Accounting News

4月理事会

 4月16日から19日までロンドンで開催。

 ■IAS19(従業員給付)の緊急改訂

 公開草案に対するコメントを検討し、内容の追加を合意した。

 ■序文

 公開草案に対して寄せられたコメントを加味して文言を追加修正。

 ■企業結合(第1フェーズ)

 契約日が新基準の発効日以降となっている企業結合について新基準を適用する。営業権の償却は行わず、減損評価の対象とする。

 ■企業結合(第2フェーズ)

 偶発的な債権債務の処理を検討。

 ■今後取り上げる議題

 アイデアとして以下の項目が挙げられた。

 ・ コンバージェンス(収斂)

 ・ 連結と特別目的事業体(SPE)

 ・ 金融商品

 ・ 中小会社の会計基準

 ■業績報告

 概念ペーパーに基づき議論を継続。

 ■株式報酬会計

 従業員向けストックオプションの評価にオプション価格モデルを適用する件などにつき討議を続けた。

英国ASBとの会合

 4月理事会に併せ、会期中の18日に英国ASBとの会合が持たれた。

 ■株式報酬会計

 従業員向けストックオプションへのオプション価格モデルの適用について意見を交換。

 ■業績報告

 両者の共同プロジェクトであるが、揃って討議を行う初めての機会となった。業績報告書の様式について、営業活動と財務活動など区分表示をどのように行うかを議論。現在提案されている3種類の様式の中では概念ペーパーの様式への賛成が多数あった。

IFRIC4月会合

 IFRIC(国際財務報告基準解釈委員会)は4月23、24の両日ロンドンで第二回会合を持ち、以下の項目について討議した。

 ■運営にかかわる事項を確認

 ・ IOSCOがオブザーバーとして参加すること

 ・ IFRSと同様の書体の使い分けを考慮する

 ・ 公開草案へのコメント期間を緊急の案件に限り最短60日から30日に変更

 ■討議を継続議題

 ・ 所有者との取引、共同経営

 ・ 従業員給付

 ・ 金融商品

 ■議題として新たに追加すべき項目の検討

現存する12基準の改訂草案公開

 既存基準の改善プロジェクトにより12の基準について前面改訂を行う草案が5月15日に公開された。項目は以下のとおりで、IAS15については基準そのものの廃止の可否を諮っている。コメントの締切はいずれも9月16日まで。

IAS1 財務諸表の表示

IAS2 棚卸資産

IAS8 会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬

IAS 10  後発事象

IAS 15 物価変動の影響を反映する情報

IAS 16 有形固定資産

IAS 17 リース

IAS 21 外国為替レート変動の影響

IAS 24 関連当事者についての開示

IAS 27 連結財務諸表及び子会社に対する投資の会計処理

IAS 28 関連会社に対する投資の会計処理

IAS 33 一株当たり利益

IAS 40 投資不動産

 

基準書第145号「FASB基準書第4 ,44および64号の廃止,FASB基準書第13号の改訂ならびに技術的修正」

 FASBは,さる4月末に表題の基準書を発行し,現行の公式見解を更新,明確化し,また簡素化した。

 基準書第4号は,負債の消滅による損益が重要であるときは,関連税効果差引後の金額を異常項目として分類することを求めていた。同基準書の廃止により,今後当該損益を異常項目とするかどうかは,意見書第30号の本則に従って判定することになる。

 基準書第64号は同第4号を一部改訂したものであり,第4号が廃止されれば不要になるものである。

 基準書第44号は,1980年自動車運送業者法による規制緩和の無形資産への影響について示した経過的な基準であり,最早不要になっていた。

 基準書第145号は同第13号を一部改訂し,リースバックを伴う売却に類似した経済効果をもたらす特定のリース契約の変更は,リースバック取引と同様に会計処理するよう要求している。

