▽三角波△

連結納税制度と合併

 

  5月10日に、連結納税制度導入に関する法人税法等の改正法案が国会に提出された。法人税法、租税特別措置法を合わせて1,000ページを超える法案となった一因には、組織再編成を想定した規定が必要であったことがある。


連結開始・加入・離脱の際の取扱い
 連結納税制度は「発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係」すなわち、100%親子関係にある企業グループに適用される。しかし、グループに属する法人は固定されておらず、保有割合が100%を割れば即座に連結グループから離脱することになる。また、連結グループの親会社が他の企業に吸収合併されれば、このグループ全体の連結納税の適用が取り消される。
 そうしたことから、連結納税の開始、連結グループへの加入、連結グループからの離脱、連結グループの解消といった事態が生じた際の取扱いが連結納税特有の規定として必要となる。
 しかも、こうした事態が企業組織再編成によって生じた場合には、企業組織再編税制における資産の移転に関する課税繰延べや欠損金の引継ぎといった措置と矛盾のないように制度を構成する必要があり、やむをえず制度が複雑となったのである。
 規定は複雑であるが、被合併法人が連結法人であれ単体法人であれ、その相手が連結法人であれ単体法人であれ、合併法人と被合併法人との関係に着目してそれが適格合併であるかどうかを判定し、適格かつ欠損金引継ぎ要件を満たしていれば、単体の欠損金額か連結欠損金個別帰属額かの違いはあっても、連結納税の下でも円滑に引継ぎが可能なように制度設計がなされている点で評価できよう。


親会社が合併法人の場合
 親会社が合併法人の場合には、当該連結グループには何ら影響を及ぼさず、単純に被合併法人の資産を時価で受け入れるのか簿価で受け入れるのか、あるいは被合併法人の繰越欠損金を引き継げるかどうかを、当該合併が適格合併であるかどうか(欠損金については、特定資本関係にある場合にはみなし共同事業要件をクリアするかの判断も必要)により判断すればよい。適格合併であれば、簿価で資産を受け入れ、繰越欠損金は連結グループの繰越連結欠損金とみなされる。


親会社が被合併法人の場合
 連結グループの親会社が被合併法人となる場合、合併の日を境に、この連結グループ全体について連結納税の適用が終了する。したがって、当該グループの連結欠損金は各メンバーに個別帰属額として振り分けられ、各メンバーは、それぞれ単体の欠損金としてそれを持ち出すこととなる。


子会社が合併法人あるいは被合併法人の場合
 子会社が合併法人あるいは被合併法人となると、親会社からみて100%子会社ではなくなる。したがって、当該子会社は合併の日の属する事業年度当初に遡って連結グループから離脱することになる。この連結グループが繰越連結欠損金を有し、しかも当該子会社に帰属する部分がある場合は、その個別帰属額は当該子会社の単体の繰越欠損金として持ち出すこととなる。

  

〈Y.O 〉