法人課税の実効税率の引下げ

 ・ 研究開発減税・投資減税の集中

 ・ 消費税の免税点制度等の見直し

 ・ 相続税の最高税率の引下げ・控除の見直しと生前贈与の円滑化

 

社外監査役候補者リストの作成

 「企業統治に関する商法等改正法」において、大会社は全監査役中半数以上の社外監査役の選任が要請されることになった。

 日本監査役協会では、同法への対応として当協会会員を対象に「社外監査役」に就任する意思を有する者のリストを作成し、社外監査役候補者を求める会員会社に情報を提供する業務を開始した。

Net会員相談室開設

 日本監査役協会では協会ホームページにて会員向けに相談室を開設し、会員の実務上の疑問・質問に応対している。回答は運営メンバーおよび各部会幹事により行われる。

日本監査役協会主催第55回監査役全国会議日程・場所が決定

 第55回監査役全国会議が、来たる10月15日から18日まで、札幌にて開催されることが決定した。

 詳細は以下のとおり。

 A会議:10月15日〜16日(於:ロイトン札幌)

 B会議:10月16日〜17日(於:札幌パークホテル)

 C会議:10月17日〜18日(於:ロイトン札幌)

 「企業統治に関する商法等改正法施行後における監査役の実務対応状況」調査を実施

 日本監査役協会登録の2月・3月決算会社に対して、「企業統治に関する商法等改正法」施行後における監査役の実務対応状況調査を行っている。

 本年5月1日に施行された「企業統治に関する商法等改正法」に対し、監査役がどのように対応を図ったかという実情を把握することを目的に実施。調査結果に関しては、『月刊監査役』誌上等で発表予定。