 基準書第145号はまた,現行の公式見解へのいくつかの技術的修正を行っている。その性格は重要ではないが,ある場合には会計実務を変える可能性がある。

基準書公開草案「特定の金融機関の取得」

 FASBはさる5月に基準書第72号「銀行または貯蓄貸付機関の特定の取得に関する会計処理」および同第144号「長期性資産の減損又は処分の会計」ならびにFASB解釈第9号「買収法で会計処理する企業結合により貯蓄貸付組合または類似機関を取得したときのAPB意見書第16および17号の適用」を改訂する表題の基準書草案を公表し,6月24日を期限として意見を求めている。草案は,基準書第72号の適用対象を複数の相互企業間の取引に限り,他の金融機関すべての取得は,この草案により次のように処理するよう提案している。

 金融機関または金融機関の一部の取得で,基準書第141号「企業結合」中の企業結合の定義を満たすものは,買収法により会計処理する。譲り受けた資産および活動が事業 (business) を構成しないため,取得が企業結合の定義を満たさないときは,取得原価をその相対的公正価額に基づいて取得資産および引受負債に配分し,暖簾を認識してはならない。

 預金者・貸付先関係無形資産およびクレジットカード保有者無形資産などのような長期顧客関係無形資産は,基準書第144号の範囲中に含まれる有限の耐用年数を有する無形資産とし,同基準書が規定する減損および処分の対象とする。

 基準書第72号の規定により前に認識した識別不能無形資産が企業結合により発生した長期顧客関係無形資産である場合には,基準書適用時の残高を暖簾に再分類し,そうでない場合には,当該識別不能無形資産を基準書第72号のもとで継続して償却する。

 草案は,買収法の適用については基準書発行後に完結する取引に,また長期顧客関係無形資産の会計処理に関しては基準書発行時に発効するよう提案している。

 

ASB,1株当たり利益(EPS )扱いについて公表

 企業会計基準委員会(ASB )は、さる5月21日、実務対応報告第3号「潜在株式調整後1株当たり当期純利益に関する当面の取扱い」(以下、実務対応報告)について公表した。

 ASB では現在、平成13年の商法改正に関連して、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定方法について、平成14年4月1日以後に開始する中間会計期間に係る中間財務諸表から適用できるよう会計基準等の開発を進めており、当該会計基準等が適用されるまでの間、新株予約権等に係る潜在株式調整後1株当たり当期純利益の計算について、さる5月17日の第14回企業会計基準委員会で同実務対応報告が承認された。

 なお、同実務対応報告については、当該会計基準等が公表後適用されるまでの間の取扱いを確認するとの趣旨に鑑み、企業会計基準委員会等運営規則に基づいて、公開草案の公表は行われない。今後の日程としては、9月の中間決算で対応可能なよう審議が進められる予定である。

ASB、自己株式等会計基準に関する追加論点を検討

  企業会計基準委員会(ASB)は、さる4月30日、(財) 財務会計基準機構会議室において、自己株式等会計基準に関する追加の論点について、説明と意見交換をおこなった。

  以下@〜Cが、追加して検討するとされた論点である。

 @ 自己株式の取得及び処分の認識時点

 A 自己株式の無償取得の会計処理

 B 合併に関連する自己株式の会計処理(抱合せ株式への新株の割当、被合併会社が保有する合併会社の株式)

 C 子会社及び関連会社が保有する自己株式に関する連結財務諸表における取扱い

 ABCは、自己株式に関する会計処理と企業結合会計の共通の論点。現在企業会計審議会第一部会で検討中の企業会計結合については、必要に応じて整備が図られる。

 なお、各論点の概要は以下のとおり。

 @ 自己株式の取得及び処分の認識時点

   自己株式を取得及び処分した場合の認識時点について、自己株式等会計基準で明示していない。

 A 自己株式の無償取得の会計処理

   会社が株主から自己株式の贈与を受けたとき、従来自己株式を資産としていた場合は、時価相当額を利益に計上していたが、自己株式の取得を資本控除としたことにより、会計処理が変更されるかどうかが論点となる。

 B 企業結合に関連する自己株式の会計処理

 1 抱合せ株式への新株の割当:商法上、吸収合併に際して、合併新株の割当ては可能だが、抱合せ株式への新株の割当ては、自己株式及び拠出資本の増加を認識すべきではないとの意見もある。

 2 被合併会社が保有する合併会社の株式:時価以外の価額で自己株式として資本に控除する場合には、その意味を検討する必要がある。

 C 子会社及び関連会社が保有する自己株式に関する連結財務諸表における取扱い

  子会社及び関連会社が自己株式を保有した場合、子会社及び関連会社の個別財務諸表上は自己株式の金額が資本の控除となるが、連結財務諸表においては、どのように取り扱うべきかが論点。

 

東証、コーポレート・ガバナンスの実効性確保を要請

  東証は、4月19日、上場会社に対して、5月1日施行の改正商法及び改正商法特例法で、社外監査役の定員数の増加や社外要件の厳格化など監査役機能の強化が図られ、適正なコーポレート・ガバナンスの確立が一段と強く求められることを踏まえて要請を行った。

  内容は、商法特例法の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)の要件に該当しない上場会社も含め、全東証上場会社に対して、社外監査役の独立性強化やその地位の安定性確保といった改正商法等の趣旨を十分に理解し、コーポレート・ガバナンスの実効性確保を求めたものである。

東証、マザーズ上場準備の円滑化、審査内容の明瞭化のための資料公表

 東証は、4月19日、新興企業向け市場マザーズの信頼性向上を目的とした退出基準の強化を柱とするマザーズ上場基準の見直しなどの「東証マザーズ活性化のための総合プログラム」の一環として、マザーズへの上場申請予定会社の上場準備の円滑化や、審査内容の明瞭化を図るため、「マザーズ事前チェックリスト」と「マザーズヒアリング主要項目リスト」を公表した。

「マザーズ事前チェックリスト」は、上場会社として求められる体制整備の円滑化を図る観点から、上場申請の準備段階で申請予定会社自らが事前に整備・確認しておくべき一般的事項を5つに分類して59項目掲げたものである。内容としては、@事業計画が今後の事業展開を踏まえて合理的に作成されていますか(3項目)、A経営管理組織が有効に機能していますか(取締役会、監査役、内部監査、内部統制、業績管理などに分けて23項目)、B企業内容の適時・適切な開示に向けた準備が進んでいますか(社内体制、開示書類、業績等の開示、会計処理、決算期変更、会社情報管理などに分けて16項目)、C会社関係者等との取引により、企業経営の健全性が損なわれていませんか(3項目)、Dその他の留意すべき点(14項目)からなっている。

 また、マザーズヒアリング主要項目リストは、上場審査において、上場申請会社に聞き取りをする主な要点を取りまとめたものである。具体的には、上場申請理由、事業計画及び投資回収計画、上場時における調達予定資金の使途、業界の状況、経営管理体制の整備・運用状況、適時開示体制等の整備状況、親会社等との関係、企業グループの状況、役員・大株主との取引等、その他という形に分類して24項目掲げている。

 実際の上場審査では、今回公表した項目を中心としたヒアリングや「上場申請のための有価証券報告書」等の提出書類の内容確認、経営幹部や監査役への面談などに基づき、上場審査基準への適合状況を確認することとしている。

 

日本国債の格付引き下げによる波紋

 日本国債の格付をめぐって波乱が生じている。

 4月、スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P社)は日本国債の格付をダブルA格の最下位に引き下げた。もう一つのアメリカの格付機関、ムーディーズ社も日本国債の格付を引き下げる方向で検討しており、5月中に結論を出すとしている。ムーディーズ社が日本国債の格付を引き下げれば、シングルA格となる。先進国でシングルA格の国はなく、チリ、チェコ、ハンガリー、ボツワナなどと同格もしくはそれ未満の格付となってしまう。

 4月末、この動きに対して政府(財務省)はS&P社、ムーディーズ社、フィッチ社の3社に意見書を送った。この意見書の主旨は、「格付機関のこれまでの(格下げの)説明は、主として定性的なものであり、客観的な基準に欠ける」とする。

 すなわち、「自国通貨建て(日本の場合は円建て)国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか(格付の基準となるデフォルトをどのように定義しているのか)」、「日本は世界最大の貯蓄超過国、国際収支の経常黒字国、対外債権国であり、外貨準備も世界最高である。このことを格付機関としてどのように評価しているのか」、「たとえば、日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済ファンダメンタルズではるかに劣位にある新興市場国と同格付となるが、このことをどう説明するのか」と要約できる。

 格付機関が日本国債の格付を引き下げている最大の理由は、日本政府の財政赤字が一向に縮小せず、国債残高が対GDP比で拡大を続けていることにある。格付機関からすれば、この財政赤字に対する政府の対応策を明確化することが、日本国債の格下げに対する最大の反論になろう。この点で、財務省の反論は格付機関の見方とかみ合っていない。

 政府が国債の格付を気にしている理由は、先進国で最も低い格付になってしまうという体面だけのものではない。シングルA格に格下げされれば、海外投資家が日本国債への投資を忌避することをきっかけに、国債価格の低落(金利の上昇)が起きかねない。金利の上昇は国債の利払いを増大させ、財政赤字の拡大に拍車をかける。この事態は最悪だと、政府が評価しているからだろう。

 

連結納税法案5月10日国会提出

 平成14年度の税制改正のうち連結納税制度の創設に関する法律案については,作成に相当の時間がかかっていたところであるが,さる5月10日,「法人税法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され,同日国会に提出された。

 本法律案は,近年の社会経済情勢の変化や企業活動の国際化の進展等を踏まえ,我が国企業の円滑な組織再編成に対応するとともに,企業経営の実態に即した適正な課税を行い,もって我が国の経済構造改革に資する観点から,連結グループを一体として課税する連結納税制度を創設するための所要の措置等を講ずるものである。

 具体的には,

・内国法人及び完全支配関係にある他の内国法人について,国税庁長官の承認を受けた場合には,その内国法人を納税義務者として連結所得に対する法人税を納めることとされている。

・連結所得の金額及び連結法人税額について,連結グループ内の各法人の所得金額を基礎とし,所要の調整を加えた上で,連結グループを一体として計算することとされている。なお,これらの計算に係る諸制度について,個々の制度の趣旨等を踏まえ,所要の措置を講ずるほか,国税通則法等の整備その他所要の規定の整備を図ることとされている。

・連結納税制度の創設に伴う税収減に対応するため,連結付加税等の連結納税制度の仕組みの中での措置及び退職給与引当金の廃止等の課税ベースの適正化のための措置を講ずることとされている。

 なお,連結納税制度は,平成14年4月から事業年度が開始する平成15年3月期決算法人から適用することができるよう承認申請期限を本年9月末とし,本法案の施行日は8月1日とされている。

(参考) 「法人税法の一部を改正する法律案」の概要

1 適用対象

 ・ 親会社と,それが直接間接に100 %の株式を保有するすべての子会社(外国法人を除く)

 ・ 制度の適用は,選択制。ただし,一旦選択した場合は,継続適用

2 申告・納付

 ・ 親会社が法人税の申告・納税を行う

 ・ 子会社は連帯納付責任を負い,個別帰属額等を税務署に提出

3 所得,税額の計算

 ・ 連結グループ内の各法人の所得金額に所要の調整を行った連結所得金額に,税率を乗じ,さらに,必要な調整を行った後に,連結税額を求める

 ・ 税率は,原則,現行税率(30%)と同様。ただし,2年間は連結付加税(2%)を上乗せ

4 内部取引の扱い

 ・ 連結グループ内の法人間で資産の取引を行った場合の譲渡損益は,その資産の連結グループ外への移転等の時に計上

5 適用開始,加入時の資産評価

 ・ 適用開始または加入に際しては,当該法人の資産を時価評価し,評価損益を計上

 ・ ただし,親会社や株式移転に係る完全子会社,長期保有(5年超)の子会社,適格合併や一定の株式交換による子会社等は,対象としない

 ・ 平成14年1月1日以前からの100 %子会社は,長期保有の子会社として取り扱う

6 その他

 ・ 包括的な租税回避行為防止規定等の創設

 ・ 質問検査権,罰則等について,所要の規定を整備

7 適用事業年度

 ・ 平成15年3月期決算法人から適用

 ・ 平成14年度は,平成14年9月末を承認申請期限とする

8 財源措置

 ・ 連結納税制度の枠組みの中での措置(連結付加税(2%),連結子会社の連結前欠損金の持込み制限,新規子会社等の加入制限)

 ・ 課税ベースの見直し(退職給与引当金の廃止等)

  (注)2年後に財源措置の見直し

9 施行日

 ・ 平成14年8月1日施行